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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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サタン降臨


民家の煙突の上。
そこにナツはいた。

「くそっ!人が多すぎる。ラクサスの臭いが見つからねぇ」

共にギルドを出たガジルはいない。
ギルドを出る前のティアの忠告により、別行動しているのだ。

『いい?街にはフリードの術式が点在してる。アンタ達2人が一緒に引っかかったら意味ないんだから、ギルドを出たら別行動ね』








「へ、火竜(サラマンダー)にもいずれ雪辱を果たさなきゃならねぇが、まずはあの増長した雷兄さんを潰す。随分とやってくれたからなぁ」
「ガジル様がそう仰るのであれば、私はそれに従いますわ」

マグノリアのとある木の太い枝に、ガジルとシュランはいた。
その2人の間にヒラヒラと人の形をした紙が現れる。

「問題はねぇよな?マスター『イワン』」
『今は仲間だと信頼を得る事が重要だ。気づかれるな。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の一員として行動しろ』

その紙には丸や横線などの模様がかかれている。
マカロフとは別のマスターの名に紙からその人物と思われる声が聞こえた。

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に【罰】を与えるのはまだ先だ』
「了解」
「承知致しました」

その言葉にガジルは邪悪に笑い、シュランは表情を崩さず呟いた。










それと同時刻。
マグノリアの別の場所ではミラとエルフマン、アルカが歩いていた。

「姉ちゃん・・・もういいよ・・・1人で歩けるって・・・」

ミラに支えられて歩くエルフマンがそう言うが、ミラは申し訳なさそうな小さい笑みを浮かべた。

「私・・・何も出来ないから・・・せめて、これくらいは・・・アルカは大丈夫なの?」
「俺は平気だ。動けなくされて石化しただけだからな」

からからと笑うアルカ。
すると――――――――

「!」

行く先にあった石橋がガラガラと音を立てて崩れた。

「あぁあああぁあぁあ!」
「カナ!」
「え?」
「どうしたんだ、アイツ!」

崩れ落ちる石橋の瓦礫と共に落ちてくるカナは傷だらけで、苦しそうな声を上げている。

「ぐううう・・・あぐあああ!」

喉を押さえて呻くカナ。
崩れた石橋の上に、サーベルを構えたフリードがいた。

「しぶとい。さすがギルドの古株といったところか」
「フリード!」
「チッ・・・こんな時に!」

その姿を捉えたエルフマンの顔が怒りに似た感情に歪み、アルカが苛立たしげに軽く舌打ちをする。

「取り消しなさい・・・」

よろめきながら、カナは起き上がる。
息を切らしながら、目から涙を流しながら、叫んだ。

「ジュビアを『ファントムの女』と言った事を取り消しなさい!」

怒り、悔しさ、憎しみに似た感情・・・様々な感情が篭った目がフリードを睨む。
その瞬間、カナを激痛が襲った。

「う・・・あぎっ・・・ばはっ!」

バキバキと耳を塞ぎたくなるような音が響く。

「カナ!」
「何が起きたんだ!?」
「術式か!?」

喉を押さえ、血反吐を吐くカナを見て慌てて駆けよる3人。
カナは右腕を空に伸ばし―――――――白目を剥いて、気絶した。

「カナーーーーー!」

ドサッとカナは後ろに倒れ込む。

「ちくしょオ!」
「テメェェェェェェェッ!」

それを見たエルフマンとアルカは石橋の上に立つフリードに向かっていく。

「次の相手はお前達か。エルフマン、アルカンジュ・・・と言ってもお前達はエバに負けている。ゲームへの復帰権はない」
