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フェアリーテイルの終わり方

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幕間 マルシアと妖精
  5幕

 
前書き
 人形姫 と 貴婦人 

 
 やがて廃鉱の暗がりからルドガーたちが出てきた。
 エルは軽快に立ち上がってルドガーに駆け寄った。

「ただいま、エル。大人しくしてたか」
「シンパイしなくてもフツーにしてたもん」

 ルルが鳴きながらルドガーの足に擦り寄った。ルドガーは微笑み、しゃがんでルルの喉を撫でた。


 ローエンとエリーゼのほうは、救出した部下らしき人たちを連れて、マルシアの前へ行った。

「テロリストたちを制圧できたのですね。エリーゼ……さん、ケガは?」
「あ……大丈夫、です」

 傍目にもマルシアとエリーゼのやりとりはぎこちないが、元の顔を取り戻すスピードはマルシアが速かった。

「奥にいるテロリストたちの処理をお願いします」

 部下たちが敬礼して廃鉱へ入って行った。エリーゼが血相を変えた。

「待ってください! 処理って何ですか!?」
「……法に従って行われる刑罰のことです」

 エリーゼは懸命に訴える。アルクノアの彼らは仲間が心配だっただけだと。ローエンも賛同したが、マルシアはぴしゃりと言い返すばかりで、応える気はないのだと知れた。

「それでも、首相なら何とかできるでしょう!?」
「首相だからこそ、国を背負う者の判断をしなければならないのです」

 部下がマルシアに声をかける。出立の時間らしい。マルシアはエリーゼに背を向けて歩き出す。

「ひどいです!! あなたは、そんな冷たい人だったんですね!」

 マルシアは一度だけ立ち止まったが、ふり返ることなく歩き去って行った。







 一行は重い空気のまま、マクスバード/リーゼ港で解散した。

 今日はフェイがルドガーのマンションに泊まりたいと言ったので、エルはルドガーとフェイと3人(とルル一匹)でマンションに帰った。


 ルドガーが夕飯を作る間、エルとフェイはリビングスペースでテレビを観ていた。――観ていたのだが、エルは内容がさっぱり入って来なかった。
 きっと今日の昼の一件があるからだ。

 オトナの世界、妹がいた世界。何もかもが分史世界よりなお遠い世界の出来事に思えた。

「お姉ちゃん」

 前触れなく呼ばれて驚いたが、気づかれないよう頑張って普通に答えた。

「お姉ちゃんもエリーゼみたいに、おばちゃんはツメタイと思う?」
「……よく、わかんない。だって、シュショーはホーリツ守っただけでしょ? それだけでツメタイ人かなんて、エルわかんないもん」
「わたしも、そう、思う。――おばちゃんはツメタイ人なんかじゃない。〈温室〉にいた頃のわたしにずっとお話してくれたおばちゃんが、ツメタイ人なわけない」

 ソファーの下で膝を抱えるフェイが今にも泣いてしまいそうに見えて、エルはそっとフェイの頭を引き寄せた。
 フェイのおでこがエルの膝に凭れかかる。

「〈妖精(わたし)〉はエレンピオスの兵器。エライ人がたくさん〈妖精(わたし)〉を欲しがった。でも、マルシアのおばちゃんはちがった。ちがったの」

 だけど、とフェイは胸の上で重ねた手を解いた。

「今のエリーゼには言えない。今のエリーゼ、ちょっと前のわたしとおんなじだもん。自分の思い通りにならないのがくやしくて、にくらしくて、とにかく近くの相手を一番傷つけるコトバで攻撃しないでいられない。わたしがミラにお姉ちゃんを奪られたくなくて、そうしたみたいに」

 フェイはエルの膝に深く頭を預けた。

「エリーゼも早く気づいてあげてほしい。〈ルナ〉はおばちゃんの一番優しい部分で出来てるんだから」 
 

 
後書き
 エリーゼEP3~4は結構好きです。子供の子供らしい考え方、大人の大人らしい考え方が凝縮されていて(*^^)v
 心境が変化したオリ主がエリーゼとマルシアをどう見るかを通して、成長したオリ主を描写できてるといいナァと思います。
 何度か作中に出しましたが、オリ主にとっては数少ない〈外〉の人で〈優しくしてくれた人〉がマルシアです。なのであえてエリーゼに感情移入しやすいエリEP3で逆の考え方を言わせてみました。この歳になると、両者の言い分というか、心情がどういうものか両方分かってしまって辛いです。 
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