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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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少女と亡霊


「うおおおおっ!」

ナツ、グレイ、ティアの妖精メンバー+シャルルとアランは、闇ギルド裸の包帯男(ネイキッドマミー)に囲まれていた。
人数では明らかに不利、なのだが―――――

「らあっ!」
「ぐわっ!」
「がっ!」
「ぎえー!」

ナツが炎を纏った右拳を勢い良く地面に叩きつける。
その爆風で周りにいた奴等は吹き飛ばされていく。
すると、ナツの背後に剣を持った男が現れ、剣を振り上げる。

「!ひっ」

その男の顔面をグレイが掴んだ。
一瞬にして顔面を凍らせ、ぐりんと振るい―――

「ぐあっ!」
「ぎゃっ!」
「うがっ!」

男を投げつけ、地面を凍らせた。
その近くにいた奴等は全員まとめて吹き飛ぶ。

「おのれぇ・・・魔導散弾銃でも喰らいやがれ!」

ナツの背後にいた男が―――商業ギルド『LOVE&LUCKY』を襲った際のリーダー格の男だ―――がら空きのナツの背中に向かって散弾銃を発射する。
沢山の銃弾がナツを襲い―――――

「!」

その銃弾は全て、ナツに当たる前に炎によって燃え尽きた。

「ほぅ・・・なかなかいい女じゃねーか」
「オレのモンになるなら見逃してやってもいいぜ」

ティアは多くの男―――全体の3分の1くらいだろう―――に囲まれていた。
下心丸出しの目で見られ、ティアの殺気が放出される。

「見逃す必要はないわ。アンタ等全員、ここで裁くし」
「んだとコラァ!」
「小娘のくせに!」

短気な男共は一斉にティアに向かっていく。
が、相手は多くの闇ギルドを討ち2度と闇の世界で生きる事など考えたくもなくなるほどに叩き潰してきた最強の女問題児。
3つの異名を持ち闇の者は無慈悲に裁く彼女にとって、この程度敵ではない。

「永遠に覚めぬ眠りを。沈め、そして眠れ・・・永久に目覚めない悠久なる深海へと誘え」

呟き、一閃。
煌めく青い閃光の背後で、多くの男が一瞬にして倒れた。

「はっはーっ!」
「オラァ!」
「愚者は妖精の前で堕ちなさい!」

この3人の勢いが止まる事はない。
敵がいなくなるまでは、その勢いは誰にも止められない。

「す・・・凄い・・・あれだけの数を・・・」

アランは目の前で素早く倒されていく男達を見て呆然とする。

「なかなかやるようだぜ、ガトー兄さん」
「いっちょやるか、ザトー兄さん」










六魔将軍(オラシオンセイス)の拠点である洞窟。
そこにはブレインとレーサー、ミッドナイトの六魔の他に、連れてこられたウェンディとルーとハッピー、そして棺桶にいる大悪党ジェラールがいた。

「ジェラールってあのジェラール?」
「そうだよ、ティアが言ってたのとそっくりだし」
「ハッピー、ルーさん、知ってるの?」

面識はないがその名は知っている。
楽園の塔にて敵対した男。

「知ってるも何もコイツはエルザを殺そうとしたし、評議院を使ってエーテリオンを落としたんだ!」
「そのせいで評議院は破壊されたし、ナツとティアだって大変な思いしながら戦ったんだよ!」

ハッピーとルーは喚く。
それを聞いたウェンディはジェラールを見つめ、その体を小刻みに震わせて俯いた。

「そうみたいだね・・・」
「生きてたのかコイツ~」
「むぅぅ・・・ナツとティアが倒したはずなのに」

2人は憎々しげにジェラールを睨む。

「この男は亡霊に取り憑かれた亡霊・・・哀れな理想論者。しかし・・・うぬにとっては恩人だ」
「ダメだよ!絶対こんな奴復活させちゃダメだ!」
「そうだよ!コイツのせいで沢山の人が傷ついたんだ!」

ハッピーとルーはウェンディを見ながら叫ぶ。
が、ウェンディは俯いて震えるだけ。

「「ウェンディ!」」

2人の声が重なる。

「早くこの男を復活させぬか」

そう言うブレインの手に、1本のナイフが握られる。
そして、そのナイフはジェラールの右腕に突き刺さった。

「・・・!やめてぇーーーーーーーーーっ!」

ウェンディの悲鳴に似た声が響き渡る。

「あう!」

すぐにブレインの杖がウェンディを殴り、ウェンディはドカッと近くの壁に飛ばされた。

「治せ。うぬなら簡単だろう」
「ジェラールは悪い奴なんだよ!ニルヴァーナだって奪われちゃうよ!」
「コイツはジェラールを最後まで信じようとしたエルザも裏切ったんだ!そんな奴を治しちゃダメだ!」

