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問題児と最強のデビルハンターが異世界からやってくるそうですよ?

作者:Neverleave
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Mission4・① ~白い夜叉からの試練~

 
前書き
本日はあの合法ロリキャラ登場。
あいつとダンテ一行が対峙したらどうなるかな?

そんなことを想像してニヤニヤしながら書きました(気持ちわるっ)

満足できる出来ならいいですな。どうぞ 

 
 日が暮れたころに噴水広場でダンテ達と黒ウサギ達は合流した。
 最初こそ機嫌よさそうに四人と出会った黒ウサギだったが、彼らから〝フォレス・ガロ〟とのギフトゲームを行うという話を聞いたときには仰天。そして話を聞くたびにウサ耳が逆立ち怒りが募っていく。

「な、なんであの短時間に〝フォレス・ガロ〟のリーダーと接触してしかも喧嘩を売る状況になったのですか!?」「しかもゲームの日取りは明日!?」「それも敵のテリトリー内で戦うなんて!」「準備している時間もお金もありません!」「いったいどういう心算(つもり)があってのことです!」
「聞いているのですか四人とも!」

「「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」」

「黙らっしゃい!!!」

 口裏でも合わせていたかのように四人は同時に同じ言い訳を放つ。
 もちろん黒ウサギは大激怒である。

「おいダンテ。おまえがさっさと来ないから終わっちまったぞ冒険が」
「文句なら俺らにつっかかってきたあのバカに言ってくれイザヨイ。むしろ俺はおめーが羨ましいよ、美人のウサちゃんと一緒にお散歩なんてよ」
「それもそうだな。悪かったダンテ、ここは黒ウサギの胸タッチで許してくれ」
「OK、そういうことならチャラにしといてやる。というわけでウサちゃんよろしく」
「本気で怒りますよ御二方ッ!!」

 いったいどこから取り出したのだろう、ハリセンを手に黒ウサギはダンテと十六夜の両者をはたこうとする。
 しかし十六夜はそのまま叩かれたものの、ダンテはそれを軽く避けてしまい、しかも胸へとその手を伸ばしてきた。間一髪で避けられたものの、あと少し反応が遅れていたら黒ウサギの貞操はこの変態銀髪野郎にもっていかれるところである。
 加えて叩かれた十六夜は一切痛がっておらず、ヘラヘラと笑ったままだからタチが悪い。むしろ叩いた黒ウサギの方がイラついてしまった。

「あーくそっ、あと少しでタッチできたのに!」
「触らせないと言ってるでしょうが! これまで二百年守り続けてきた黒ウサギの貞操を奪うなんてとんでもないのですよ!」
「俺も手伝うぞダンテ。あんな大口叩いた手前、自分が傍観するってのは性に合わねーからな。つーか俺にも触らせろ」
「そいつはいいなイザヨイ。まずは俺が右の胸。おまえは左だ、いいな?」
「よし!!」
「なにがよし、ですか御二方ァァ! なんでそういうことになるんですかもぉ―――――――――――――――――ッ!!」
「ヤハハハハハハハハハハ!!」
「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」

 どこまでも言うことを聞かない異世界の問題児に、とうとう黒ウサギは涙目になって叫ぶ。
 その声に混じってダンテと十六夜の爆笑が響く。それぞれ一人ずつのときもそうだが、二人が一緒にいるときは相乗効果でもう手がつけられない。兄弟なのではないかと疑うほど息がぴったりなのだ。
 数々の問題を瞬く間に起こしていくそれは、まさに向かうところ敵なしの巨大戦艦、『恐れ知らず(ドレッドノート)』の如し。
 ちなみに飛鳥と耀はもうすでに慣れてしまったのか完全に無視を決め込んでいるし、初めて二人のタッグを目の当たりにしたジンはポカンとしていた。

「笑ってる場合ですか!! それよりもゲームです、この〝契約書類(ギアスロール)〟によれば得られるものは自己満足だけなのですよ!?」

 お冠の黒ウサギは一枚の紙を十六夜に見せつける。
 これは〝主催者権限(ホストマスター)〟を持たない者達が〝主催者〟となってゲームを開催するために必要なギフトなのである。
 そこにはゲーム内容・ルール・チップ・賞品が書かれており〝主催者〟のコミュニティのリーダーが署名することで成立する。黒ウサギが指す賞品の内容はこうだった。

「〝参加者(プレイヤー)が勝利した場合、主催者(ホスト)は参加者の言及するすべての罪を認め、箱庭の法の下で正しい裁きを受けた後、コミュニティを解散する〟――――まぁ確かに自己満足だ。時間をかければ立証できるものを、わざわざ取り逃がすリスクを背負ってまで短縮させるんだからな」
「ようは負けなきゃいいんだろ? あんな図体だけのヤツなんかには負ける気がしないね」
「図体だけって……」

