えすえふ(仮)
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第三話「幸運の星のために」
前書き
4人目。
前回までのあらすじ
ある日突然、結城冬二のもとに美少女が落ちてきた。
宇宙刑事を名乗る彼女は「宇宙が大変なんだっ!力を貸して欲しい」
と、黄金に輝くパワードスーツを彼に託す。
冬二は次々と地球に襲い掛かる宇宙モンスターを倒し、
地球を、ひいてはこの宇宙を守ることができるか。
決めろ!ライトニングプ〇ズマ!
「そういう話じゃねえからなこれ!」
アランシア・カスペーゼの件から、すでに数日が経っていた。
あれから事件らしい事件も起きておらず、俺--結城冬二の
日常はほんの少しではあるが、落ち着きを取り戻していた。
「どうした冬二?急に叫びだすなんて」
「いや、なんかツッコミを入れなきゃいけない気がして・・・」
そうか、と春香は奇異なものを見る目で俺を見ながら、ごは
んを咀嚼していた。
結城春香は宇宙刑事らしい。地球に逃亡した宇宙犯罪者を捕まえ
るためにこの星にやってきたそうだ。本名は不明。春香というのは
この星で活動するためのコードネームのようなものであり、名字
が俺と同じなのも、俺の親戚設定のためだ。
現在は俺の家に居候中、そして、俺と夕飯を食べている真っ最中
だ。
「ところで春香はいつまでここにいるつもりなんだ?」
ふと気になっていた疑問を投げてみた。さすがに一生このまま
というわけではないだろう」
「地球に逃亡した宇宙犯罪者を捕まえ終えるまでだな」
「それって何人くらいだ?」
「わからん」
春香はズズッと味噌汁を啜った。
そうかわかんないのか・・・。
「ってわかんねえのかよっ!」
そんなんでいいのか宇宙刑事よ。春香の先輩もあんなんだったし。
宇宙の平和って・・・。不安になってくるな。
「とりあえず学校に潜んでいる宇宙犯罪者をあらかた捕まえるのが
当面の目標だろうな」
ごちそうさま、と春香は両手を合わせた。
良識はあるんだよな。
それにしても、宇宙犯罪者か。よく考えたら、そいつらって
俺から見たら宇宙人ということになるよな。(春香やアランシアもそうなるが)
そう思ったら少し好奇心が湧いてくるような。
確か、うちのクラスに明らかに怪しいやつがいたような・・・。
少し気になるな。
そんなことを思い出しながら、食事を終えた俺は
食器を台所に持って行った。
次の日。
チャイムが鳴るのと同時に授業という名の束縛から解放され、
昼休みというひと時の楽園が訪れる。本来はさっさと購買に行って
昼飯を買いに行くところなのだが、今日は先にやることがある。
例の明らかに怪しいクラスメイトについてだ。
そいつはドア側最後列の席に座っていた。
井原健司(いのはら けんじ)というのがそいつの名前だ。
名前だけなら、平凡な日本人ぽいのだが、問題は外見だ。
こいつの背中には身長と同じくらいの羽がついているのだ。
進級したときに同じクラスになったのだが、
最初は、あまりにもインパクトがあってクラス中の注目を集めていたが、
今では誰も気にしなくなっていた。
俺自身も知らないアニメのコスプレか何か程度にしか思っていなかった。
春香に出会うまでは・・・。
宇宙人の存在を知った俺にとっては、こいつが宇宙人だったとしても、
何ら不思議ではないのだ。
そんなわけで気になるので本人に直接聞いてみた。
「お前、宇宙人だろ?」
回りくどい聞き方などせずに直球で聞いてみる。こうすることで、
咄嗟にウソを考える隙を与えず、動揺で表情を取り繕えないようにするのだ。
思ったよりも効果があった。
「ナ、ナンノコトカナー」
井原の声は少し震えていた。分かりやすいなこいつ。
目もクルクル回してる。
「目が泳いでるぞ」
指摘を受けた井原は少し落ち着きを取り戻し、コホンと一回咳払いをした。
「僕は地球人だ」
さっきあからさまに動揺していてにもかかわらず堂々と言ってのけた。
犯罪者かは別にしてこいつが宇宙人であることはもはや確定的だな。
でもやはり本人の口から認めさせてやりたいからもう少し追求してみるか。
「でも、この前この羽は本物だって聞いたような・・・」
「気のせいだって。僕は地球人の井原健司ですよー」
「でも」
「違う」
でも、違う、でも、違う、でも、違う。
意味のない問答が続くかと思ったが、井原が仕掛けてきた。
「結城」
いきなり肩を強く掴まれた。目つきが鋭くなり、今にもお前を
殺すといわんばかりに睨み付けてくる。
あれ、ひょっとしてピンチか?
