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恋よりも、命よりも

作者:ぽてと
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青春の終わり4

そもそも私は踊りは日舞から入ったし、実はバレエやタップなんかの外国の踊りが得意じゃない。
タップで「踊りが重い」と言われた事は、自分でも感じていた事だった。

でもそれを、リュータンさんから指摘を受けたのがきつかったなぁ。
きっと私、リュータンさんの相手役にはなれない。
そう思うと、悲しくて辛くて悔しくて…少し泣いちゃった(実は盛大に泣いちゃった)
けど、タッチーに励まされてなんとか舞台に立ち続ける事が出来た。

同期って、不思議。
励まし合って頑張る時もあれば、競い合って役の取り合いをする事もある。
でも、やっぱり何かあると自然と集まっちゃうんだよね。

トモの事、やっぱり悔しいし、嫉妬したりとか色々あるけど、嫌いになんてなれなかった。
タッチーやエリと自主練しているところをみると、私も思わず入りたくなっちゃう。
ずっと一緒に頑張ってきた同期だもの、踊りだすと自然に笑いあう事が出来るんだよね。

「私、娘役に転向する。そして、リュータンさんの相手役になるわ」
同期の私達に向かってそう宣言したトモ。
羨ましいし、自分がなれなかったことが悔しくもあったけど、
でも、同期だし応援しよう、そう思う気持ちも確かだった。

「紅ねぇちゃんは強いなぁ」
時々宝塚劇場の近くでマンガを書いているおさむ君に、そんな話を取りとめなくしていると、おさむ君はこんな事を言った。
「紅ねえちゃんは、辛いことや、苦しい事があったら、最初はホントに大騒ぎになるんやけど、最後にはいっつも笑顔で乗り越えてるんや。ぼくは、そういう人は強い人やと思うで」
「そうかなぁ?自分ではよくわからないよ」
「うん。そういう事は、自分では良くわからんもんや。でも、周りの人はそのねぇちゃんの性格に救われてると思うで。
真面目で、自分の信じる道に妥協ができなくて、人にやさしくしたいのについキツイことばっかり言ってしまうような天邪鬼な人間は、紅ねぇちゃんが傍にいるとふっと安心する時があるんとちゃうかな…。
ぼく、自分の書くマンガにそういうキャラクターを書きたいと思ってんねん!」
まだ先の話やけどな。そう照れくさそうに言って、おさむ君はまたノートにマンガを書き始めた。
「へぇ…、ねぇ、そんなキャラクターのいるマンガが書けたら、おさむ君私に見せに来てくれる?」
「うん、ええよ!先に医者になってからだから、大分先の話やけど、約束な!」

トモが娘役トップになって、しばらくして。
エリのファンだった清さんに赤紙が来て、清さんは戦争に行ってしまった。
大劇場も、閉鎖された。
でも、私はいつでも元気でいる事に専念した。

それは確かに私自身の性格でもあったんだけど、おさむ君と話したこの日の出来事が、私の中にずっと残っていたかもしれないなぁ、とも思う。

私が傍にいる事で、少しでも元気になったり、安らげたりする人が増えたらいいな。
舞台でも、いつもの生活の中でも。 
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