もてる男のバレンタイン
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第二章
「普通の男前だよな」
「ああ、そんなレベルだよ」
「背だってな」
「一八〇近いけれどな」
やはり極端ではない。
「しかも結構太ってるよな」
「腹に脂肪あるからな」
スタイルもモデルの様にではない。
「完璧っていう訳でもなし」
「成績だってトップクラスじゃないぜ」
そこまでのレベルでもなかった、成績はよくとも。
「そこそこだよな」
「ああ、トップクラスの次のクラスだよな」
「五段階で四か」
「十段階だと七か八だよな」
そのレベルだった、実際に。
「まあ普通にいいよな」
「それ位だよ」
「結構平均的なよさだろ」
「それで何であんなにチョコ貰えるんだ?」
「ちょっとないだろ」
「貰えるにしてもな」
順一郎の顔や成績と比べて貰える数が多いのだ、それでだった。
彼等は不思議に思っていた、それでだ。
彼等は少し考えた、それでここは本人達に聞くことにした。ここで聞いた相手は順一郎ではなかった。女の子達だった。
女の子達はだ、すぐに笑顔で彼等の問いに答えたのだった。
「そんなの決まってるじゃない」
「心よ」
「河原崎君性格いいでしょ」
「神様みたいにね」
こう答えるのだった。
「だからよ。誰にも優しいし」
「誰の悪口も言わないでしょ」
「意地悪なんて絶対に言わないし」
「嫌味なところは全然ないから」
「公平だしね」
「差別しないから」
「あんないい人いないわよ」
そうそう滅多にだというのだ。
「だからね」
「それでなのよ」
「私達河原崎君好きなのよ」
「性格が凄くいいから」
「だからか」
ここで彼等もわかった、何故女の子達が順一郎に次から次にチョコレートをプレゼントするのかを。そのことを。
「それでか」
「あんた達あいつにチョコレートあげるのか」
「皆が」
「顔がよくてもね」
ここで女の子の一人がこう言った。
「性格悪いと何にもならないでしょ」
「いるな、顔がよくてもって奴」
「顔が悪くてもってのもいるけれどな」
性格は顔に関係はない、ただ人相にはなっていく。
「そういうことか」
「人間は顔じゃないってか」
「内面か」
「何で嫌な奴にチョコレートあげないといけないのよ」
ここで実に率直な言葉が出て来た。
「そんなことしないから、私達も」
「そうそう、幾ら顔がよくてもね」
他の女の子達も言ってくる。
「嫌な奴になんかあげないわよ」
「チョコレートでも何でもね」
「シカトよ、そんな奴」
「どうせ感謝もしないし」
「嫌な奴にはあげないわよ」
「何があってもね」
「そういえばそうだな」
男連中も女の子達の言葉を聞いてわかった、それで言うのだった。
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