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RAINBOW STATION

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第一章


第一章

                RAINBOW STATION
 その線路には電車も何もいなかった。ただ一本の線路が何処までも広がっているだけだった。
「ここを進んでいけばいいんだな」
 僕はその線路を見て思った。周りは見渡す限りの荒野で地平線が何処までも広がっている。当然線路の向こうもそうでその先に何があるのかはわかりはしない。
 けれどそれでもよかった。むしろそっちの方がよかった。
「よし」
 僕は線路伝いに歩いていくことにした。今そう決めた。
 そのまま歩き出す。するとそこに一人やって来た。
「待てよ兄貴」
 僕の弟だった。後ろから僕の方に駆けてきたのだ。
「一人で行くなんてずるいぜ」
「御前も来たのか」
 弟の方を見て声をかけた。やっと追いついたという感じで肩で息をしていた。背中に持っているサックスがやけに似合っている。
「そうだよ。気付いたら急にいなくなったんだからな。探したぜ」
「いや、何となくな」
 そう言葉を返す。
「この線路の先に何があるのか見てみたくなってさ」
「行くのかい?」
「ああ」
 僕は答える。
「何処まであるのかさ。見てみたくなったよ」
「じゃあ付き合うよ」
 弟はこう言ってきた。
「最後までさ。何があるか見に行こうぜ」
「二人でか」
「一人より二人の方がいいじゃないか」
 その言葉には一理あった。僕も頷きざるを得ない言葉だった。
「そうだろ?」
「まあな。じゃあ二人で行くか」
「よし、これで決まりだな」
 僕の今の言葉に笑顔で頷いてきた。
「二人でな」
「わかった、じゃあ行くぞ」
 二人で歩きだした。やっぱり線路は何処までも続いている。本当に何処まであるかわかりもしない程だ。二人で歩いていると途中に一人いた。髪を伸ばして背中にギターを背負った男だ。何かギターがやけにさまになっている。
「よお」
 ギターの男は岩の上に腰掛けている。そこから僕達に手をあげて挨拶をしてきた。
「あんた達何処へ行くんだい?」
「線路の先へ」
 僕はそう答えた。
「何処まであるかさ。見てみたくなった」
「そうか、線路の先か」
「ああ。何があるのか気になってさ」
「そうだよな。今のところここは荒地ばかりだけれどな」
 見渡す限りの荒野だ。赤い土と岩山以外は何も見えはしない。果てに何があるのかわかりはしない。けれど僕は見てみたくなったのだ。
「最後には何があるかな」
「気にならないか?」
「いや、気になる」
 男はニヤリと笑ってこう返してきた。
「最後に何があるかな。見てみるか」
「じゃあ僕達と一緒に?」
「二人より三人の方がいいだろ」
 それが彼の提案だった。言いながら立ち上がってきた。
「違うか?」
「まあな。けれどな」
 ここで僕は弟の方を見た。こいつの意見を聞くことにした。
「御前はどう思う?」
「俺は別にいいよ」
 そう僕に答えてきた。
「何かこの人しっかりしてそうだし」
「そうか?」
 その言葉には僕は疑問を持った。髪を伸ばしているせいか軽そうな男にしか見えない。僕にはわからないだけかも知れないけれど。
「まあ三人の方がいいじゃない」
 ギターの男と同じことを言ってきた。
「そうじゃないかな」
「そうか」
 僕もそこまで言われてそれに頷くことにした。
「じゃあ一緒に行ってみるか?」
「ああ、宜しくな」
「ああ」
 こうして僕達は三人になった。三人になると今度はやけに話が進むようになった。あれこれ話していると前から一人またやって来た。口髭を生やしたリーゼントの男だ。
「あんた何処へ行くんだい?」
「いやな」
 彼はふてくされた顔で僕達に対してきた。
「この線路伝いに旅していたんだけれどよ。何処まで行っても線路と荒地しかなくてな」
「帰るのか」
「そのつもりだけどよ」
 彼はふてくされた顔のままで僕達に言ってきた。
「言っておくけれど先には何もないぜ。線路と荒地だけだ」
「そうかな」
「そうだよ。だから俺は諦めた」
「おいおい、根性ないな」
 ギターがそれを聞いて髭の男に言った。
「簡単に諦めるなんてよ」
「何だと!?」
 その言葉を聞いて目を鋭くさせてきた。
「俺が根性なしだっていうのかよ」
「じゃあ最後まで行ったらどうだよ」
 ギターは髭にこう言った。
「そうすれば根性あるって認めてやるぜ。どうだ?」
「最後までか」
 髭はそれを聞いて睨むのを止めてきた。急に落ち着いた雰囲気になった。それから僕達に対して言ってきた。幾分穏やかな声で。
 
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