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言う程もてない

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第五章

「一緒に家まで帰るから」
「家まで誰も声かけてこないでしょ」
「絶対に」
「横に誰かいたら大変じゃない」
「今みたいに離れて・・・・・・まあモロバレだけれどね」
 それでもだというのだ。
「そうして見ていればいいでしょ」
「駄目よ、登下校の時はね」
 どうしてもだというのだ。
「一緒にいないと」
「それで見るのね、誰が声をかけてくるか」
「そうしてくるか」
「そう、秀幸君の傍でね」
 学校にいる時と同じ様にというのだ。
「そうするから」
「これ何時まで続けるの?」
「わかるまでよ」
 それまでだというのだ。
「それまで続けるから」
「わかるまで?」
「っていうと何時までなのよ」
「だからわかるまでよ」
 質問に繰り返しで答える、今の藍はそうなっていた。だがそれでも藍は険しい声でグラウンドを見つつ言うのだった。
「それまでね」
「ずっと見張るのね」
「そうするのね」
「そう、やっていくから」
 秀幸を見張る、もっと言えば傍にいて監視するというのだ。
「絶対にね」
「こうしたことが何時まで続くか」
「ストーカーじゃなくてお目付けが続くのかしら」
「全く、恋は盲目っていうけれど」
「今の藍ちゃんは特にそうね」
 周囲は呆れ顔で言うしか出来なかった、それでだった。
 藍は部室から着替え終えて出た秀幸の前に来てこう言った。
「一緒に帰ろう」
「待っていてくれたんだ」
「ええ、そうなの」
 藍は何でもないことを装って秀幸に答えた。
「ずっと部活見守ってたし」
「そういえば土手の方にいたよね」
「気付いてたの」
「うん、見てたから」
 それで気付いていたというのだ。
「だからね」
「そうなのね」
「そう、じゃあ今からね」
「うん、一緒に帰ろうね」
 藍はにこりとして秀幸と一緒に帰った、そうして下校の時もだった。
 秀幸の左手を身体全体で抱き締めてそうしてだった。
 左右を必死に監視しながら帰った、それは秀幸の家まで続いた。そうしてだった。
 玄関のところでもだ、彼に必死の顔でこう言った。
「秀幸君のお母さんと妹さんが」
「どうしたの?」
「うん、仲いいわよね」
「うん、そうだよ」
 秀幸はにこりとして、何も知らない笑顔で藍に答えた。
「うちの家族はね」
「そうよね。けれどね」
 それでもだというのだ。
「お部屋に入れたりしないわよね」
「そうしたことはしないから」
 それは絶対にだというのだ、秀幸は藍に笑って答える。
「僕のお部屋は僕しか入れないからね」
「そうなのね。よかったわ」
「うん、それじゃあね」
「また明日ね」
「うん、明日ね」
 藍は何もないといったことを装ってそうしてだった、家に帰ってだった。
 その次の日も朝早く、いつもよりそうして身支度を整えて秀幸の家まで行った。そのうえで部活の朝練に行く彼と共に登校してだった。 
 昨日と同じ様に秀幸の傍にいて監視した、そのうえで。
 他の女の子が声をかけてくるかどうかを見て言った、だがだった。
 この日も誰も声をかけてこなかった、それでその次の日の体育の授業の時にクラスメイト達に対してく言ったのだった。 
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