魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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傘が赤くて白い斑点があって柄には可愛い目があってブロック殴れば生えてきて結構速めに動いて食べたら大きくなる他にも必死の紫や1UPの緑もあるモノ
†††Sideシャルロッテ†††
「さてと、それじゃあ早速始めますか!」
暖かい春の陽気に若干眠たくなりつつも、気合を入れてそう告げる。私はエプロンをつけて後ろ髪を結いながら、この場に居るなのはとフェイトとはやての3人を見回す。
「「「うん!」」」
なのは達もエプロンをつけつつ頷くのを見ながら、「我が手に携えしは確かなる幻想」そう詠唱。“英知の書庫アルヴィト”の蔵からいろんな最高級の食材を取り出す。もちろん、今は契約のために出かけていて居ないルシルにもちゃんと許可は取ってある。
「どれでも使っていいってルシルからも許しは貰ってあるから、すごい美味しいのを作ってあげよう!」
「「「「おー!!」」」」
右拳を高々に上げてテンションを高める。そして私たち4人はそれぞれに食材を手に取って、一斉に調理を開始する。
「それにしてもなかなかええアイデアやなぁ」
「うん。こういうのも悪くないよ」
「これってシャルの提案なんだよね・・・?」
「ん? そうだよ。まぁルシルに相談して決定したようなものだけど」
トントンと包丁で食材を切る音に混ざっての会話。
「スバル達の魔導師ランク昇級祝いに、私やなのはたち隊長の手料理を振舞う。そういう機会もあっていいかなぁって。で、それをルシルに相談したら、好きなだけ食材を使っても良いってことになってね~♪」
取り出したクエを捌きつつそう答える。そういえばルシルも嬉しそうだった。だからこんな高級食材の使い放題な事も許してくれたんだろう。
「そうなんやぁ。でも残念やな、ルシル君がおらんのは」
「その分、私たちが精いっぱいの手料理を作ればいいよ」
「そうだね。あ、でもお昼過ぎには帰ってくる予定だし、もしかしたら少し早く帰ってくるかも。それなら一緒にお祝い出来るよ」
それから2時間くらいかけて4人で料理を作って、こっそりと訓練場に運ぶ。何故なら、外でちょっとしたピクニック気分を味わうため。市街地やら森やら何でも再現できるあそこを利用しない手はない。お昼休みいっぱいを使ってのフォワード魔導師ランク昇級お祝いパーティ。全員参加とはいかなかったけど、それでも結構な人数は揃った。
「えー、それではスバル・ナカジマ二等陸士、ティアナ・ランスター二等陸士、エリオ・モンディアル三等陸士、キャロ・ル・ルシエ三等陸士の魔導師ランク昇級を祝って・・・」
今回も部隊長のはやてがジュース入りコップを片手に音頭。さすがに慣れてきた感がある。
「かんぱーい!!」
それから始まる楽しい楽しいお祝いパーティ。のはずだった。
†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††
「ふわぁ~・・・。眠い・・・」
今日も今日とて大して意味のない契約を執行し終え、ミッドへと戻ってきた。
「まったく、どうしてあんなしょうもない事で界律の守護神を呼びだすのか意味が解らないな」
守護神の力が必要ない小さな事にでも呼び出される始末。なんというか作為的にも感じ取れる契約ばかりだ。
(このまま人間として死ぬまで続くんじゃないだろうな・・・)
そう思うと気が重くなる半面、それでもいいかと思えてしまう自分もいる。シャルがいて、みんながいて、同じ時間を生きる。
「フッ、何を馬鹿な事を・・・。もうそんな事は望まないと決めておきながら・・・」
イレギュラーはイレギュラーらしく、大人しく消えることこそ我らが摂理。