ブレインは命令するように言い放つ。
ハッピーとルーはウェンディを説得するように叫んだ。

「それでも私・・・この人に助けられた・・・私だけじゃない・・・アラン君も、ココロちゃんも・・・」

ウェンディの体が小刻みに震える。
その握りしめた拳に、ポタポタと雫が零れた。


「大好きだった・・・」


ボロボロと、ウェンディの頬を大粒の涙が伝う。
その姿と言葉にハッピーとルーは言葉を失い、ブレインは薄い笑みを浮かべた。

「何か・・・悪い事をしたのは噂で聞いたけど、私は信じない」
「何言ってんだ。現にオイラ達は・・・」
「きっと誰かに操られていたのよ!ジェラールがあんな事するハズない!」

ハッピーの言葉を遮るように、ウェンディが叫んだ。

「お願いです!少し考える時間をください!」
「ウェンディ!」
「何言って・・・!」

ウェンディの頼みに対し、ブレインは少し考えると口を開いた。

「よかろう。5分だ」

猶予は5分。
ウェンディは涙を浮かべてジェラールを見つめた。

(ナツ~、まずいよ・・・早く来てよ~・・・)

ハッピーは困ったようにナツの到着を待つ。
そんな中、ルーは真っ直ぐにジェラールを見ていた。

(世の中には必要とされる悪人もいる・・・だけど、僕はアイツらを許せない。エルザは目の前にジェラールが現れた時、彼を許せるのかな・・・?)











そんな事になっているとは全く知らないナツ達はというと。

「だはーっ!」
「ぶはーっ!」
「何疲れてるのよ」

少々ボロボロになり怪我を負っているナツとグレイは苦しそうに息を切らした。
ティアは見事なまでな無傷状態で息1つ切らさず立っている。
そしてその目の前にはザトーとガトーを含めた裸の包帯男(ネイキッドマミー)全員が倒れていた。

「何だよこいつ等、ザコじゃなかったのかよ」
「意外とやるじゃねーか・・・」
「そうでもないわ。この程度のギルド、探せば星の数くらいはあるんじゃない?」

口元の血を拭うナツと溜息をつくグレイにティアは顔色1つ変えず言い放つ。
彼女にとってこれくらいは朝飯前のようだ。

「当たり前よ!相手はギルド1つよ!何考えてんのよアンタ達!」
「でも凄い・・・こんな数をこうも簡単に・・・」

物陰に隠れて怒鳴るシャルル。
その横に立つアランは呆然と呟いた。

「オイ!ぎゃほザル!おめえらのアジトはどこだ!」
「ぎゃんっ」

ナツはザトーの首根っこを掴む。

「言うかバーカ、ぎゃほほっ」

当然言わないザトー。
が、次の瞬間。

《ゴンッ!》

大きな音が響いた。

「オイ!でかザル!」

どうやらザトーに頭突きをかましたらしい。
すると、ティアは溜息を1つついてナツを退ける。

「退きなさいナツ」
「ア?」
「アンタは敵から物を聞き出すのが下手すぎるわ。私が手本を見せてあげるから」

そう言うとティアはつかつかとガトーに向かい――――――

「!」

勢いよくガトーの首根っこを掴んだ。
その右手には鋭く尖った水の剣。
そして青い目には尋常ではない殺気。
華奢な身体からは底知れない殺気が放たれている。

六魔将軍(オラシオンセイス)の拠点の場所を言いなさい。言うも言わないも自由だけど―――言わないなら、アンタの首ぶった切るわよ」

その目は本気だ。
冷酷で無慈悲な瞳がガトーを睨みつける。

「あ、あれは手本じゃねー・・・よな?」
「手本だとしたら、悪い方の手本だな」
「え、えーっと・・・」
「本当めちゃくちゃね、アンタ達」

容赦の欠片もないティアにナツは声を震わせながら呟き、グレイが呆れたように言い、アランは困ったように首を傾げ、シャルルは呟いた。










「お前らの拠点はどこにある」
「今なら女帝の業火(エンプレス・オブ・エンプレス)1発で許してやる・・・さぁ、早く言え」

青い天馬(ブルーペガサス)のレンとイヴ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のヴィーテルシアは闇ギルド、黒い一角獣(ブラックユニコーン)を全員倒していた。
ヴィーテルシアがティアに似ているのは仕方ない。









「西の廃村?古代人の村か?」

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオン、シェリー、ジュラと妖精の尻尾(フェアリーテイル)のアルカは闇ギルド、レッドフードを全員倒し終えていた。