 〝契約書類(ギアスロール)〟の内容を読み上げる十六夜に、ダンテは全く怯むことなく言い返して見せる。
 その発言に、黒ウサギはただ苦々しい表情を浮かべるだけだった。
 ちなみに飛鳥達のチップは〝罪を黙認する〟というものだ。それは今回に限ったことではなく、これ以降もずっと口を閉ざし続けるという意味である。

「でも時間さえかければ、彼らの罪は必ず暴かれます。だって肝心の子供達は……その、」

 黒ウサギは言いよどんだ。彼女も〝フォレス・ガロ〟の悪評は聞いていたのだが、そこまで残虐なことを行っているなどとは思ってもいなかったのだろう。
 人質を取り、なおかつその子供達を攫ったその日に殺しているなどと。そんなことが、箱庭の中で行われていたなどと、考えたくもなかったのだ。

「そう。人質はすでにこの世にいないわ。その点を責め立てれば必ず証拠は出るでしょう」
「だけど、そんなの待っていられない。だろ?」
「ええ。あの外道を裁くのに、一秒も時間なんてかけたくないわ」

 飛鳥の言葉を、ダンテが付け足す。
 箱庭の法はあくまで箱庭都市内でのみ有効なものだ。外は無法地帯になっており、様々な種族のコミュニティがそれぞれの法とルールの下で生活している。そこに逃げ込まれては、箱庭の法で裁くことはもう不可能だろう。
しかし〝契約書類(ギアスロール)〟を使えば話は別。
ここで飛鳥達がゲームに勝てば、強制執行が行われる。どれだけ逃げようとも、強力なギフトでガスパーを追いつめることができるのだ。

「それにね、黒ウサギ。私は道徳云々よりも、あの外道が私の生活範囲内で野放しにされることも許せないの。ここで逃がせば、いつかまた狙ってくるに決まってるもの」
「ま、まぁ……逃がせば厄介かもしれませんけど」
「僕もガスパーを逃がしたくないと思っている。彼のような悪人は野放しにしちゃいけない」

 ここで飛鳥やダンテだけでなく、リーダーであるジンも同調する姿勢を見せてきた。こうなってはもはやどうしようもない。
 黒ウサギは諦めたように頷いた。

「はぁ~……。仕方がない人達です。まあいいデス。腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。〝フォレス・ガロ〟程度なら十六夜さんが一人いれば楽勝でしょう」

 黒ウサギは、至極真っ当な評価をしていた。
 確かに現在拡大しつつあるコミュニティであるが、それでもこの低層の区域でのみの話だ。
 実際に戦力となる人間がいたとしても、大したことはない。
 それこそ、おそらく全員が束になったとしてもこの十六夜一人にすら勝つことは出来ないだろう。
 黒ウサギは見た。世界の果てで、この少年が『神格を持つ蛇』を一蹴してみせた、その光景を。
 一方で〝フォレス・ガロ〟はといえば……所詮は烏合の衆である。〝神格〟を持つ相手に勝つことなどできはしないのだ。
 つまり、もう十六夜が味方にいるというだけで勝敗など決したも同然。

 だったのだが。

「なに言ってんだよ。俺は参加しねぇよ?」
「おう、すんなすんな。これは俺らでやるからよ」
「当たり前よ」

 フン、と鼻を鳴らす飛鳥と十六夜。しかもダンテまでもが十六夜の参加を拒否したのだ。
 これにはさすがに驚き、黒ウサギは慌てて二人に食ってかかる。

「だ、ダメですよ! 御三人はコミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しないと」
「そういう話じゃあないんだよウサちゃん。なぁイザヨイ?」

 しかしそれをダンテは片手で制し、後を十六夜に振る。
 十六夜は黒ウサギに向かって真剣な顔をして、まっすぐ目を見据えて口を開いた。

「いいか? この喧嘩はコイツらが()()()。そしてヤツらが()()()。なのに俺が手を出すのは無粋だって言ってるんだよ」
「あら、二人ともわかってるじゃない」
「…………ああもう、好きにしてください」

 丸一日振り回され続けて疲弊した黒ウサギは、もう何かを言い返すことができるほどの気力もなかった。
 どうせ失うものは無いゲーム。もうどうにでもなれと思いそのまま肩を落としたが……


「好きにしていいのか? じゃあ遠慮なく、まずはキスからでよろしく」
「あ、ずりぃぞダンテ! 次俺な!」
「だからもう許さないと申しておりますでしょうがァ――――ッ!!」