恐怖を覚えた俺は思わず一歩後ずさった。
殺られるかと思ったが、さすがに人が大勢いる教室でそんなことは
ありえなかった。
井原の顔が俺の顔に近づく。
「宇宙人は実在しない、いいね?」
「アッハイ」
無理矢理納得させれてしまった。
井原に認めさせることができないまま、俺は、購買に昼飯を買いに来ていた。
春香とアランシアも一緒だ。
「ふーん、ふーん」
アランシアはカレーパンを抱えてそれは幸せそうに鼻歌を歌っている。
よくもまあ、毎日食べてて飽きないよなこのカレーパン大好き美少女。
アランシア・カスペーゼは先日、カレーパン密輸の罪で逮捕された
宇宙犯罪者だ。今は、この学校に転入し俺と春香のクラスメイトになっている。
「あれ、どうしましたか?冬二さん」
あきれ顔になっていたせいで気にかけらてしまった。
しどろもどろになりながらも何でもないと答えると、
そうですかと言ってまた満面の笑みに戻った。
小柄だが、顔立ちが整っていて、笑顔が非常に可愛らしい。
だから、結構人気が高く、すでにファンクラブが結成されているとかいないとか。
うちの学校には紳士が多いな。
「そういえば、昨日の晩御飯のカレーに納豆をかけて食べてみたんですが、
美味しくてビックリしちゃいました・・・冬二さん?」
カレー以外食ってんのかなこの子は。
春香には井原のことを話しておいた。
「なんで否定するんだろうな。明らかに宇宙人だと思うんだが」
「本当は地球人なんじゃないのか?」
「でもあの反応の仕方は、自分が宇宙人ですって言ってるようなものだったし」
「いやいや、実は地球には羽の生えた人種がいるのかもしれない」
いねーよ。
「いるわけないでしょ」
俺の心の中のツッコミと同時に聞き覚えのない声が後ろから聞こえてきた。
振り返るとそこには春香と同じくらいの美少女が立っていた。
きりっとした顔立ちをしており、身長も女子の中ではそこそこ高いほうで、
モデルのような体型だ。
髪は薄紫がかっており春香と同じくらい長いが、
彼女はそれをポニーテールにしていた。
「お前は・・・モゴッ!」
春香は何かを言おうとしたが少女に口を押えられて、
モゴモゴと言っている。
「今のアタシの名前は倉橋蓮花(くらはし れんか)だから。
そっちで呼びなさい」
そう言って倉橋蓮花と名乗る少女は春香の口から手を離した。
「そうか、済まない蓮花。それにしても、いたのなら
声をかけてくれればよかったのに」
「アンタこそ、こっち来てたのなら声かけてよね。まあ、
お互い連絡とってないから知らないのも無理ないし、
アタシも少し地球から離れてて帰ってきたのはつい最近だからね」
ってことは春香よりも前に地球に来てたってことだよな。
何なんだこの人。
「あ、蓮花、紹介しよう。こっちはアランシア・カスペーゼ。
こっちは結城冬二だ」
紹介された俺たちはどうも、と会釈した。
「さっきも聞いたと思うけど、アタシは倉橋蓮花。
宇宙刑事よ。ハルとは同僚なの。よろしくね」
宇宙刑事ってこの学校にもう一人いたのかよ。
おお、そうだ。この人なら井原のことについて何か知っているかもしれない。
頼りになりそうだしな。春香も同じことを考えていたようで、
代わりに聞いてくれた。
「井原のことについて何か知ってはいないか?」
「知ってるけど・・・アンタも宇宙刑事なんだからもう少し
しっかりしなさいよ」
蓮花はため息をついた。確かに春香って所々抜けている感じがするからなあ。
無免許なのにロボットとか呼び出すし。
「まあ、いいわ。井原健司。これはおそらく偽名ね。本名は不明。
羽が生えているという特徴から、出身は惑星ブリージア。あの羽空を飛ぶ
種族が住む星よ」
情報がスラスラと出てくるすげえ、宇宙刑事ってすげえ。
そんな些細な感動に浸っていると思わぬ情報が出てきた。
「一昨日からこの学校に潜伏しているわね」
「え、一昨日?」
それはおかしい。なぜなら井原は進級した時からずっとこのクラスにいたからだ。
それを話すと、
「それはたぶん、記憶を書き換えられているわね。やつが来たのは一昨日。
アタシが確認したんだから間違いないわ。何かを企んでいるのは明らか」
そこまで自身たっぷりに言われてしまうと信じざるを得ないようだ。
いつの間に記憶を操作されていたんだ。というか、春香とアランシアももろに
くらってるってことか。おいこら、目を逸らすな宇宙刑事。
「企んでるって、どうにかできないのか?」
「どうにかしたいんだけど、あいつには犯罪履歴がないのよ。
だから今は手を出せないし、何を企んでいるかわからないから、
ほら、警察って事件が起きないと動けないじゃない」
「・・・・・」
そこは地球も宇宙も変わんねえのな。
ん?でも地球には不法に侵入してるし、
俺たちの記憶は改ざんされてるし、これって立派な犯罪じゃないのか?
