| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

少年少女の戦極時代

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第58話 おこりんぼ咲


 家に帰った咲は無断連泊を両親に散々責められ、泣かれた。
 ダンススクール以外の寄り道禁止を言い渡されたが、咲は大人しく従った。それだけ心配させてしまったという自覚はあったから。


 そして今日、ようやく母の許しが出て、久しぶりにチームメイトに会いに野外劇場に向かっていた。

 その途中、前から走ってきたモノを見て、咲はその場に棒立ちになった。

(インベス!? なんでインベスが宝石なんか持ってにげてるの?)

 街中で変身できず、とっさに進路を避けた咲に、今度は人間がぶつかってきた。咲は派手に前のめりにコケた。

「うー、いだぁ……舞さんっ」
「咲ちゃんっ。ごめん、大丈夫?」

 舞は咲を立たせ、服から埃を払ってくれた。

「ひょっと舞さん、あのインベス追いかけてる?」
「こっちに来たの!?」
「うん。あっち行ったよ。行くならあたしも連れてって。あたしがいないとインベスと戦えないでしょ?」

 舞は迷う様子を見せたが、インベスを見失うことを恐れてかすぐに肯いた。咲は舞と一緒に走り出した。




 インベスが向かったのは、湾を跨ぐ大橋の下の埠頭だった。

 そこには信じたくない光景が広がっていた。

 赤を基調にした格好の男が4人、金銀宝石を手にはしゃいでいる。その傍らには忠犬のように座って動かないインベス。

「曽野村――!」
「なぁんだ。誰かと思ったらチーム鎧武の連中か」
「あんたたち……まさか、インベスを使って強盗を!?」
「どうせビートライダーズは、怪物使いの悪役ってことになってんだろ? 俺たちはロックシードで好き放題やってやる。もう怖いもんなんかねえぜぇ!」

 男たちから下卑た笑い声と快哉が上がる。

「バカ!! あんたたち、何のためにステージで踊ってきたのよ」
「目立ちてぇ、暴れてぇ。ただそれだけのことだったのさ」

 咲の中で何かに大きく亀裂が入る音がした、気がした。

(鎧武みたいに楽しんでもらうためじゃない。バロンみたいに強さを示すためでもない。こいつらは本当にダンスなんてどうでもいいやつらなんだ)

 咲は舞を後ろに押しやり、戦極ドライバーとドラゴンフルーツの錠前を取り出した。
 レッドホットの男たちが怯んで下がる。

「どうしたのよ。出してみなさいよ。ジマンのインベスであたしのこと好きホーダイしてみなさいよ。爆破してやる。あんたたちごと」

 咲の我慢はとうに臨界値を超えている。――もう泣かないと決めたが、もう怒らないとは決めてない。むしろ、泣かない分の感情が怒りに加算されて、これ以上ないほど凶暴な気分だった。

 いざドライバーを装着しようとした時だった。

 横からレッドホットのものとは別のインベスが現れ、レッドホットのインベスを殴り、海へと放り捨てた。
 それを見た曽野村たちは、先の威勢のよさが嘘のように遁走した。

「呆れたもんだな。お前、本当に状況分かってねえんだな」

 声がして、ロックシードを施錠する時特有の音がした。インベスがクラックからヘルヘイムへ還っていった。

 咲は音源を見やった。
 チームバロンの戒斗とザックがそこにいた。 
 

 
後書き
 この歳の女の子が無断で連泊したら普通の親御さんは雷大連発ですよね。咲、そこは怒られとけ。
 チャッキーにはログアウトしていただきました。チャッキーごめんね。
 「あたしのこと好きホーダイ云々」は決してやましい意味では言っておりませんよ? その辺が咲もまだまだ子供です。
 そしてヒーローは遅れてやって来るぱーと2。戒斗とザックが助けてくれました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