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フェアリーテイルの終わり方

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八幕 Sister Paranoia
  6幕

 
前書き
 妖精 と 元 精霊の主 

 
「ちょ、フェイっ、どうしたのよ!?」
「フェイ?」

 フェイはミラの胸に飛び込んだ。ミラの動揺が肌越しに伝わる。

「やだ…ミラ、死んじゃだめ…死んじゃやだぁ…!」

 やだやだと泣きじゃくりながら、ミラの背にしがみつき、胸に顔をこすりつける。

「もう――何だっていうのよ……ほんと、訳分かんない」

 頭と背中に温かい掌の感触。フェイをあやす手は恐々としている。これをたったさっきフェイは永久に停めようとしたのだ。
 自分がしようとしたことの恐ろしさで、もっと涙が零れた。

「泣かないで、フェイ。ミラさんは大丈夫だから。この中の誰も、ミラさんを傷つけようなんて思ってないから。ね?」
「う、ん……」

 ジュードが言ったから。フェイはミラから離れて、制服の袖で顔を拭いた。
 すん、と鼻を鳴らしながら、自分が皆を引き留めていたと知る。

「ゴメンナサイ……もう、ダイジョウブ」
「フェイがいいなら行こうぜ。そろそろ急がねえと本当に連中に嗅ぎつけられる」
「そうだね。行こう、フェイ、ミラさん」
「――待って」

 ミラがジュードを呼び止める。

「ジュードはどうして、私を『ミラさん』って呼ぶの?」
「どうしてって……ミラさんはミラさんでしょ?」
「おいおい今度はこっちかよ」
「アルヴィンは黙ってて! 大事なことなの」

 ジュードは胸元に手をやり、そこに提げているであろう何かを握り込んだ。

「僕にとってのミラは、ミラだけだから。僕の大事なことなんです」
「――そう、分かったわ」

 ジュードは肯き、ついに艦内に入った。続く、アルヴィン、ルドガー、エル。
 その中で、エルがくるんとふり返り、ミラを見上げた。

「あのさ、エルのミラって、ミラだよ。精霊のミラなんか会った時ないし」
「慰めてくれてるの?」
「別に! エルはミラのスープとか好きだから、言ってみただけっ」
「スープ…………これが終わったら、また作ってあげる」

 エルはにかっと笑い、ミラは微笑み返した。

 ミラのその笑顔が奇麗すぎて、恐ろしい予兆に感じられた。フェイはとっさに、歩き出そうとするミラの手を両手で掴んで止めた。

「なに?」
「あのね。ジュードとかアルヴィンが、ミラに『消えろ』って言う人なら、フェイがやっつけるから。だから……いなくなるなんて、ヤダよ」
「……さっきまで私を殺そうとしてた子と同じ子とは思えない言葉ね」
「ごめん、なさい。さっきは、ああしなきゃ、お姉ちゃんをミラに奪られちゃうと思って」
「私が? 馬鹿ね。そんなことできるわけないじゃない」
「そっ、か」
「今ちょっと安心したでしょ」
「し、してないよっ。ミラ、いじわる言う人」

 フェイはミラから手を離してエルを追った。これ以上何かを言われるのが恥ずかしかった。


「――できるわけ、ないのよ――」


 ミラが零した言葉は、フェイにはすでに届かない距離にあった。 
 

 
後書き
 価値観が急激に変わると人間泣くしかないと思うんです。特に、オリ主みたいに殺そうとした相手への見る目が変わってしまったら、殺そうとした自分自身が恐ろしくてならない。そんな感情をオリ主に表現させてみました。

 ここ原作で、ジュードと分史ミラのすれ違いがすごく切なかったです。こう、勘違いで自分を追い込んでしまうとこが。ジュードに悪気があるわけではないのに(T_T) 
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