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THE HOBI~第一章 選ばれし者たちと祈りの力~

作者:The wailers
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第一話 『all』

 
前書き
エリコの村「西側は高い山々が連なり、東は大きな川が流れる。北側は荒野が広がり、南は死の森と呼ばれる森林地帯となっている。物語の始まりはエリコだが、後に神話の中の村となる」 

 
―ここは「平和の村エリコ」―



この地は綺麗な水もあり、森もあり、動物も数多く居る恵まれた土地である。
小鳥が鳴くある川の畔、まだ若い少年と少女が話している。
  
女の子シー 「ねぇえ、メシア?」

男の子メシア 「うん?」


シー 「まだデオ様に祈りを捧げないの?」

シーは小馬鹿にした様子でメシアに言った。


メシア 「デオなんか居ないよ。居たら母さんの病気は治ってるだろ!」

少し声をあらげてメシアは言った。


シー 「デオ様にちゃんと祈らないからよ…」

いじけた様にシーは下を向く。

シー 「祈りを捧げればマナサさんも喜ぶわよ!親孝行しなさいよ!」


メシア 「前は祈ったさ…」

するとメシアは両手を握り胸に当て目を閉じた。
辺りが静まりかえり、木の葉が僅かに揺れ始めた。


メシアは小さな拳を頭の上まで持っていき動きを止めた。
そして勢いよく振り抜いた。

「ガンッッ!!!」




すると子供の頭一つ程の石が真っ二つに割れたのだ。
種族あるいは人によりこの祈りの力の強弱は様々である。
この世には祈りを捧げなくてもこの力を操る者もいるがごく僅かである。



メシア 「これがデオの力?こんな物何の役にたつ!?暴力でしかな い!そもそも元から人が持っている力だろ?それをデオだの賜物だのって、くだらないよ!」

メシア 「シーはいつも祈ってるのにシーの父さんも母さんも死んだじゃないか!!!」

シー   「… …」


シー  「そう…だね。」


メシア 「あッ、その…何て言うか…」


メシアは気まずくなり足早にその場を去った。


シー 「フフッ、メシアは不器用ね。居なくならなくてもいいのに。」

シーは優しい顔をして微笑んだ。



メシアとシーは幼い頃から友人である。
シーの母は病で亡くなり父もまた若くしてこの世を去った。
その後シーは祖父母に預けられ育った。
髪の色は茶色で色は白く、体は小さな可愛い女の子である。





―場所変わり、ここはメシアの家―


アサ  「コラッ!メシア!魚が取れて無いじゃないか!」

メシア 「ごめんよ、父さん。」

アサ  「(今日はやけに素直だな) どうせシーと遊んでたんだろ?まぁいい、早く家へ入りなさい。」

メシアは家へと入る。自宅は小さく土と木でできている。
この村は天災が少なく嵐に巻き込まれるなんてことは滅多にないと言う。


マナサ 「お帰り、メシア」

ベッドの上で優しく微笑むマナサ

メシア 「ごめん、母さん、魚獲れなかったよ…」

マナサ 「良いのよメシア」

マナサは目を細めまた優しく微笑んだ。


マナサ 「母さんはこんな体だし、ご飯もたまにしか作ってあげられない。あなたが元気な事が母さんの幸せなの。」

メシア 「そんなこと気にしないでよ、僕も母さんが居れば幸せだよ!」

マナサ 「あら、まぁ、優しい子ね。さぁ、父さんを呼んでご飯にしましょう。」


メシアの母は体が弱くいつもベッドの上で顔色を悪くしていたが
三人はそれでも笑顔で、笑いは絶えなかった。
そして今日も日が沈み小さな家に明かりが灯った。





【この世は優しさ、怒り、憎しみ、喜び、悲しみ、様々なもので満ち溢れている。人がデオに祈りを捧げれば人は超人と化す。足で木を薙ぎ倒し、拳で山を割り、人を殺す。しかし…この世でデオを見たものなど存在しない…。   伝道師 マタイ】








