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THE HOBI~第一章 選ばれし者たちと祈りの力~

作者:The wailers
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第三話 『母は盾となる』

今日も何事も無かったかの様にエリコの町では小鳥の囀りが響いている。

しかし、今朝もまたアザをつくり死んで行く者が出ている。

村は小鳥の声と泣く声と苦しむ声が響く。

アザの出始めたものが数多く、旅立つ事が出来なくなった。
その者達は恐怖と挫折と不安からただ呆然とするしかなかった。
幸いにもメシアとアサは大丈夫であったが、後ろめたさを隠せないでいた。




―メシアの家―


アサ「メシア、村の中心にはもう行くな…見ても辛くなるだけだ」

メシア「行かないよ…」

メシアは母の隣から一歩も動く様子がない。
マナサの目はいつもと違いアサの目をしっかりと見つめていた。
メシアを頼むと言う目の訴えであった。アサはコクンと一つ頷き荷物を背負い始めた。
マナサは重い腰を上げ立ち上がった。右手には杖を持っている。
そして三人は家の外へと出た。
外には村人が数十人とモイルが待っていた。


マナサ 「メシア…母さんは大丈夫よ。強い人になりなさい、自分に負けない強い人に…」

メシア 「うッ、うんッ…」



メシアの目からは涙がこぼれ落ちる。息が出来ない位に泣き、手は震え、声は出すのがやっとだった…。


メシア 「ごッ、めッ、ごめ…ん、なさい。母さん…ごめんなさいッ。僕は…僕はッ」


マナサ 「誰も悪くないわ。お父さんの言うことを聞くのよ…」


メシア  「母さん!僕、絶対戻ってくるから!!ちょっとの間待ってて!!必ずだよ!」

メシアは涙を拭い決意を固めた顔をしている。そこにはもう子供のメシアは居なかった。

メシアとマナサは強く抱き締め会い最後の別れを形にした。


アサはメシアの手を取り村人達と歩き出した。何度も振り向くメシアを見てマナサは涙を流しながら微笑んでいた。

次第に母マナサの姿は見えなくなった。メシアは振り向くのをようやく止めた。


―旅路―


アサ 「メシア、我々は悪魔の森を抜ける。木があるから身を隠せるしな。峠は危険過ぎる。周りがどうなってもメシア…お前はひたすら走れ、わかったな?」

メシア 「そ、そんなッ…」

アサ 「…お前を守る、母さんにそう誓った」

メシアは下を向きひたすら歩いた。



―平和の村エリコ―



村にある林から何か大きな音と共に近付いて来る者にマナサは気づいていた。
マナサは息を切らしやっとの思いで林の前へと辿り着いた。


「ドスンッ! ドスンッ!」

地響きと共に林の中から大きな岩ほどある犬の顔だけがひょこんと出てきた。

マナサ 「ハァ、ハァ、何て、大きな…」

マナサは息を切らしている。

次の瞬間

「バサーッッッ!!!!!!!!!」

一つしかなかった犬の顔の両隣りから同じような犬の顔が飛び出した。

マナサ 「こ、これはッ…」


「グルルルルゥゥ」

三つ頭の巨大犬は三頭ともマナサを見て涎を垂らしながら睨む。

謎の男 「お久しぶりです。マナサさん。」


巨大犬の背中に黒い服を纏った男が居た。


マナサ 「だ、誰なの!?顔くらい見せたらどう?」

謎の男 「おそらく、あなたは私の事など覚えて無いでしょう。あなたは子供でしたので。」
 
謎の男 「このケルベロスを起こすのに時間がかかりましたよ。大きな金色の鎖に繋がれてましてね。マナサさん、あなたの仕業ですかね?」

マナサ 「身に覚えがないわ!!」

マナサは謎の男を睨みつける。

謎の男 「そうですね。冗談ですよ。フフフフフッ。ケルベロスの鎖は大昔の事ですので。」

マナサ 「無駄話をする気はないわ、それに…あなた…生命を感じないわね?顔を隠しているのはそのせいかしら?」


謎の男 「フフッ、フハハハハハッ!!!まだ《力》を使えましたか ! 昔の記憶が無いのは確かな様ですね、マナサ」


謎の男 「本題に入りましょうか…で?貴様の子はどこだ?」

謎の男は急に態度が変わり、ケルベロスは興奮し始めた。


マナサ 「知らないわ。あの子には指一本触れさせない!」

マナサの鋭い形相は誰も目にしたことのないものであった。


謎の男 「無理しない方が?体はボロボロだぞ?言えば生かしてやろう」


マナサ 「お断りよ。私は皆の…盾になります」

するとマナサは胸に手を当て祈り始めた。


謎の男 「フンッ、無力。さぁ餌の時間だケルベロスよ!!!」

ケルベロス「ワオォォォォン!!!!!!」

狼の何倍もある鳴き声で吠えたケルベロスの声は村全体に響き渡った。



第三話 完
 
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