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少年少女の戦極時代

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第40話 小さな成果


 コドモたちは今日もダンススクールの教室に続く階段をどやどや登る。

「ヘキサ、なんかキゲンいいなあ。イイことあった?」
「じ、じつは昨日、お兄さんとお茶しにいったの。兄さんいそがしくって、こんなことめったにないから」

 ヘキサの言う「お兄さん」の片割れに危うく殺されかけた咲だが、ヘキサが上機嫌であれば話は別なのだ。

(ちょっとじぇ~らし~来ないわけじゃないけど。まあそんな女の子がよろこびそうなことすんのってミッチくんのほうっぽいからいっか)


「こんにちは~」

 咲たちリトルスターマインは、いつものガラス戸を開けて教室に入った。
 入った途端、咲はいつも通りのはずの教室に違和感を抱いた。

「なんか、人少なくない?」
「てか――いなくね?」

 ナッツとモン太が、咲が抱いた違和感をそのまま口にした。

 そう、生徒がいない。いつも咲たちはレッスン開始ぎりぎりにダンススクールに来る。だからリトルスターマイン以外の生徒がほぼ全員揃っているはずなのだ。
 今日は事情があって早く来たが、それでも、このがらんとした教室はどうしたことか。

「お、よーやく来たか。ヘイらっしゃい」
「センセー!」

 ガラス戸に立つのはダンススクールの講師の女性だった。

「どうも閑古鳥が鳴いてらぁな。今日はあんたらだけで練習だ」
「あの、センセー。もしかして生徒が来なくなったのって、あたしたちのせい……?」

 ニュースで取り沙汰される、インベス事件負傷者の奇病。それを受けての、ビートライダーズへのバッシング。

 今、チーム鎧武やチームバロンがどう過ごしているかは知らないが、ビートライダーズであれば一緒くたに攻撃の的だ。ビートライダーズでインベスゲームをしなかったチームなど存在しないのだから。

 なので念のため今日のステージを臨時休業して、直接ダンススクールに来たのだ。

「んあ? まあ保護者の連絡は来たわな。ビートライダーズのいる教室に通わせてウチの子に何かあったらどうすんだ的な」
「あ……」

 今のは胸に突き刺さった。自分の目尻に涙が込み上げるのが分かる。
 咲は急いで目を袖でこすった。泣いてはいけない。一番迷惑しているのは生徒が離れた講師なのだ。

「なぁに辛気臭いツラしてんだい。ガキの頃からそんなじゃこの先の人生楽しくないぞ?」

 講師は咲の背中を豪快に叩いた。咲は軽く咳き込んだ。

「で、でも……あたしたち6人だけになっちゃって……スクールは」
「6人だけ? 馬鹿言うんじゃないよ。6人もいるだろうが」
「――ぁ」
「知ってるぞー。あんたら、あのインベスゲームとかいうの、やめるように言って回ってんだって? 悪いことを率先してやめられるのはいい子の証拠だ」

 ニカッと笑った講師は、咲と、隣にいたヘキサの頭を両手でいっぺんにわしゃわしゃした。

「人数少ないからビシバシしごくぞー。ちゃんと付いて来なよ」
『ハイ!!』

 分かってくれた人がいる。それだけで心強くて、咲たちは顔を合わせて明るく返事をした。 
 

 
後書き
 世の中にはまだまだいい人って埋もれてるんです。美しい日本人はいるんです。
 今回を読んで何か感じた方がおられたら、周りの大人を少しだけ見て上げてみてくださると嬉しいです。
 最初は「へいらっしゃい」以外に出番がなかった講師がこんな所で輝くとは……作者も想定外でした。

 【変更】コーチ→講師 
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