だが蓮花曰く、辺境の惑星に関する法整備が十分に進んでいならしい。
不法侵入については宇宙同盟に加盟している星でなら即逮捕できるが、
地球ではそうはいかないらしい。記憶操作についても人格や
よほど重要な記憶に影響を与えない限り、宇宙ではある程度は許容される。
とにかく、地球が辺境の惑星であることが悪い方向に作用している。
カレーパンの規制は厳しいくせに!
そんなこんなで蓮花とはいったん別れた。
「アタシ、隣のクラスだから。何かあったら連絡頂戴。いい?
あいつから目を離すんじゃないわよ」
そういえば蓮花は春香のことをハルと呼んでいたが、
あいつ今の名前言ってたっけ?
授業の終わりをを告げるチャイムが鳴り、ようやく放課後になった。
授業中の井原は特に怪しい様子はなく静かに受けていたが、放課後になると同時に、
「あいつ、もういなくなってる!」
ドア側の席というをアドバンテージを得て最速で帰宅しようとする
小学生かよ。
「冬二」
春香が小声で俺を呼ぶ。
「探しに行こう。今なら、そう遠くへは行けないはず」
「そうはいっても、あいつ空を飛べるんだよな。だとすると短時間でも
そこそこ遠くに行けそうだな気がするけど・・・」
「それでも行くしかない。学外で何かするかもしれない」
マジか。へたをすると、町中走り回る羽目になる。それは嫌だな。
言っても聞かないのだろうけど。
「しゃあない、行くか」
「どこへ行く気だ?」
教室から出ようとする俺をを制止する声。幹也だ。
でもなんで、呼び止めるんだ?
それよりも、どうやってごまかす。
「お前、今日部活あるぞ」
「あっ」
俺はSF研究部という部活に所属していて、週一で活動しているのだが・・・。
しまった。今日、部活ある日だってすっかり忘れてた。
「先週も休んでたよな。先輩おこだったぞ。『あの野郎、
毎日美少女とイチャイチャしやがって』だってさ」
やばい、SF研の全員同じこと考えてそう。
そんなことよりも、この状況をどうする。
部活に出るかそれとも・・・。
あれこれ悩んでいたが、不意に幹也が手に提げている袋に目線がいった。
「ん?幹也それなんだ?」
「これか?『幸運の星』のDVD-BOXだ」
幸運の星は少し前にやっていた人気アニメだ。
なんでそんなもの学校に持ってきてんだよ、と思ったが
どうやら違うようだ。
「昼休みに井原が大量に売ってたんだよ。しかもワンコインだぜ」
「井原が?」
大量にワンコインで販売していたと。
それを聞いた春香が「まさか、それは・・・」と呟いた。
その途端、春香のスマホから着信音が鳴り響いた。
電話の主は蓮花だった。
「私だ・・・何!?わかった、すぐ行く。すまん幹也冬二を借りていくぞ。
あとアランシアはここに残っているんだ」
そして俺の腕をつかむと幹也の制止を振り切り、
超スピードで教室から出ていった。
「ちょ・・・おま・・・」
教室から出た際、方向転換の勢いで壁に叩きつけられた。
向かった先は中庭だった。蓮花は中庭に出るための扉の前で、
