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チコリ

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第三章

「いい美容師にならないと」
「駄目っていつも言ってるわね」
「だからね」
「これからもお勉強を続けるのね」
「そうするから、皆が集まる位の美容師になるからね」
「そう、じゃあこれからもね」
「頑張るから」
 こう笑顔で言うのだった、そうしてだった。
 薫は部屋に戻りチコリを見てだ、こう挨拶したのだった。
「合格したよ、これからも宜しくね」
 この時も守ってくれと言うのだった、薫はこの日もそうした。
 そしてそれからもだ、ずっとだった。
 薫は勉強を続けた、立派な美容師になる為にそうした。その介があって専門学校を優秀な成績で卒業することが出来た。
 しかしその卒業近くにだ、薫は両親に首を傾げさせて言うのだった。
「就職はね」
「まだ決まってないのか」
「そうなの?」
「いや、決まってはいるのよ」
 専門学校だから就職はちゃんと決めてくれる、しかしだ。
 ここでだ、薫はこう言うのだった。
「大阪の方になったのよ」
「えっ、地元じゃないのか」
「大阪なの」
「そうなの、ここじゃないの」
 薫の家がある京都ではないというのだ。
「通えることは通えるけれど」
「ちょっと遠いな」
「大阪なんてね」
「大阪っていうと」
 どうかとだ、困った顔で言う薫だった。
「味が濃くて人が騒がしくて」
「そうだな、あそこは騒がしいぞ」
「吉本もあるから」
「かなりとんでもない場所だぞ」
「巨人を応援したら殴られるのよ」
「まあ私中日だからそんなにだと思うけれど」
 薫は微妙な顔のまま話していく。
「どうなるのかしら」
「大阪なあ、お父さんも結構行くがな」
「お母さんもね」
「それでもな、京都と違うからな」
「全くの別世界よ」
「私やっていけるかしら」
 薫は難しい顔でこう言うのだった。
「大阪で」
「まあ家から通えるからな」
「それだけかなりましよ」
 あちらで住むよりはというのだ。
「だから頑張れ」
「就職出来たんだし」
「そうするわね、お店は大阪の難波で」
 大阪といっても様々な地域がある、就職先はその難波にあるのだ。
「難波ね、大阪で一番どぎついところだけれど」
「それでも頑張れ」
「いい美容師さんになりなさいね」
「うん、そうするしかないしね」
 薫は不安な顔のまま言うのだった、そして。
 この日も寝る前にチコリを見た、そのうえで言うのだった。
「頑張るからね」
 こう言ってだった、そうして。
 はじめて難波のその職場、京都から電車で難波まで行き職場で挨拶をすると、その職場は。
「ああ、頑張りや」
「あんじょう頼むで」
 職場の人達は皆明るかった、しかも面倒見がよく。
 お客さんも皆明るく気さくだった、その雰囲気にだ。
 薫はすっかり安心した、おまけに昼もだった。
 先輩達がだ、薫に笑顔で言ってきた。
「お昼何処行くん?」
「何食べるん?」
「ええと、それは」
 薫は職場がどういった場所か心配だったので昼のことまでは考えていなかった、言われて今思い出した位だ。 
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