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短編集的な

作者:千夜
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☆規格外達

「誓いをここに。我は……」

 最愛の夫の詠唱を、祈るように彼女は見つめる。実家(アインツベルン)が用意した聖遺物を蹴ってまで、彼が触媒として用いたのは黒い球。爆弾のようにも見えるソレが果たしてなんの英霊を呼びだすのか。彼女には皆目見当がつかない。アーサー王よりも強大な英霊を呼び出せるのだろうか?

「……護り手よ!!」

 切継の声とともに、魔法陣が光る。強烈な閃光が大地を奔り、耐えきれずにアイリは目を瞑る。

「さて、お前が俺のマスターか?」

 突如聞こえた男の声に、慌てて彼女は目を開ける。

「そうだ。僕のサーヴァント、で良いかな?」

「あぁ。セイバーのクラスを得て現界した」

 彼の前髪は長く、目がこちらからではよく見えない。学生服、のような物を着ておりこの国の学生に見える。

「彼は……?」

「あぁ。彼がセイバーだ。セイバー、彼女はアイリ。僕の妻だ」

 妻、という単語にセイバーの気配が瞬間、身じろぎする。

「妻、か。流石に俺もNTR趣味は無えからな。他の女を探すとするさ」

 なぜだろう。その言葉に言いようのない不安が募る。

「……セイバー、ひとつ聞いてよいかしら?」

「なんだ、マダム? ……マダム、で良いんだよな?」

「私の事は好きに呼んで構わないわ。それより、あなたの願望は何なの?」

 アイリの問いに、セイバーは答える。美形とも言える顔を笑みで溢れさせながら。

「それは当然。俺のハーレムを作れるような世界へ行くことに決まっているだろう!!」

「……切継」

 これはどういうことかしら、と非難を込めた目で見れば。

「いや……だが、彼はおそらく最強のサーヴァントだ」

 しどろもどろになりながらも、答えが返ってくる。

「あなたの真名、聞いても良いかしら?」

「あぁ、構わない。俺の真名は――――」

 そこで突然、セイバーは言葉を途切れさせる。

「……セイバー? どうし――」

 その様子を不審に思ったのだろう。切継が声をかけようとして。

「おしゃべりはここまでだ。トレイター!」

 セイバーが黒い球体を空に投げる。いくつかの部品に分割されたソレは、アイリと切継の周囲を回転する。神代の魔術だろうか。

「何を……」

 疑問の声を出そうとした刹那。世界が、割れた。





「えっと……みったせーみったせー」

 龍之助は、口ずさみながら血塗られた魔法陣を描いてゆく。老若男女の血を原料としたそれはどす黒い色を放ち、見る者を狂気に落とすだろう。そんな狂った世界の中、彼は古書を片手にオカルトの儀式を続けていく。

「これで良いかなっと」

 最後の一言を言ってみて、何も起こらないことに落胆する。

「なんだ、つまんないの」

 そう言ってから、おかしなことだと苦笑する。「何かが起きる」だなんて、なんで自分は思っていたのだろう。

「でも、ちょっと無駄につかっちゃったなぁ、勿体ない」

 明日あたりにまた材料を見つけてこなければ。この楽器を作るには臓器が足りない。などと思い後ろを振り向いて――

「なっ!?」

 扉の前に、ソファーがあった。いつの間にか、だ。元来そこにはなにもおいていなかった筈だ。そこに座るのは一人の少女。病的なほど白い肌は血の巡りを全く感じさせない。長い髪は無造作に垂れており、目を閉じている。

「……」

「?」

 喋る気配が無い様子の彼女に、龍之助は面食らう。これだけの美少女だ。さぞかし声も美しいのだろうと期待していたのに。しげしげと眺めているうちに彼女の指に目がふと止まった。それが何故かはわからない。とても彼女に似合うように見えて、その実、似合わないようにも見える。そんな指輪がほんのりと、光った。