「・・・あー、そう言えば今日だったか、スバルたちの昇級祝いは・・・。えっと、今の時間は・・・12時少し前、か。急げば間に合うかもしれないな」
シャルだけでなくフェイトやなのはにはやてが手料理を振舞うということになっている。それを味わえないのはかなり痛い。彼女たちの作る料理も本当に美味しいからな。
「よし、それなら急いで帰ろう」
レールウェイを乗り継いで、隊舎のあるミッド中央南駐屯地内A73区画を目指す。それにしても、やはり交通の便が若干悪い。急いでいる場合はそれを思い知る。それから30分くらいかけ、ようやく隊舎に到着した。すでに始まっているであろう昇級祝いパーティのおそらく会場と思う食堂を目指そうとした時、慌ただしく走る足音が近付いて来た。
「セインテスト君! よかったぁ、予定より早く帰ってきてくれて!」
「ん? シャマル、ザフィーラ。ただいま。にしてもそんなに慌てて一体なに――」
「それより早く来てセインテスト君! 大変なのよ!」
かなり慌てた様子のシャマルと普段通りに見えるザフィーラが駆け寄って来た。挨拶をするも、こちらの話を聞けるような余裕すらないシャマルに、嫌な予感が走った。
「何があった・・・?」
「いいから急いでセインテスト君!」
シャマルとザフィーラに案内された訓練場へと赴くと、「・・・」信じたくはない光景がそこにはあった。
「こういうことなのよぉ・・・」
「すまぬ。我らだけでは手に負えんのだ」
「「ルシル!」」
「「ルシル君!」」
「よかったぁ! ルシルさんが来てくれた!!」
あまりの大音量で呼ばれたために耳を塞ぐが、その効果なく一瞬気を失いかけた。
†††Sideルシリオン⇒フェイト†††
こんなことになってしまった私たちを救える唯一のルシルが放心した。
「ちょ、あかん! ルシル君がフリーズしてもうた!」
「お、起きてルシル君! 処理落ちしてる場合じゃないよルシル君!」
はやてとなのはの声の大きさの原因もあると思う。私たちは普通に喋っていても、ルシルにはきっととんでもない音量な筈だ。その証拠にルシルや、耳を押さえているシャマル先生たちの髪が空気の振動で揺れているし。
「あー、なんだ。今日の私のシフトは午後からで、シャマルの手伝いだったな。さぁ行こう、シャマル。私は何やら夢を見ているようだ。ザフィーラとティアナとギンガも大変だっただろう? 今日はもう休むといい」
「ええっ!?」
「なに・・・?」
「「ルシルさん!?」」
「「「「現実逃避ぃぃぃーーーー!?」」」」
「「「「「っ!!」」」」」
「あ、倒れた」
パタリと倒れたルシルとシャマル先生とザフィーラ、そしてティアナとギンガ。今のはまずい気がする。普通に喋っていても結構キツそうにしていたし。それなのに今のツッコミ。半ば叫んでいるから、今まで以上の大音量だ。
「ちょっとみんな! 今の私たちの状態で叫ぶと、変わっていないルシル達には音響兵器並の音量だよ!」
今さら遅いけど、これ以上なのは達に叫ばせて、ルシル達が旅立たないようにしないといけない。次に今のツッコミ音響攻撃を受けたら、ルシルたちは今度こそ間違いなく逝ってしまう。それからルシル達が目を覚ますように努力する私たち。その甲斐もあって、2分くらいで起きてくれた。
†††Sideフェイト⇒なのは†††
気を失っていたルシル君が起きてくれた。
「それで、あのね、ルシル君。今がどういう状況か・・・その・・・」
「解っている。解っているからこそ頭が痛い」
ルシル君が私たちを“見上げ”ながら、頭を押さえて苦悶の表情を浮かべている。
「・・・君たちがこうなった原因は何だ?」
そう言いつつも犯人が判っているとでもいう感じで、ある1人に視線を向けた。
「私・・・かな、やっぱり。でも、わざとじゃないよ。完全に事故なんだよ?」
ルシル君の視線に耐えられないみたいで、明後日の方に顔を向けるシャルちゃん。
