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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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十五夜 ~少年は真実を見るだろう~

 
前書き
神様はどこにいるかって?
神様はBOOKOFFにいるんだよ。
そして完全版封神演義の18巻をそっと置いてくれるんだ。
神様って優しいね。

それはそれとして最近プロフ画を設定してみたんだけど・・・どうよこれ?スベッてるなら止めたいんだけど。 

 
暗闇に包まれたその部屋には、少女の少しだけ荒い息だけが木霊していた。
彼女に母はいない。いるのは厳格な父だけ。何故いないのかは教えてくれなかったが、きっともっといい子にしていれば教えてくれたのかもしれない。

いつも厳しい事ばかり言っている父は、今日はそうではない。ここ最近体調を崩しがちであったのをずっと隠していたら、今日とうとうばれてしまった。それもそうだろう。何せ熱でふらふらしていたのだから、毎日顔を合わせている父がその変化に気付かない訳がない。風邪をひいたら病院に連れて行かなきゃならないから、それで余計な手間を取らせたら父はもっと怒るかもしれない。そう思って彼女は隠していた。

父は怒らなかった。病院まで連れて行ってくれて、布団まで私を運んでくれて、そのとき一瞬何かを言いかけたけど結局やめた。今の私を見て流石に酷だと思ったのかもしれない。真実がどうであれ、彼女にとっては嬉しかった。ただ厳しいだけではないんだな、と思えたから。

ふと、自分の机の上にある自由帳に目をやる。彼女が自由なのはあの白紙のページの中だけだった。あのノートの中にいる彼女は飼いたいと願った犬を飼い、怒らない父と楽しく暮らし、友達と一緒にお祭りを回ったりしている。
でも、現実の父が嫌いなわけではない。本当に苦しくて辛いときは、父は私のいうことを聞いて甘えさせてくれた。普段は厳しいけれど、私の事を分かってくれている。だから私はあの自由帳に広がる世界の中に行きたいとは思わない。

思わないけれど・・・それでも辛い事はある。

「例えばその辛い事は、どうしても手が届かない棚の上の物が突然落ちてきて周囲に変な目で見られたり、嫌いだと思った相手が突然転んで怪我をして自分のせいにされたり、やりたくないと思ったことが何もしていないのに片付いていたり・・・虐めで殴られたり蹴られたりしたのに全く痛くなく怪我も残らないから周囲に気味悪がられて、その同級生たちが次々に事故に遭ったり転校したり・・・」

ひっ、と喉が息を吸い込んだ。
その声は彼女が発したものではない。全く知らない、でも彼女と同じ年頃の男の子の声だった。
微かに部屋の中に、嗅ぎ慣れない古紙の臭いがした。

ぎし、と床が小さく軋む。

怖い。何故誰もいない筈の場所から声が聞こえるのか。―――それとも、誰かいるのか?まさか、泥棒・・・!?
体調を崩している私では、もし泥棒に何かされても為す術がない。それに相手は子供であっても男の子。女の子であり特別鍛えている訳でもない彼女では、抵抗することさえ難しい。
咄嗟に父に助けを求めようと叫びかけたが、声が上手く出ない。対する声の主は、月の光がカーテンの隙間から差し込む彼女の部屋を静かに歩いた。都会の夜は街灯などで外が比較的明るいため、彼女は声の主のシルエットを捉えていた。

「君は8歳の頃、テストの全科目を100点で通過したことがあるね。でも文章問題が先生の用意した模範解答例とぴったり一致していたことからカンニングの疑惑を掛けられ、覚えのない罪について謝罪させられた。また7歳の時は買って貰った覚えのない服が家の中で発見され、父親に何所から持ってきたのかを問い詰められた。その時は君の友達の羽岡ちゃんが機転を利かせて事なきを得たけど、事の真相は不明のままだった・・・6歳の時は、君に向かって跳んだボールが突然カーブして友達の頭部に当たって、周囲の人たちからまるで君の所為であるかのような目線を受けたことが無かったかい?彼女が付けていたヘッドホンも壊れてしまい、父親が弁償する事態にになりかけた。その友達・・・希月ちゃんとはそれ以来話しにくくなっているね。彼女は元々病弱だったから余計に同情を集めたのかもしれないが・・・」

