鉄槌と清風
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23部分:22:クリスマス・イブ
22:クリスマス・イブ
12月24日…クリスマス・イブ…聖人の誕生を祝う前日、小学校も終業式のみだった為に、サプライズではやてのお見舞いに行こうという話になっていた。
プレゼントは皆で少しずつ小遣いを出し合い、ケーキは翠屋で予約し、取ってくるのはいつもどおり良彦の仕事、いつもの用に病院前で合流し、いつもの用にはやての部屋へ向かう。
違っていたのは、はやての家族…守護騎士達…が、その日、初めていた事だろう。
一瞬で走る緊張のなか、良彦はなのはと、フェイトと目を合わせ、二人も小さく頷く、此処では騒ぎを起こさないようにと。
守護騎士側も、一瞬反応を見せるが、シグナム、シャマル、ザフィーラは直ぐにそれを隠し…ヴィータだけがはやてにぎゅっと抱きついて、そこから良彦をじろっと睨んでいる。
「皆今日はどないしたんや?」
「クリスマスだから、サプライズのお見舞いきたんだけど、まずかった?」
はやての問いにアリサが答える。
「そんなことないよぉ、めっちゃうれしいわ」
「よかった、はいこれ皆からのプレゼント」
答えるはやてにすずかが安心したように大きな箱を渡す。
「ほれ、クリスマスケーキだ、いつもどおり翠屋のだぞ、今日も俺が走らされた」
「それで良いって毎度いってるのはアンタでしょ良彦」
「良彦君は、修行すきなんやなぁ、ほんとマニアさんやね」
「だから、マニアじゃねーっていうの」
「はいはい、わかったからな」
軽い言い合いの後、お互いの自己紹介…守護騎士4人と、なのは、フェイトは何処かぎこちなく、アリサは普通に、良彦ははやての知り合いだと初めてでばれていたし、軽く久しぶりだな、程度。
その場はお互い事を荒げるような事はせず、時間が過ぎる…ヴィータの視線が尖ったままではあったが。
数時間後、病院近くのビルの屋上…守護騎士達と相対する、良彦、なのは、フェイトの3人。
口火を切るのは良彦。
「久しぶり、になるかな、全員にあうのは」
「そうだな、蒐集を始めていらいなかなか全員が揃う事が無かったからな」
「つか、良彦、なんで邪魔すんだ…書を完成させねーとはやてが」
「だめだよ、完成したら…はやてちゃんが、死んじゃう!」
ヴィータの言葉に、はやての危険を叫ぶなのは。
「…シャマルから話は聞いた、だが闇の書について一番知っているのは我らだ」
「じゃぁ、なぜ…闇の書って呼んでいるんですか…本当の名前があったはずなのに」
悩みながらも、自分達の意志を通そうとするシグナムに、フェイトが指摘する。
「そうだな、シャマルにも言ったと思うけど、守護騎士の記憶は毎回リセットされる、多分残ってる記憶は書にとって都合の良い部分だけだと思うぞ」
「それならば、どうすればいいんだ、主はやての命はかなり危険なのだぞ、すでに」
「……あれ、一寸待ってくれ俺大事な事を、忘れてる気がする」
守護騎士達と言い合いながら、良彦はリトの記憶を探る…リトと管制人格、夜天の守護者と呼んでいた彼女との会話…引っかかっていた部分を直ぐに思い出す。
『夜天の書は改竄されている、蒐集にて666ページを埋めれば大いなる力を与えるがその持ち主を殺す』
『そして、今代の主は、私が機能する400ページまで蒐集し、私と守護騎士を使い、客将となった』
400ページを越えれば…管制人格は、機能する…今まで完成後のことばかり考えて、その前に管制人格を起こすという事を考えてなかったのだ。
「あった、ぞ…もしかしたらいけるかも知れない方法が」
「…どういうこと?」
「えっと、何か判ったの良彦君?」
良彦の声に代表するように、なのはとシャマルが尋ねる。
「たしか、管制人格は400ページ分書がたまってれば起動できたな」
「あぁ、だが…主の承認が必要だ、それに完成しないとリンカーコアへの浸食がとまらない」
「でも、だ…管制人格が起きれば書にアクセスできる、防衛プログラムとかを止めたり、書完成時に意識を飲まれないようにできるんじゃないか?」
シグナムの答えに更に言葉を重ねる良彦。
「……可能性は、無いとはいえないな、完成し覚醒した主でなくても、書の主ならば、ある程度の干渉ができるはずだ」
「んじゃ、良彦がいってたことがホントだとして、今良彦が言ったことができるなら、それも何とかなるっていうのか?」
少し考え、書に対する考察を述べるザフィーラと、実現できればはやてが助かるという事実を欲するヴィータ。
