少年少女の戦極時代
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第23話 アマチュアは主張する
しかし、ベルトを掴んだ咲を、当のヘキサが腕にしがみついて止めて来た。
「咲、待って!」
「待てない! だってあいつ…!」
「ここはチーム鎧武の人たちのステージよ! 別のチームのわたしたちが先に出ちゃいけない!」
確かに、ここで咲が戦って負ければ、あの男はそれを言いがかりにしてこのステージを奪ってしまいかねない。ここは咲たちの野外劇場ではないのだ。
「ストップ!」
観客側にいた紘汰が、足のジャンプだけでステージに上がってきた。
「紘汰くん…」
「大丈夫だ、咲ちゃん。その子の言う通り、ここからは鎧武の問題だ。咲ちゃんの分は俺が引き受ける。――ミッチ、あいつは強敵だ。助太刀するぜ」
紘汰の背中は、河原での時のように頼もしかった。
『あらぁ。アナタもビートライダーズだったのね。道理でセンスのない格好してるわけだわ』
チームユニフォームは仲間を繋ぐ大事な品であり、人々に自分を示す証の服だ。それさえ貶され、咲はまた前に出ようとしたが、今度はヘキサと、ナッツにも掴まれて止められた。
「あんた、みずがめ座の俺とは相性悪いんだってな。星占いなんて信じる気はないが、今度ばかりは納得だよ! ミッチ!」
「はい!」
紘汰と光実は同時に戦極ドライバーを装着し、それぞれの錠前を起動した。
「「変身!」」
《オレンジアームズ! 花道・オン・ステージ!》
《ブドウアームズ! 龍・砲・ハッハッハッ!》
オレンジとブドウの鎧が紘汰と光実を鎧武者へと変身させた。
ブラーボは満足げに、両手を観客に向けて広げた。
『Ouverture~!』
わあ、と観客が沸いた。咲とて分かっている。演者が感情をむき出しにすればするほど観る側のボルテージは上がる。それでも、忸怩たる思いだった。
『いちいちうるさいんだよ!』
大橙丸で鎧武が先陣を切った。鎧武がブラーボと切り結ぶ隙に、龍玄がブドウ龍砲で撃とうとする。だが。
(あいつ、紘汰くんを盾にしてる!)
龍玄もそれに気づいたらしく、ブドウ龍砲をトンファーのように逆手に構えて、近接戦に入った。
鎧武が大橙丸でブラーボと鍔競り合う。
『あんた、誰よりも頑張って立派なケーキ職人になった、それを誇りにしてんだろう!』
『そうよぉ? ワタシこそが本物のプロフェッショナルよ』
『だったら自慢のケーキを作ってるだけで胸を張ってればいいじゃないか。こんな馬鹿げたことをやるよりも、よほどみんなが喜ぶはずだ!』
「紘汰くんの言う通りよ! さっきからプロ、プロって、プロがどんだけえらいのよ!」
同じ思いの人がいるという心強さは、今度も咲の背中を押した。
「大体プロだってアマチュアの行きつく成れの果てじゃん! あなた、ちっちゃい子がケーキ職人になりたいって言って、砂場でどろんこケーキ作ってたらそれ壊すの!? あなたがやってるの、そういうことじゃん! ちょっと人より先にゴールしたからって、スタート地点にいる人たちをバカにしないでよ!!」
息が荒い。咲は肩を上下させた。言ってやった。あの凰蓮・ピエール・アルフォンゾに。
チームメイトは呑気に「咲やるぅ」「度胸ある~」などと言っているが、咲としては人生を懸けたと言ってもいい未成年の主張であった。
後書き
作者がブラーボに感じたことをヒロイン①に全て代弁してもらいました。
アマチュアだっていつかプロになる(こともある)のにアマチュアだからって否定するのは違うと思うんですよブラーボさん。
最初からできる人なんて、どこにもいないんですよ。
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