 スパーン、と。ハリセンで何かを叩く小気味よい音が、噴水広場で二回響き渡った。


********


「まっ」
「待ったなしですお客様。うちは時間外営業は行っていません」


 青い生地に、二人の女神が向かい合う旗の立つ商店の前で、黒ウサギ達は立ち往生していた。
 ここは箱庭の東西南北に商店を構える超大型商業コミュニティ〝サウザンドアイズ〟の支店前。この支店に、ダンテ達はとある理由から立ち寄ることとなった。
 それは、ギフトの『鑑定』である。
 明日に〝フォレス・ガロ〟とのギフトゲームが差し迫ったダンテ達は、その勝負に向けて、という意味合いも兼ねて自身のギフトを鑑定してもらうこととしたのだ。
 鑑定とは文字通りの意味であり、自分のギフトがいったいどのようなものか、また自分のギフトがいったいどこから由来して出てきた物なのかを調べるのだ。
 それによって自身のギフトについてよりよく知り、今後の戦闘に役立てるのだという。
 また、どうやら十六夜がどこぞの修羅神仏である蛇を相手に喧嘩を挑んで、水樹の苗というギフトをもらったらしいから、それも観てもらうとのことだ。

(俺もう知ってるから別にどうでもいいんだが……まぁ、いいか。ホームで一人でいたってどうせ暇だしな)

 ダンテはというと、どちらかといえばこのことにあまり乗り気ではない。
 他の三人はともかく、ダンテは自分の力の由来を知っているのだからそれもそうだろう。
 しかし、だからといって他にやることも何もないのだから仕方がない。
 ダンテは三人と同じく、水樹の苗を抱える黒ウサギに連れられて、〝サウザンドアイズ〟の支店にまで赴いたのだが……

「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、全くです! 閉店の五分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!? これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」

 ……この通り、コミュニティの店員にかなり冷遇されているのである。
 コミュニティの名がないことと旗がないことが、これほどまでに大きなハンデになるとはさすがのダンテも予想していなかった。
 確かに名前も旗もないというのに相手を信頼するというのは無理がある。このように商業コミュニティからも疎まれてしまうのは仕方のないことかもしれない。
 とはいえかなりシビアな環境だ。このコミュニティは本当にこれからが心配になってくる。
 ほとんどの支払いを全部ツケでやっているダンテは、自分のことを棚に上げてそんなことを思った。
 そんなわけで黒ウサギは店と店員の前でキャーキャー喚いているわけなのだが、そんな彼女を店員は冷めたような目と侮蔑を込めた声で対応する。

「なるほど、〝箱庭の貴族〟だるウサギの御客様をむげにするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
「…………う」

 一転して言葉に詰まる黒ウサギ。しかし十六夜は何の躊躇いもなく名乗る。
 どうでもいいことだが、店番の女の子はあんな仏頂面していなければよっぽどの美人なのにもったいないことだ、なんてことをダンテは心ひそかに考える。

「俺たちは〝ノーネーム〟ってコミュニティなんだが」
「ほほう、ではどこの〝ノーネーム〟様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」

 ぐ、っと黙り込む十六夜。
 なかなかの嫌がらせをやってくるものだ。確認するも何も、なにせこちらは旗がそもそもないのだから。
 明らかにこの店番の娘は、ダンテ達を店に入れる気がなかった。
 のっけからこんな扱いをされていては、自分たちのギフト鑑定などできるのかどうかも怪しいものだ。
 着て早々に、ダンテはもう帰りたくなってきた。
 退屈から抜け出すためにここへやってきたというのに、こんなところで無駄な時間など使いたくもない。
 これなら修羅神仏が開催しているギフトゲームの一つや二つにでも挑戦しているほうがよっぽど有意義に思えた。
 次に入店を断られたら、黒ウサギに帰ろうと言おう。それが店番の娘にとってもこちらにとってもためになるだろう。
 そんなことをダンテが考えていると、黒ウサギは心の底から悔しそうな顔をして、小声でつぶやいた。

「その…………あの…………私たちに、旗はありま」
「いぃぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ! 久しぶりだな黒ウサギィィィィ!」

 と、そのとき。
 店の奥から雄叫びをあげながら黒ウサギめがけて跳びかかってくる白いものが現れた。
 それは着物風の服を着た真っ白い髪の少女で、黒ウサギはその少女に抱きつかれ(もしくはフライングボディーアタック)、クルクルクルクと空中四回転半ひねりして街道の向こうにある浅い水路にまで吹き飛んだ。

「きゃあ――――…………!」

 ポチャン。そして遠くなる悲鳴。
 十六夜達は目を丸くし、店員は痛そうな頭を抱えていた。

「……Hey girl、この店にはドッキリサービスがあるのか?」
「なら俺も別バージョンで是非」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
「まあ最初はツケになるけどそこをなんとか」
「喧嘩売ってるんですかあなた」

 真剣な表情で頼み込む十六夜とダンテ、そして真剣な表情でキッパリと言い切る店員。
 ……いや、ダンテの言葉は真面目からはほど遠いものだった。すまん、ありゃ嘘だ。

「し、白夜叉様!? どうしてあなたがこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるからだろに! フフ、フホホフホホ! やっぱりウサギは触り心地が違うのう! ほれ、ここが良いかここが良いか!」

