魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epos11再臨・遥かなる夜天を支える翼~Advent: Schöner Ritter~
前書き
Advent: Schöner Ritter/アドヴェント:シェナー・リッター/降臨:美しき騎士
†††Sideはやて†††
ルシル君たちが危ないレースに参加するために出かけての翌日、その夜。フェンリルさんと夜ご飯の後片付けをしてる時、“闇の書”がふわふわ飛んで来た。わたしが“闇の書”の主やって確かな自覚をして、そしてシグナム達が“闇の書”の完成させるために戦闘することを許可したら、こうやって意思を持ったかのように自分で飛ぶようになった。なんてゆうかペットみたいや。
「ん? どないしたんや?」
そんな“闇の書”がわたしの右腕にすりすりってすり寄って来た。甘えてるような“闇の書”を、フェンリルさんと一緒に微笑ましく眺めながら後片付けを続ける。それから明日のご飯はどうするか話しながら後片付けを全部終えて、フェンリルさんとリビングのソファに座ってゆっくりしようとした時。
「うにゃ?」
今まで隠れてたフェンリルさんの狼耳がピョンと勢いよく立った。その間でも“闇の書”は何かを伝えたいんかわたしの周りを飛び回る。わたしは「早く話が出来るとええなぁ~」って、抱き止めた“闇の書”の表紙を撫でる。
「はやて。マスターから連絡。闇の書を転移させたいんだけど、いいかな?って」
フェンリルさんにそう言われてある考えが浮かんだ。それを確認するために「もしかしてこのことを伝えたかったん?」って返事がないのを判ってるけど“闇の書”に訊いてみる。と、返事の代わりやと思うけど“闇の書”はフワって浮いて、頷くようにコクリと傾いた。
「ん、そうか。・・・フェンリルさん、今から闇の書を送る、ってルシル君に伝えて」
「りょ~か~い♪」
フェンリルさんはルシル君と思念通話やけど話が出来るのがホンマに嬉しいようで、耳と一緒に出た尻尾をフリフリ。フェンリルさんはホンマにルシル君のことが好きなんやなぁ。フェンリルさんを眺めてると、わたしの前に浮いてた“闇の書”が、いってきます、って言うようにわたしの頬に一度すり寄った後、パッと消えた。ルシル君たちの所へ行ったんやな。
「はやて。マスター達ね、今日のレース、圧倒的大差で1位になって、リンカーコアをたくさん手に入れたって。しかも全員無傷で無事。良かったね♪」
フェンリルさんからそう報告された。無事で良かった、うん、良かった。けど、それでもやっぱり心の底から素直に喜べへん。確かに相手は悪い人たちやけど・・・でも傷つけてるとなるとどうしても、な。
「はやては本当に優しいんだね」
「わぷっ? フェンリルさん・・・?」
俯いとると、いきなりフェンリルさんに前からハグされて、頭を優しく撫でてくれた。
「マスター達にもすでに言われてると思うけど、優しさは確かに美徳だよ。でもね、自分を蔑ろにしてまで貫く優しさ。それは時に偽善と取られちゃう。何かを企んでるのかも、なんてね」
「そ、そんな・・・」
わたしはそんなつもりなんてない。ただわたしは、優しさでみんなが笑顔になるって信じてるだけ。誰かに優しさをあげれば、その誰かもきっと誰かに優しさをあげて、それは輪のように繋がってくれるって。
「はやてってさ。我が儘を言って周囲の人に嫌われたくないって思ってる節、あるよね?」
「え・・・?」
何を言われたんか判らへん。
「はやてはマスターや騎士たちと出逢う前は天涯孤独だった。しかも下半身麻痺ってデメリットを背負って。たぶん、それが大きな原因だと思ってるんだけど。孤独だから誰かと関係を持って、我が儘を言って嫌われたりでもしてその関係が壊れることがないように」
「あ・・う・・・」
違う。ってすぐに反論が出来ひん。フェンリルさんの言葉がグサグサ刺さってくる。
「でも、もういいんだよ。我が儘をいくらだって言ったって。はやてのことが大好きなマスター、騎士たち、私だって。はやてがどんな我が儘を言ったって嫌いにならないよ。まぁ、行き過ぎた我が儘だった時はしっかり怒るけど。それでも嫌いにならない。それ以上にはやてのことが大好きだから。だからいいんだよ、我が儘を言っても。だってはやてはまだまだ甘えていてもいい子供なんだから」
「っ!・・・あ・・・え・・・?」
温かなフェンリルさんの大きな胸に抱かれてる所為かな。涙が溢れて来た。母さんに抱かれてるような、シグナムやシャマルにも感じたことが無い、安心できる居心地の良さ。それから少しの間、わたしはフェンリルさんの胸に甘えた。フェンリルさんもずっとわたしを抱きしめてくれたし、頭も撫で続けてくれた。
「フェンリルさんってまるで母さんみたいや」
「ええ?・・・あー、そんな歳じゃない、って言いたいところだけど母親って言われてもおかしくないだけ生きてるしなぁ。それに・・・はやてのように可愛い子のお母さんなら大歓迎♪」
