ハイスクールD×D―魔法使いのキセキ―
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月光校庭のエクスカリバー
第37話
前書き
明けましておめでとうございます。
新年一発目ですが特別なことは無く、続きの教会との会談です。
色々あって大急ぎで書いたので変なところがあるかもしれませんがご了承ください。
是非見ていってください。
放課後、二人の教会の人間が部室に来ていた。
現在、中央のテーブルには部長と朱乃さん、教会組二人が向かい合うように座り、部長たちの後ろにはイッセーたちが立っている。俺はイッセーたちよりさらに離れたところに立っている。
部長のイッセーへの嫉妬は昼休み頃には落ち着いていつも通りに戻っていた。
朱乃さんが手を回したのか、部長が自己完結したのかは知らないがよかった。
部長は感情的になりやすい。イッセーの件で苛立ったまま交渉して、決裂して戦争にまでいたったら洒落にならない。最悪のパターンではあるが可能性が有るから怖い。
それに今の懸念は部長よりも祐斗だ。
見るからに殺気立っており、いつ飛び出してもおかしくない状態、むしろよく飛び出さないと思うくらいだ。
そんな中、教会側の青髪に緑のメッシュを入れた女性が切り出す。
「会談を受けていただき感謝する。私はカトリック教会所属のゼノヴィアだ」
「プロテスタントの紫藤イリナよ」
「神の信徒が我々悪魔と会談したいなんて、何があったのかしら?」
「先日、カトリック教会、プロテスタント、正教会の三つの派閥が保管していた聖剣エクスカリバーが奪われました」
昨日襲撃を受けた俺と祐斗、昨日のことを知っている部長は驚いていなかったが、ほかのメンバーは驚いていた。
特にイッセーは奪われたことと、エクスカリバーが複数あることに驚いているようだった。
「イッセー、現在真のエクスカリバーは存在していない」
俺がイッセーの疑問に答える。
「ごめんなさいね。悪魔に成りたての子もいるからエクスカリバーについての説明込みで構わないかしら?」
まぁ、断られたら俺が別で説明するが。
だがあっちも了承してくれたようで紫藤が説明してくれる。
「イッセー君。大昔の大戦でエクスカリバーは折れちゃったの」
「今はこのような姿さ」
そしてゼノヴィアが抱えていたモノに巻かれていた布を取る。
「これがエクスカリバーだ」
出てきたのは圧倒的なオーラを放つ大剣。
昨日、フリードが見せた剣と同じオーラを放っている。
普通の人間である俺はそのオーラに気圧される感覚で済んでいる。
だがほかの部員は悪魔であり、そのオーラは身を滅ぼす圧倒的なモノ。恐怖と言ったモノを味わっているようだ。
「折れたエクスカリバーのかけらを集め、錬金術によって新たな七つの姿になった。これがそのうちの一本『破壊の聖剣』だ」
破壊の聖剣。名の通り、七本の内最も破壊に特化した剣。それ故にだろう。術式を加えた布を鞘代わりにして力を抑えているようだ。
ゼノヴィアは破壊の聖剣を布に納直し、次に紫藤が左腕に巻いていた紐を解く。
するとその紐は姿を変え、一振りの刀となった。
「私のは『擬態の聖剣』。見ての通り形を自在に変えることが出来るからもち運びにはすっごく便利よ。こんな感じにそれぞれ特別な能力があるの」
紫藤が説明してくれたようにこっちは所有者の意のままに形を変えられる。ゼノヴィアの持つモノと違い、こっちは担い手によって運用の仕方が変わってくる。
やはり、元が同じモノだっただけに先の剣と同じものを感じる。
「イリナ・・・わざわざ悪魔に力を教える必要はないだろう」
「交渉の場なんだからある程度の信頼は得ないと。それに教えたところで後れを取るなんてことはないわ」
大した自信だ。その自信は実力からくる自負か、聖剣を持っていると言う驕りか、それとも悪魔と侮っているからか。
まぁ有名な聖剣だ。教えてもらわずとも探せば能力くらい調べがつく。
それに正直な話、名は体を表す。名前だけでおおまかな予測はできる。
だが今気にすべきはそっちじゃない。気にすべきは祐斗だ。
より一層殺気立っていた。一触即発の雰囲気が見るまでもなく漂っている。
最悪を想定して、止めに入る準備はしておいた方がいい。
部長もそれを察したのか、話を進める。
「それで奪われたエクスカリバーとこんな極東の地方都市に何の関係があるのかしら?」
「エクスカリバーは行方知れずの一本を除き、教会にある各陣営にはそれぞれ2本ずつ保管しているのだが、各陣営から一本ずつ盗まれた。そして盗んだ犯人がこの町に逃れたということさ」
フリードが持っていたことからそういうことだとは思っていたが、一本だけではなく三本もあるという事か。
「それで犯人に目星は着いてるのかしら?」
「盗んだのは『神の子を見張る者』だよ」
堕天使に盗まれたとなると、フリードは未だ堕天使の元に居るという事か。