 スリスリスリスリスリスリ。

 ……強襲してきた白い髪の幼い少女に、胸元に顔を埋めてなすりつけられるという、なんとも言えない境遇に陥っていた。

「し、白夜叉様! ちょ、ちょっと離れてください!」

 すると黒ウサギは白夜叉と呼ばれた少女を無理やり引き剥がし、頭を掴んで店に向かって投げつける。
 くるくると縦回転した少女を、十六夜が足で受け止めた。

「てい」
「ゴバァ! お、おんし、飛んできた初対面の美少女を足で受け止めるとは何様だ!」
「十六夜様だぜ。以後よろしく和装ロリ」
「おいおいイザヨイ、あんまり女の子に乱暴すんなよ。男は女に優しくあるべきだ」
「そうかい。次からはもっと優しく乱暴してみるさ」
「そうか、ならいい」
「よくないわいたわけが! おんしも誰じゃこのドアホウ!」

 ヤハハ、と笑いながら自己紹介する十六夜と、隣で冗談まじりに語り掛けるダンテ。
 名を訊ねられたダンテは少女を見て、自分も自己紹介しようとしたが……

「……へぇ」

 その白い髪の少女を見て、感嘆の声を漏らす。
 さっきまでわからなかったが、少女からは抑えきれない巨大な力をダンテは感じ取った。
 あんなクレイジーなことをしでかすお転婆な少女だと思っていたが、ダンテの中で評価が一瞬で変わった。
 こいつは、強い。この世界で出会った、誰よりも。
 そして……ただ一人を除いて、今まで対峙してきたどの悪魔よりも。

「……なんじゃ? 私の美貌に見とれたのか、青年よ」
「……ああ。五、六年後が楽しみだなって思ってよ。気を悪くしたなら謝るぜLady。俺はダンテ様だ、以後よろしく頼むぜ」
「ふふん、まあこの美しさなら幼女であっても男が見惚れるのは仕方がなかろうて。許してやるぞダンテよ。あとその服はよく似合っておるよ」
「そいつは光栄なことだね。ありがとよ」

 えっへん、と胸を張ってみせる少女が可愛らしくて、ダンテはクスリと笑った。
 一連の流れの中で呆気にとられていた飛鳥は、思い出したように少女に話しかける。

「あなたはこの店の人?」
「おお、そうだとも。この〝サウザンドアイズ〟の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年齢のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
「オーナー。それでは売り上げが伸びません。ボスが怒ります」

 どこまでも冷静な声で女性店員が釘を刺す。
 濡れた服やミニスカートを絞りながら水路から上がってきた黒ウサギは複雑そうにつぶやく。

「うう…………まさか私まで濡れることになるなんて」
「因果応報…………かな」
『にゃーん』

 悲しげに服を絞る黒ウサギ。そんな彼女をニヤニヤと笑いながらダンテは眺めていた。

「Hum……水に濡れたウサちゃんってのも、これはいいねぇ」
「なっ! ダンテさん何言ってるんですか!」
「おお青年よ、おんしもそう思うか」
「おうよ白夜叉様。普段もそうだけどよ、濡れるとその水の滴る様子ってのがまた妙な色気を出すんだよな、不思議なこった」
「ジロジロ見ながらそんなことを言わないでください! 恥ずかしいです!」
「フフフフフ、まさかこのようなところで同じ志を持つ者と出会うことができるとはな。今日はいい日だ、祝いに黒ウサギにはこの前つくった色気百倍のあのコスチュームを着てもらおうぞ!」
「そいつはいい! 是非そうさせてやってくれ!」
「絶対に着ませんッ!!!!!!!」

 意気投合したかのようにダンテと白夜叉はハイタッチする。
 なんということだろう。
 まさか白夜叉までもがダンテの味方をするだなんて。
 この世の終わりにでも直面したかのような陰鬱な顔で、黒ウサギはその場にへたり込んだ。
 ……哀れなり、〝箱庭の貴族〟。

「まあいい。話があるなら店内で聞こう」
「よろしいのですか? 彼らは名も旗も持たない〝ノーネーム〟のはず。既定では」
「〝ノーネーム〟だとわかっていながら名を訊ねる、性悪店員に対する詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任を取る。いいから入れてやれ」

 ムッ、と拗ねるような顔をする女性店員。彼女にしてみればルールを守っただけなのだから気を悪くするのは仕方がないことだろう。
 女性店員に睨まれながらも、白夜叉に連れられたダンテ達は暖簾をくぐって店の中へと入っていった。


*******


「もう一度自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている〝サウザンドアイズ〟幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女だと認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっております本当に」