「おわわっ」
フェンリルさんがわたしの脇に両手を差し込んで持ち上げた。よく赤ちゃんにする、たかいたかい、や。それがちょう恥ずかしくて、でもなんか懐かしさが込み上げてきて嬉しいような楽しいような気持ちになった。
「はやてはまだ子供なんだから。自分の心に自由を求めていいんだよ」
「・・・・うん。ありがとう、フェンリルさん♪」
ソファに降ろされたわたしはフェンリルさんの両手を取って改めてお礼を言う。フェンリルさんは笑顔で「うんっ♪」って頷いてくれた。
「それじゃあお風呂に入って、今日は休もうか」
「あ、もうそんな時間か。腹減りヴィータが居らへんからつい夜ご飯の時間が遅くなるなぁ」
車椅子に乗せてくれたフェンリルさんと一緒にお風呂場に向かう。そんでフェンリルさんに脱衣を手伝ってもらって、お姫様抱っこされて浴室へ。
「じゃあ髪と背中を洗うね、はやて」
「お願いや」
髪をフェンリルさんに洗ってもらってると、ふと「そう言えばフェンリルさんと2人きりになるのって初めてやなぁ」そんなことを思うたから、目の前に在る鏡に映るフェンリルさんに向かってそう漏らした。
「そう言えばそうだ。いつもマスターが必ず一緒に居たもんね。それが当たり前なんだけど。・・・でもそれがどうしたの?」
「こんな時やからフェンリルさんに訊きたい事を訊いておこうかな、って」
「訊きたいこと? うん、いいよ。っと、その前に、シャンプー流すから目を閉じてね~。・・・んで、今度はトリートメント~♪ コンディショナ~♪ ついでにマッサージ~♬ 女の子だから髪の手入れはしっかりと~♫ お客さん、痒いところはありませんか~?」
「ないで~す♪」
フェンリルさんって髪を洗うのがホンマに上手。気持ち良すぎて眠くなりそうなのを耐えて、「フェンリルさんって、ルシル君の使い魔になって長いん?」って本題を切り出す。
「うん、長いよ。マスターが赤ん坊だった頃、私は彼と出会った。その頃の私は、誰も主として認めず、従おうともせず、ただ己が思うままに生きていた。かつては主と敬い慕った人も居た。でもその人が死んでからは・・・」
鏡越しに初めて見る、フェンリルさんの浮かべた寂しそうな表情に、わたしは悲しくなった。
「今でも鮮明に思い出せる。マスターとその両親が私に会いに来た時のこと。その頃の私は狼の姿ばかりで居てね。自分の精神をコントロール出来る大人でも普通にビビるし、泣く子も気を失うって感じで畏怖と敬意の化身だった。
それでもそんな私を使い魔にしようとする人はたくさん居た。マスター達もそう。でも当時の私は誰かに付き従うつもりも無くて、いつものように牙を剥いて追い返してやろうとした。彼の両親はやっぱり腰を抜かして一瞬で諦めた。赤ん坊だったマスターも、他の子供の様に泣き喚くかと思えば・・・・」
「フェンリルさん・・・?」
フェンリルさんの表情が寂しげなものから嬉しそうなものに変わった。目をうるうるさせて、頬をお風呂の温かさとは別でさらに赤くさせた。
「マスター・・・、ルシリオンは私を見て笑ったの。どれだけ咆えても、牙や爪を見せつけても怯えることなく。それどころか突き付けた爪に触れてきたの、笑顔を容易くことなく、ね。かつてのマスターもそうだったのね。その所為かな。毒気が一気に抜かれちゃってね。でもだからってすぐに主認定はしなかった」
「なんでなん?」
「なんか悔しいじゃない。数千年と生きた畏怖と敬意の化身たるフェンリルちゃんが赤ん坊に恐れられず、触れられただけでコロッと参っちゃう、なんて」
「あはは。なんやそれ。意地っ張りやなぁ、昔のフェンリルさんは――・・・とゆうか数千年!? フェンリルさんってそんなにお婆――っ、コホン、コホン。長生きさんなんやなぁ」
20代前半くらいの外見をしてるフェンリルさんに、おばあちゃんって言うたら失礼すぎやって思い立って咳で誤魔化すことにした。
「??・・・長生きだからこそ意地っ張りになるものなんだよ。でも、うん、今の私でも馬鹿みたいって思う。・・・はーい、洗い流すよ~」
「は~い」
髪を洗い終わったら保湿の為にタオルを巻かれて、次は背中を洗ってもらうことに。背中をゴシゴシ洗ってもらいながらも話の続きをする。
「それからはマスターの事が気になってばかりでね。魔道で姿を消して見守ったり、時にはこの人間形態に変身して会ったり。気付かれないかハラハラしたけどバレなかったなぁ。楽しかったなぁ~」
体も洗い終わって、フェンリルさんにお姫さま抱っこしてもらって浴槽に入る。ちなみフェンリルさんは髪も体も洗わない。魔法で常に体を綺麗に保ってるってことらしい。
「それでマスターが5歳になった時、透明になってた私に気付いたの。マスターは生まれつき膨大な魔力と魔道における天賦の才を持ち合わせた、すでに最高クラスの魔術師だったからね。ま、その所為で両親からは酷い扱いされてたけど・・・」
