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魚屋繁盛

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第八章

 二人同時にだ、こう言った。
「俺達結婚するから」
「今から区役所で婚姻届出しに行ってくるわね」
「そういうことで親父」
「これからも宜しくね」
「はっ!?手前今何言ったんだよ」
「ちょっと待て、こりゃどういうことだ」
 父達はすぐにだった、二人に言い返した。
「おい、そんな話聞いてねえぞ」
「結婚とはどういうことだ」
「だって、俺達もうな」
「子供も出来るから」
 二人の作戦は成功していた、それえこの場もこう言えたのだ。
「三ヶ月な」
「大学はちゃんと卒業するから」
「ガキって何だよ」
「俺は夢見てるのか!?」
「何だよこれって」
「どういう両肩でい」
 稲葉も真中もこの事態に目を白黒させる、それで何をどうしていいかさっぱりわからなくなっていた。それで。
 あたふたと言うばかりだった、だがその二人に。
 それぞれの女房がだ、こう言うのだった。
「ほら御前さん初孫だよ」
「初孫が出来るんだよ」
 それに加えてであった。
「準也が結婚するんだよ」
「麻琴が嫁に行くんだよ」
「だからいいね」
「祝うんだよ」
「祝うっておい、こいつの娘だぞ相手は」
「こんな奴の息子にかよ」
 二人は女房達にもこう返す。
「それでもかよ」
「それでもいいのかよ」
「いいじゃないか、いい娘だしね」
「こんないい話はないよ」
 女房達は戸惑う二人にこう穏やかに返す。
「じゃあいいね」
「これで」
「いいっておい」
「そんな筈ねえだろ」
 二人は女房達に必死の顔で反論した、顔は狼狽しきり目はしきりに瞬かれている。動揺が明らかに見て取れる。
「だから一体何がどうなってるんだよ」
「この事態は」
「だから、子供が出来て結婚するんだよ」
「二人がね」
「それじゃあ親だとわかるね」
「何をするのか」
 女房達は戸惑うばかりの夫達に返す。
「さあさあ、結婚式だよ」
「麻琴のお腹が目立つ前にね」
「何でこうなったんだよ」
「俺は夢でも見てるのかよ」
 まだこう言う二人だった。
「じゃあこいつと兄弟みたいなものになるのか?」
「そうなるのかよ」
「こいつの娘が俺の娘になって」
「こんな奴の息子を息子にするのかよ」
「それで二人共同じ孫を持って」
「祖父ちゃんになるのか」
 やっと頭が回ってきた二人だった、それでこう言ってだった。
 戸惑ったままだ、自分達の子供達に言うのだった。
「じゃあこうなったら仕方ねえ」
「幸せになれよ」
「いい親になれよ」
「孫を産んでくれよ」 
 こう二人に言うのだった、かくして。 
 大急ぎで結婚式も行われた、仲人はあの隠居が務め和式のそれで進んだ。そしてそれから数ヵ月後だった。
 麻琴は大きな男の子を産んだ、その初孫を見てだった。
 まずは稲葉がだ、こう言った。
「こいつは俺にだな」
「馬鹿、俺似だよ」
 その彼に真中が言い返す。 
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