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フェアリーテイルの終わり方

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八幕 Sister Paranoia
  4幕

 
前書き
 妖精 は ヒキョウモノ ? 

 
 〈温室〉にいた最初の頃は祈ってばかりいた。お姉ちゃん、パパ、たすけて、と。ここから出して、と。父は無理でも姉はきっと見つけて救い出してくれると、信じて。

 だが、どんなに祈っても信じても何も起きなかった。

 フェイは大精霊にマナを剥ぎ取られ、大精霊に肌を焼かれ、目を潰され、電流を流され、狂いかねない闇に閉じ込められる日々を送った。


「――ローエン、街での検挙に戻れ。俺はアルヴィンを待つ」
「畏まりました」

 ローエンが一礼して去った。ガイアスはフェイをじっと見てきた。
 精霊たちが持つそれによく似た紅い両目が、恐ろしいことの予兆に思えて。

「な、に」
「フェイ。ままならない事態を他者のせいにして動かないのは卑怯者の行いだ。まずは己から動かなければ、世界は何も変わらない」
「わたし……ひきょうもの?」

 胸がじくじくと痛み始める。これは何のイタミ? 

「アースト!」

 はっと顔を上げる。ルドガーたちが駆け寄ってくるところだった。その中にはもちろんエルもいる。

「フェイ……」
「おねえ、ちゃん」

 フェイは素早くガイアスの後ろに隠れた。

(まさか来るなんて。一番会いたくなかったのに)

「来たか」
「状況は?」
「入手した計画書を元に、街に潜入したアルクノアを検挙中だ。水面下でな」
「できれば表沙汰にしたくねえもんな」
「こっそり消して無かったことにする。貴方たちの得意技ね」

 ジュードがミラを窘めるが、ミラは髪を払ってぷい、とよそを向いた。

「何があった?」
「何も。元々こんな奴だよ」
「そう。あなたたちのミラとは違ってね」
「ミラさん!」

 その時、不意にフェイにだけ聴こえる〈声〉がした。
 電波(ヴォルト)に乗った声であれば、有線でも無線でもフェイには聴こえる。いつもはカットしているのだが、ガイアスとのやりとりの時でブレたらしい。
 内容を何となしに聞き――

「ちがう……」
「え?」
「違う! 街の中にいる人たちは違うの! 本当はアルクノア、船にいるマルシアのおばちゃんを狙ってる!」

 場に衝撃が走った。

「マジかよ……! マルシア首相は、異界炉計画に反対した穏健派だ。今、首相になんかあったら、和平なんてひっくり返るぜ」
「それがモクテキだから。どの道……」
「どの道?」
「コロス、つもり、だって」

 マルシアは、フェイにとっては数少ない、〈妖精〉のフェイに優しくしてくれた〈外〉の人だ。
 あの人の命が脅かされている。震えが止まらなかった。

「――させない。ミラがくれた時間を無駄になんて!」

 ジュードはGHSを開き、凄まじい指捌きでメールを打って送信した。

「ガイアスは街の中をお願い。レイアとエリーゼに応援頼んだから。船には僕が乗り込む」
「俺も行く」

 ルドガーが素早く声を上げた。

「危険だよ?」
「だからジュード一人で行かせられないんだ」
「わたしも行く!」

 フェイは胸に手を当てて身を乗り出した。

「王様、言ったよね。自分から動かなきゃ何も変わらないって。だからフェイ、自分でおばちゃん、助けに行く」

 皆にではなくガイアスに向けて宣言した。フェイは自ら決め、動いた。これで「ヒキョウモノ」ではない――はずだ。

「フェイが行くならエルも行く! エルはフェイのお姉ちゃんだもん」
「お姉ちゃん……」
「フェイ、さっきはごめんね。エル、ミラがいなくなるなんてヤだったから……でもねっ、フェイだって同じくらい、いなくなっちゃヤだから」

 この姉に妹として扱われたのはどれくらいぶりだろう。無条件に顔が笑みの形を作った。 
 

 
後書き
 子供は立ち直りが早い。きっと平手打ちの後でルドガーかジュードに謝るよう諭されたのでしょうなあ。そして素直に謝る分、オリ主よりはスレていない。
 そしてオリ主はやはりエルお姉ちゃんが一番で大好き。謝られてコロッと許しちゃいました。
 さて、同行する宣言をしたオリ主。これが吉と出るか凶と出るか。 
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