レーザー銃らしきものを構えて待っていた。銃口はレーザー銃のようなのに
なぜかリボルバー式という変な銃だ。
「来たわね・・・って、結城君だっけ?なんで涙目なの」
さっきのが滅茶苦茶痛かったんだ。
「それで、何があったんだ?」
「井原が『完全コピーくんを使って大量にDVD-BOXを複製していたのよ。
あいつは今、中庭にいるわ」
完全コピーくん?宇宙道具の類かな。
「完全コピーくんは、文字通りどんなものでも一瞬でコピーできる宇宙道具よ。
今回のように悪用されるから、使用も製造も禁止されてるはずなのに・・・」
なるほど、つまり、それで商品を大量に複製し格安でばらまくと。
そんなことになったら、市場経済が大変なことになってしまう。
でもなんでよりによってDVD-BOXなんだろう。
「とにかく、さっさと捕まえてしまいましょ」
「冬二は一応これを持っておいてくれ」
春香は俺に一丁のレーザー銃を手渡そうとしてきた。
蓮花のとは違って普通の銃だ。
「いやいや、俺に渡されても使えないよ」
「大丈夫だ。サポート機能があるから初心者でも安心。
いざという時のために持っておいてほしい」
俺はは渋々承諾してレーザー銃を受け取った。
春香はもう一つ自分のレーザー銃を取り出し、
蓮花に準備完了の合図を送った。
「それじゃあ、いくわよっ!」
そこには井原一人だけがいた。
中庭にはいると、蓮花はすぐに銃口向けた。
俺もぎこちないながらもそれを真似する。
春香はすぐさま威嚇射撃を撃った。
「アンタ何撃ってんのよ!」
「あ、ついうっかり」
うっかりで相手を刺激すようなことはやめてくれ!
だが、井原に動揺した様子はなかった。
「まさか、こんな辺境の星にまで宇宙刑事がいたとはね」
「井原健司。お前を完全コピーくん使用の罪で逮捕する」
普段から少し抜けている感じの春香だが、さすがは宇宙刑事。
結構様になっている。
「そうはいかない。僕の崇高な野望の為にも
ここで捕まるわけにはいかない」
野望・・・。
俺にはどうしても気になっていることがあった。
どうにも、やつの目的わからないのだ。
地球の経済を混乱させたいのか、それとも、ただ小銭儲けでもしたいのか。
考えてもわからないから聞いてみるのが手っ取り早いか。
「おい、どうしてこんなことをするんだ」
あいつは待ってましたと言わんばかりに両手を広げ、
高らかに叫んだ。
「それはね・・・僕が『幸運の星』の大ファンだからさ!」
・・・・・。
「「「 は? 」」」
三人の声が同時に重なった。
え、なんだって?
「僕はね、この作品をもっとたくさんの人に知ってもらいたいのさっ!
でも、宇宙では日本のアニメはそれほど流通してるわけじゃない。
だから、完全コピーくんを使って大量に増やし、宇宙中に
格安でばらまくのさっ!」
・・・・・。
もう言葉も出ない。そんなことの為だけにわざわざ宇宙のルールを破ったと。
しかも、これ海賊版みたいなもんだから、こっちの法律のにも引っかかってないか?