「失態どころではないわね。まぁ奪うとしたら堕天使ぐらいなものね。悪魔は警戒こそすれ所有しようとは思わないもの」
「奪った主な犯人は掴んでいる。グレゴリ幹部のコカビエルだ」
思ってた以上の大物だ。
「コカビエル・・・。大戦から生き残っている堕天使の幹部。聖書にも書かれている人物がでてくるなんてね・・・」
部長もこれは想定外だったようだ。幹部が出てきているということは堕天使全体の行動なのだろうか。それだと相当厄介だ。
政治的に言うならば戦争が再起する可能性がある。
個人的な事で考えても、俺たちをつけ狙っているフリードの後ろにコカビエルが控えていることになる。
「事情は把握したわ。それでそちらの要求は何かしら?私たちとの協力?」
「こちらの依頼―――いや注文は今回のエクスカリバー争奪に悪魔側が介入しないこと。つまり今回の件についてかかわるなと言いに来た」
まぁそんなところだろう。仇敵に借りを作りたくないだろうし、下手をすれば寝首を掻かれかねない。
「私たちが堕天使と手を組むと思っているのかしら?」
「本部はその可能性を考えているんでね」
部長も予測は立てていただろうが実際にはっきり言われて腹を立てているようだ。眉がつり上がっている。
「上は悪魔と堕天使を信用していない。悪魔にとって聖剣は忌むべきものだ。聖剣が神側からなくなれば万々歳であり、堕天使にとっても利益がある。それなら手を組んでもおかしくない。だから牽制させてもらう」
・・・交渉する気あるんだろうか?言いたい放題だ。
先ほど紫藤が言っていたように交渉には一定の信頼関係が必要だ。
相手を煽り、冷静さを失わせて、自身に有利になるように交渉するというのもあるがかなりの技量がいる。下手をすれば即決裂なのだから。
彼女はそれを行える切れ者と言う事だろうか。
「『堕天使コカビエルに協力するようなら我々はあなた方を完全に消滅させる。それが魔王の妹であろうと。』と私の上司からだ」
いや、今回の要求は不介入。悪魔にとって堕天使も仇敵。なら手を組む可能性は無いと考えた上での物言いか。部長がサーゼクス様の妹だということも知っているようだし。
「・・・私が魔王の妹であると知っているということは相当上に通じているようね。ならはっきりと言わせてもらうわ。私たちは堕天使と手を組まない。グレモリーの名に懸けて、魔王の顔に泥をぬることはしないわ!」
部長がはっきりと告げる。
「それが聞けただけで収穫さ。今回の件をそちらにちゃんと伝えておかないと何かあった時、私が本部の様々なものに恨まれる。まぁ協力は仰がない。悪魔が神と手を組んでも、今の状況に影響するだろう。魔王の妹となればなおさらさ」
ゼノヴィアは顔をやや緩ませ告げる。
これで主な会談は終了か。得るものが多かった。
フリードが一本を持っていたことから、ほかに相手方の聖剣使いが二人は居ると見ていい。
だが分からないのは相手の目的。盗んだ後、わざわざ悪魔の領内に逃げる必要はない。
フリードの希望を聞いて俺たちを狙いに来たのか。それとも別の思惑があるのか。
「正教会からの派遣は?」
部長がゼノヴィアに聞く。どれくらい教会が入るのか把握したいんだろう。
「奴らは今回の件は保留にした。私たちが任務に失敗する可能性を考え、最後の一本を死守するつもりだろう」
「と言うことはあなたたち二人でコカビエルに挑む気?無謀ね。死ぬ気かしら?」
その問いに二人はすぐさま答える。
「そうよ」
「私もイリナと同意見だが、死なずに任務を終えたいな」
「っ!相変わらずあなたたちの信仰心は常軌を逸してるわね」
「我々の信仰を馬鹿にしないで頂戴。リアス・グレモリー」
全てを委ねます、だったか。俺にはわからない想いだ。
いや、分からないわけではない。信じたモノにすべてを賭ける。その想いはついこないだイッセーが示した。それは部長と言う身近な人物のために。
だが彼女たちは神と言う会ったこともないだろうモノのためにすべてを賭ける。
俺は偉大な他人より、ちっぽけな知人を信じる性質だから彼女たちの想いを理解できない。
「それに教会はエクスカリバーを堕天使に使われるくらいなら、消滅させた方がいいと判断した。だから私たちの役目は堕天使の手からエクスカリバーを無くすこと。そのためなら差し違える覚悟さ。エクスカリバーに抵抗できるのはエクスカリバーだけだよ」
その過信がどう出るか。それにその理論で行くと過去にエクスカリバーは折れていない。
「そろそろお暇するとしようかな。イリナ、帰るぞ」
「そう。お菓子くらいふるまうけど、どうかしら?」
「いらない」
「ごめんなさいね。それでは」
部長の提案に即答するゼノヴィアに謝りながらも席を立つ紫藤。
だが部屋を出る途中で二人の視線はアーシアに向かった。
「―――もしやとは思ったが。君は『魔女』アーシア・アルジェントか?このような場所で出会うとは」
上と通じてる聖剣使い。ならアーシアの事を知っていてもおかしくない。
