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問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ?

作者:Neverleave
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Mission5・② ~大切なもの~

 女性三人は大浴場で身体を洗い流し、湯に浸かってようやく人心地ついたように寛いだ。
 大浴場の天井は箱庭の天幕と同じなのか、天井が透けて夜空には満天の星が見える。
 黒ウサギは上を向き、長い一日を振り返るように両腕をあげて背伸びしていた。

「本当に長い一日でした。まさか新しい同士を呼ぶのがこんなに大変とは、想像もしておりませんでしたから」
「それは私たちに対する当て付けかしら」
「め、滅相もございません!」

 バシャバシャと湯に波を立て、慌てて否定する黒ウサギ。
 耀は隣でふやけた様にウットリした顔で湯に浸かっている。

 ここはコミュニティ〝ノーネーム〟のホームが持つ大浴場。
 十六夜が蛇神とのギフトゲームで獲得した水樹によって大量の水が放出されたあと、さっそくその水を使って風呂に入ろうという提案を飛鳥が出したのである。
 そこで女性陣が先に風呂へ、男性陣は彼女らが出るまで待機ということになり、こうして飛鳥達はこの世界へやってきてから初めての湯船を楽しんでいた。

「このお湯……森林の中の匂いがして、すごく落ち着く。三毛猫も入ればいいのに」
「そうですねー。水樹から溢れた水をそのまま使っていますから三毛猫さんも気に入ると思います。浄水ですからこのまま飲んでも問題ありませんし」
「うん。…………そういえば、黒ウサギも三毛猫の言葉がわかるの?」
「YES♪ 〝審判権限(ジャッジマスター)〟の特性上、よほど特異な種でない限り黒ウサギはコミュニケーション可能なのですよ」

 そっか、と耀は返事する。ちょっぴり嬉しそうだったのは気のせいではないだろう。
 飛鳥は長く艶のある髪を纏めなおし、夢心地で呟く。

「ちょっとした温泉気分ね。好きよ、こういうお風呂」

 右腕を上に伸ばし、左手でそれをさする。それだけで素肌が綺麗になる錯覚があった。

「水を生む樹…………これも〝ギフト〟と呼ばれるものなの?」
「はいな。〝ギフト〟は様々な形に変幻させることができ、生命に宿らせることでその力を発揮します。この水樹は〝霊格の高い霊樹〟と〝水神の恩恵〟を受けて生まれたギフトでございます。もしも恩恵を生き物に宿らせれば、水を操ることのできるギフトとして顕現したはずデス」
「水を操る? 水を生むのではなく?」
「それも出来なくはないですが、霊樹みたく浄水にするのは難しいです。それに水樹は無から水を生むのではなく、大気中の水分を葉から吸収して増量させているのが正しい解です。完全な無から有限物質を生むとなると、それこそ白夜叉様や竜ぐらい地力がないと」

 そう、と空返事する飛鳥。
 満天の星空を見上げながら、ふっと思いついたようにつぶやく。

「龍、ね…………それもギフトゲームで手に入れたの? 龍のゲームはどんなゲーム?」
「そ、それは流石にわかりかねます。黒ウサギがコミュニティに入ったころには既に台座に飾られていましたから」
「あら残念。明日のギフトゲームの参考にしようと思ったのに」

 黒ウサギは飛鳥の言葉を杞憂だと笑い飛ばす。

「まさか! 〝フォレス・ガロ〟がそんな大層なゲームを用意することなど不可能でございますよ。相手のコミュニティの存続がかかったゲームですから、得意分野の〝力〟を競うモノになると思いますが、飛鳥さん達なら問題ないでしょう。よほど運に頼ったゲームでない限りは心配ご無用です」

 これは客観的な視点から見た正当な判断である。
 〝力〟を競うものであるのなら、飛鳥や耀だけでもこちらに分がある。
 それに加えてこちらにはダンテがいるのだ。頭脳や性格に関してはかなり問題ありといったところだが……力比べや戦闘の部門になると、いったいどうしてこんなことができるのかと問いたくなるほどの結果を彼は叩きだす。
 それに、彼はただ単に力任せな狂戦士(バーサーカー)ではない。その戦いぶりを見ればわかるように、メチャクチャな構えのようですべての的を瞬時に射抜くスピードと精密性、一瞬のタイミングでも逃すことなく己のチャンスを活かす機転の良さ、間合いを見極め剣と銃を適当な距離で使うその判断力、どれもこれもがずば抜けている。
 つまり、彼はあらゆる運動でのセンスも抜群だということだ。
 いかなるルールや場所が用いられることになったとしても、それこそ白夜叉とのゲームのときのように笑いながら敵を一蹴してしまうことだろう。
 ……そう、運任せのゲームでさえなければ。