「はぁ。で、こうなった原因は判っているのか、シャル? それが判らないと、私でもどうすればいいか判らないんだが」
「えっとー・・・。う~ん~・・・と。・・・あ、もしかしてアレが原因かも・・・」
「一体何をしたんだ。こんな巨大化するような事になる原因って・・・」
そう、ルシル君の言う通り私たちはいま巨大化してしまっている。巨大化したのはシャルちゃんと私を含めた前線メンバーにロングアーチのはやてちゃん、リイン。そしてヴィヴィオも被害を被っている。ちなみに被害を免れた隊員たちにはもう隊舎に戻ってもらっている。この場に残っていても仕方がないし・・・。まぁ例外としてティアナとギンガは残っているけど。
「その・・・ね。料理に使った食材が原因かもってことなんだけど・・・」
「食材・・・・? 蔵にあるただの食材にそんな巨大化するような・・・・あ」
ルシル君の表情が凍った。
「もしかしてその食材というのは、小柄で小太りで団子鼻で立派な髭があって、赤シャツ青オーバーオール着て、Mのロゴ入り赤帽子を被って、少し影の薄い緑の弟がいて、ただの配管工のクセしてギ〇ス記録を楽に更新できるほどの運動能力を持っていて、冒険家にスポーツプレイヤーにレーサーに医者など何でもこなし、赤ん坊の頃から恐竜?の背に乗って大冒険した、生まれつき超人で、最初はタルを投げてくるゴリラとバトって、次は悪役で次はカメの大王に毎回攫われるお姫様を救い出しては、それを何度も繰り返し、自称ライバルの幼馴染に家を乗っ取られたり、大乱闘を巻き起こしたり、昨日の敵は今日の友とも言えるようなパーティに参加したり、時にはペラッペラな紙みたいになって、見た目がアレなくせにカエルやタヌキやバニーやミツバチやペンギンなどのコスプレして、マントを羽織るだけで空を飛んで花を取ったら手から火の玉を出して、☆を取ったら無敵になって、風船を取ったら体が膨らんで風船みたいになったり、岩になったり、レインボーになったり、オバケになったり、スケスケになったり、氷になったりと完全に人間離れしたとんでも能力を有する反則存在なのに、カメに噛まれたくらいでDeathる男のいる世界にある、傘が赤くて白い斑点があって柄には可愛い目があってブロック殴れば生えてきて結構速めに動いて食べたら大きくなる他にも必死の紫や1UPの緑もあるあの食材・・・あのス〇パーキノコを使ったのか・・・?」
一息で言いきったルシル君。それを聞いたみんなが拍手している。でも油断していたのかルシル君はその拍手で起きた音と暴風で吹っ飛ばされた。
「あ~~~~・・・うげっ!」
「っ! ごめんルシル!」
何とか宙で受け止めようとしたフェイトちゃんの手の、指の間をすり抜けて、受け身を取ることなく地面に落ちたルシル君。それからシャマル先生たちに介抱してもらって回復してみせた。今さらだけど、ルシル君の不死身説は本当なのかもって思うよ・・・。
「で、シャル。使ったんだな? 貴重すぎる、研究用として取り込んでおいたあのスーパ〇キノコを」
首にギブスを付けたルシル君がシャマル先生に支えられながらシャルちゃんに問い質す。
「えっと・・・」
「使ったんだな?」
「使ってない・・・」
「使ったんだな? 研究用保管区画にあるはずのあのスー〇ーキノコを」
「使ってません」
「使ったんだな。あの区画には手を出すなと随分前から言っていたのに」
「使ってないのです」
「使ったんだよな」
「使っていないであります、サー」
「怒らないから♪」
「使いましたぁ☆」
「馬~~~鹿者ぉぉぉぉっ!」
「嘘つきぃぃーーっ! 怒らないって言ったのにぃぃぃ!」
シャルちゃんの大声に、パタリとまた倒れるルシル君たち。それから数分。再度復活を果したあのときのルシル君の表情はきっと忘れない。
「えっと、ルシル。私たちってすぐに戻れるのかな・・・?」