「うるせえ!」
「んな事どうでもいいんだよ!」

フリードの言葉を完全無視して、2人は石橋へと昇っていく。

「いい加減にしなさい、フリード!私たち仲間じゃない!」
「かつては」

両腕を広げて叫ぶミラ。
が、フリードは至って冷静にサーベルを構える。

「しかしその構造を入れ替えようとしているこのゲーム内ではその概念は砕け散る。ラクサスの敵は俺の敵だ」

そう言って、視線を向かってくるエルフマンとアルカに向ける。
そしてサーベルを振るい、2人の体に何やら黒い文字を描いた。

「これは!?」
「文字・・・か?」

突然描かれた文字に戸惑う2人。
フリードは表情を崩さず、ただ淡々と告げる。

「1度敗れた駒がゲームへ復帰する事は禁ずる。その掟を破りし者は死より辛い拷問を受けよ」

普段は長い前髪で隠れている右目が露わになる。
その目には一欠片の光も入っていなかった。

「闇の文字(エクリテュール)、痛み」

冷たい眼差しを向け、フリードが呟く。
すると、2人に異変が起こった。

「ぐぅ・・・な、何だ・・・!?体中がギシギシと・・・」
「いっ、てぇ・・・何だ、これァ・・・!」
「その文字は現実となり、お前達の感覚となる」
「ぐ・・・が・・・」
「っ・・・うあっ・・・」

体をズキズキと走る痛みに呻き声が上がる。

「そんな・・・」

石橋を見上げる形でミラが呟いた、瞬間。

「うがぁぁああぁあああああああ!」
「ぐあああぁぁぁあああああぁあ!」
「エルフマン!アルカ!」

2人の体中に激痛が走り、悲鳴が響く。
ミラが目を見開いて叫ぶが、フリードは更にサーベルを振るっていった。

「闇の文字(エクリテュール)、恐怖!」
「あぁあああああぐあがああああ!」
「ぐおおがああああああああああ!」

2つの絶叫が辺りを包む。

「やめてフリード!エルフマンもアルカももう戦えないの!」

頭を抱え、ミラが叫ぶ。
が、フリードの攻撃は全く止まる素振りを見せない。

「闇の文字(エクリテュール)、苦しみ!」
「お願いフリード!何でもするからもう助けて!」

苦しむ2人の絶叫。
聞きたくない声を聞きながらミラが懇願する。
その言葉が届いているのか否か、フリードは更に攻撃を仕掛けていく。

「闇の文字(エクリテュール)・・・痛み、痛み、痛み、痛み、痛み、痛み!」
「ごっうがぎゃはぅあ!」
「ぐぁがっぎぃがああ!」

目にも止まらない速さでサーベルを振るう度、エルフマンとアルカは叫びを上げる。

「がふあ゛がぁあぱァがぁ!」
「があぐぎあああああああ!」

先ほどのカナのように、ゴキゴキと耳を塞ぎたくなるような音が響く。
それと同時に響く絶叫。

「いやぁーーーーーーーーーーーーっ!」

耳障りな音。
弟と恋人の絶叫。
ミラは頭を抱え、残酷な光景を見たくないかのように目を閉じ、泣き叫んだ。

「闇の文字(エクリテュール)・・・」

休む間もなく襲ってくる痛みに、エルフマンもアルカもフラフラだった。
立っている事すら難しくなり、体中を文字が埋め尽くしている。
それに構わず、フリードはサーベルを構えた。

「やめてぇーーーーーーーーーーーーーーっ!」

ミラが泣き叫ぶ。
これ以上、弟と恋人の苦しさだけで構成された絶叫を聞きたくなかった。
――――――が、その願いはフリードには届かない。
サーベルの先に魔力が込められ―――――――――



「死滅」



――――――――――――刹那。



(死・・・!?)



ミラの色素の薄い青い目が、大きく見開かれた。
その脳裏に、とある記憶が蘇る。



『ミラ・・・姉・・・』



額から血を流し、苦しそうに息をして。
姉と同じ青い目を細め、最後の力を振り絞るかのように震えながら手を伸ばして。
その左肩に赤い紋章を刻んだ、銀髪をショートカットにした少女。

