少年と女神の物語
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第三十話
武双が隆哉、御崎が柚実に再び攻撃しに行き、相手に攻撃されないように連激を加える。
武双は隆哉の日本刀に対して槍二本でどうにか抑えているが、隆哉は左腕を使っていないので、隙を見せればすぐにやられるだろう。
そして御崎は幅広の両手剣で攻撃しているにもかかわらず、柚実の細いレイピアで捌かれ続ける。
柚実は器用に衝撃を逃がしきっているのだ。
「武双!槍を!」
「了解!」
そして、日本刀が塞がれていることを隙と見たアテは武双が新たに召喚した槍を受け取り、隆哉に左側から攻撃を仕掛けるが、
「残念」
「え・・・鞘で!?」
「ヤベ、忘れてた」
隆哉は左腰の鞘を逆手で抜き取ってそれで防ぎ、さらに手首を少し返して二人をぶつけ、まとめて蹴り飛ばす。
「隙あり!」
「でもないぞ」
依林が背後から踵落としを加えるが、それも隆哉は両手を床につけ、足に引っ掛けて武双たちの元に投げ飛ばす。
そして、その間柚実たちのほうは、
「何で二人係でも!?」
「少しは出来るようになった自信あったんだけど・・」
御崎とビアンカの二人係で柚実を攻めるが、柚実はレイピアをうまく使い二人の攻撃をいなす。
二人の攻撃は片腕で全ていなしているのだ。
「だめよ、御崎ちゃん、ビアンカちゃん。腕は確かに上がってるけど戦い方次第でどうとでもなるもの。相手によって変えていかないと、何にも出来ないわよ?」
「いや、母さんと最後に戦ったときからまた戦い方変わってない・・・?」
「当然よ。毎回変えてるんだもの」
「うん、どうしようもないね!」
ビアンカが笑いながらそう言うと、後ろから魔術による遠距離攻撃が放たれる。
発射元は、立夏と氷柱の二人だ。
が、柚実はそれに対して同規模の攻撃をぶつけ、爆発の余波で近くにいた二人を吹き飛ばす。
「立夏ちゃんに氷柱ちゃんも、あからさま過ぎるわ。もう少し・・・せめてこれくらいは工夫しないと」
「「え・・・?あ、」」
次の瞬間、二人の足元に来た小さな虫が爆発し、立夏と氷柱の二人も吹き飛ばされる。
「全く、だめねぇ四人とも。そっちの三人はどうだった?」
「微妙なところだな。ただ、依林は確かに盗みの腕が上がっている。一体どうやったのか、鍔だけ抜き取られた」
そう言って隆哉が持ち上げた日本刀には、確かに鍔の部分がない。
そして、談笑している二人の間を、依林が投げた鍔が通り過ぎる。
「う~ん・・・やっぱり当たらないかぁ・・・」
「でも・・・上手く、行きました・・・蠱毒」
「ん?・・・あ、ムカデ」
隆哉が足元を見ると、そこには毒々しい気配を放つムカデがいた。
そして、そのまま呪いを撒き散らす。
「あら、呪いの質が上がってるわね」
「確かに、始めて会ったときに撃たれたのとは比べ物にもならないな・・・払え、急急如律令」
が、そんな呪いも隆哉が取り出したお札によって払われる。
「あ、後ろを取ろうとしてもムダよ、三人とも?」
「「「へ・・・?」」」
人数がいる分、隙をついて後ろに回っていた三人、マリー、切歌、調もすぐにバレ、柚実に笑顔を向けられると・・・足元から伸びてきた鎖によって縛られる。
「はい、まずは三人。そういえばリズちゃんが見えないけど・・・」
「術式開放。ボム」
噂をすればなんとやら、リズの声が聞こえ、二人の足元が爆発する。
二人は瞬時に判断して跳ぶが、着地したところにも仕掛けてあったようでそこも爆発する。
まあ、実際にはどこに着地しても大丈夫なように片っ端から仕掛けてあり、リズはそれを仕掛ける都合で姿を見せていなかったのだが。
「う~ん、これは厄介ね・・・対象爆破の術式かしら?」
「そんなところだろうな。爆破までのタイムラグ、二秒だ」
「ありがとう、隆哉さん。じゃ、行くわよ!」
二人はタイムラグを計ると、一気に走り出す。
上手く爆破に直撃しないようにタイミングを考え、爆風を利用することでスピードを速めながら進むので、武双たちとの距離は一気に狭まり、当身によって全員を沈める。
カンピオーネである武双ですら、一撃で気を失う。もう普通ではありえないレベルのことだ。
「よし、これで終わりだな。で、どうだ?誰に行かせる?」
「そうねえ・・・武双くんは確定として・・・」
柚実は全体を見回し、二人に目をつける。
「後は、立夏ちゃんとマリーちゃんにしましょう」
「まあ、それで大丈夫か。邪魔してきそうなところにはもう釘をさしてあるからな」
「え、大丈夫よ。それに、何かあっても武双くんがいれば何とかなるでしょうし!」
そう言いながら柚実は入り口に立ち、
「任せましょう、トリシューラの回収!」
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