メシア「父さん!!父さん!!」

アサ 「メシア…。待ってろと言ったはずだぞ。」

村の中心地に出掛けたアサを追ってメシアは来た。

メシア「この人…どうしたの…!?」

アサ 「病気だ。メシア、帰るんだ」

メシア 「でも…」

アサ 「早く行け!!」

メシアは下を向きゆっくり家の方へと歩きだした。


アサ 「村長、これで三人目です」

村長 「わかっとる。だが…どうも出来ん…皆でデオ様に祈りを捧げよう」

アサ「しかし、動物や貴重な作物を捧げても、三人目の犠牲者が…悪行でしょうか?」


村長 「悪魔が寄ってくる、口にするでないアサよ。皆、家へ戻るのじゃ!!」

村民は心配そうな顔をしながら持ち場へと帰って行った。

アサ 「このままでは、この村は恐怖に包まれてしまう。何とかしなければ…」




―翌朝―



村民が再び村の中心地に集まりだした。

アサ  「…」

メシア 「と、父さん…?」


アサはメシアに帰れとは言わず呆然と立ち尽くす。 目線の先にはアザが全身に浮き出て死んだ村民が三人横たわっている。

村民1 「もう、ダメだ。デオ様の怒りをかったんだ」

村民2  「悪魔だ…悪魔だ…助けて、誰か…」

アサ  「黙れ!!違う!!これはただの病だ!!」


村長 「皆聞け!この村を去るぞ。準備をするのだ」


村民 「そ、そんな。この村は川もあり花も咲き動物も居る!!去るなんて死ぬも同然だ!!」

村民 「そうだ!「死の森」か「終わり無き峠」を歩くなんて無理だ!!」

村長 「そんなこと分かっておる!!残りたいものは残れ、ワシはここへ残りこの地を見届けよう」



するとある村民の一人が小さな声で何かブツブツと囁いている。



村民のモロク  「や、やだ。死にたくない。生け贄だ。人間の、生け贄だ。赤子か女だ…デオ様よ…助けたまえ…」


モロクは横にシーが立っているのを見つけ凄い形相でシーを見つめた。
その顔はまるで悪魔に憑りつかれたものであった。



    「ガッッ!!!」


シー 「痛いッ!!!」



静まりかえる村にシーの声が響きわたり、
正気を失ったモロクはシーの髪を掴み、抱き上げ祭壇へと走り出した。


アサ 「しまった!!!奴を追えッ!!」

村民達 「… …」


村民達は誰も動こうとしない。



アサ 「クソッ!!」

モイル「アサ!追うぞ!」

アサの親友のモイルと共に二人は走り出した。







アサ 「ハァ、ハァ(頼む間に合ってくれ!!)」





モロクとシーは村の外れにある祭壇へと着く。

モロク 「ハァ…ハァ…来るな!!アサ!動けばこいつを殺す!」

モロクはシーの首にナイフをあてる。






アサとモイルに続きメシアが祭壇に着く。




メシア「ハァハァ、シーッ!!!」


アサ「メシア!!お前は来るな!」

メシア「無理に決まってるだろ!!シーは親友だ!!」





モロク 「こいつに親は居ない。ハァ、知ってるだろ?ハァ、ハァ。祖父母だけだ。死んでも誰も悲しまんだろ!?」

アサ 「ふざけるな!そんな事お前には出来ん!」

モロク 「いぃや、できる。あの病の一人目を知ってるだろ!?この女の母だ。この病はコイツの母の呪いだ!悪魔になったんだ!!」



泣きながら震えるシー

モロクの手の震えは次第に大きくなる。


アサ「止めるんだ…モロク、デオ様はそんなこと望んではいない」

しかし説得には耳を傾けないモロク。



モロク 「デオよ…我はあなたを崇拝し、全てを捧げましょう…この女の命をもって…」









モロク 「我を…」








モロク 「救いたまえ…」





モロクはナイフを天に掲げシーを見つめている。





シー 「ごめんねぇ…メシア…」



シーは震えた声でメシアの方を向き、呟き、…微笑んだ。




アサ   「やめろぉぉー!!!」
メシア  「やめろぉぉー!!!」









「シュッッッッ!!!!!!!!!!」








鈍くも鋭い音が響いた。


    …。






    …。




    …。






「ポタッ…」













「ポタッ…」







「ポタッ…」









祭壇にシーから流れ出た血が溜まる。


アサ「…」
メシア「…」
モイル「…」




アサ 「貴様ぁぁぁぁあ!!!!!!」

モロク目掛けて走り出すアサ


「グサッ!!!!!!」

モロクは自分の首をナイフで刺し倒れこんだ。

アサ 「な、何て事を…!!。」






モイルは震え泣くメシアを強く抱き締めてあげている。アサはたたずみ魂を抜かれたかの様に膝まづいた…。



アサ 「シー……。」

アサの目から涙が流れ落ちた。








辺りに小鳥の囀りが響き渡り、木々はいつもと変わりなく聳え立ち、葉はゆっくりと揺れた。
人は時に優しく時に残酷な生き物である。























【人…デオを信じ、祈る…。また…デオを憎み恨む。それでも胸に手を当て、祈ればデオは人に力を与える。デオは人間の想像か、それとも…。





















私はこの世を、all《オール》と呼んでいる。   伝道師 マタイ】






 
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