 白夜叉の自己紹介に、黒ウサギは投げやり言葉で受け流す。

 白夜叉に連れられ、ダンテ達は店の中にある和風の個室――と呼ぶにはやや広い部屋――の中へと招かれた。
 香のようなものが焚かれているその場所は五人の鼻をくすぐり、心地いい気分にしてくれていた。
 耀は白夜叉の言葉に首をかしげ、訊ねかける。

「その外門って、なに?」
「箱庭の階層を示す外壁にある門ですよ。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に巨大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 黒ウサギはそこで箱庭都市の簡単な上面図を描く。
 異世界から召喚された四人がその図を見ると、七つの層に分かれた箱庭の都市がそこにはあった。
 彼女の所属する〝サウザンドアイズ〟は四桁の門に本拠を構えると言っていたが、そうなると上から四番目の層にあるということか。

「…………超巨大タマネギ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」
「俺はピザに見えるんだが」
「どれだけピザが好きなのよ」
「眼科をおススメする」

 身もふたもない感想を言い合う四人に、黒ウサギはがっくりと肩を落とした。
 ダンテに至っては冗談なのか本気なのかよくわからないことまで言っている始末だ。
 黒ウサギとは対照的に、白夜叉は呵々と哄笑をあげて二度三度頷いた。

「ふふ、うまいこと例える。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番薄い皮の部分に当たるな。さらに説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は〝世界の果て〟と向かい合う場所になる。あそこにはコミュニティに所属していないものの、強力なギフトを持った者達が棲んでおるぞ――――その水樹の持ち主などな」

 白夜叉は薄く笑って、黒ウサギの持つ水樹の苗に視線を向ける。白夜叉が示すのは、十六夜が倒したとかいう蛇神のことだろう。

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ? 知恵比べか? 勇気を試したのか?」
「いえいえ、この水樹は十六夜さんがここに来る前に、蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 自慢げに黒ウサギが言うと、白夜叉は声をあげて驚いた。

「なんと!? クリアではなく直接的に倒したとな!? ではその童は神格持ちの神童か?」
「いえ、黒ウサギはそう思えません。神格ならば一目見ればわかるはずですし」
「む、それもそうか。しかし神格を倒すには同じ神格を持つか、互いの種族によほど崩れたパワーバランスがあるときだけのはず。種族でいうなら蛇と人ではドングリの背比べだぞ……」

 そこでチラリ、と白夜叉はダンテの方を見た。
 彼女はダンテが蛇神を倒したと思っていたらしい。どうやらダンテの持つ実力を、この少女は早々に見抜いていたようだ。
 ダンテはその視線に気づいたが、特に何も言わずにフッと笑ってみせた。
 二人だけのやりとりも知らずに、黒ウサギは白夜叉に訊ねかける。

「白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」

 小さな胸を張り、呵々と豪快に笑う白夜叉。
 だがそれを聞いた十六夜は物騒に瞳を光らせて問いただす。

「へえ? じゃあオマエはあのヘビより強いのか?」
「ふふん、当然だ。あたしは東側の〝階層支配者(フロアマスター)〟だぞ。この東側の四桁以下のコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者(ホスト)なのだからの」

 〝最強の主催者〟――――その言葉に、十六夜・飛鳥・耀・ダンテの四人は一斉に瞳を輝かせた。

「そう……ふふ。ではつまり、あなたのゲームをクリアできれば、私たちのコミュニティは最強のコミュニティということになるのかしら?」
「無論、そうなるのう」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
「全くだな」

 四人はむき出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。白夜叉はそれに気付いたように高らかに笑い声をあげた。

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」
「え? ちょ、ちょっと御四人様!?」

 慌てる黒ウサギを、白夜叉は右手で制する。

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えている」
「ノリがいいわね。そういうの好きよ」
「ふふ、そうか。――――しかし、ゲームの前に一つ確認しておくことがある」
「なんだ?」

 白夜叉は着物の裾から〝サウザンドアイズ〟の旗印――――向かい合う双女神の紋が入ったカードを取り出し、壮絶な笑みで一言、


「おんしらが望むものは、〝挑戦〟か――――もしくは〝()()〟か?」


 刹那、四人の視界に爆発的な変化が起きた。
 四人の刺客は意味を無くし、様々な情景が脳裏で回転し始める。
 脳裏を掠めたのは、黄金色の穂波が揺れる草原。白い地平線を覗く丘。森林の湖畔。
 記憶にない場所が流転を繰り返し、足元から三人を呑みこんでいく。
 四人が投げ出されたのは、白い雪原と凍る湖畔――――そして、()()()()()()()()()()()()()