「墓穴を掘りましたね。私達を倒すつもりがアジトの場所を突き止められるなんて」

シェリーが笑みを浮かべる。

「リオンとシェリー、アルカ殿は西に向かえ」
「ジュラさんは?」

ジュラの言葉にリオンはどこか不思議そうな表情で尋ねる。

「大きな魔力が近づいている」
六魔将軍(オラシオンセイス)ですの!?」
「ワシはここで迎え撃つ」
「んじゃオレも」

西に向かえと言われたのにアルカはその場に残ると言い出した。

「いや、アルカ殿は西へ・・・」
「だってこっちの方が面白そうだろ?」

何か問題でも?と屈託のない笑顔で首を傾げるアルカ。
それを見た蛇姫メンバーは顔を見合わせ、やれやれと言いたげに肩を竦めた。











「今日のところはこれくらいで許してやろう。命拾いしたな、若人(わこうど)達よ」

一夜は傷を負いながらも―――――――

「だから助けて~!」

―――――捕まっている。

「うっせえよオッサン」
「わ・・・私はまだ29だぞっ!」
「黙れっての」

一夜は鉄棒の『ブタの丸焼き』のような体勢で捕まっていた。
それを囲むように多くの男達がいる。

「解った!こうしよう!私も本気を出す。もう1回正々堂々勝負しようじゃないか!若人はそうでなきゃ。私も少し君達をなめていたようだ。いや・・・そもそも女性の前じゃないと本気を出せない性分でな。能ある鷹は爪を隠すって」
「うるせえよブタ野郎!」

一夜の言葉を遮るように誰かが叫ぶ。

「何でこんな奴連れて行かなきゃいけねぇんだ」
「ひとおもいに殺っちまうか」
「き、君達!上官の命令は聞くものだぞ!」
「エンジェル様が情報を取り忘れたんだと」
「あー・・・例のコピーする魔法かぁ」
「メェーン!」

一夜の声が響いた。












「ここか!?」

その頃、ナツ達はティアが脅した事によって聞きだす事に成功したアジトの場所に来ていた。

「ハッピー!ウェンディー!ルー!」
「ちょっと!敵がいるかもしれないのよ!」

崖の上から叫ぶナツにシャルルが慌てるように口を開いた。











「ハッーピィ、ウェンディィ・・・ルゥゥー・・・」

洞窟の入り口から声が聞こえてきた。

「!」
「ナツだ!」
「うわぁい!」

ブレインは洞窟の入り口の方を向き、ハッピーとルーは嬉しそうに抱き合う。
ウェンディは目に涙を浮かべたまま、ジェラールを見つめている。

「レーサー、近づかせるな」
「OK」

そう言った瞬間、レーサーの姿が消えた。

「ゴミどもが・・・」










『!』
「っ来る!」

突如空を切り裂くような音が響いてきた。
ナツとグレイ、アランが目を見開き、ティアが短く叫んだ瞬間。

「ぐあぁ!」
「ぐはぁ!」
「うあっ!」
「くっ・・・」

目にも止まらない速さでやってきたレーサーに全員殴られた。

「またアイツだ!」
「誰?」
六魔将軍(オラシオンセイス)の1人ですよ!」

首を傾げるティアにアランが叫ぶ。

「ここは任せろ!お前らは早く下に行け!」
「仕方ないわね・・・私も足止めするから行きなさい!」
「おし!」
「行かせるかよ」

レーサーは木の幹を伝って持ち前のスピードを駆使して邪魔をしようとするが―――

「おっ!?ぎゃっ!」

いつの間にか木はグレイによって凍らされており、つるんっと滑ってコケた。

「シャルル!今だ!羽!」
「あ、シャルル気絶してます!」

ナツとアランがシャルルに目を向けるが、シャルルは先ほどの攻撃によって目を回していた。
それを見たグレイが造形魔法の構えを取る。

「しゃーねぇ、これで行ってこい!」

そう言うと、グレイは氷の滑り台に似た道を造る。

「行くぞっ!」
「はいっ!」
「え?何!?」

ナツとアランがぴょんっと跳ね、それと同時にシャルルは目を覚ます。

「てめぇ・・・」

その声が合図だったかのようにレーサーが起き上がった。
サングラスを直し、その表情を怒りに染め上げる。

「とぉおおーーーーーーーう!」
「えぇぇーーーーーーいぃぃ!」
「きゃああああああぁぁぁぁ!」

そのままナツとアランは氷の道を滑っていく。
シャルルの悲鳴と共に、3人の姿は見えなくなった。
残ったグレイとティアはレーサーと対峙する。

「このオレの走りを止めたな」
「滑ってコケただけだろーが」
「責任転嫁甚だしいわね」










そしてナツ達は崖下へと下りた。

「うぷ・・・」
「酔ったの!?」
「えっ!?」

氷の道から降りると同時に酔ったナツにシャルルがツッコむ。
アランが驚いたような表情になる。

「ウェンディ!」
「ハッピー!」
「ルーさん!」

大声を上げて3人の名を叫ぶ。
すると――――――

「ナァーーーツー・・・」

声が響いてきた。

「ハッピー!」
「あの中よ!」
「行きましょう!」

近くの洞窟から聞こえてきたハッピーの声。
それを頼りにナツ達は洞窟に入り――――――

「な・・・何だ、コレ・・・」
「そんな・・・!」
「え・・・?」

自分の目に映る、『それ』を疑った。 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
見て解る通り、ティアはレーサーと戦う予定です。
そこしか予定上空いているスペースがないのと魔法の相性からそうしました。

感想・批評、お待ちしてます。 
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