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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第二十四話 大戦の予感

アルケイディア帝国帝都アルケイディスにて。
皇帝グラミスは元老院の議会に出席していた。

「ロザリア帝国大本営が演習を装って大軍を集結させております。開戦の大義名分が整うのを待って・・・我が国に先制攻撃するはらかと」
「これほど緊張が高まった時期にリヴァイアサン艦隊を失ったのは痛手でしたな」
「いまロザリアに攻め込まれれば苦戦は確実。かかる事態を招いた全責任は・・・独断で艦隊を動かしたヴェイン殿にあります」

元老院議員の議論を聞き、元老院議長グレゴロスはグラミスに話しかける。

「ヴェイン殿は裁かれねばならない。それが元老院の総意です。陛下。ご子息とはいえど厳正な処分を」
「ヴェインを庇うか、予が皇帝の座から降りるか・・・ふたつにひとつという訳か」

グラミスは拳を握りながらそう言った。

「ご心痛のほど。お察し申し上げます」

グレゴロスがグラミスにそう言うと隣の議員が声をあげる。

「なに。ヴェイン殿のかわりはラーサー殿が立派におつとめになるかと」
「あれはヴェインになついておるしまだ幼い」

グラミスはグラゴロスの横にいる議員の方を向きそう言った。
ラーサーはまだ12歳である。
それに今の状態でラーサーが皇帝になれば元老院の傀儡になりかねない。
しかし別の議員が声をあげる。

「いつまでも幼くはありますまい。今はヴェイン殿の動きを探っておられるとか。活躍の場を得て意気込んでおられるようですな」
「誰がそそのかしたものやら」

グラミスはラーサーをそそのかしたのは元老院であると考えている。
そしてその考えはあたっている。
元老院がラーサーに人造破魔石を渡し、ラーサーは信頼していたヴェインに不信感を募らせている。

「さて・・・かつてヴェイン殿も兄君ら過ちを断罪されたではありませんか。・・・あの時は陛下のご命令でしたが」

グラミスは思い出したくないことを思い出し顔を俯ける。
そして死病の症状でせきがでた。
グレゴロスはグラミスのせきが収まるのを待たず話しかけた。

「ご安心くださいグラミス陛下。われら元老院が支える以上・・・アルケイディア帝国は安泰です」
「よかろう。至急ヴェインを帝都に戻す」

グラミスはそう言って会議を打ち切った。
まだ多くの問題を抱えている今ヴェインを処断するの論外だ。
しかし元老院に対抗しようにも老い先短い自分では恐らく途中で死んでしまう。
次期皇帝になるべきヴェインは元老院に恐れられており、リヴァイアサン艦隊壊滅の件を理由に皇帝になることは承認しないだろう。
だから元老院はラーサーを自分達に都合のいい人形として皇帝にするのは簡単に予想できる。
ヴェインを呼び戻し元老院への対抗策を考えなくてはならない。




ロザリア帝国帝都ルブラにて。
琥珀の谷にある都市の王宮でロザリア帝国皇帝ユリウス・マルガラスは諜報部を統括するアルシド・マルガラスからの報告を受けていた。

「大本営め・・・また私の許可を得ずに行動しおって」
「ですが、オーダリア東部及びケルオン大陸にある植民地に分散して軍事演習という名目ですので許可をとる必要がありません」

ロザリア帝国では前マルガラス朝が終焉して以来大本営と皇帝が対立している。
一番の原因は皇帝が直接軍を支配下においていないからだ。
軍の演習も一定数を超えない限り大本営の独断で動かすことができる。
ユリウスは頷き、報告の続きを促す。

「国外諜報課の報告は?」
「ビュエルバの領主オンドール侯爵が病を理由にビュエルバを離れ、反帝国組織を結集し始めているそうです」
「確かか?」
「確かな筋の情報です」
「面倒な。国内諜報課からの報告は?」
「報告によると大本営にいる強硬派の将軍達も東部へ赴きいております。侯爵が動けば、彼らも動くでしょう」
「あまりよい報告が無いな」
「しかし対アルケイディア諜報課よりよい話もあります」
「なんだ?」
「アルケイディアの反戦派と協力をとりつけることができたとのことです」