「……なっ…………!?」
「Wow! こいつはすげぇ!!」

 余りの異常さに、こういった現象に慣れているダンテ以外の者達は同時に息を呑んだ。
 箱庭に招待された時とはまるで違うその間隔は、もはや言葉で表現できる御技ではない。
 薄く薄明の空にある星はただ一つ。緩やかに世界を水平に廻る、白い太陽のみ。
 まるで星を一つ、世界を一つ創り出したかのような奇跡の顕現。
 唖然と立ちすくむ三人とはしゃぎ回る一人に、今一度、白夜叉は問いかける。

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は〝白き夜の魔王〟――――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への〝挑戦〟か? それとも対等な〝決闘〟か?」

 魔王・白夜叉。少女の笑みとは思えぬ凄みに、三人は息を呑んだ。
 十六夜は背中に心地いい冷汗を感じ取りながら、白夜叉を睨んで笑う。

「水平に廻る太陽と…………そうか、()()()()。あの水平に廻る太陽やこの土地は、オマエを表現してるってことか」
「如何にも。この白夜の湖畔と雪原。永遠に世界を薄明に照らす太陽こそ、私が持つゲーム盤の一つだ」
「これだけ莫大な土地が、ただのゲーム盤……!?」
「如何にも。して、おんしらの返答は? 〝挑戦〟であるならば、手慰み程度に遊んでやる。――だがしかし〝決闘〟を望むなら話は別。魔王として、命と誇りの限り戦おうではないか」
「…………っ」

 飛鳥と耀、そして自信家である十六夜でさえ即答できずに返答を躊躇った。
 白夜叉が如何なるギフトを持つのか、それは定かではない。しかし三人が挑んだところで勝ち目がないことだけは一目瞭然だ。
 これほどの威圧感、そしてその実力の高さを示すかのような、この広大で威厳のあるゲーム盤。
 相手にしてしまえば、勝ち目はない。
 しかし、自分たちが売った喧嘩を、このような形で取り下げるにはプライドが邪魔だ。
 しばしの静寂の後――――諦めたように笑う十六夜が、ゆっくりと挙手し、

「まいった。やられたよ白夜叉。降参だ」
「ふむ? それは決闘ではなく、試練を受けるということかの?」
「ああ。これだけのゲーム盤を用意できるんだからな。アンタには資格がある。――――いいぜ。今回は黙って()()()()()()()

 苦笑とともに吐き捨てるような物言いをした十六夜を、白夜叉は堪え切れず高らかに笑い飛ばした。プライドの高い十六夜にしては最大限の譲歩なのだろうが、『試されてやる』とはずいぶん可愛らしい意地の張り方があったものだ。
 白夜叉は、腹を抱えて哄笑をあげずにはいられない。
 ひとしきり笑った白夜叉は笑いをかみ殺して、他の三人にも問う。

「く、くく……して、他の童達も同じか?」
「…………ええ。私も、試されてあげていいわ」
「右に同じ」

 苦笑をかみ殺したような表情で返事をあげる二人。満足そうに声を上げる白夜叉。
 一連の流れをヒヤヒヤしながら見ていた黒ウサギは、ホッと胸をなでおろす。
 〝階級支配者〟に喧嘩を売る新人と、新人に売られた喧嘩を買う〝階級支配者〟なんて、冗談であっても笑うことができないからだ。
 このまま、この問題児たちも大人しく白夜叉の〝試練〟を選んでギフトゲームを行ってくれると、黒ウサギは思った。

「も、もう! お互いにもう少し相手を選んでくださ
「あ、そっちの話はもう終わったか? んじゃ、やろうぜ魔王様?」


 ――――そう。思っていた。


「「「「…………………………は?」」」」


 ――そしてその考えは甘かったのだと、後悔することとなる。


「は? じゃねぇよ。こっちが〝決闘〟を申し込めば、それでいいのか?」

 誰よりも無邪気に、そして凶暴な眼光をその瞳に宿した半人半魔、ダンテが白夜叉に問うた。

「ダ、ダンテ!?」
「なにを言って……」

 飛鳥と耀は、驚愕したようにダンテを見ていた。
 十六夜ですらそれは例外でなかったらしく、目を見開くという彼らしからぬ挙動をとってしまっている。

「……おい、ダンテ。こいつは……」
「ああ、わかってる。サイッコーに強ぇんだろ、このお嬢ちゃんは」

 どうでもいいことのように、ダンテは十六夜からの呼びかけを受け流す。
 そんなことなど百も承知だと言うように、だ。

「ほう。やはりおんしは最初から私の実力に気付いておったか……」
「こちとら女を見る目は確かでね? いい女から悪い女、タフな女からか弱いレディまで全部一目でわかるんだよ……」