「……」

 彼女は、語らない。意識の無い様子の彼女を見ているうちに、龍之助の中のどす黒い感情が鎌首を上げる。

「あぁ」

――――解体(バラ)したい。

 そう思ったと同時に、彼は消失した。龍之助、という存在は痕跡すら残らずあらゆる世界から消え去った。後に残るのは、意識を失っている少女のみ。





「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――」

 強大な魔力が吹き荒れる。蟲が、自身の身体を食い尽くす感覚。

「……!! いかん、雁夜やめろ!!」

 臓現が何か言っているが、今の雁夜には気にしている余裕などない。

「…………」

「はぁ、はぁ……」

 煙の奥に一人の少年が居た。金の髪と褐色の肌。そして額に第三の眼。自身がサーヴァントを呼び出せたことに、雁夜は歓喜し臓現に勝ち誇る。

「やったぞ!」

 それが、彼の最後に発した言葉。

「煩い」

 それが、彼が最後に聞いた言葉。バーサーカーが言葉を放った。たったそれだけで、造作も無く、既存の宇宙は崩壊する。





「これは……」

「なんだ。なんだよおい!! ライダー、どうなってんだよコレぇ!!」

 ウェイバー・ベルベットは目の前で起こった事態を認識できずに絶叫する。サーヴァントを呼んだら巨大なロボットが現れて、その瞬間に世界が黒くなったのだから。

「小童黙れこっちに来い!! 九郎、来るぞ!!」

 言うが早いか、少女がロボットの中から出てきて彼をロボットの内部に強引に連れ込む。

「何だ、コイツは……!!」

 コクピット内部には男が一人。焦りを含ませた表情で眼前の少年を見ている。真っ黒な空間(・・・・・・)に鎮座している少年を。



―――



「へぇ……」

 セイバーが、笑う。その笑みは聊か以上に虚勢を含んだものだが、浮かべられるだけ上出来だろう。

「……マスターとマダム、あいつは、お前らを守りながらじゃ勝てない。逃げろ……って言いてーが、逃げるのも無理だろうなこりゃ」

 対峙する決意を固めたのか、金髪の少年に剣を向けるセイバーが苦笑する。

「セイバー、ここは何処だ? 相手の固有結界か?」

 切継の推測は魔術師としては正しいものだったろう。しかし、この場では余りにも――想像力が足りなかった。

「あぁ? んなワケねーだろ。上位宇宙だよ上位宇宙。何したのか知らねぇがバーサーカーの野郎、宇宙ごと不粉砕しやがった」

「……馬鹿な」

 絶句している己のマスターを放置し、周囲を見渡す。まさか開幕直後に宇宙崩壊とは恐れ入った。

「おい、ライダー、でいいんだよな? そこのロボット」

 一番近くにいたライダーへ対しセイバーが口を開く。眼前の最悪を倒す為に。

「……なんだ」

「共同戦線だ。バーサーカー、潰すぞ」

 それは一目でわかる程に彼の敵が脅威だから。そして放っておいたら拙いことを直感で悟っているから。

「おう」

 セイバーから共闘を持ちかけられ、即答。考えるまでも無い。

「わたしも、入れてください。彼を止めなきゃ」

 アーチャーもセイバー、ライダーと共闘する道を選んだらしい。バーサーカーへと弓を向ける。

「では、私は少ない方に」

 アサシンは、面白そうに口を歪め、バーサーカーの隣に立った。

「……消えろ」

 瞬間、バーサーカーの殺意が、アサシンに飛ぶ。幾つもの世界を消滅させて余りある直撃を受けても、アサシンは堪えた様子を見せない。それも当然だ。本気の一撃ならいざ知らず、余波程度の殺意で葬られるような、そんな脆弱なアサシンでは無い。

「まぁまぁ、仲良くしましょうよ。彼らを倒したら、私を倒せば良いじゃないですか」

「お前らに」

「――――」

 バーサーカーとアサシンが殺伐とした会話を繰り広げる中隣に無言のキャスターが浮いている。眠っているかのように意識の無い。通常、彼女のような行動不可なサーヴァントは即座に倒されるのだろうが、今回はそれが無かった。アサシンは意思の無い、キャスターのような存在になど興味は無く、バーサーカーにとってもそれは同じ。いないも同然な彼女に好き好んで意識を割く必要などない。他の三体はバーサーカーとアサシンに精一杯でキャスターに目を向ける余裕など無い。

「征くぞ、お前ら!!」

「「応ッ!!」」

「はいっ!!」

 聖杯戦争史上、これまでも、これからも。これほどの規模は他に例を見ることはないだろう。今、最も過酷な聖杯戦争が宇宙を舞台に幕を開ける。 
 

 
後書き
セイバー  ……当真大河
アーチャー ……鹿目まどか
ランサー  ……(思いつかなかったので無し。ランサーは犠牲となったのだ……)
ライダー  ……大十字九郎
キャスター ……ミューギィ
バーサーカー……第六天波洵
アサシン  ……赤屍蔵人

ステータス?
全員EXなので記載する意味無いかなぁ、なんて☆
多分セイバーアーチャーライダーが同盟組んで勝つんじゃないですかねぇ。
この領域に来ると主人公補正の有無が勝敗を決める鍵だと思うのですよ(何
とりあえずキャスター&バーサーカーが壊れすぎているので開幕時点で宇宙は消滅しております(爆


台無しなことを言えば初手で聖杯が消滅しているという。
どのサーヴァントを選んでもも魔力供給できず召喚直後に死亡、というか聖杯で呼べない奴らばっかりですがそこはご愛嬌 
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