「あなたが一時期噂になっていた『魔女』になったていう元『聖女』さん?悪魔や堕天使すら癒やす力を持っていたから追放されて、どこかに流されたって聞いたけど。悪魔になってたなんてね」
『魔女』と言われるたびにアーシアの体が震えている。彼女にとってその言葉は鬼門だ。
「・・・あの・・・私は・・・」
二人に迫られて、言葉を紡げていない。
「安心して。教会には伝えないから。『聖女』アーシアの周囲にいた人たちに今のあなたの事を話したらショックを受けるでしょうから」
内心複雑なんだろう。黙ってしまった。
「しかし悪魔か。堕ちる所まで堕ちたな。いまだ我らが神を信じているのか?」
「何を言ってるのゼノヴィア。悪魔になってまで信じてるわけないでしょう」
「いや、私には匂いと言うか、雰囲気で信仰している者がわかる。追放された者の中にも罪の意識を感じながらも信仰心を忘れない者もいる。彼女からはそんな気配がする」
「そうなの?アーシアさんは悪魔になっても我らが主を信じているの?」
「・・・捨てきれないだけです。今まで信じてきたものですから・・・」
生まれてからずっと彼女は教会で過ごしてきた。そう簡単に捨てられるものじゃない。
答えを聞くと、ゼノヴィアは布に包まれたままの聖剣を突き出す。
「そうか。なら今この場にて私に斬られるといい。いまなら神の名のもとに断罪してくれよう。罪深くとも、我らの神ならば救いの手を差し伸べてくださるはずだ」
アーシアに近づくゼノヴィアの間にイッセーが割り込んだ。
「触れるな。アーシアに近づいたら俺が許さない。あんた、アーシアを『魔女』だといったな?」
「言ったがなにか?少なくとも今の彼女はそう呼ばれてもおかしくない存在だと思うが」
その言葉にイッセーがキレ、激情のまま言う。
「ふざけるな!何で救いを求めていた彼女を誰も助けなかった!アーシアの優しさを理解できなかった連中はみんな馬鹿野郎だ!友達になってくれる奴もいないなんて、そんなの間違ってる!」
「『聖女』に友は必要ない。必要なのは分け隔てない慈悲と慈愛だ。友人を求めた時点で『聖女』は終わる。『聖女』なら神の愛だけで生きていけたはずだ。故に彼女には『聖女』の資格がなかったんだろう」
ゼノヴィアの当たり前だと言わんばかりの言葉にさらに感情を高ぶらせている。
「イッセー!」
声を張り上げてイッセーを止める。
「俺たちとは考え方が違うんだ。どんだけ言おうと意味がない」
「だけど、言われっぱなしじゃ!」
さすがイッセー。友達のために何処までも熱くなれるやつだ。
でもお前じゃ感情的になるから、勝手にヒートアップしていくだけだ。
「だから俺が言う」
イッセーのように熱くはなれないが友人を蔑まれて黙っていられるほど冷えていない。
「聖女に必要なのは分け隔てない慈悲と慈愛と言ったな?」
「ああ、言った」
「なら彼女は俺の知る限りもっとも『聖女』と呼べる存在だ。なんせ、彼女の力は『分け隔てなく』ふるまわれているんだから」
「だがその力は魔女としての力だろう?神に見限られた存在を癒やせるはずもない」
「そもそも彼女は自ら『聖女』を名乗ったはけじゃ無い。そっちがその力を見て、勝手に祭り上げただけだろう?彼女は初めから友人を望んでいたんだから」
「彼女の力にこっちのものが魅入られたんだろう。でなければそのような思いを持つ者が聖女になるはずはない」
予測はしていたが暖簾に腕押しだ。まるで意味がない。いや、自分の都合のいいように解釈している。自分の考えを全く否定しないから、相手の言葉を否定する。自分を正当化するために。
「・・・何が神だ。アーシアがピンチだったとき助けてくれなかったくせに」
「神は愛していた。それで救われないのならば、それは彼女の信仰が足りなかったからか、偽りだったからだよ」
何を根拠に愛してくれていたというのだろうか。
「君は彼女の何だ?」
「友達だ!仲間だ!だからアーシアを助ける!お前たちがアーシアに手を出すなら、お前たち全員敵に回してでも戦うぜ!」
気概は同意するが最後のはさすがに言い過ぎだ。
「一悪魔が大口をたたくね。それは我々への挑戦かな?」
「イッセー、おやめな―――」
部長がイッセーを止めに入るが
「僕が相手になるよ」
今まで黙っていた祐斗が入る。
「誰だ?君は」
「君たちの先輩だよ―――失敗作だったそうだけどね」
ゼノヴィアの問いに最大の殺気と部屋中に魔剣を出現させる事で答えるのだった。
後書き
年末年始は忙しく特に大晦日は腰を痛めていた(筋肉痛)ため辛かったです。
そして昨日は執筆中にPCがヒートして落ちてしまい、書く気が無くなったせいで今日急ぐ羽目になってしまいました。
今年も頑張って投稿していきますのでよろしくお願いします。
感想お待ちしております。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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