 おどけた様子で、冗談を放つダンテ。実際のところはその自身の観点から見た評価によってかなり痛い目にあっているのだが。

「そうかそうか。それはよい目を持っていることじゃのう……して、その目はなんと言っている?」

 ニヤリと口を横に広げて、白夜叉はダンテに問いかける。
 白夜叉本人も、この中で一番に強いのはダンテなのではないかと勘付いていた。
 この空間転移の中でも一人だけ全く動じず、狂喜した様子でこちらを見ていたダンテが只者ではないことは白夜叉も気づいていた。
 しかしそれだけではない。
 ダンテ自身も白夜叉から漏れ出ている凄まじい魔力を感じ取ったように、白夜叉もまた、ダンテの中からあふれ出てくる抑えきれない魔力を感知していた。
 そしてその魔力の禍々しさと凶暴さから、白夜叉も感じた。
 この男は、誰よりも強い。
 この場にいる、誰よりも。
 一族の中でずば抜けての若輩とはいえ〝箱庭の貴族〟と謳われる、黒ウサギよりも、だ。

 普通の者ならば気を失ってもおかしくないようなその威圧と視線を受けて、ダンテは獲物を見つけた獣のように笑って、


「Sweet, Babe!!(イケてるぜ、お嬢ちゃん!!)」


 ゴゥッ!! と。空間が激しく揺れる。

「ッ!!」

 その瞬間、一気にダンテの存在感が巨大化した。
 強大なプレッシャーを全身に纏い、彼の魔力が解放される。
 笑みを浮かべていた白夜叉の表情は一転し、ダンテを信じられないものでも見るかのような目で彼女は見つめた。
 それは、白夜叉だけではなかった。
 十六夜が。飛鳥が。耀が。黒ウサギが。
 その場にいたすべての者が、ダンテに注目する。

「……マジかよ……」
「ダ、ダンテさん……?」

 思わず十六夜は驚嘆の声を、黒ウサギは戸惑いの声を漏らす。
 しかしダンテはそんな二人のことなど、もはやどうでもよくなっていた。
 彼にとって一番大事なのは、目の前。
 人生の中で遭遇した強敵の中でもトップクラスに入るであろう、その魔王だけだった。

(……この気配……もしやとは思っていたが、まさかこやつ……)

 白夜叉は、そんなダンテを観察してある一つの考えにたどり着く。
 それは、この箱庭の世界ではとてつもない事態だった。
 最悪の場合、目の前のこの男を、全身全霊をかけてでも始末しなければならないほどに。

(……どうするべきかの。ここで戦ってやってもよいが、しかし……)

 白夜叉はしばらく考えるようにダンテを眺めていると、やがて思いついたように口を開く。

「ダンテ、おんしが途轍もない実力の持ち主であることはわかった。そしておんしの意思を尊重し、私もおんしと決闘をしてやろうかと思う」
「そうかい。ならさっさとやろうぜ、こちとらもう待ち遠しくてたまんねぇんだ」

 シャドーボクシングをするように拳を振り、背負ったリベリオンに手をかけるダンテ。
 白夜叉はそんなダンテを制し言葉を続ける。

「そう慌てるな、こちらの話を最後まで聞け。しかし、それ以上に私もおんしに興味がわいた。いや、というよりおんしを調べる必要が出てきたのだ」
「……?」
「そこで、だ。すまんが一つ、私からのギフトゲームを受けてほしい。もちろんその褒美も出そう、そして勝てば私がじきじきに決闘をしてやる。どうだ?」
「……Hum……」

 ダンテはそう訊ねられて、少し迷ったように手を口元にやる。
 彼本人としてはさっさと目の前の強敵に挑みたいところではあるのだが、どうにも自分の魔力を見せつけてからの白夜叉の様子が奇妙だった。
 なんというか、先ほどまではこちらを生意気な新参者、という程度にしか見ていなかったのが、危険なものでも見るかのような目に変わっている。
 それが少しひっかかり、ダンテはどうするべきか悩んだのだ。
 やがてダンテは決意したように白夜叉と向き直り、

「いいぜ。受けてやるよ、そのゲーム」

 そう宣言してみせた。
 その答えに満足したのか、白夜叉は先ほどのような笑みを浮かべてダンテを見据える。

「で、ゲームってなにやるんだ? また別の場所でやるのか?」
「そんな面倒なことはせんよ。すぐにここでやってみせよう……どれ、ちょっとこちらまで来てくれ」

 そう言うと、白夜叉は後ろへと下がっていく。
 ダンテはけだるそうに彼女についていくと、しばらくして白夜叉はある程度下がったところで止まる。

「で、なにやるんだよ?」
「なに、大したことではないさ……」

 そして白夜叉は右手を天にかざす。
 一体何をするのかと首をかしげるダンテだったが、次の瞬間彼は驚愕することとなった。


 ――――ヴヴン……――


「――ッ!!」

 ダンテと白夜叉を中心に、広範囲に赤く薄い結界が張られたのである。
 まるで彷徨える怨念が蠢いているかのように不気味な人の顔がその結界には浮かび上がっていた。
 この場で、その結界を知る者はダンテしかいない。

 何を隠そう、これは――悪魔が使う結界なのだから。


「おい、お嬢ちゃんあんた――――」


 ダンテが白夜叉に質問しようとしたその途端。惨劇は起こった。



「オオオオオォォォォォォォォ!!」

 ――どこからか聞こえてきた、何かの叫び声。
 それとともにまるでガラスが破れるように空間が裂け、『それ』は現れた。
 それはまさに、死神のような姿だった。黒い外套に身を包み、大鎌を携えるその顔に肉はなく、ドクロのみ……その目は赤くギラつき、獲物を見据えている。
 瞬く間に、多数現れた『それ』は鎌を振り上げ――


 ドスドスドスドスッ!!!!