「え? なんて・・・?」
最高クラスの魔術師、って言葉の後の声が聞こえへんかったから訊き返してみた。そやけどフェンリルさんは「ううん、なんでも」って首を横に振るだけ。
「でね。その時、マスターは何て言ったと思う? 久しぶり、って言ったの。赤ん坊だったから憶えているはずがないのに、出会った時の姿は本来の姿の狼形態だったのに、それでも・・・彼は私を憶えていた。すぐに狼形態に変身してもやっぱり怯えなくて、私を綺麗だって、カッコいいって褒めてくれた。それが決定打だった。その瞬間、私はルシリオンをマスターとして認可した。ううん、それは恋だった。恋をして、私は彼と一緒に居たいって思うようになった。」
フェンリルさんはもうデレデレ。わたしの聴きたいことの前置きにしては長かったなぁ。まぁルシル君とフェンリルさんの出会い話もまた知れてよかったと思う。
「あのな、フェンリルさん。ルシル君ってどんな子やったん? その、わたしと出逢う前の・・・」
それが聴きたかったこと。ルシル君からは家族がもう居らんこと、今まで旅してたことしか聴いてへん。本人に訊くべきなんやろうけど、なんや訊き辛くて。
「良い子だったよ。あとすっごくお姉ちゃん子でね。ゼフィランサスっていう名前なんだけど。もしかしてお姉ちゃんが初恋なのかもって思えるくらいに。と言うよりはシスコン? お姉ちゃん大好き、妹ちゃん――シエルも大好きでね~。ちょっと行き過ぎじゃない?って思うようなこともたくさんあったよ」
「うわぁ、想像できひんなぁ。ルシル君がシスコンなんて。でもそれくらい良いお姉さんと妹さんやったんや――・・・っ!」
わたしは口を噤んだ。もうその家族が居らんことを聞いてるから。それからルシル君の友達のこととか聴いた。イヴさん、シェフィさん、フノスさん、カノンさん、レンさん、フォルテさん、ジークさん、カーネルさん、セシリーさん、ステアさん、アリスさん。すごく仲が良かったって。その子たちは今どうしてるんか訊いたんやけど、訊かんければ良かったって後悔した。ルシル君は家族どころか友達すらもすでに喪ってた。
「・・・周囲に優しくて、自分に厳しくて、気高くて、でもどこか抜けてて、友達・姉弟妹思いで、全てに一生懸命で、しっかりと目標持ってて・・・。そんなマスターだから私は彼に恋をして、そして自分の何を犠牲にしても彼を守るって決めた。はやて。マスターの事は信じていいよ。使い魔目線でもハッキリ言える。彼は・・・良い子だよ」
「うん。それはもう知ってるよ。ルシル君は良い子やって」
「そっか。それは嬉しいことだよ♪」
機嫌が最高にまで良くなったフェンリルさん。楽しいお風呂の時間も終わって、フェンリルさんに髪を乾かしてもらっとると「おお? おかえり」“闇の書”がわたしの目の前に転移してきた。膝の上にそっと降りた“闇の書”の表紙に触れたら「んん? なんや変わったか・・・?」行きと帰りで違う感じやったから、そうポツリと独りごちた。
「お、さすが闇の書の主。闇の書の魔力量に変化しているの、気付いたんだ」
フェンリルさんにそう言われて、「そうやったなな」その変化に納得した。“闇の書”はルシル君たちが得たリンカーコアを蒐集しに行ったんや。その分の魔力が増えてて当たり前や。とりあえずどれだけのページが増えたんやろ、って思うてページを開こうとしたその時、
≪400頁まで蒐集されました。管制人格の起動、および具現化を行えます。共に主の承認が必要となります。承認しますか?≫
“闇の書”から外国語(英語やないやつ)が発せられた。聞き覚えのない外国語やのにその意味がハッキリと理解できた。これも魔法とか主の恩恵みたいや。
(管制人格の起動と具現化。シグナム達に聞いてた通りやな)
“闇の書”本体でもあって守護騎士の最後の騎士でもある、管制人格。400ページ以上集めれば起動させることが出来るって。わたしが待ち望んでた最後の家族。わたしは考えるまでもなく、「承認します」って告げた。
≪闇の書の主の承認を確認。闇の書の管制人格の起動を開始≫
“闇の書”から強烈な光が発せられた。あまりの眩しさに手でひさしを作って細めにする。まばゆい光の中、女の人の輪郭が足の方から現れていくんが判った。そして光も収まってきて、ひさしを作ってた右手を降ろす。
「お初にお目にかかります。我が主。私は闇の書の管制人格にてございます。主の承認の下、無事に起動することと成りました」
そこには初めてわたしの前に現れたシグナム達と同じように片膝立ちして頭を下げてる女の人が1人居った。顔は俯いてて見えへんけど、髪はルシル君と同じ銀色で、長さも同じくらい。
「うん、初めまして。わたしは八神はやてって言います。とりあえず顔を上げて見せてくれへんかな」
「はい。我が主はやて」