錯乱しているのか冷静に物事を考えられない頭で、それでも感じる感情―――得体の知れない人間が迫ってっ来る恐怖に手が震える。

―――いや、この震えはそれだけではない。

彼が先ほどから語っている内容を彼女は知っている。
彼の言葉は・・・全て彼女が過去に体験したことのある事柄だった。
何故、どうして知っているの。どこで、誰に聞いたの。

「そういった『極めて不自然な現象』が君の周りでは頻繁に起きていた。そしてそれは大抵自分が疑われたり、気味悪がられるような内容ばかり。結果、君は他人と接することがだんだん怖くなっていった。お父さんは随分悩んだみたいだよ?君のそれの原因は霊的、超常的なレベルに達していたからね・・・『学園都市』を初めとした超能力機関に君を調べてもらうかどうか、今でも悩んでるみたいだね」

月光がこちらに来る人間の姿を少しだけ照らし出した。彼の美しい金色の髪が月光を反射する。
矢張り、見覚えのある人間ではない。
彼女はだんだん息苦しくなってきた。それらは彼女にとって思い出したくもない過去であり、それを蒸し返すような彼の言葉が、自分を攻め立てているような気がしたのだ。唯でさえ芳しくない体調がそれに拍車をかけ、布団から起き上がることも出来ない。

「君自身も、その現象を霊的な何かに憑りつかれている所為だと考えるようになった。でも『お化けに憑りつかれている』なんて大人や友達に言っても笑われるだけだと思った君は、その衝動を心の奥底に仕舞い込んだそうして心の殻を形成していった。・・・そしてある時、君は心のどこかで『男の子の友達が欲しい』と考え―――それが数日後に現実になった」

男の友達。確かに欲しいと思った。思った数日後に学校に転校してきたのだ。―――高町黒衣くんが。
彼は私の落書きを見ても笑わなかったし、少年バットの事を本当にいる人みたいに喋っていたのも嬉しかった。少年バットは、私が自分自身に憑りついているお化けをキャラクターにした存在だったから、少しだけクロエが自分を理解してくれたような気がしたのだ。
それからも、時々お話をしている。

「大人しくて口数が少ないけど、君と同じマイペースで一緒にいる事が苦痛に感じない良い友達だ。君はその願いがかなったことに気付いた日に、ある昔の”夢”を思い出してしまった。それは小学生になるより前に見た夢・・・そこは本や紙で埋め尽くされた場所で、君はそこにいる大人の人にこう言われるんだ。―――『君は死んでしまった。今から君にチート能力を与え、異世界に送ろう』・・・夢の中で、君は”理想を現実に変える能力”を受け取った。唯の夢だと思っていた君は、”自分の思い描く範囲の理想がある程度かなっている事に気付き”、急にその夢の内容に未だかつてないリアリティを感じたんだ」

いじめっ子が次々にいなくなったのは「お前たちなんかいなくなってしまえ」と考えたから。テストで百点を取ったのは「高い点を取って父に怒られないようにしたい」という願望(りそう)発露(じつげん)。クロエが自分の学校にやってきたのは、彼女自身がそうあれと願ったから。母親が居ないのは、今更新しい母親が出てきてもどう接したらわからなくて要らないと思っているから。
全ての事象はお化けなどではなく、彼女の心を中心に起こっていたのだ。
認めたくなかった。全ては私が起こしたことだったなんて。
でもそれよりなにより私には受け入れられないことがあった。

それを考えてはっとする。彼は―――わたしの、言葉に出してはいけないこの想いを知ってるんじゃないのか?知っていて、今から言葉にして出してしまうつもりなんじゃないのか?さっきからそうしていたように。
止めて、と声に出したいのに、喉から漏れるのは荒い吐息だけ。


「君はそれをどうしても受け入れられなかった」

―――止めて。

「何故ならば、もしそうなのであれば君はその夢を見るより前はこの世界にいなかったことになる」

―――止めてよ。

「それはつまり、『君のお父さんは―――



    ―――止めてっ!!



