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MS Operative Theory

作者:ユリス
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MS戦術解説
  宇宙要塞攻略①

——宇宙要塞の誕生と宇宙要塞攻略の必要性——

 宇宙要塞は、宇宙世紀に入って出現した軍事施設である。人類の宇宙への進出が始まった旧世紀末期にも、当時の二超大国であった米ソが宇宙開発を激化させた時期があったが、その時でも有人宇宙船の進出限界は月程度であった。

 その後も衛星軌道上に有人人工衛星を配置することはほとんどなく、宇宙にはスパイ衛星程度の軍事施設しかないというのが実情であった。

 対地攻撃用の核兵器を搭載した衛星や、大陸間弾道弾などに対抗する早期監視・迎撃衛星などが計画されたこともあったが、宇宙に「要塞」と呼べるような大型かつ恒久的な軍事施設が建造されることはなかった。

 これは宇宙の平和的利用を謳う「宇宙条約」によって、宇宙の軍事利用が制限されていたこともあったが、それ以上に宇宙空間に要塞のような大型施設を建造する技術や予算、そしてその必要が無かったことが原因であった。

 だが宇宙世紀に入り、サイド3が独立への動きを見せ始めると、この状況に変化が訪れた。U.C.0060、サイド3を牽制する意味もあって、地球連邦政府は「60年代軍備増強計画」を開始し、特に宇宙軍の増強を推進した。

 この際、宇宙における連邦艦隊の基地としての機能を持つ軍事施設が必要となったことから、宇宙要塞の建造が行われた。

 宇宙要塞をゼロから建設するには莫大な時間と予算が掛かるために、既存の大型施設の流用が検討された。スペース・コロニーを転用する方法もあったが、連邦宇宙軍の艦隊規模から考えると、港湾部分の少なさや軍事基地としての防御力などに問題があったため採用されなかった(コロニーを基地化した例はグリプスしか確認されていない)。

 そこで、コロニー建造のための資源採掘用として地球圏に運ばれていた小惑星に白羽の矢が立った。資源用小惑星は大きなものになると全長が100m以上という大きさがあるうえ、鉱物層や炭素層などを含む天然の防御壁を備え、さらに鉱物採掘のための行動が張り巡らされているために改装も容易であった。

 このような経緯を経て建造されたものがルナツーやア・バオア・クー、そしてコンペイトウ(旧ソロモン)に代表される小惑星型宇宙要塞である。戦略上の要衝に置かれたこれらの宇宙要塞は、岩盤による防御力だけでなく、防御用火器や駐留艦隊を備えている。さらに内部には居住用のブロックだけでなく、MS工廠を持つものであり、一つの宇宙要塞の攻撃力と防御力は数個艦隊に匹敵するともいわれる。

 宇宙戦争については、中継拠点や後方の安全確保のため、宇宙要塞の攻略は必要不可欠なものとされる。それは、U.C.0079,12,24のソロモン攻略戦をはじめとして数々の宇宙要塞攻略作戦が行われたことからも明らかである。

 しかし攻略法はわずかな例外を除き、ほとんどが大規模戦力を投入し、いかにしてMS部隊を上陸させるかが焦点となったものであった。



——宇宙世紀に行われた主な要塞攻略戦——

 以下に宇宙世紀に行われた主な要塞攻略戦を紹介する。大きな戦乱では必ず一度は行われていることから、宇宙世紀においても、要塞の攻略が戦略上重要なものであったことが分かる。なお、「ソロモン攻略戦」と「ゼダンの門攻略戦」は、その詳細を➁で解説するので、ここでは省略している。


■U.C.0079,12,31 ア・バオア・クー攻略戦

 一年戦争最後の大規模会戦。公国軍のソーラ・レイを受けた連邦軍艦隊は交戦前に壊滅状態に陥ったが、残存艦隊によりア・バオア・クーを攻略した。両軍ともに80%以上の投入戦力を失ったとされる。


■U.C.0088,02,02 メールシュトローム作戦

 アクシズが制圧していたグリプス2(コロニー・レーザー)を奪取するために、エゥーゴが展開した作戦。艦隊を渦巻き(メールシュトローム)乗に配置し、コロニー・レーザーを制圧した。小惑星ではない要塞を巡る、初の大規模会戦であった。


■U.C.0088,05,19 対アクシズ砲撃戦

 アーガマ単艦の実で実施した要塞破壊作戦。エゥーゴは、ハイ・メガ粒子砲を搭載した巡洋艦アーガマによる、アクシズ(モウサ)の破壊を計画。ハイ・メガ粒子砲は一撃でモウサを破壊可能だったが、直撃しなかったためにアーガマは月に撤退した。


■U.C.0089,01,16 コア3会戦

 ハマーン・カーンに対し反乱を起こしたグレミー軍が、コア3の破壊を狙って起こした戦闘。最初はモウサの衝突によるコア3の破壊を計画したが回避されたため、アクシズを衝突させた。この結果コア3は半壊した。


■U.C.0093,03,12 ルナツー攻略戦

 ルナツーに貯蔵されていた核弾頭の強奪を目的とした、ネオ・ジオン(シャア)の作戦。武装解除を装ってルナツーに接近した直後、奇襲攻撃を行った。この攻撃の前にルナツーは陥落。奪取された核弾頭は「地球寒冷化作戦」に使用された。


■U.C.0153,04,27 カイラス・ギリー攻略戦

 ザンスカール帝国軍の対地攻撃要塞カイラス・ギリーの奪取を目的とした、リガ・ミリティアの作戦。太陽電池衛星からマイクロウェーブを照射して駐留部隊の将兵に体調不良を起こさせ、その際に要塞を制圧した。


■U.C.0153,06,20~23 エンジェル・ハイロゥ攻略戦

 人間の退行化現象を引き起こす精神兵器エンジェル・ハイロゥの機能停止を狙った、連邦軍とリガ・ミリティアによる作戦。護衛部隊を排除してエンジェル・ハイロゥを破壊するつもりだったようだが、大気圏内でようやくその機能を停止させた。





補足事項

——要塞からの脱出——

 宇宙要塞の陥落が決定した時点で、要塞に駐留する将兵は降伏か脱出のどちらかを選択することとなる。脱出する将兵は、敵の攻撃が比較的少ない場所を突破することになる。

 このため、脱出に関しては退路を確保する切り込み隊や、敵の追撃から主力を守る殿部隊などが編成される。特に後者は敵の追撃を一手に引き受ける危険な任務だが、武人としての性格が強い公国軍人では、喜んで引き受けるパイロットも多かったようだ。

 
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