その女の人が顔を上げる。ドキッとするくらいにとても綺麗な顔立ち、目は深紅って言うんかな? 銀色の髪と合わせてホンマに綺麗で・・・。みんなに聴いてた通りの外見やったけど、想像以上に綺麗で。見惚れてたら、「はやて」わたしの隣に座るフェンリルさんに名前を呼ばれてハッとする。
「えっと、シュリエルリートさん・・・?」
「・・・・その名はかつての主から頂いた物で、今でも名乗っていいのかと迷っています」
「え? 迷って・・・?」
「・・・すでにご存じでしょうが、この名前を授けてくれたのはオーディンと言う方でした。私にとって、いえ、守護騎士全員にとってとても大切な方で、心より慕うに相応しい方でした」
「うん。みんなから聞いてる思い出話から強く感じてたよ」
「ですが我々は、そんな彼を最後までお守りすることが出来ませんでした。最後まで生き残ることの出来たのは私だけであったのに、最後の最後で私が下手を打ってしまい、彼を死なせてしまいました。それ以降、私の胸の奥に晴れることのない後悔ばかりが渦巻いています。騎士たちは私を責めませんでした。オーディンを死なせてしまった罪は全員に有るのだ、と。ですが・・・!」
その時のことを思い出したんかシュリエルリートさんが泣きそうな顔になった。見てるこっちも泣いてしまいそうになるほどの辛そうな顔で・・・。
「で、でもシュリエルリートって名前は大切なものなんやろ? そうやったらその名前を名乗ってあげやな。たぶんそれは名前を付けてくれたオーディンさんの為でもある、ってわたしは思うよ」
わたしの勝手な想像やけど、オーディンさんとルシル君は全く同じ性格で人格やってことをみんなに聞いてそう思うんや。そう言うとフェンリルさんも「私もそう思う~」って同意してくれた。
「私もオーディンに仕えていたからよく判る。はやての言う通りオーディンもきっとそう思うよ」
「フェンリルさんもオーディンさんに仕えてたんやなぁ。・・・あ、フェンリルさんが昔好きやったってマスターってオーディンさんの事やったんや」
「え? あ、うん、まあね」
わたしにしては冴えてるわぁ。ルシル君ってもしかしてオーディンさんの生まれ変わりなのかもしれへんな。
「ねえ、シュリエルリートさん。シュリエルリートさんかて名乗りたいんやないの? それやったらそれでええと思う。綺麗な名前やよ。シュリエルリート。オーディンさんがあなたのことをどれだけ大事に思うてたかよう判る」
名乗りたくないんならそもそも迷うなんてことはないはずや。きっぱり拒絶すればええんやもん。ううん、きっとその名前がホンマに大切やからこそ迷うんやな。シュリエルリートさんは俯いて「・・・オーディン・・・。私は・・・」片膝立ちから両膝立ちになって両手を胸に添えた。わたしとフェンリルさんは、シュリエルリートさんが自分のことに納得がいくまで見守ることにした。とは言うても10秒もせんうちにシュリエルリートさんは顔を上げたけど。
「・・・主はやて。ありがとうございました。では改めて自己紹介を。支天の翼、シュリエルリート。主オーディンより賜れたこの名と二つ名の下、彼と同じ意思を持たれる貴女を支え、護り、共に歩むことを誓います」
もう一度片膝になったシュリエルリートさんが真剣で、凛々しい表情でわたしにそう告げた。そんなシュリエルリートさんにわたしが出来る事。それは・・・。
「うん。よろしくお願いします、シュリエルリートさん♪」
笑顔で右手を差し出す。すると「本当に彼と同じ・・・」そんなことをボソッと呟いた後、シュリエルリートさんも「はい。よろしくお願いします。主はやて」笑顔でわたしの右手、握手に応じてくれた。その笑顔にまたドキッとした。凛々しい顔は綺麗で、笑顔はホンマに可愛ええ。シグナムに似てると思うてたけど、シグナムの笑顔は綺麗やからなぁ。まぁわたしは凛々しい笑顔なシグナムも好きやけど。
「じゃあ一応、私も自己紹介ね。マスター、ルシリオンの使い魔で、名をフェンリル。マスターが帰ってくるまでの間、よろしく」
「あ、ああ。よろしく頼む」
フェンリルさんとシュリエルリートさんも握手を交わした。フェンリルさんに立たされたシュリエルリートさんもソファに座ることに。わたしを真ん中にして、右にシュリエルリートさん、左にフェンリルさん。
「シュリエルリートさん。わたしのことは、はやて、って呼び捨てでええよ。あと敬語も無用や。みんなにもそう伝えてあるし」
「あ、申し訳ありません。基本私は主に対しては敬語ですので。主はやてと呼ばせて頂きたいのですが・・・」
「あぅぅ、なんでぇ~? オーディンさんには主って付けてへんやん」
シュリエルリートさんはさっきから、オーディン、って呼び捨てやんか。
「あ、それは、その・・・仕方なくと言いますか。初めて会うタイプの方でしたので驚きまして。それに、初めて人らしい扱いを受けて嬉しかったものですから、つい・・・」
照れ笑いを見せたシュリエルリートさん。フェンリルさんがそれを見て「くっ。ここにもか、ライバル・・・!」悔しげに呻いた。一体なんのライバルやろ?