 黒ウサギの言葉を聞いた途端、飛鳥は嫌な顔をして彼女に聞き直した。

「運に頼り切ったゲームなんてあるの?」
「YES! ギフトゲームもピンキリですから。純粋な〝運気〟を試すギフトゲームは数多に存在します。代表的なのはサイコロを使ったゲームでしょうか」
「そ、そう」

 複雑そうに飛鳥は顔をゆがめる。コミュニティの存続を賭けたゲームを行うというのに、それを運に任せるような真似を相手にはしてほしくないものだ。華がないにも程がある。
 ちなみに彼女たちはまだ知らなかったが、ダンテはそういった運任せのゲームが大の苦手だ。ギャンブルにおいても、ノーレートのゲームであっても勝ったためしがない。
 以前レディからの仕事をタダで受けるか、すべての借金を帳消し+断るかで賭けを行い、そのとき盛大すぎるほどのハンデを貰ったにも関わらず敗北した。もはや天から見放されているとしか思えないほどの凶運っぷりである。
 まぁ、半分悪魔だからそれも当然……なのかもしれないが。

「ギフトゲーム…………か。ダンテじゃないけれど、私は楽しければそれでいいと思ってたのにな。コミュニティのことを考えると無茶は出来ないわね。春日部さんはどう思う?」

 話題を耀に振る飛鳥。すっかり湯船でふやけていた耀は彼女からの問いかけにハッとして応える。

「私はとにかく勝てばいいと思う。勝てば私たちも楽しい、コミュニティも嬉しい。一石二鳥」
「耀さんの言う通りでございます! ゲームを楽しむのは一流プレイヤーの条件ですよ」

 黒ウサギの言葉を受けて飛鳥はホッとしたように表情をほころばせる。
 今になって彼女は〝フォレス・ガロ〟とのギフトゲームを無償で引き受けたことを気にしていた。元々勝てる試合、〝全財産を賭けろ〟とでも吹っ掛けておけばよかったかもしれないと少し後悔していたのである。

「そう言ってもらえると助かるわ。でもそれじゃあなんだか、十六夜君やダンテが一流みたいに聞こえて腹立たしいわね」
「あーそれは……まぁ、モラルやいろいろな面を無視すればそうですかね?」
「それだけに余計に残念」

 耀の一言に、飛鳥と黒ウサギは思わず吹き出した。
 十六夜は自己紹介で告げていたように、粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間。
 ダンテはこれに不真面目・不摂生・お馬鹿を追加し六拍子も揃ってしまった、もはや可哀想な人である。
 これで彼らが一流などと言われるのは、なんともおかしなものだ。
 自身らも十分に問題児であることを棚に上げ、飛鳥と耀は呆れたように笑った。

「特にダンテさんです。あそこまで会話が通用しないというか、自由な人は初めて会いましたよ。なんでもかんでも冗談まじりに返事したり、何を訊ねてものらりくらりとかわして真面目に答えないんですもの」
「ホントね。いったいどうしたらあんな大人になっちゃうのかしら」
「不思議」

 十六夜も大概なものだが、彼はまだ会話が通じて受け答えをキチンとしてくれるという点でまだましだ。
 しかしダンテに至ってはそれすらできないのだからもう何も言えない。
 半分人間ではないから人間の常識で彼を見るというのはある意味偏見になるのかもしれない。まず親の片方が人間ではないし。
 いったいどんなことを教わって、どんな幼少期を過ごせばそうなるのだろうか。

「……子供のときはいったいどんな子だったのでしょうか」
「今と変わらないような気もするわね」
「……ちっちゃいときから剣と銃振り回してた?」
「「それはない……です(ない……わ)」」
「…………」
「「……多分」」