       『止めろ!僕のトモダチを虐めるな!!』


「あ・・・」

それは犬の様なぬいぐるみだった。フォルムだけで言えば昔に流行った「たれぱんだ」を彷彿とさせるそれは、怒ったようにその眉を顰めて男の子の前に立ちふさがった。それは、もし自分が犬を飼えたらというイメージで描いたキャラクター「マロミ」を模して彼女の友達が作った手作りのぬいぐるみだった。

本当なら起こりえない現象。物理的にも科学的にも有り得ないはずのそれは、確かに私を庇うように動き、喋っていた。―――私が犬を飼いたいと思った理由、「私が来るしい時に庇って欲しい」という願望を実行するかのように。
だが、所詮ぬいぐるみはぬいぐるみだった。

『お前!なんでそんな追い詰めるようなことを―――』
「こら。話の腰を折るんじゃないよ」

ぺたり、と彼がぬいぐるみにお札を張ったと同時に、マロミは「むきゅう・・・」と言い残して唯のぬいぐるみに戻ってしまった。そこで初めて、部屋に漂った古紙の臭いの正体が、そのお札であることに気付く。

マロミはいなくなった。父も来ない。もう邪魔する存在はいなかった。
逃げる事は出来ない。とっさに耳を塞ぐが、たかが手で塞いだ程度では空気の振動は簡単に鼓膜に届いてしまう。無駄な抵抗だった。

「つまり、『君のお父さんは本当のお父さんではなく、自分はお父さんの娘ではないんじゃないか』という事を、君は受け入れられなかったんだろう?―――陽色小学校5年1組、出席番号14番。


               (さぎ)月子(つきこ)ちゃん 」



ぱりん、と頭の中で何かが割れる音がした。





 = = =



※この先には月子ちゃんの登場するアニメに関する重大なネタバレを含んでいますよー!!
いいか?注意したからな?もし今アニメ見てる途中とかいう奴は見終わってから読みに来いよ!?
・・・忠告したんだからな?


見事に気付かなかったなぁ。ホント、クルト君には今度なにかお礼しなけりゃならんね。
とりあえずサイコドライバーの力で彼女の心の周囲を雁字搦めにしていた思念体を締め上げてやった。
魂は肉体と同調するから、魂が締め付けられれば彼女の身体も動かなくなる。さらに言えば力を大量消費している疲労もあって、彼女の身体には相当な負荷がかかっていたはずだ。これで声も出ないほど苦しいという状況ではなくなった。

前は黒幕を”悪霊の王”ミニマム版とか言ってたような気がするが、こりゃどちらかと言うと”時を食らう者”の方が近かったんだろうか?そう思いながらも俺は彼女―――月子を黙って見つめた。

さて、状況を分かりやすくするために例を挙げよう。


織斑一夏という少年がいる。彼は中学3年の時に、最近開発された次世代マルチフォームスーツであるISというものを起動させ、そこから彼の周囲の環境が一変することになる。しかし、変化が起こるのは未来の事であり、今ではない。また、ISはあってもISを巡る環境は本来の彼の世界と異なる為、一変した後の彼の人生は不確定である。

涼宮ハルヒという少女がいる。彼女は中学1年生の時には『神』とでも言うべき領域に達した存在となっていた。しかしそこに至るにはある”きっかけ”が必要であり、その”きっかけ”がこの世界には欠如している。よって彼女は未来に『神』へならないかもしれない。

兵藤一誠という少年がいる。彼は高校2年の際に堕天使と呼ばれる存在に殺されたことを”きっかけ”に神器という力を自覚する。しかし、神器自体は似たような”きっかけ”さえあれば自覚できるものであり、この世界には本来の彼の世界のそれより多くの”きっかけ”があったため、彼は既に力を自覚している。

東風谷早苗という少女がいる。彼女は中学から高校の間のいずれかのタイミングに親代わりでもある2人の神様と共に”幻想郷”と呼ばれる外界と隔絶された地へ旅立つことになる。これはその2人の神様の都合であり、なるべくしてなる結果なので、どんな”きっかけ”があっても最終的に彼女は現世から姿を消すことになる。


織斑一夏と東風谷早苗のイベントは背後関係や順序が予め決まっており、何があってもそれだけは必ずその時期に起こるものである。
涼宮ハルヒと兵藤一誠のそれは実際には運や条件が数多くあり、イベントの時系列や順序が大きく狂う可能性を最初から秘めたものだ。

そして、この例に挙げた4人と比べて鷺月子だけは、明らかにおかしな点があった。

彼女は「妄想代理人」と呼ばれるアニメにおいて主人公と言える人物である。
彼女の物語には確かに「マロミ」や「少年バット」と言ったキャラクターが関わっていて、それらは彼女が創作したものであることには間違いない。