「まぁここで無理強いしてもええことあらへんな。出来ればいつかはシャマルやヴィータみたく、畏まらんへんようになってもらいたいな」
「その辺りは・・はい、努力します」
「ん。そんで明日、シュリエルリートさんに街やお店を案内やっ♪」
「おお!」「はいっ」
明日の予定も立てたところで今日はもうおやすみや。フェンリルさんはルシル君のベッドで寝ることになって、シュリエルリートさんはわたしと同じベッドで。シャマルのパジャマに着替えたシュリエルリートさんと向かい合うように横になって一緒に布団に入る。
「そうでした。言っておかなければならないことが。主はやて」
「ん?」
「騎士たちと同じく、私に敬称は必要ありませんよ。それと、シュリエル、とお呼び下さい。オーディンもまたそう呼んで下さってました」
「シュリエルやね。うん、判った。シュリエル♪」
シュリエル(まるで天使みたいや)に抱きつくような体勢になって、「お休み、シュリエル」わたしは安らぎを得ながら眠ることが出来た。
†††Sideはやて⇒????†††
『うん。ちゃんと具現化したよ。夜天の書の管制人格、シュリエルリート。はやてと自己紹介も交わしたし。で、今は仲良く同じベッドで眠ってる、と。報告は以上ですっ♪』
八神はやての護衛兼お世話係として“英雄の居館ヴァルハラ”より召喚された私、フェンリルは、私の愛おしき男性にしてマスターであるルシリオンへとそう報告した。リビングからはやての部屋を覗き込んで、静かに寝息を立てているはやてとシュリエルの様子を伺う。2人は向かい合うように眠ってて、シュリエルがはやてを抱きしめるような形だ。
(まさかこんな他愛も無いことを報告する日が来るなんてね)
でもこうして再びマスターの役に立てることが出来るなんて、私はとっても運が良い。たとえ私が本物でなくても、だ。私はマスターの創世結界の1つ、“ヴァルハラ”に登録された使い魔――“異界英雄エインヘリヤル”だ。
オリジナルと全てが同じであっても、所詮はフェイク。こうして得た嬉しい記憶も全てオリジナルに引き継がれることはない。でもまぁ嬉しいことには変わりない。それほどまでにオリジナルの私は魔術師殺しでしか、マスターの役に立てなかったんだから。
『そうか。それは良かった。これでシュリエルにも楽しい生活を送らせる事が出来るな。先の次元世界ではありえなかった時間を彼女にも』
マスターが本当に嬉しそうに言う。マスターが嬉しいと私も嬉しくなって、小躍りしちゃいたくなる。
『とりあえずフェンリル。シュリエルが目覚めた以上、お前の戦闘能力を一部返還させてもらう』
『了解です、マスター。というか、そもそもこんなに必要なかったよ、魔力。魔術・魔法の無いこの世界の住人相手、ううん、魔導師でも負けるほど私は弱くないんだから』
『判ってるよ、それくらい。何事にも念の為、だ』
シュリエルっていう戦力が活動できるようになった今、私ひとりが頑張る必要はなくなった。だから私がこの世界に存在するのに必要な魔力を還すのは当たり前。一応私を含めた“エインヘリヤル”はマスターから魔力を供給しなくても、大気中に在る魔力から供給して存在固定が出来る。けどどうしても全ては外からは賄えず、マスターに依存することになる。
特にこの世界、地球ではより深刻。だってこの世界、魔力が薄い。私のように魔力を食う高位に“エインヘリヤル”にとっては辛いから、マスターからの魔力供給量も多くなる。それなのにそんな私を、自分の使用魔力が減衰するにも拘らず召喚した。それだけ私を信頼してくれているという事だって解る。だからこそマスターの期待に応えたい。
「んあっ・・・!?」
いきなりこの身を構成する魔力が減らされてビクッと感じてしまった。はやて達を起こさないように慌てて口を両手で塞ぐ。でも足が震えて立つことが出来ずその場にへたり込んでしまう。ドキドキと早鐘を打つ偽りの心臓の鼓動を強く感じる胸に手を置く。
『それじゃあもうしばらくの間、はやての事を頼んだぞフェンリル』
『りょ、了解です・・・』