「――――――――」

その記憶は、2年前のもの。
ミラとエルフマンの妹―――――リサーナが、死ぬ直前の――――――――。

「!?」

ぞわっ、と。
突如フリードは寒気を覚えた。
ピタッと動きを止め、辺りを見回す。
それと同時に、力尽きたようにエルフマンとアルカは倒れた。

「な・・・何だ、この魔力は!?」

圧倒的。
その言葉が何よりも似合うであろう魔力。

「ああ・・・あああ・・・」

その魔力の発生源は、フリードの下にいた。
俯き、体を小さく震わせ、小さい呻き声を上げる、銀髪の女性。

「ミラジェーン!?」

フリードがその名を呟いた、瞬間。




―――――――――ブチッと音を立て、何かが切れた。










「あああああああああああああああっ!」











彼女の体から、凄まじい魔力が溢れ出す。
その魔力は地面を砕き、重力に逆らって浮上し、銀髪を逆立てる。
上空に、黒と紫を混ぜたような色の魔法陣が展開した。

「くっ!」

魔力と共に吹き荒れる旋風に、フリードは両腕で顔を覆う。
放出された魔力はミラを包み、その体を四角く分裂させていく。
魔力の放出が止まり、地面が重力に倣い、旋風が治まる。



――――――――煙が晴れた時、フリードの目に天然看板娘は映っていなかった。






長い銀髪を逆立て、顔の右半分、額から胸辺りまでにかけて細い傷を刻み。


両腕の肘辺りから下を人間のものじゃない異形の腕へと変え、太い尻尾を生やし。


レオタードのような形状をした露出の多い格好をし、血のように赤黒い口紅を付けて。


その表情に優しさは残らず、存在するのは――――――悪魔。







容姿も、表情も、全てにおいて―――――悪魔のような姿へと変貌したミラが、そこにはいた。




フリードが目を見開く。
その間にも、ミラは勢い良く地を蹴って跳び、フリードへと向かっていた。

「くっ!闇の文字(エクリテュール)、翼!」

それを見たフリードは自分の左腕に文字を描く。
その背中から左右対称の羽が生え、ミラの一撃を喰らう前に飛んだ。

「!」

すると、ミラは背中から悪魔のような羽を生やし、勢いよく飛ぶ。
フリードが目を見開いた瞬間――――――

「ぐはぁっ!」

気づけばミラは目の前におり、その左拳が決まった。

「うっ」

宙を3回転程し、ピタッと動きを止める。
俯いていた顔を上げ、悪魔と化したミラは一言言い放った。

「消す」

その言葉に、強さに、フリードは真っ直ぐミラを睨む。
石橋に仰向けで倒れるアルカは先ほどの魔力放出で目を覚ましており、漆黒のつり目を輝かせた。

「久々だな・・・2年ぶりか、アレを見るのは・・・」

空に舞うミラとフリード。
その2人を下から眺め、アルカは言葉を紡いだ。




「魔人ミラジェーンの接収(テイクオーバー)・・・サタンソウル」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
突然ですが、百鬼憑乱を1から書き直したいと思います。
理由といたしましては、内容薄い、設定曖昧・・・など多々。
で、書きなおすとしたらいろいろ大きく変わるんですね。

・タイトル(これはまだどうなるか解らない)

・オリ主、カロンの設定全般(使用魔法は同じ。古文書(アーカイブ)と変身魔法はどうなるか不明)

・ストーリー全般

・恋愛要素なし(書いてても読んでても違和感ありの為)


・・・こんな感じで、大きく変わるんです。予定では。
もちろんオリ主は「カロン・ヴィラシェール」だし、契約する鬼や安全第一ならぬカロン第一の半獣人もそのままです。
皆さんに聞きたいのは2つ。

1つは「百鬼憑乱を書きなおすか否か」。
もう1つは「書き直すとして、今ある百鬼憑乱を消去して書くか。非公開にして書くか」。
どちらも公開、だとややこしいんで。

もしかしたら完全オリジナルストーリーになるかもだし、加入がルーシィより遅いかもだし、最初はシュランみたいに敵対する立場にいたかもだし・・・と書き直すとすればいろいろ変わってくる予定です。
皆さんの意見をお聞かせください。

感想・批評・投票・ご意見、お待ちしてます。 
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