だが、この時点で既におかしかった。


月子が「少年バット」というキャラクターを考え出したのは、彼女が12歳の時であり・・・

当時、彼女が自分の不注意で飼い犬の「マロミ」を死なせてしまったことが”きっかけ”で・・・

それを認めたくないがために狂言で「少年バット」という架空の通り魔をでっち上げた。


何が変わろうと、「少年バット」が生み出される順序と因果関係は決まっている。ハルヒ、一誠の例で挙げたような不確定さはあるが、一夏、早苗の例にある因果関係と順序を無視しているのだ。

これは明らかにチルドレンの法則性から逸脱しており、彼女が「仲間はずれ」である事の根拠になった。
そしてこうして目の前に立つと、何で今まで気付かなかったのか聞きたくなるほど濃密な力を感じた。さしずめチート(ぢから)とでも呼ぶべきか?それが暴走している感じがする。

さて、俺の調査結果に唯でさえ顔色の悪かった月子ちゃんはがたがたと震え始めてしまった。よほどお父さんが大事なんだろう。俺としてもこんなやり方はしたくなかったが、ここを認めてもらわねば彼女の力の供給が止まらないのだ。チート能力も使う人間の心次第で変化することがある。今回のは悪い例だ。

さて、彼女は思い込みが激しいタイプらしいので、それも踏まえて説得しよう。さっきから慣れない丁寧語してんのもその為ね?

「・・・そんなに怯えなくてもいい。ほら、これ。何だかわかる?」

懐から取り出したるは秘密兵器。


―――パッパカパッパッパーン!DNA鑑定書~!である!


「これはテレビドラマなんかでよく出てくるDNA鑑定書だよ。ほら、ここの数字が塩基って呼ばれる奴で、これが沢山受け継がれてたら血が繋がってるよってなるの」
「え・・・?」
「一緒に調べてみよう。君とお父さんの血が繋がってるか」
「・・・・・・・・・」

少し間を置き、するり、と布団から抜け出した月子は床に置いた鑑定書まで辿り着いてしばらくそれを見つめる。そして見つめた後、俺の方を振り返った。

「数字が並んでるばっかりで、見方が分かんない。漢字も読めないのがある」
「・・・大丈夫、説明したげるから」

マイペースだな、あんた・・・
ゆっくりと、傍から見ればやきもきするほどに遅々としながら、2人は1つづつ数字を確かめていった。DNA鑑定書は俺が無限力によって作成したものだが、いんちきの類は誓ってしていない。いわば「調べればこの結果が出るだろう」という結果だけを取り出したに過ぎず、それゆえに嘘は入っていない。
DNA鑑定とて現代のそれでは100%の精度があるとは言えない。偶然の一致だってあり得るし、その逆だってある。それでも鑑定書が「親子だ」と認めれば人は安心を得られるんだろう。

少しふらついている月子を支えてやりながらも、俺は懇切丁寧にそれの解説に勤める。
彼女の力の暴走は心の暴走が原因だというのは以前にも説明したと思う。よって安定を取り戻せば虚数世界からの干渉が難しくなり、ちょっと小突いてやれば簡単に力の供給は途絶えるだろう。

「あの」

ふと、月子がこちらに声をかける。

「最近、変な夢を見た」
「どんな?」
「人とか、人じゃないのとか。いろんなものが沢山集まってて・・・ずっと悲しそうに嘆いている」

これは・・・プチ時を食らう者の干渉の所為で見た夢だな。さぞ恨み言が多かったろう・・・と思っていた俺の予想はちょっと間違っていた。

「もっと出番が欲しい、活躍の場が欲しい、画面にちょっとでも長く映りたい・・・って嘆いてた」
「そ、そうなのか・・・」

思いの外切実だったようだ。なんか売れない芸人みたいで居た堪れない感じがある。あいつら意外と所帯じみた思想してんのな。むしろ残滓母さんとかの方が例外的な存在だったんじゃ・・・?


後にその考えは大体合ってたことが判明するが、それをシャインが知るのはもっと後になってからの話である。

 
 

 
後書き
ネット小説におけるプロローグ~2,3話までって小説の顔だと思います。例え最初全然書けなくてそこから成長したとしても、読む方は最初の何話かを見て面白そうかどうかを判断するわけです。そこで切り捨てられたら例え後がどれだけ面白くなっても新しく来た人からの評価が貰えません。
本当は面白いのに最初で切られるって書いた側も読んだ側も損する感じがします。だから自分は時々最初の方の話を見直して手直ししたりします。こういう時簡単に変更できるのがネット小説の利点ですね。
・・・コラそこ!過去の汚点を消して回ってるとか言わない! 
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