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季節の変わり目

作者:naya
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sai像

 
私が、saiだった?到底受け入れられないことだった。

私はヒカルと最初に会った時のことを思い出した。初めて私を見て、ヒカルは私の名前を呼んだ。和谷とヒカルは、私のユーザー名しか知らないはずだったのに・・・。

ずっと心に秘めていたことがある。もし、私に外見が似ている人物がいるとして。もし、その人も囲碁をするとして。もし、その人の名前が私と同じだとしたら。ヒカルがあの時呼んだのは、「sai」なんじゃないかって。心のどこかで恐れていたこと。ヒカルが何故私を見て怯えていたのか。何故私にあんなに優しかったのか。その理由は「私がsaiに似ていたから。」

そして、ヒカルが言ったことではっきりした気がする。saiはヒカルの元を離れてしまった。

推測にすぎないけれど、塔矢さんがヒカルがsaiだと思っていたことよりは納得がいく。昔のヒカルがおかしいほどに強かったと。塔矢先生がヒカルをsaiだと思ったことがあると。

その時、私の頭に閃光が走ったように不気味な考えがよぎった。前に聞いたことがある。ネット碁にいた、とても強かったsai。その棋風は、現代に蘇った本因坊秀策のようだったと。

今の私は、私ではない。なぜ、saiのような・・・。

―「昔の進藤は僕に指導碁を打っていたんです。石の持ち方も知らない子供が」

塔矢さんの呼び止める声に耳を塞いで私はぐんぐん走っていった。

 
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