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ウィークエンドアバンチュール

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第一章


第一章

                 ウィークエンドアバンチュール
 今日は金曜日、一週間で一番楽しい日だ。それも夕方が一番楽しい。
「やっぱりこの時間だよな」
「全くだぜ」
 俺達は大学が終わってから飲み屋に繰り出してそんな話に興じていた。まずは飲んでからだ。楽しい話はまずは酒を飲んでからだ。それが俺達のいつもだ。
「まずは軽く飲んで」
「それから」
 機嫌よく話をする。
「女の子を引っ掛けてな」
「で、今日はどうするんだ?」
 話が自然と遊ぶ方に向かう。これもいつものことだ。
「彼女いる奴は御前だけれどよ」
「ああ」
 俺は仲間の一人の言葉に応えた。
「どうするんだ?今日はあの娘のとこに行くのか?」
「いや、今日はそれはなしだ」
 けれど俺はこう答えた。ここで少し悪魔めいた笑みを浮かべたつもりだ。
「今日あいつはいないんだ」
「愛想でも尽かされたかい?」
「おいおい、何でそうなるんだよ」
 それには流石に抗議した。冗談じゃない、何で俺が振られないといけないのか。とは言ってもそうなる要素は普段からあるにはある。
「違うさ」
「何だ?じゃあ旅行か?」
「ああ、それなんだよ」
 そう中間達に答えた。
「何でもサークルの女友達とな。それでな」
「それじゃあ仕方がないな」
「今日はこのまま飲むのかい?御前は」
「飲む?何でだよ」
 仲間達の問い掛けにシニカルに笑ってやった。ここでも偽悪を気取ってみせてみた。
「週末ずっと飲めっていうのかよ、一人で」
「それもいいものだぜ」
「なあ」
 仲間達は俺をよそにそんな話をはじめた。
「酒か女か」
「それでどっちにするんだ?」
「女だ」
 俺の答えはそれだった。それしかなかった。
「今週はそれを選ぶぜ」
「浮気かよ」
「またやるねえ」
「御前等だって同じじゃねえか」
 俺は嫌味めいた言葉をかけてきたこいつ等に対して言ってやった。実はこいつ等も彼女なり本命なりがいるが週末は平気でこんなことをしている。そうした意味じゃ俺達は同じだった。同じだからつるんでこうして飲んでもいる。そういうことだった。
「違うか?」
「まあそうだな」
「言われてみれば」
「外で誰か引っ掛けるさ」
 俺はまた一杯やって言った。チューハイがやけに美味い。
「だから今は酒はこれまでだ」
「遊ぶ分は残しておくってか」
「そういうことさ。それじゃあな」
「勘定は割り勘だぜ」
「忘れるなよ」
 これは釘を刺された。
「それはいいな」
「わかってるさ。ほら」
 それに応えて財布から金を幾らか出してテーブルの上に置いた。それから立った。
「それじゃあな。また月曜な」
「俺達もどっかに行くか」
「俺はまだここで飲んでおくよ」
 仲間達は別れた。いつもこんな感じで週末は別れてそこからめいめい勝手に遊ぶ。今日もそれは同じでこのまま飲むなり遊ぶなりだ。飲むのは俺の場合もあるが今は違った。そのままいい女の子がいるか外に出て探すことにした。ネオンの赤や青の灯りが暗がりの中に輝いていた。
「さて」
 俺は夜のネオンの灯りを見ながら早速探しはじめた。
「いるかな、いい娘は」
 それがいないと浮気も何もなりはしない。それで探していると暫くして派手な外見の娘が一人見つかった。赤い髪に厚い化粧をして半ズボンに黒いカラーストッキング、同じ色のブーツに上着は赤でコートは白、思いきり目立つ外見だけれど顔はいい娘だった。
「いるな」
 彼女にすることにした。それで早速声をかけてみた。すると向こうもわかっているのかにこちと笑って俺に対して言葉を返してきた。
「いいわよ、遊びましょう」
「話がわかるね」
「そんなの決まってるじゃない」
「決まってるって?」
 今の言葉は意表を突かれたというか訳がわからなかった。何が決まっているのやら。
「その為のこの街じゃない」
「遊ぶ為の街ってわけか」
「ええ。一晩だけのね」
 こっちが言うよりも早く時間を決められてしまった。
「一夜だけね」
 そして今度は俺に対してウィンクしてきた。
「それでいいのなら。いいわよ」
「いいね。それじゃあ一夜だけ」
 俺としてもそれで充分だった。浮気なんてそんなものだ。それも彼女でいる間はそれで充分だった。結婚しているならやっぱり違うだろうが。
 
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