 ――ダンテの身体を、串刺しにした。

「いやあああああああああああああああああああああああああああ!! ダンテさん!!」


 黒ウサギの悲鳴が、白夜の空間で響く。
 飛鳥と耀も、あまりに残酷な光景に息を呑み、十六夜はダンテに向かって叫んでいた。
 唯一白夜叉だけは、それを見ても何一つ表情を変えない。
 腕を、足を、胸を、腹を巨大な刃に刺し貫かれたダンテは全身から血を流して硬直する。
 嬉々とした様子で死神たちは串刺しになったダンテを眺めていたが……



「……なに笑ってんだ?」



 ――ふとそんな声が聞こえてきて、死神たちは顔を顰めた。


 ドゴォォォ!!


 一匹の死神は息絶えたはずの銀髪の大男から掌打をくらい、吹き飛んだ。
 そいつは結界と衝突すると全身から砂をまき散らして消滅する。
 他の死神たちは、あり得ないものでも見るような目でダンテを見た。
 一方で本人は、吹き飛ばした一匹から取れたドクロを片手の指先でクルクルと回転させて遊んでいる。
 やがてダンテは、何事もなかったかのように歩き出した。
 全身に、大鎌の刃が突き刺さった、そのままの状態で。
 死神たちは大鎌を握ったままだから、当然ダンテに引きずられるような形になる。
 鬱陶しそうにダンテは死神の一匹を蹴り飛ばすと、その一匹に他の複数体にぶつかり巻き込まれた。
 しがみついていた死神がいなくなったところで、ダンテはそいつらを一瞥してつまらなさそうにつぶやく。

「ヘル=プライドねぇ……こんな雑魚を相手にしろってのか? お嬢ちゃん」
「乗り気にならんか?」

 ポカン、と黒ウサギ達が、そして十六夜までもが目を天にした。
 一方で白夜叉はまるでこうなることを予測していたかのようにダンテに話しかける。
 ダンテはめんどくさそうに死神……ヘル=プライド達を見て、白夜叉に要望した。

「BGMが欲しい。なんかないか?」
「おお、それだったら確かのう……あ、これだ。ついさっき道端で見つけたものじゃが、これでいいか?」

 そういうと懐からカードを取り出した。
 一瞬そのカードが光ったかと思うと、そこにある物が現れる。
 『それ』を見たダンテは嬉しそうな表情を浮かべて近づいた。

「……こいつも巻き込まれてとはねぇ。でもよ、こいつコンセント繋がってねぇぞ、動くのか?」
「心配せんでも動くようになっとるわ」
「へえ、どういう仕組みで?」
「そこは企業秘密とさせてもらおうかの?」
「……はっ、まあ確かに、動くならどうでもいいな」

 それは、ダンテの事務所に置かれているジュークボックスだった。
 ダンテは天高く右手をあげると、嬉々として叫ぶ。

「This party is getting crazy!! Let’s rock!!(イカれたパーティの始まりだ! ハデに行くぜ!!)」

 そして、ダンテはジュークボックスのスイッチを押した。

 カチッ。


 ――――シーン。


 ……………カチカチッ。


 ――――シーン。


 ………………。




「ウラァッ!!」

 ガゴォッ!!

 スイッチを押しても起動しないジュークボックスを、ダンテは思いっきりぶっ叩いた。
 「ちょ、おまっ……」と白夜叉が声を漏らしたが、ダンテは全く知らん顔。
 ガガガ……と不気味な音が聞こえて、やがてジュークボックスは起動すると音楽を流し始める。
 ダンテの好きなジャンル、ハードロックテイストのバックミュージックが流れ始めた。
 音楽に合わせてダンテは足を動かし、テンションをあげていく。

「さてと……踊ろうか、クソッタレの悪魔ども」

 そうしてダンテは、自分に襲い掛かってきたヘル=プライド達に声高に呼びかけた。
 
 

 
後書き
次回はダンテ VS セブンス=ヘルの予定。
もちろんバックミュージックはあの曲で。
次回にご期待ください。

あとお気づきの方もいるかと思いますが、ちょっと一話の台詞と今回の台詞を入れ替えました。
また修正してしまってすいません(;´・ω・) 
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