マスターとの念話が切れる。少しの間そこで座り込んで、ようやく鼓動が治まってきたことで立ち上がる。目指すはマスターが居ない間、私が体を休める場所であるマスターの部屋。リビングを出て廊下を歩いてマスターの部屋へ。ガチャっと扉を開けて部屋の中に入って「すぅ~~はぁぁ~~」深呼吸。うん、マスターの香りだ。私にとってはどれだけ微かだろうが、狼としての鼻の良さでマスターの香りを嗅ぎ分けることが出来る。
(ん? いま誰かが私のことを変態とか言ったような気が・・・)
気の所為だと思い、私は裸になって昨日も寝たマスターの部屋にダイブ。ボフッと柔らかいマットが私を受け止めてくれた。そして私は目を閉じ、「おやすみなさ~い」遠き地で頑張っているマスターに向かって挨拶。そのまま眠りについた。
渦巻く曇。降るのは雪。アースガルドへ繋がる唯一の道を有する世界であるビフレストはイーヴェンティノン平原。広大な平原はいま雪が降り積もっている。
「戦って・・・フェンリル・・・。もう死んじゃうあたしに代わって・・・」
「アトリ様! 嫌です! 死んでは嫌です! わたくしを置いて逝かないでください! わたくしは・・・フェンリル狼は、これまでもこれからも・・・貴女さまだけの使い魔です! 貴女さまが居なければ私に戦う理由は・・・!」
「そんなこと言わないでフェンリル。・・・本音を言えばマスターの為にじゃなく、この世界の為に戦ってほしいんだけど・・・」
「嫌です! わたくしの力を恐れ、討伐しようとした者共の血統の力になるなど。わたくしは、アトリ様――貴女さまだからこそ、この力を使っているのです!」
わたくしが抱えているのは1人の女性、アトリーズ・セインテスト・アースガルド。両前腕・両足を凍結粉砕されたという惨たらしい姿。短くも艶やかで美しかった銀の髪もまた所々が凍り、紅と蒼の瞳は虚ろで、わたくしを視界に捉えているかも怪しい。
砕かれた部分から徐々に全身へ回って行く凍結。このままでは胴体、頭部にまで凍結が侵食していく。わたくしのルーンで解除しようとしても、この凍結魔術の前に無効化されてしまう。憎くて仕方ないけど、さすがは現在において最強の魔術師と謳われているシルヴィア・プレリュード・ヨツンヘイムの魔術。EXランクの氷雪系魔術は伊達ではないということだ。
「そう言うと思ったから今まで言わなかったのよ。でもこうしてあなたを残して死んでしまうことになった今だからこそ・・・お願い。あたしの生まれ育ったあの世界、アースガルドを護って、フェンリル」
「貴女さまが居なくなったアースガルドなどに興味はありません!」
わたくしの全てはアトリ様の為に。アトリ様こそ至上。アトリ様が居ないのであれば、アースガルドが滅ぼうが、このままわたくしが死のうが一向に構わない。
「・・・・ねえ、フェンリル。いつか、あたしのようにあなたに笑いかけてくれる人が現れて、そしてあなたの力を求めたら、その時はその人と一緒に戦って。お願い、フェンリル。あなたの初代マスターとしての最期のお願い・・・、ね」
「アトリ様ぁぁぁーーーーーーっっっ!!!」
そして凍結が全身に回り、アトリ様は粉々に砕け散った。
「――っ、アトリ様・・・! ・・・・・・エインヘリヤルが夢を観るなんて・・・」
ガバッと体を起こして周囲を見回して、ここが戦場じゃなくてマスターの部屋であることを確認。汗で顔に張り付いた前髪を払って自嘲気味に苦笑する。夢に観たのは私のかつての主、アトリーズ・セインテスト・アースガルドの死に際。大戦が始まってから400年後、セインテスト王家から輩出された魔術師。私が初めてマスターとして認め従い、心より敬い、慕い、愛した女性。
(はやてに、かつての主とかそんなことを話した所為か・・・)
私が話したかつての主と言うのがルシリオンのことだってはやては勘違いしてたけど、実際はアトリ様のことだ。アトリ様が亡くなってからは戦場や人目のある場所を離れ、住処としていた洞穴に閉じ籠った。そしてマスターと出逢うまでずっとそこから出ることはなかった。
(私はオリジナルのフェンリルじゃないけど、それでもマスターを助けることが出来る力を持っている以上は・・・何をしても守って見せる)
アトリ様のように無念のままでマスターを死なせない。必ず“堕天使エグリゴリ”との戦争を終結させ、マスターを“界律の守護神テスタメント”より解放し、オリジナルの私の元――アースガルドはグラズヘイム城へと還らせる。