「あ、ああ・・・すまない、フェイト。みんなも。少し解決法を考えさせてくれ」
ルシル君から告げられた即解決不可の事実。
「あ、うん。大丈夫だから、うん・・・」
「そ、そうですよ。僕たちなら大丈夫です」
フェイトちゃんとエリオがそう言うけど、やっぱり沈んだ表情。スバルやキャロも大丈夫って頷いているけど、やっぱり沈んだ表情。
「いや、待て。もしかしたら・・・!」
私も落ち込みながら項垂れていると、ルシル君が何か思いついたのか・・・
「・・・シャル・・・」
「な、なに・・・?」
女の子座りのシャルちゃんの近くまで歩いていった。
「シャル。一応、原因である君を実験体として・・・っ!」
ある程度までシャルちゃんの正面に近付いたルシル君は急に顔を逸らした。それに若干顔も赤いような・・・って、まさか・・・。
「??・・・っ! もしかして見た!?」
シャルちゃんもルシル君の挙動に気付いて、すぐさまミニスカートの裾を押さえた。けどそれも今さらかも。すでに見られた後だし・・・。
「・・・で、だ。〇ーパーキノコの特性からして――」
あからさまに話を逸らしたルシル君。でも私たちのとってはそっちの方が重要。ごめん、シャルちゃん。
「見たのねぇぇぇぇぇっ!!」
「うわっ! バカ、やめ――」
ズドォーンッ!!
シャルちゃんの振り下ろされた右手がルシル君を直撃。それはまるで虫を叩き殺すかのようなスナップを利かせた一撃だった。
†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††
やっちゃった。蚊を殺すかのような勢いでルシルを叩いちゃった。どうしよう、右手を上げるのがちょっと怖いかも。でも、だって仕方ないよ。私だって下着見られたら恥ずかしいって思っちゃうよ。
「フライハイトちゃん! 早く手を上げて!」
シャマルが慌てながら私の右手をペチペチ叩く。
「あ、うん・・・」
「マンガみてぇだな、セインテストのやつ・・・。初めて会った頃とかの、あの勇ましい姿のカケラもねぇ。つうか最近のセインテストはこういうネタばっかだな」
「確かに。まるで潰れたカエルのような今のセインテストには同情しか湧かんな」
ゆっくりと手を上げると、そこにはうつ伏せで倒れているピクピクしたルシルがいた。
「冷静ですねー。ヴィータちゃんとシグナムは」
「そういうリインもだろ」
自分でやっておいてなんだけど結構酷いよ、シグナムとヴィータ。
「大丈夫ですかっ!?」
「傷は浅いですよ、ルシルさん!!」
「・・・この者のかつての勇姿はどこにいったのだろうな」
「しっかり! しっかりセインテスト君!」
それからルシルは何度目かのシャマルの治療で復活を果たした。
「くっ、今日の私は厄日なのか・・・?」
満身創痍なルシルが結構本気で沈んでいる。
「ごめん・・・ホントごめん」
心からの謝罪。ルシルも私が本気なのを判ってくれたみたいで、「気にするな」って言ってくれた。
「さて、さっきの話の続きだが、君たちが巨大化した原因であるキノコの特性を利用する解決法をここに提示する」
「「「「特性・・・?」」」」
「ああ。食べれば巨大化するという不思議菌類だが、食べた者は軽いダメージを負うだけで縮むという特性もある」
「つまり」と前置きしたルシルは、「我が手に携えしは確かなる幻想」って複製の呪文を詠唱した後、その手に2mほどのハンマーを取り出した。そしてそれの調子を確かめるように何度も素振りをした後、「こいつで叩く、というわけだ」肩に担いでそう告げた。
「だがこれで解決するという確約は出来ない。だからこそまずはシャルで試すというわけだ」
一斉に向けられる視線。なるほど、そういうことですか。実験体とはこういうことだったわけですか。そうですか。
「というわけで、早速始めようか」
「むぅ・・・よっしゃぁっ! かかって来ぉーい!」
カモーンカモーン!