「あぁ…まぁ、そのためにははやてに蒐集のこととか、管制人格のこと、夜天の書のこと全部言わないとだけどな」
「確かにそうなるが、主はやての命が今の我らの最重要課題である以上、主に怒られようと主の危険の少ない手を取るべき、か」
はやてに話をしないといけないと語る良彦に、怒りに触れようとも、はやての命を重視するシグナム。
「なら、急いで戻って、はやてちゃんにお話しようよ」
「うん、早い方がいいよ」
危険が少ない方法で救えるかもしれないと判り、喜び、急ごうと動き出すなのは、フェイト。
「あぁ、でも…面会時間過ぎてるから、明日の朝時間きたら…なんだっ?!」
なのはとフェイトをなだめ、落ち着かせようとしている良彦…3人の周囲を小型ながら結界が覆う。
「結界、だれがこんな」
「うにゃ、ヴィータちゃんたちがいない」
「隔離型の強装結界…わたしたちだけを閉じ込めた?」
急なことに慌てる良彦、守護騎士が消えたことにびっくりするなのは、すばやくサーチャーを使ったのか、結界を確認するフェイト。
「くそ、このタイミングってことは、誰かっていうか、仮面の魔導師か、抜けそうか、これ?」
「私のスターライトブレイカーか」
「私のジェットザンバーなら…問題は、その後魔力が」
「どっちにしても、キツイか……よし、ならちと危険だけど賭けにでよう、ふたりともセットアップだ…ゼピュロス!」
『了解、セットアップ』
ゼピュロスを取り出しセットアップする良彦、なのはとフェイトも直ぐにセットアップを行う。
結界の上部境界あたりまで、飛び、なのはとフェイトを振り返る。
「二人とも俺に向かって、アクセルシューターとプラズマランサー、あんまり速度あげないで、10発ずつ位撃ってくれ」
「え、そんなことしたらよしくん、あぶないよ」
「そうだよ、危険だよ、ヨシヒコ」
「まぁ、そうなんだけど、ちゃんと作戦はあるから、な…頼む」
真剣に頼む良彦に、しぶしぶとスフィアを形成していくなのはとフェイト。
「じゃぁ、私からいくよ…レイジングハート!」
『了解、アクセルシューター!』
桃色の魔力弾が、良彦に順番に発射されていく。
良彦の近く、腕の届く距離にきた魔力弾が動きを鈍らせ…それを良彦が掬うように右掌で受け止める、それが10回繰り返され、右手には桃色の大きな魔力光でできた球が出来上がる。
「つぎ、フェイト!」
「う、うん…バルディッシュ!」
『イェッスサー、プラズマランサー!』
黄金の槍とも言うべきプラズマランサーも、先ほどのアクセルシューターのように、動きを鈍らせ、良彦の左掌で受け止められていく…出来上がるのは黄金の魔力光でできた、球体。
「くっ…きっつ…ぃな、これは…でも…ゼピュロス…いくぞ」
『了解…魔力掌握開始…魔力喪失率10%…魔力収束開始…喪失率15%…マスター』
手の中で暴れるなのはとフェイトの魔力が次第に桃色と金色から青にかわっていく…『流し』の応用、本来は打ち消す魔力を受け止め、無理矢理自分の魔力属性に書き換える。
時間はかかるし、損失は大きいし、戦闘時には全く使えない、が…今この状況なら。
「ついでだ、俺の魔力もおまけでっ」
両手の魔力をあつめ、頭の上に掲げる…其処に更に注がれる魔力により辺りが青色に光る。
『魔力圧縮完了…最終喪失率18%、準備完了』
「なら、いっけー!」
射撃とか砲撃、そんなことは関係のない、ただ魔力を無理矢理かため圧縮したそれを、結界に向かい投げつける。
「伏せろ!」
声と共に、二人を守るように覆いかぶさる…次の瞬間、ただ圧縮した魔力は結界にあたり、青い光が爆発する。
結界内に暴風が吹き荒れ、3人を吹き飛ばそうとするなか、二人を地面に押さえ込み、何とか耐える、それも数秒…青い光は消え、風も収まり視界が戻る。
其処に見えたのは、絶望の表情を浮かべたはやて、車椅子からおち、回りには紫の魔力光がベルカ式の魔法陣を作り出している。
なにがあったのか、なにがおこるのか、それでも今判るのは…良くないことが起こっている、これだけだった。
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一寸本来と違いますが、大きな流れは一緒です。
今回の良彦の技は、本来打ち消すはずの魔力を打ち消さず、無理矢理あつめて、自分の魔力にする、荒業ですが、本文の通り時間がかかりすぎる事と、オーバーフローで自滅の可能性があるため、普通は使いません、あくまでも普段は実体弾を投げ返す程度です。
次回は管制人格との戦闘になるとおもいます。
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