 最初から最後までハモッてしまった飛鳥と黒ウサギ。
 さすがにあんなバカでかい剣と銃を子供の頃から使っていただなんて考えられないし、冗談もいいところだ。
 ……のだが……案外使っていそうな気がしてとても怖い。
 最後あたりになると確信が持てず、二人とも多分と付け足してしまった。

「……何者なんでしょうか、あの人は」
「……さぁ」

 よくよく考えてみれば謎だらけなダンテに、風呂場にいた皆が首をかしげた。

「魔の眷属と、人間の子供、かぁ……」
「魔の眷属と日常的に戦ってるのでしょうか?」
「かもしれないわね。出てきた最下級のヤツらの名前まで知ってるみたいだったし」
「ダンテ、『魔の眷属』を悪魔だって言ってた」
「白夜叉様も言われていましたが、ヤツらは自身のことを悪魔と呼んでいるそうです。それにしたって笑えませんよ、箱庭の世界にいる悪魔と呼ばれる者達だってギフトゲームのルールを順守するというのに、彼らはそれをいとも容易く破ってしまうのですから……あちらの方がよっぽど悪魔です」

 黒ウサギが苦々しい表情を浮かべながら説明をする。
 ありとあらゆる修羅神仏、そして人間がいるこの場所であっても、皆ギフトゲームを行えばルールに則ったことしかしない。
 彼らはそれが守らなければならない法則であり、軽視してはならない絶対の法であると理解し、尊重してくれている何よりの証なのである。
 なのに、部外者であるヤツらはそれを真正面からぶち壊すのだ。
 それだけならばまだしも、魔の眷属はゲームに割り込んでくるうえで、そこにいるすべての者の命を狩りとろうとする。
 そのせいでどれだけの者達が死んでいったか。そしてどれだけの者達が屈辱を受けたまま生涯の幕を閉じたのか。
この世界の住人である彼女にとって、そして創造神の眷属である彼女にとって、それは想像に難くなかった。

「ねえ黒ウサギ。ふと気になったんだけど、いったいヤツらはどんな生き物なの?」

 耀が黒ウサギへと質問を投げかける。
 彼女からしてみれば、魔の眷属というものは〝サウザンド・アイズ〟支店で見たグリフォンと同じような幻想の生き物なのである。
 そういった者達と友達になるためにこの世界へとやってきた耀にとってそれはとても知りたいことなのだ。
 凶暴であるということは説明されたが、〝魔剣士スパーダ〟のような特別な存在がいないとも限らない。
もし友達になれるようなものがいるのならば……と思って耀は発言したのである。
 質問を受けた黒ウサギはやや困ったような顔色を浮かべるも、彼女の問いに答えた。

「実は数千年前から存在を確認してはいたのですが、わかっていないことの方が多いのです……彼らのいる世界である魔界について少しと、好戦的な者が多いこと、といったところでしょうか?」
「魔界とはまた壮大な響きね」
「はい。またそこも広大な世界で様々な環境が存在するのですが、具体的にあげますと……そこにいるだけでその身が焼ける灼熱の大地、登ろうとした者すべてを凍てつかせる氷の山、侵入してきた者を迷いこませ死へと導く深き森、穢れた水で満たされた海……と、過酷な環境が広がる世界なのでございます」
「…………まるで地獄」
「そう言ってしまっても過言ではないですね。しかし真に恐ろしいのはここから。そんな環境で育った者達が魔界の覇権を握るべく、日々殺し合っていることでしょう。敵と目が合えば即座に戦闘開始。一匹を倒したところでまた次の戦いが始まる、なんてこともざらですね。戦いで疲れたからといって、休む暇なんてものはなく、どれだけ弱っていようとも容赦はしません。狂ったように互いを殺し合い、どちらが強者であるか優劣をつけるのです」
「ルールもモラルもない世界ね。なんて野蛮なのかしら」
「そう、この箱庭の世界などよりもずっと冷酷な世界。しかしだからこそ、と言うべきなのか、その場所で育った強者たちの力は半端ではありません。驚異的な力、人語を理解する高度な知能、超常的な能力など、様々な進化を遂げた者が上級と呼ばれ、自分よりも格下の者達を支配します。これよりも上となる最上級と呼ばれる者達は、これらすらもすべて自らの支配下に置き、自分の国を作り上げて王となるのです」
「王とはまた大きく出たものね。まともな統治ができるのかしら?」

 国。王。
 その言葉が出てきたとき、飛鳥は苦笑いを浮かべて皮肉を言い放った。
 聞けば聞くほど混沌とした世界であるということが浮き彫りになってくるのに、そんなところで統治者を名乗ろう者がいるとは、あまりに滑稽としか言えなかったからだ。

「ええ、本当にその通りです。あんな無礼者たちの集団の王など、他者の思いを笑いながら踏みにじる外道の極みとしか思えません……」

 黒ウサギはどす黒い思いがこもった声でそう断言した。

(……あら?)