「殊勝だな。よし、いくぞ・・・!」
ハンマーを振り上げながら私の頭上まで大きく跳んだ。そして・・・
「死ねぇぇぇっ!」
「「「「「「「死ね!?」」」」」」」
不吉な事をほざきやがったルシル。やっぱり根に持っている可能性がある。さっきは判ってくれたような顔をしていたのに酷い。だから・・・
「えいっ☆」
「げふっ!?」
「「「「「「「ええぇぇぇっ!!?」」」」」」」
頭上のルシルを叩き落とした。
「あ~~~~~~・・・っ」
吹っ飛んだルシルの軌道を全員で眺めていたら、ルシルがそのまま海に落ちた。そこから3秒間の沈黙。そして、「は、早くルシルを助けないと!」フェイトが一番早く再起動。
「あたしが一番近いんで、あたしが助けます!!」
スバルのその大きな手が海へと突っ込まれてすぐに引っこ抜かれた。その影響で波が発生。巨大化している私たちにはなんてことはないけど・・・
「「「きゃあああああ!!」」」
「むぅぅ・・・!」
シャマル達が波に飲まれた。
「「だ、大丈夫ですか!」」
「ゲホッゲホッ・・・気をつけなさいよ、スバル!」
「スバル、もう少し気をつけてほしかった・・・えほっえほっ」
流されて海に落ちる前に、エリオとキャロに助けられたシャマル達。おおう、今のはちょっと危なかったかも・・・。
「うぅ、ごめんティア、ギン姉。シャマル先生とザフィーラも大丈夫ですか・・・?」
「え、ええ」
「ああ」
「まぁそう怒ってやるな、ティアナ。スバルとてわざとではないのだからな。それに、元はと言えばフライハイト。お前がセインテストを海に叩き落とすからだろう」
「あぅ・・・ごめん」
シグナムからの御叱責。でもルシルから危険を感じたんだから仕方ない。しかも、死ね、って言ってたし・・・。それが本気じゃないのはもちろん解ってるけど、やっぱり何か嫌だった。せめて、くらえぇぇぇっ!とか、いっっっけぇぇぇっ!なら良かったのに・・・。
「そ、そう言えばルシル君はどないなん?」
「あ、はい。ちゃんと助けられましたよ」
スバルがゆっくりと右手を開いていくと、「・・・呪われているのかもしれないな」びしょ濡れになったルシルがスバルの手の平の上で胡坐をかいていた。
「ルシルパパ、大丈夫・・・?」
「ありがとう、ヴィヴィオ。私は大丈夫だ」
「よかったぁ♪」
私たちみたいに大きくはないけど、それでもルシルよりは大きいヴィヴィオ。そんなヴィヴィオが、その大きくなった手でルシルの頭を優しく撫で始めた。
「あの、ヴィヴィオ。その・・・ね。ルシルさんもその・・・大人だしね・・・」
ティアナが優しくヴィヴィオに語りかけるけど、ルシルはそれくらい何とも思わないと思うけど・・・。それにルシルなら逆に微笑ましいって思っているはずだ。だから続けさせてあげればいいと思うんだけど、何でそんなにルシルをチラチラ見ているのかな・・・?
(・・・ん? なんだろう。シャマル達の顔色が・・・青い・・・?)
ルシルを見ているシャマル達の顔色は青いし、どこか落ち着きがない。
「ヴィヴィオ、もうそろそろいいんじゃないかしら?」
「??・・・うん・・・」
シャマルにそう言われて、ルシルから手を引いたヴィヴィオ。そして件のルシルはと言うと「・・・」立ったまま気絶しているようにも見える。
(もしかして、さっきから小さく聞こえてたボキボキっていう音はまさか・・・ルシルの首が鳴っていた・・・ということ・・・?)