「・・・・すんすん。あ、良い香り」
両手を胸に添えて決意を新たにした時、部屋の外から良い香りが漂ってきて、強張っていた体が弛緩した。人の耳じゃなくて私本来の狼の耳を立てる。聞こえて来るのはトントントン、という包丁の音。はやてが朝ご飯を作ってる音だ。
ベッドから降りて膝丈のニットワンピースにレギンスへと変身て、はやての居るリビング・ダイニングへ向かう。台所に立つのは、「おはよう、はやて。シュリエル」の2人で、はやては味噌汁を作っていて、シュリエルはサラダを作っているよう。
「おはよう、フェンリルさん」
「おはよう」
手伝えることがあれば手伝いたいけど、残念ながら私に家事能力は無い。元が狼なだけに何を学んでも上手く行かない。だからもう家事を覚えるのは諦めた。大人しくダイニングテーブルに付いてはやてとシュリエルの後ろ姿を眺める。時折チラッと見えるシュリエルの横顔は幸せに満ちていて、普通の生活が出来ることが本当に嬉しいって言った風。
「よし、出来た。フェンリルさん。料理運ぶの、手伝ってくれるか」
「うんっ」
白いご飯にお味噌汁、目玉焼き、焼き魚、お漬物。で、私にだけ「ウインナーと厚切りベーコン・・・」こってりした物が1皿追加されてた。はやてを見ると、「ん?」なんの疑問も持ってない笑顔を向けて来た。
「ああ、うん、ありがと。こってり大好き。狼だから」
「どういたしまして♪」
本当はそれほどでもないけど、はやての優しさにケチは付けたくないから黙っておく。3人でテーブルを囲んで朝ご飯を頂いた。
†††Sideフェンリル⇒はやて†††
シュリエル用の服を買うためにわたしの部屋でシュリエルのスリーサイズを測る。やっぱり見た目通りにすごい数字やった。出るところはちゃんと出て、へこむところはちゃんとへこんでる。モデル体型って奴やな。シグナムもそうや。シャマルは・・ちょう違うかな、うん、大きいけど。
「サイズは測ったっと。次は騎士甲冑のデザインやったな」
「はい。お願いします」
シグナム達の騎士甲冑のデザインもわたしがそう。
「そう言えば、わたしの考えたデザインって、オーディンさんと丸被りやったって話やけど・・・」
「あ、そうですね。私も騎士たちが初めて騎士甲冑へと変身した様子を見ていましたが・・・。私も驚きました。デザインや色合いまで全てが同じでしたから」
そう。オーディンさんが昔みんなに考えてあげた騎士甲冑と、その事を知らんわたしが考えた騎士甲冑のデザインが丸っきり同じやった。
◦―◦―◦回想です◦―◦―◦
「うん、出来た!」
スケッチブックにみんなの騎士甲冑のデザインを描いた。わたしはみんなを戦わせるつもりなんかあらへんから、鎧やなくて甲冑らしい服にした。みんなもそれでええって言ってくれたしな。シグナムとザフィーラはカッコよく、ヴィータとシャマルは可愛くそして女の子らしく、を心がけた。我ながら会心の出来やと思う。
「なあ、みんな! 騎士甲冑のデザイン、これでええかな?」
リビングに揃てるはずのみんなの所へ向かう。ヴィータは扇風機の前で「わ~れわ~れは異世界人だ~」とか言うてて、シャマルは「ヴィータちゃん、邪魔ぁ~」うちわで自分を扇いでて、シグナムはダイニングで麦茶を飲んでて、ザフィーラはいつものようにソファの側に狼の姿で座ってる。
「騎士甲冑できたの、はやて?」
真っ先にわたしの所に来たんはヴィータで、「見せて見せて♪」目を輝かせてる。そんなヴィータと一緒にリビングのソファに行って、集まったみんなにステッチブックを見せる。まずは「シグナムからや」シグナムの騎士甲冑のデザインを描いたページを、ソファに座るシグナムに見せた。さぁ、どんな感想でもええよ。気に入ってくれたら嬉しい。気に入らんとこがあれば要望に応えよう。
「「「「っ・・・!」」」」
「・・・・ん? どないしたん?」
わたしの描いたシグナムの騎士甲冑デザインを見てるみんなは目を丸くしてて。わたしは「気に入らんかった?」って不安げにそう尋ねた。
「あ、いえ。私はそのデザイン好きですよ、はい」
「ホンマに?」
「ええ、本当です」
