少年少女の戦極時代
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第45話 魅惑の果実
(何て強さなの。ヘルヘイムの時でもあんなに強かったのに、今はそれ以上じゃない)
咲が慄いていると、工場内に人が駆け込んできた。
危ないから出て、と言うために陰から出て、月花はそれが葛葉紘汰と駆紋戒斗であると気づいた。
「咲ちゃん!?」
『紘汰くんっ』
月花は反射的に紘汰と戒斗の前へ駆け寄った。
「何で咲ちゃんがここに……」
『初瀬くんといっしょに来たの。なんか初瀬くん、ヘンだったから』
「初瀬?」
すぐに和やかに話し合っている場合ではなくなった。白いアーマードライダーが月花たちをふり返ったのだ。
『次はお前たちだ』
「! 戒斗!」
紘汰が戒斗はそれぞれロックシードを出して、鎧武とバロンに変身した。
月花は急いで鎧武、バロンと共に白いアーマードライダーと対峙した。
――この時、月花は気づいていなかった。自分が重大なミスを犯したことに。
知り合いの紘汰たちが来たからといって、この時、初瀬のそばから離れてはいけなかった――後に室井咲はそれを悔恨と共に思い知る。
まるで幽鬼のような足取りで、資材の陰から出てきた初瀬は、蔦から果実をもぎ取った。そして。
「もう一度俺に力をッ!」
初瀬は果実を貪り食った。
『やだっ、初瀬くん!? なに食べてるの!』
『おい――吐き出せ!』
月花は初瀬に駆け寄ろうとして――足を途中で止めた。
初瀬を侵蝕するようにツタが生え、初瀬に絡みついた。そしてツタは食い尽くした、といわんばかりに散って。
中から、ヘキジャインベスが現れた。
前後の繋がりからして、初瀬が変容したモノとしか考えられなかった。
『え? なに……なんで?』
『手遅れか――』
ふり返る。白いアーマードライダーがヘキジャインベスに弓の狙いを定めている。
『やめろ!』
鎧武が白いアーマードライダーの腕を掴んで矢の狙いを逸らさせた。すぐ横をソニックアローが飛んで、月花はつい身を竦めた。
『何をする』
『あんたこそっ。そんな武器で撃ったら初瀬が死んじまうだろ!』
『当然だ。殺さないでどうする』
『何言ってんだ! 人間だぞっ』
白いアーマードライダーが鎧武に掴まれた腕を振り解き、その勢いで鎧武を突き飛ばした。
『あれはもう人間じゃない。人を襲う怪物だ』
『決めつけんなよ! あいつはまだ何もしてねえだろ!』
水掛け論を終わらせたのは鎧武でも白いアーマードライダーでもなく――バロンだった。
バロンがバナスピアで斬りかかったのを、白いアーマードライダーは弓で防ぐ。
『こいつには俺も借りがある。ここは任せろっ』
『――分かった!』
鎧武が工場の外へ駆け出す。
月花はバロンと工場の外を見比べ、鎧武を追うことを決めて走り出した。
『ありがとね!』
後ろでバロンと白いアーマードライダーの戦いの音がする。だが月花はふり返らなかった。
後書き
語るべきは本文の中に語りました。咲……初瀬を守るには詰めが甘かったね。そして初瀬。咲との出会いがあっても運命は非情だったね。
むしろ初瀬は下手に守られた分だけ自分に力がないと思い知ったのでしょうか? それとも情を寄せてくれた咲を少しでも守り返したいから力を求めたのでしょうか? この謎は読者様に投げかけさせていただきます。
2014/3/19 改題しました
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