「ルシルパパ・・・?」
「・・・ダイジョウブダヨ」
ギプスが意味を成さない程に首が傾いてるルシルがカタコトでそう言ったのを見て、ようやく巨大化組も解ってしまった。どうしてシャマル達がヴィヴィオの撫で行為を止めようとしていたのか。そしてルシルの様子が変なのがヴィヴィオの所為だということにも。唯一理解していないのはヴィヴィオ本人。けど責められないよね、純粋な善意だし。
「えっと・・・セインテスト君はこれで退場ということで・・・」
「そやな」
「うん・・・」
「ルシル・・・」
こうしてルシルは、ザフィーラとシャマルとギンガに付き添われて医務室へと消えていった。残された私たち巨大化組は、先にルシルが言っていた解決法を実践した。ハンマー(巨大)でかる~く全員を叩いていくという流れ作業。まぁ結果的に大して労することなく元に戻ることが出来たんだけど。だけど・・・
「巨大化キノコが使われた以外の料理は大丈夫ってことやし、安全な料理はルシル君へのお見舞いでええな」
「うん、そうだね。シャルちゃん製作の料理以外きっと大丈夫なはずだから。ね、シャルちゃん」
「え、あ、うん。もちろん」
「それじゃあフェイトちゃんの料理を持ってこか。その方がルシル君も喜ぶの間違いないしなぁ」
「そ、そんなこと・・・でも、うん。そうだと嬉しいな」
はやて達のこの何気ない善意な行為がさらにルシルに悲劇をもたらす事に・・・。ごめん、ルシル。私、もっと早くに思い出していれば良かったよ・・・。
・―・―・―・―・―・
「クラールヴィント、お願いね」
≪Ja. Lüftchen behandeln≫
「大丈夫? セインテスト君。かなり酷い音がしていたけど・・・」
“機動六課”の隊舎のある一室、医務室のベッドに横たわるルシリオン。古代ベルカの治癒魔法・優しき癒風をかける医務官のシャマルが、患者であるルシリオンへと尋ねる。
「ああ、なんとか・・・。何度もありがとうシャマル。楽になった」
シャマルの治癒魔法を受け回復したルシリオンが礼を言う。そんな彼の満身創痍なダメージもついでに完全回復されていた。
「ヴィヴィオに悪気がないのは解っているが、さすがに効いた」
ルシリオンは苦笑しつつ、彼を撫で、医務室送りにしたヴィヴィオの事を思い出す。一応は父と娘という関係のルシリオンとヴィヴィオ。そのヴィヴィオが何を思ったのかルシリオンを撫でた。理由はどうであれ、小さい娘が父とスキンシップを取る。それだけなら可愛らしい絵柄だが、撫でたヴィヴィオが巨大というのが最大の問題だった。巨大化した原因は、まぁいろいろな事が起きたわけだが。
そんな巨大な、あまり力加減が出来ていない手で撫でられれば首にダメージを負う。しかも、ルシリオンはすでに首にダメージを負っていた。そこに追撃がくれば、誰でもダメージを負うのは間違いなかった。
「うふふ。あの子も可愛いことするのね。それで、どうだったセインテスト君? 可愛い娘のヴィヴィオに撫でられて、感無量かしら?」
楽しそうにコロコロと可愛らしい笑みを浮かべるシャマル。彼女は何かとルシリオンからかう。内容としては、花嫁や結婚などの女性関係ネタでよく攻めてきていた。その都度ルシリオンは精神的ダメージを負っていって、シャマルからのそういう振りは苦手となってしまっていた。
「いや、シャマ――」
「そうそうセインテスト君。テスタロッサちゃんとはどうなの? あ、それになのはちゃんは? ヴィヴィオの事もあるし・・・」
「あのシャ――」
「どっちとお付き合いするかきちんとしておかないとダメよ?」
「その――」
「あー言わなくてもいいのよ? きっとセインテスト君の事だからきちんと考えていると思うから」
「だ――」
「いっそのこと2人とも・・・。うふふ、罪なお・と・こ♪」
ルシリオンが今まで出会ってきた最も苦手(いろんな意味で)とする女性ランキングの上位シャマルの単独トークは、なのは達が見舞いに来るまで続き、その結果ルシリオンはゲッソリとしていた。
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