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少年少女の戦極時代

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第26話 インベス捕獲作戦前夜



 ――とある日の夜の呉島邸。

 風呂上りの碧沙は寝る前に光実の部屋を訪ねた。


 すると光実から、光実のリーダーの提案であるインベス捕獲作戦について聞かされた。
 そして、光実がその作戦を積極的に立てた理由も。

「白いアーマードライダーが貴兄さんかもしれない――」
「うん。前に僕のチームの人がスイカロックシードで変身した時があったろ?」

 光実は碧沙に顔を寄せて声を潜める。

「あれ、兄さんの部屋にあったドライバーと一緒にあった錠前だったんだ。戦極ドライバーなんて意味なく持ち歩く物とは思えないし、現時点で一番兄さんが怪しい。だからインベスを倒すのはもちろんだけど、インベスとユグドラシルが繋がってないかも、今回のことで確かめられたら――」
「そう、なの……じゃあ、あの香りも……」
「香り?」

 碧沙はためらったが、声を低くして口にした。

「ここのとこずっと、貴兄さんから甘い香りがするの。くだものの、くさる手前の、熟しきった感じ。最近は毎日」

 碧沙は身を乗り出して光実に、息の交わる距離まで迫った。

「光兄さんからも少し感じる……何を持ってるの?」

 光実はたじろいだ。だが、やがて観念し、ショルダーバックから何かの袋詰めを出した。

「これがインベスのエサ。前に話した“森”に生ってる果実なんだ。これを使ってインベスをおびき出すのが今回の作戦」

 袋の中身は、毒々しい赤紫の果物だった。光実は袋から出して碧沙に見やすいようにしてくれた。

「……ひどい香り。すごく甘ったるくてヤな感じ」
「そう? 香りは分からないけど、僕は、その、とてもおいしそうに見えるんだけど」
「ダメ」

 碧沙は果実に蓋をするように両手を光実の手に重ねた。

「食べちゃダメ、ぜったい、ダメだから」

 碧沙なりに必死に訴えた。何故かは碧沙自身も分からないが、この果実は良くないものだと分かった。
 そもそもこんなひどい香りがする物を、光実が口にするなんてとんでもない。

「――分かってるよ。言ってみただけ。心配してくれてありがとう、碧沙」

 光実が空いたほうの手で碧沙の髪を梳いた。


「光兄さんの手と貴兄さんの手って、似てる」
「僕が、兄さんに?」
「やさしくて、ふんわりした気分になれる。そんなの兄さんたちだけ。やっぱり兄弟だから?」
「分かんないよ――そんなの」

 光実の手が離れる。

 いつもそうだ。貴虎の話題になると、光実の態度は冷める。
 せめて碧沙に向ける半分でも互いに向け合えば、もっと歩み寄れるのに。

「もう遅い。碧沙、部屋に戻りなよ。夜更かししてたら、貴虎兄さんに怒られるよ」
「はぁい」

 碧沙は名残惜しくもベッドを降り、とたとたとドアに行って。

「おやすみなさい。よい夢を」
「よい夢を。おやすみ」

 碧沙は満面の笑みを浮かべて光実の部屋を出た。 
 

 
後書き
 妹からさえもうちょい歩み寄れと内心思われている呉島兄弟。
 お風呂上りに部屋を訪ねる時点でこの兄妹の仲の良さは推し量ってくださると有難いです<(_ _)>
 原作では8話に当たりますかね? 例のポリバケツアームズwの前夜です。
 大概の人間が「旨そう」と感じ口にしてしまう禁断の果実。何故碧沙だけは「ひどい香り」と感じるのか――それは今後のテレビ展開次第ということでお一つ。

 それにしても光実も貴虎も妹の頭撫でるの好きだな(←書いてるの自分!) 
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