誰もいなくなった
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三章
「そうあるべきですが」
「警察かね」
「警察員の数を増やし装備や設備を充実させましょう」
彼は現実的な政策を提案した。
「そして彼等が街の治安を維持すべきです」
「市の予算と労力を使ってだね」
「はい、是非」
「駄目だよ、そうしたら警察官に迷惑がかかるじゃないか」
市長はここで有り得ない返答を出した。
「それに街の労力もかかるし予算も必要じゃないか」
「こうした時にこそ予算を使うべきでは」
役人は市長の返答に心の中で唖然としながらもまだ言った。
「自警団ではなく」
「だから労力も使うし予算もかかるから」
「そんなことをしていては」
「いいじゃないか、それで」
市長は働きたくなかった、このことが本音だった。
しかし働くことはしていた、そのことは言った。
「私も忙しいんだよ、他の街との交渉や企業の誘致で」
「それも健全な街の運営次第ですが」
「彼等がいれば大丈夫だよ」
自警団のことに他ならない。
「だから心配いらないよ」
「市長、それでは」
「君達の心配は無用だよ」
それも全くだというのだ。
「街の治安はよくなっているんだからね」
「そうですか、それでは」
「もう」
心ある市民も役人達も唖然とする他なかった、この時点で街の将来に暗雲を感じる者が出て来た。そして自警団に恐ろしいものを見出した。
成都を擁護しようとした者も徹底的に糾弾された、このことには擁護した者の友人達が市長に対応を要請した。
「彼は何も罪を犯していません!」
「しかし自警団は彼の家を荒らし罵倒の限りを尽くしています!」
「彼等を止めて下さい!」
「すぐにそうして下さい!」
「前向きに善処するよ」
市長は如何にもやる気なく返答した。
「そういうことでね」
「あの、今すぐにそうしてくれないと」
「本当に酷いことになってますから」
「罪のない人を攻撃する連中が自警団なぞとんでもないことですよ」
「どうにかして下さい」
「だからわかったよ」
市長はこう言うだけで何もしなかった、この者は攻撃に耐えかねて街を出た、これでまた自警団の面々は喝采を叫んだ。
次第に市長、自警団への不信と疑惑は高まっていく、挙句には街の商店街に街が出来た頃からある闇市からはじまった場所にさえだtった。
出来は叫んだ、釘を何十本も打ち込んだバットを手にして。
「闇市なんか街にいるか!」
「そうだ、闇市は街に不要だ!」
「こんなもの潰せ!」
「街から追い出せ!」
自警団の面々は口々に叫んで商店街を荒らしだした、それを見て商店街の住人の一人がこう言ったのだった。
「市長が決めていないのに出て行け?おかしいな」
「そうだよな、何でだ?」
「あいつ等市長じゃないだろ」
「まして警察でもないぞ」
ここで他の商店街の人達も気付いた。
「それで何で言うんだ?自警団が」
「急に言い出したな」
「ひょっとして連中の暴れる口実か?」
「自分達が気に入らない連中だからか?」
商店街を攻撃するのではと気付いたのだ、それで。
「自警団は間違っているぞ」
「あの連中こそ街の癌だぞ」
「連中をこれ以上放っておくと街が駄目になるぞ」
「ああ、危険だな」
「何とかしないとな」
それで彼等も市長に直訴した、商店街を守る為にも。
「あれでは威力業務妨害ですよ」
「正直迷惑してますから」
「すぐに何とかしてくれません?」
「頼みますから」
彼等もまた直訴した、だが。
市長はここでもだ、こう言うだけだった。
ページ上へ戻る