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dark of exorcist ~穢れた聖職者~

作者:マチェテ
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第10話「風の悪魔の撤退」

アイリスとキリシマはそれぞれの武器を構えた。
アイリスは二挺の銃にマガジンを込めた。
キリシマは日本刀を鞘に納め、居合の構えのままフォカロルを睨む。

「キリシマ君………あの人の能力は……」

「…………………分かっている。おそらく"風の増幅・操作"………お前の武器は相性が悪い」

キリシマの言う通りだった。
遠距離武器は"風の悪魔"にとても相性が悪い。銃弾など強風に煽られれば、簡単に軌道がずれる。
アイリスの攻撃がフォカロルに直撃する確率は無いに等しい。


「私があの人の注意を引くから、キリシマ君はあの人に攻撃して」

アイリスの提案に、キリシマは否定することなく賛同した。


「今度は穢れと2人がかりか?……………吹き飛ばしてやる」

フォカロルが憎らしげな表情を浮かべ、拳を思い切り握り締めた。


「…………………やってみろ」


それは一瞬だった。
先程までフォカロルの目の前にいたはずのキリシマが、もう少しで触れるほどの距離にいた。
しかも、フォカロルの懐で居合の構えをとっていた。

「………何!?」

咄嗟に"風"を操作することもできず、やむを得ず後ろに下がる。

「………………」

キリシマは無言で、弾丸のような速度で抜刀した。



何の音も鳴らなかった。
気づいた時にはフォカロルの左腕が肩から落ちていた。

「ぐっ!?」

フォカロルは左肩のあった断面を押さえ、キリシマから離れた。

「………相変わらずすげぇなぁ……キリシマ……」

「ですよね……さすがです」

少し離れた所で、パトリックとクリスがキリシマの居合斬りに感心していた。
そんなパトリックとクリスに、アリシアの鉄拳が飛んできた。

「痛っ!?」

「痛ってぇ!! 何すんだ!!」

「うっさい!! ぼさっとしてないで、キリシマの援護! アイリスちゃん、いける!?」

「うん! キリシマ君、手伝うからね!」

キリシマは再び日本刀を納め、居合の構えのまま4人の言葉に頷いた。

「……………………分かった。手伝ってくれ」



「ハハハハッ……どうやら刀を持っている奴以外は雑魚のようだな。雑魚に何ができる?」

嘲るような笑みを浮かべたフォカロルの背中に………


ドゴォォォン!!!!


まるで太陽のような火球が直撃した。

「ごっ……おあ……」

風すら焼き潰し、フォカロルはあっという間に焔に包まれ、見えなくなった。

「いい加減にしろお前ら! お前らは奴の本気を見ていないから戦えるんだ! 早く逃げろ!!」

今まで静観していたべリアルが、フォカロルの隙を見て焼き潰したのだ。
べリアルの言葉に、パトリックはすかさず反論した。

「はぁ!? ふざけんな! なんで悪魔に指図されなきゃならねぇんだ!」

「……………………大体、なんで人間を助けようとする?」

キリシマの質問に、べリアルは曖昧な答えを返す。


「…………さあな」



フォカロルを焼き潰す火球に変化が起きた。
火球が少しずつ歪み、焔が不安定になりつつある。
そして、火球が内側から破裂した。

中から、火の付いた風を纏ったフォカロルが姿を現した。
5人の悪魔狩りは、一斉に武器を構え直した。

焔から出てきたフォカロルは、これまでにないほどの憎悪を全身ににじませていた。

「どうする? もう一度お前を焼き潰すことなんて造作もない」

べリアルの脅し混じりの言葉に、フォカロルは苛立ちを隠せなかった。
しかし、べリアルの他に厄介な悪魔狩りを相手にするのは面倒だった。

「べリアル………お前は人間の価値の無さを知るべきだ………」

「そうかよ」

「……………………」


周囲の風向きが変わった。フォカロルの周囲に風が集中し、次第に強くなっていく。
次の瞬間、風が砂を巻き上げ、フォカロルを完全に包み込んだ。


風が止んだ時、風の悪魔はもうその場にはいなかった………… 
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