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フェアリーテイルの終わり方

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八幕 Sister Paranoia
  8幕

 
前書き
 お ち て ゆ く 

 
 フェイの背中に大きな何かが着弾した。〈何か〉は赤黒い磁場を発した。
 かは、と息を吐いて床に落ち臥す。

「いやぁ! フェイぃ!」
「ナァ~ッ!!」

(今のは、何?)

 霊力野(ゲート)の稼働が強制的に切られた。組んでいた式も何もかも吹き飛んだ。

「携帯版〈クルスニクの槍〉。効果はご覧の通り。かの〈妖精〉も、算譜法(ジンテクス)が使えなきゃ形無しだな」
「ぅブッ!?」

 頭をリドウに踏みつけられ、顔面を床に強打した。鼻と口の中が痛む。それ以上に、これほど体重をかけられては脳が弾け飛んでしまいやしないか。

 視界が利かないなりにフェイは両手をバタつかせてリドウの足をどけようとした。
 手に鈍いイタミが刺さった。

「ぃ、ぎ、ひいい゛い゛イ゛イ゛っ!!!!」

 手の甲がじくじくと痛みに支配されていく。動かしたくても動かせない。フェイの両腕には何本もメスが刺さり、左手の甲はごていねいにリドウの足で床に磔にされている。

 リドウがフェイの上からどいても、床と手の甲を縫い合わせるメスのせいで、フェイはもうその場から動けなかった。

「念のためもう2,3発ブチ込んどけ」

 ノーマルエージェントが〈槍〉の照準をフェイに合わせ、トリガーを引いた。
 電磁の球がフェイの体に感電に似た衝撃を与え、根こそぎマナを奪った。


(覚えてる。この感じ。いっつも大精霊からマナ奪られてた時とおんなじ。内側から剥がされて、中身を摩り下ろして素手で掴み出されるみたいなイタミとキモチワルサ。自分が挽肉になってくような感覚)


 心の針が巻き戻る。痛みと苦痛と略奪と悲鳴。計測器の音。体中に刺さる針と管。


(ココロをとめなくちゃ。イタイのを感じないように)


 くり広げられる光景からリアルを無くす。自分は何も聞こえない。何も感じないのだと言い聞かせる。

 ――するとエルが視界に転がり込んだ。翠眼に涙が滲んでいる。
 倒れたエルに迫る紅い男。

「        、  ー!!」
「      !!               ッ!」

( おねえちゃん と るどがー が に むけて なにか ひっしに さけんでる )


 ――霊力野(ゲート)ノ活動、黄色域ヲまーく。瞬間放出値デ……200万突破!?――
 ――腕ハモウ針ガ刺サラナイカラ、今日カラ指ノ間カラ採血シマショウネ。――

( ふぇい の て が おねえちゃん に とどけば  ら は おちずに すむ )

 右手を伸ばす。だが、左手が固定された上、マナを奪われた分だけ動けず、エルに手が届かない。
 体内のマナはカラッポで、どんな術も使えない。


 ――相手ハタッタ一人ダゾ!? 何故数デ勝ルコチラガ押サレテイルンダ!――
 ――キモチワルイ子ヨネ……――
 ――バケモノ! オマエナンカ人間ジャナイ!――

「   !    っ!!」

( み が おちる るどがー の て を ふりほどいて )

 きらきら。金いろが、ひらめいて、堕ちて、いく。

( ふぇい が すぐ めのまえ の おねえちゃん を まもれなかった せい で )

 停めていた心が再稼働する。じわりじわりと、残酷に、現実を処理していく。

(お姉ちゃんを救うためにミラは自分で自分を殺した)
(わたしが間に合わなかったからミラが死んだ)
(ミラを殺したのは――――わたしだ)

 ずっと胸の底に沈殿していた黒いモノが爆発した。
 フェイは絶叫した。長く、長く、長く。 
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