 飛鳥は黒ウサギの発言に違和感を感じた。
 まだ出会って一日も経っていない仲なのだが、それでもこれまで見てきた中から黒ウサギがどんな人物なのかは飛鳥もだいたい理解している。
 真面目で礼儀正しく、そして公正。簡単にまとめれば、これが黒ウサギという人物だ。
 そして公私混同はせず客観的に物事を見ることができる。〝フォレス・ガロ〟とのギフトゲームのことについても、その事実を異世界からやってきた十六夜達四人のこと、〝ノーネーム〟のことと分けてそれぞれ判断、評価することができていることからそれは明らかだ。
 その黒ウサギが、ここまで魔の眷属たちを酷評するというのはいったいどういうことなのだろう。
 そのことに、飛鳥は疑問を持たずにはいられなかった。

「ねぇ、黒ウサギ……その魔の眷属たちだけれど……いったい、どんなことをしてきたの?」

 遠慮がちに訊ねかける飛鳥。
 最初はためらうように俯き黙っている黒ウサギだったが、意を決して重い口を開く。



「……侵略と殺戮です」



 二人の表情が、一瞬で凍り付いた。
 時が止まってしまったかのように飛鳥と耀は動きを止め、信じられないものを見るような目で黒ウサギを見つめる。

「……侵略? 殺戮?」
「……ギフトじゃなくて?」
「ええ。ギフトゲームの景品や、ギフトそのものにヤツらは見向きもしませんでした。いえ、正確に申しあげれば、『ゲームをすべて無視して、力ずくで奪い去っていった』のです。ただヤツらはこの世界にある広大な領土、そして〝奴隷〟として扱える人材、ギフトを攫うためだけに、異世界からやってきたのです……邪魔者はすべて、排除するという意向で」

 衝撃的な事実に、飛鳥も耀も絶句するしかない。
 この世界へとやってきた四人は皆、普通の人間にはあり得ないような特殊な力が備わっているが、それすら霞んでしまいかねないようなものがここにはありふれている。
 幻想世界でしか会えないような幻獣、神々。さまざまな姿形をした生き物たちから、魔法や妖術による現象、呪いといった類のものがかけられた物質。
 現実世界の誰もが夢見るようなファンタジーを敷き詰めたこの楽園ともいえる場所を、ヤツらはただの『領土』と『奴隷』、『物資』があふれる場所としか見做さなかったのだ。
 そして。異世界からやってきたよそ者であるにも関わらず、ヤツらは何のためらいもなく人々を殺し回ったのだという。
 もはやそれは異常としか……もう言えなかった。

「そしてそれ以上に卑劣なのは……ヤツらがこの箱庭の住人をたぶらかし、罪深き闇の領地へと引きずり込んだことです」
「引きずり、こんだ?」
「白夜叉様もおっしゃっていましたが人は、魔を潜在的におそれます。その力に脅威を感じ、その存在に恐怖する、それが普通なのです……ですが……時として人はその魔に魅入られます」

 言葉にするのもつらい、というように黒ウサギは暗い口調で口を動かし続ける。

「無数にある小さな次元の穴から最下級の者達を送りつけ、遭遇した者達を甘言で惑わせていき……そうしてヤツらのもつ強大な力に、一部の力を持たぬコミュニティ達は魅了させ、堕落させていったのです」

 その声は魔の眷属への憤怒、憎悪、嫌悪……そしてそれから起こったであろう悲劇への悲しみで溢れ、震えていた。

「ある日、彼らは他のコミュニティとギフトゲームを持ちかけました。互いのコミュニティを賭けた総力戦ですが、誰がどう見ても勝ち目のないあまりに無謀な戦いです。しかし相手側は追いつめられて自棄になっているのだろうと深く考えず……これを承諾してしまったのです」
「……それが、地獄の始まりだったのね」