どこかぎこちない微笑みを浮かべるシグナム。なんや気になるところがあるんなら言ってほしい。そう思うて、もう一度訊こうとした時、「ねえ、はやて。あたしのは?」ヴィータに先を促されたから、一応全員のデザインを見せてから訊くことにした。
「ヴィータのは・・・コレや」
赤を基調としたドレス風の騎士甲冑。ヴィータがおもちゃ屋さんで一目惚れしたうさぎのマスコット、のろいうさぎを帽子の両側に付けてみた。これもまたかなりの自信作なんやけど・・・。
「マジかよ・・・」
「あ、アカンかった?」
「ち、違う! そうじゃないんだよ、はやて! あたしもソレすげぇ良いと思う! つうか、はやてが考えてくれた騎士甲冑なんだ、嬉しいに決まってるじゃん!」
慌てたようにそう言うたヴィータ。それが本音か建前かくらいは判る。ヴィータはホンマにこの騎士甲冑のことを喜んでくれてる。そやけど、何かが引っ掛かってるっぽい。
「あの、はやてちゃん。私とザフィーラの騎士甲冑はどのようなデザインなのでしょう・・・?」
「え、あ、うん。2人のはコレや」
シャマルは前線で戦うんやなくて後ろでみんなの補助をするって話を聴いたから、みんなの物とは違って動き易さやない、女性らしさを追求したデザインにしてみた。ザフィーラはガッツリ戦う騎士やってことで動き易さと男性らしさを考えて作ってみた。シャマルとザフィーラもまた、わたしの考えたデザインに何か思うことがあるみたいで、ザフィーラは「ふむ」とひと頷き。シャマルはハッキリと驚きを見せた。
「なぁ、みんな。さっきから気になってたんやけど。このデザインに何か思うことあるよな。なんかあるんなら何でも言うて。わたしは怒らへんし、ヘコまへんから」
そう言うと、みんなは顔を見合わせてから、ヴィータが代表してわたしに訊いてきた。
「はやて。あたしらの騎士甲冑のデザイン、はやてだけで考えた?」
「う、うん。そうやけど。なんで?」
ヴィータにそう訊き返すと、「実は――」シャマルが話してくれた。わたしが悩みに悩んで考えたみんなの騎士甲冑のデザインが、みんなの昔の主オーディンさんと丸っきり一緒やったってことを。
「オーディンさんも、わたしと同じデザインを考えてたんやなぁ~。すごい偶然やな♪」
「偶然で済ませれるのか、これ・・・?」
「確率で言えば天文学的だろうな」
「唯一の違いと言えば、ヴィータちゃんの帽子のうさぎちゃんよね。オーディンさんの時は無かったもの」
「無くて当然だろう。ヴィータのアレはこの世界、この時代での代物だ。主オーディンの時代では存在しえないのだからな」
みんなは奇跡とも言えるこの偶然にいつまでも首を傾げた。
◦―◦―◦回想終わりです◦―◦―◦
ホンマに不思議な縁やと思うわ、わたしとオーディンさん。もしかしてわたしって、ルシル君を差し置いてのオーディンさんの生まれ変わりかもしれへんなぁ。
「実に不思議な方でした。別れの日、オーディンは言っていました。必ず君たちの前に最高の主が現れる。この予言だけは必ず当たる。確実だ。絶対だ。それが運命だ。君たちは、幸せになる、と」
シュリエルは懐かしみながら、オーディンさんが言うたと思う言葉を言うた。
「その予言は確かに当たりました。主はやて。我々は最高の主であるあなたと出逢えたのですから」
「っ!・・・あぅ、そんな持ち上げんといて。は、恥ずかしいわ」
シュリエルの見せてくれた綺麗な笑顔に、わたしの顔は耳まであっつあつ。いま鏡で自分の顔を見たらきっと真っ赤なはずや。でもみんなに最高の主やって思ってもらえて、いつまでもそう思ってもらえるようになりたいって気持ちが強くなったのも確か。
「わたしってまだまだ子供やから至らへんこともあると思うけど、みんなと幸せを分かち合っていけるように頑張るからな♪」
「主はやて。そう気負わなくても良いのですよ。あなたが自然のままで振る舞って下さることこそが、我々にとっての幸せなのですから」
わたしは改めて家主として、そして“闇の書”の主として、みんなやルシル君と一緒に幸せになるって決意をする。そのためには「生きやなアカンな。全力で」こんなところで死んでおられへん。
「はい。共に生きましょう。全力で」
シュリエルと真剣な顔で頷き合って、すぐに笑顔を交わした。
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