こいつバカだろ。
これ以上の問答は無用と判断した蓮花は最後通牒を突きつける。
「おとなしくしてなさいよ。さもないと・・・」
「それはどうかな?宇宙刑事ごときに、僕の野望は阻めない」
そう言うと井原なんと服を脱ぎ始めた。
「なぜ脱ぐ!?」
馬鹿なだけじゃなくて露出狂だ。危ないやつだ。
理由はすぐに分かった。上半身裸になった井原は、脱いだ自分の服を
くしゃくしゃに丸め始めた。丸まった服は、この後さらに変形し、
銃の形になった。服がそのまま武器になるとは、宇宙の技術は
進んでるな。
「さあこのビームマシンガンで君たちを蜂の巣にしてあげよう」
次に、あいつは羽を広げ飛び上がった。井原が俺たちを見下ろす形になる。
向こうも完全に臨戦態勢だ。
これ以上は危険とかんじたのか春香はレーザーを
ビームマシンガンに狙いを定めて撃った。
しかし、障壁のようなものがあったのかレーザーはあっさり弾かれた。
「くっ!」
春香は苦悶の表情を浮かべた。
今度は井原が俺たちにビームマシンガンを向けて撃ってきた。
「シュバルツシルト展開っ!」
マシンガンの出始めと同時に蓮花が手をかざすと黒い盾が俺たちを覆い、
エネルギーの弾を防いでくれた。
しかし、向こうの威力が高いのか徐々に盾が傷ついてゆく。
「長くはもたないから、今のうちに作戦を伝えておくわ。
二人ともよく聞いて」
俺と春香は分かったとうなずいた。
「今は黒い盾がアタシたちを覆って、あいつから見えなくしてくれてる。
だから、今のうちに準備を済ます」
蓮花はリボルバーの弾を取り出して銃に込めながら説明を続けた。
「まず二人にスケルトンバレットを撃つわ。結城君のために説明すると、
対象を一分間、透明人間にする特殊弾よ。当たっても死にはしないから
大丈夫。で、アタシはダミーバレットっていう特殊弾であいつの注意を
ひくから、その間にあいつの背後に回って。障壁は前しか防げないタイプ
だと思うから、後ろからあいつの羽を狙って撃ち落として確保」
今の話を聞く限り、蓮花のレーザー銃がリボルバー式なのは、
その特殊弾とやらを使い分けるためか。宇宙刑事というよりも
ガンナーだな。
「犯人確保には危険が伴うから春香が、撃つのは結城君ね」
俺が?
春香は了解したが、果たして俺にできるのか?
そんなこと考えても、黒い盾がミシミシと悲鳴を
上げているのが聞こえるともうなりふり構っていられる
状況ではなかった。
「もう、もたない。はじめるわよ!」
俺と春香にスケルトンバレットのレーザーが当たると、
体が本当に見えなくなっていった。どうやら、透明人間
になれたようだ。
「冬二、行こう」
「お、おう」
正直やれるかわからないけどやるしかない。大丈夫。
なんだかんだ、ロボットだって操縦できたじゃないか。
覚悟を決めて、盾の外へ飛び出した。
俺たちの姿は見えていないので井原は黒い盾を撃ち続けている。
蓮花もダミーバレットを放ったようで、上空に威圧感のある竜が
出現した。
こちらは偽物と分かっていたからそんなに驚かなかったが、向こうは
突如現れた竜に怯えているようだ。
「う、うわっ、なんだこれはっ!?」
恐怖に取りつかれたのか、ダミーの方に銃を乱射した。
ダミーの竜は発泡スチロールのように脆く、何発もの
風穴を開けられて消滅した。
「くそ、脅かしやがってっ!」
悪態をついて再び標的を黒い盾へ。もう限界だったのかほんの数発入れられただけで
黒い盾は砕け散り、蓮花の姿が露になる。
今度こそ仕留めるために蓮花に狙いを定める。しかし、
「二人いないっ!?どこに・・・」
俺たちがいなくなっていることにようやく気付いた。
もうすでにお前の後ろに回り込んで銃を構えてんだよ。
もう少し早く気付いていれば、何かしらの手を撃てたかもしれないが
もう遅い。
--これで終わりだ!
レーザーを撃つとサポート機能のおかげで寸分の狂いもなく
井原の右翼を射抜いた。
羽にダメージを負い、落下してくる。ビームマシンガンも手から離して
しまっていた。地面につく直前に、
「確保ー!」
という声とともに春香がキャッチ。旗か見れば地面スレスレでピタッと
止まっているように見える。そのまま井原は逮捕された。
やれやれ、やっと終わった。
一分が経過しようやくスケルトンバレットの効果が切れた。
「じゃあ、アタシはこいつを連れていくから、しばらく
地球からいなくなるけど、その間は任せたわよ」
「うん、任せてくれ」
それだけ話すと蓮花は「僕の野望がぁ・・・」と呟く井原を
引きずって行ってしまった。
完全コピーくんの使用はそれだけで重罪らしく、個人の裁量では
裁けないため、蓮花が連れていくことになった。
最近帰ったばかりなのに、少し気の毒だな。
「すげえな、お前の同僚」
「そうだろ?私の自慢だ」
蓮花を褒めたのに春香はまるで自分のことのように嬉しそうだった。
さて、騒ぎのせいで騒然となった学校を元通りにしないとな。
・・・・・・・はい、終了。
後書き
こういうの初めてだから難しい。少しでも楽しめるなら幸い。
あとは任せた。
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