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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS戦術解説
  艦隊遭遇戦①

——ミノフスキー粒子によって消滅した宇宙艦隊の戦闘——

 A.D.1900年代頃まで、海戦の主役は大口径砲を装備した艦艇群による「艦隊戦」であり、この戦いこそが海洋国家の運命を担うものと考えられていた。

 特に大口径砲を持つ艦艇の中でも口径40cmを上回る巨砲を搭載する戦艦は、戦略兵器級の脅威とみなされていた。これは、「ロンドン海軍軍縮会議」などで保有数に制限が設けられたことからも明らかで、戦艦がWWⅡ後に出現する核兵器に相当する存在として捉えられていたことの証明でもある。

 確かに戦艦は、長大な射程と破壊力を有する巨砲と、厚さ30cmにも及ぶ舷側鋼帯による防御力を持つが、それらは航空機やミサイルの急速な発展の前に無力化し、さらに莫大な維持費がネックとなり、21世紀を待たずして消滅した。また、戦艦の消滅は、大型艦船を保有する国家と海戦の弱体化に拍車をかけ、艦隊同士による戦いは地球上から姿を消すことになった。

 この状況に変化が訪れたのが、人類の宇宙への進出である。宇宙世紀に入り人類が本格的に宇宙空間は、惑星や衛星、巨大デブリなどを除けば射線を遮る物のない広大な空間である。

 つまり、地球上の様に丘陵や「地球の丸みの向こう側」からの攻撃はありえず、宇宙では互いの距離を問わずに直接対峙しての戦闘が多発すると考えられた。また、メガ粒子砲などのビーム砲とこれらの兵器を搭載、運用可能な宇宙戦艦・巡洋艦などの宇宙艦艇が誕生した。

 こうして宇宙での戦いは、宇宙艦艇で編制された艦隊同士が、長距離からビーム砲やミサイルを撃ち合う「艦隊戦」が主軸になると考えられた。実体弾兵器をはるかに超える性能を持つビーム砲は特に有効な兵器とされ、唯一の欠点と思われた直線的な弾道は障害物が少ない宇宙空間では問題とならなかった。

 また、誘導性能が皆無という問題も、宇宙船に対応した火器管制装置や艦艇同士の相互データリンクによってクリアされた。

 また、かつての艦艇の天敵であった航空機は宇宙戦闘/攻撃機として生まれ変わったが、航続距離は短く、比較的近距離での戦闘に投入される傾向が強かった(実際、ルウム戦役に投入されたFF-4S(トリアーエズ)戦闘機は航続距離不足で引き返している)。

 また、狩りに接近されたとしても連邦軍のサラミス級巡洋艦にみられる、コンピュータ制御の機銃群や連装ミサイル=ファクランス・システムによって迎撃可能とされた。

 このような艦艇優位の宇宙船は、必然的に艦隊戦を中心とした戦術や編成を促し、地球連邦軍は艦隊戦を第一に考える大鑑巨砲主義へと傾倒していった。

 このまま歴史が進めば「宇宙戦=艦隊戦」という図式が一般化したことは間違いなく、旧世紀の様に艦隊同士の砲撃戦が見られることは確実であった。しかし、ミノフスキー粒子の出現によって状況は一変した。

 ミノフスキー粒子は艦砲射撃やミサイルの命中精度を著しく低下させたうえ、レーダーをはじめとする索敵システムを無効化、さらにミノフスキー粒子の申し子であるMSの登場によって宇宙艦艇はその威力を喪失し、連邦軍が夢想した艦隊戦構想は、画餅と化してしまったのである。





補足事項

——ミノフスキー粒子とMS——

 艦隊戦を激減させた最大の理由は、電子線を無効化するミノフスキー粒子の戦力化である。これによりレーダーによる索敵能力と火器管制装置、そして大半の通信手段が無力化された艦艇は、「眼」と「拳」を失うこととなった。

 また、ミノフスキー粒子散布下の運用に特化したMSは、艦艇が苦手とする目視環境下での戦闘において最大の降下を発揮した。このためMS戦が常態化し、艦隊戦は極めて稀なケースを除き行われることはなくなった。

 
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