それは吉報だ。
ユリウスは大戦を望んでいない。
内政に力をいれたいので戦争など願い下げである。

「反戦派からの手紙でございます」

そういってアルシドは胸のポケットから書類を出し、ユリウスに手渡す。
そしてユリウスは手紙の内容を読み、アルシドに話しかける。

「これはまた大した奴が反戦派の代表だな」
「私が陛下の代理人としてそこに書いてある場所に行くつもりです」
「ふむ、許可する。頼んだぞアルシド」
「はっ」

アルシドはユリウスに礼をして退室した。
廊下を歩いていると黒い髪をした人物が話しかてきた。

「よおアルシド。大本営には手を焼かされるな」
「ああ。アダス」

黒い髪の人物の名はアダス・マルガラス。
国内の災害や疫病の情報を収集する国内諜報課の統括である。
だが大本営が常に暴走状態のロザリアであるから殆どが大本営の情報の収集ばかりのため対大本営諜報課とも言われている。

「東の方に行くんだろ。クライスさん元気かな?」
「貴方はまた昔の上司の話か」
「そうだよ。悪いか?」
「いや」

20年程前に諜報部に入った時の上司のことをアダスは尊敬している。
アルシドもアダスと同期で同じ上司であったが彼は大した手腕の持ち主であった。
1年ほどで彼は諜報部から抜けたが情報操作の上手さはアルシドも評価しているが会うたびに言われても。

「アルシド様」

美しい声が聞こえてきた方向にアルシドとアダスは向いた。
そこには綺麗で長い金髪の笑顔が似合いそうな美女がいた。
体系は・・・ボンッキュッボンッとでもいえばいいだろうか。

「カナート・・・どうしました?」
「準備が整いました。直属の部下も全員連れて行くでよろしいのですね?」
「ああ」

するとアルシドはカナートについて行こうとするとアダスがアルシドの肩を掴む。

「なんだ?」
「毎回言っているような気がするが・・・何故お前の直属の部下は綺麗な女性ばかりなんだ?」
「私の趣味だ」

そう言ってシドはカナートと一緒に向こうへ歩いていきその様子をアダスは呆れた顔で見ていた。





アルケイディア帝国旧ダルマスカ王国領王都ラバナスタにて。
セア達はラバナスタのターミナルにいた。
もう前からこの会社はブラックゾーンに入っていることは知っていたがセアは呆れていた。
だってこの前のアトモスと違いレモラは戦闘機だ。
それをターミナルに止めても会社はなにも言ってこなかった。
今の日本でたとえると空港に爆撃機を止めてなにも尋ねてこないみたいな話。
そのことに呆れているセアに街の噂話が聞こえてきた。

「一体何の騒ぎだ?」
「西の砂漠で帝国の飛空挺が事故を起こしたらしい」
「冗談はよせ。西の砂漠はヤクトだぞ」

その噂話を聞きセアはアーシェに話しかけた。

「騒ぎが収まるまで姿を隠したほうがよいかもしれません」
「そうだな。で? 何処に隠れるんだ?」

バルフレアの言葉にセアは軽くを傾げ、何か思いついたという風に手を叩いた。
周りが冷たい視線で見ていることに気づきポケットから鍵を出し、パンネロに渡した。

「これミゲロさんの店の倉庫のかぎじゃない」
「だからそこに身を隠してもらおう。ヴァンと俺でミゲロさんに説明しにいくからパンネロは王女様達を案内してやって」

そう言ってセアはヴァンを連れてミゲロの店に向かった。
店に着くと勝手に何処に行ってたんだ!?とミゲロの雷がセアとヴァンに落ちたのは言うまでも無い。 
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