 はい、と飛鳥の声に相槌を打つ黒ウサギ。
 続けて彼女は口を動かしていく。

「そこから始まったゲームはまさに一方的な虐殺。押し寄せる大量の魔の眷属は強大で、どこのコミュニティも対抗などできず……彼らのすべてが、狂った笑い声とともに目の前で引き裂かれていきました。仲間も、友も、誇りも……彼らの命さえも」

 突如として箱庭を襲った、殺戮の嵐。
 ただ、ゲームをして娯楽に興じていただけ。
 そうして平和に過ごしていた者達にとって、それは如何なるほどの恐怖であったか。
 風を吹き荒らす者達にとってそれは喜劇のようだったのかもしれない。そうして快楽を得ていたのかもしれない。
 だが、それに巻き込まれて起きた惨劇は、どれほどの悲しみを多くの者達に与えていったのだろうか。

「……ごめんなさい。つらいことを言わせてしまったわ」
「いいえ。実際に私が経験したことでもありませんし……こちらこそ申し訳ないです。御二人をご不快にさせてしまいました」

 互いに頭を下げ謝罪する二人。
 それを見た耀は、ふふっと表情をほころばせた。

「黒ウサギって、ホントにこの世界が好きなんだね」
「YES! この場所も、ここに住んでいる心優しい人達も、皆大好きです! ギフトゲームという唯一のルールを遵守し、勝者には栄光を、敗者には激励と称賛の言葉をかける者達が、この世界には集いますから。過去にいがみ合う者達であったとしても、全力で競い合った後は結果によらず皆称えあう、それがこの世界の住民たちなのです!」

 誇らしげに、目を輝かせて黒ウサギは絶賛した。
 彼女は二百年近い年月をこの場所で過ごし、そしてその生の中で多くの者達を見てきた。
 観客席から観客として、あるいはギフトゲームの中で審判として、ゲームの参加メンバーとして、これまで幾度となくあらゆる視点から彼女はこの世界と住民たちを見てきたのだ。
 だからこそ、わかる。
 だからこそ、確信できる。
 だからこそ……

「だから……この箱庭の世界は、人はすべて、黒ウサギの誇りと言っても過言ではないのですヨ!」

 彼女は胸を張って、この世界を知らぬ少女たちにそう宣言できるのである。

「……ますます明日のゲームが……ううん、明日からのこの世界での生活が楽しみになってきたね」
「ええ。おかげでちょっと興奮気味よ。今夜は眠れるかしら?」

 先ほどの陰鬱げな顔から打って変わって満面の笑みを浮かべる黒ウサギ。
 それを見た飛鳥は内心ほっとしながら、彼女につられて笑みを浮かべた。

「ところでところで御二人様。こうして裸のお付き合いをしていることですし、よかったら黒ウサギも御二人様の事を聞いてもいいですか? ご趣味や故郷のことナド」
「あら、そんなもの聞いてどうするの?」
「それはもう、黒ウサギの好奇心というやつでございますヨ! ずっとずっと待ち望んでいた女の子の同士、黒ウサギは御二人様に興味津々でございます♪」
「そうね。これから一緒に生活する仲だもの。障りない程度ならかまわないわよ」
「私はあまり話したくない。でも質問はしたい。黒ウサギには興味ある。髪の色が桜色になるなんて、ちょっとカッコイイ」
「あやや、黒ウサギってばカッコイイですか?」
「それなら私も気になっていたところよ。ならお互いに情報交換、ということでいいかしら」

 今日から同士、されどまだ知り合って一日と経っていない三人の娘たち。
 しかし互いに惹かれるものを持つ彼女たちは、黒ウサギの提案に賛成の意を示し。しばし湯に浸かって歓談を続けるのだった。 
 

 
後書き
次回予告(嘘)!!

 Secret Mission1 ~美しき肢体~

 ~三人の誰にも気づかれることなく風呂場に潜入せよ~


 そう、次回こそ! 次回こそは魅惑のボディと未発達ながらけしからん妖美さを持つロリボディを拝むことができるのだフハハハハ 『ダァーイ』 ハ 【ザシュッ!!】 
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