さんねんななくみ当番日誌
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xx/xx 山田真彩
「これで赤点回避やな」
白い綺麗に並んだ歯をだして、
目を2,3ミリくらい細めて、
彼はニカッと音が出るくらいめいっぱい笑った。
え、あたしの手柄やろ、これ。
だって勉強教えたんあたしやもん。
下駄箱を開けながら呟くと
まあ元がええさかい、教えんのも簡単やろ。
とマフラーを巻いてまたニカッと笑う。
「うざー!もう教えんでええー?」
「あかん、なんか奢るから許してや」
まじ今月は金欠なんやけどねーなんていいながら
財布を取り出した。
色とりどりのミサンガがついた手首。
あんがい細いなーとか、
この手であんな硬いボール投げとるんやなーとか
なんとなく考えて、空を見る。
オレンジ色の夕焼けだ。
「さぶい」
「寒い、やろ。さ、む、い。」
あたしの指摘に振り返ると、
「さぶい!!塾行く前にどっか寄ってってもええ??」
と一言。
よっしゃ、あたしはガッツポーズ。
もちろん心の中で。
「別にええけど」
「じゃあそこで奢るわ」
なんとも可愛くない返事をしたものだ。
言ってから後悔するのはいつものこと。
あたしが「もちろん」とか語尾にハートが付く勢いで言ったら
奴は気持ち悪がるか、からかうか。
どちらかしか考えられん。
やめよやめよ。そっちのほうが後悔しそ。
「##NAME1##、##NAME2##さーん」
前を歩いてた彼は、またくるりと振り返ってそう言った。
「なんやねんいきなり」
「なんとなく、やて。」
また前を向く。何がしたかったのだろうか。
つくづく変なやつだ。
でも、悪い気分じゃない。
自転車を押す後ろ姿を見てちょっと思う。
「ふたりのり、してこ!」
私の声に、少し驚いたように後ろを向くと、
またあの「ニカッ」て音がしそうな笑顔。
ねえ、龍。
もっと名前をよんでよ。
なんてまだ言えそうもない。
言う予定もない。
アタシらしくないから。
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