XANIS
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Ⅱ
さて、どうしよう。
父さんの目前、あんなことを言ってしまったのはいいが、正直に言って、育て方なんてわからない。
昔に母さんにしてもらったことなんて何も思い出せないし。
いや、それどころか母さんの記憶すらない。
父さんに聞くか?
でもそれじゃ負け犬だ。
結局オレは口だけで、何もできない人間なのか……?
おいおい、オレは何を言ってるんだ?
XANXUS「弱気になるなXANXUS。オレは父さんの血を継ぐ次期ボンゴレボスだ。10代目だ。できないことなどあるものか。オレには何でもできる。何でも……」
自分自身を奮い立たせる。
そうだ、オレが本気を出せばできないことなんてない。
大人「坊っちゃん、赤ん坊をつれて参りました」
そう言って抱かれてきたそいつは、今度はちゃんと暖かい毛布にくるまれていた。
大人「くれぐれも乱暴のなさらぬよう」
XANXUS「はあ? お前はオレが赤ん坊に乱暴するように見えるのか?」
大人「め、滅相もございません! 私めが申し上げたいのは、この子は女の子ですので繊細にお育てくださいと言うことで……」
XANXUS「女の子……」
そうか、こいつは女の子だったのか。
だからこんなにも可愛い顔をしてるんだな。
9代目「XANXUS。名前がないと不便だろう。つけてあげなさい」
XANXUS「もう決まってる」
9代目「そうか。聞いてもいいかい?」
XANXUS「ザニス。X・A・N・I・SでXANISだ」
9代目「XANIS……」
オレの名前には10代目を表すXが2つ入っている。
だから、こいつには11を表すXとIを混ぜた。
11代目という意味ではなく、オレの妹という意味で。
9代目「とても可愛い名前だ。いいかいXANXUS? 今日からXANISも私の娘であり、お前の妹だ。大切に育てるんだよ。自分で言ったからには後戻りはできないからね」
XANXUS「(コクリ)」
9代目「いい子だ。XANISに尊敬される、いいお兄ちゃんになるんだよ」
XANXUS「わかった」
ⅩⅠⅩⅠⅩⅠⅩⅠⅩⅠ
あれから一週間が過ぎた。
父さんの差し金か、オレに手を貸そうとする大人はいなかった。
その代わり、たった一人だけ手伝ってくれた奴がいた。
オッタビオ。
オレがここに住み始めてすぐの時に、父さんがオレにつけた言わばお目付け役。
ボンゴレ幹部の内の誰かの息子らしく、オレと年が近いと言う理由で側に置かれた少年だった。
彼は、父さんにバレないようにこっそりと色んな大人から情報を聞きだし、アドバイスとしてオレに伝えてくれた。
オッタビオのお陰とオレの努力が実を結んだのか、XANISはみるみる内に回復し、元気になっていった。
それは大人も驚かせた。
オッタビオ「XANXUS様よかったですね。XANIS様もとても元気になられました」
XANXUS「お前のお陰だ。多分、オレ一人だったら諦めてた。ありがとう」
オッタビオ「おや、お礼ですか? 今日は嵐ですかねぇ」
XANXUS「なっ!?」
オッタビオ「クスクス。ご冗談です。それに私は礼を言われるほどのことはしていません。言いたいのならば、XANIS様に言われては?」
XANXUS「XANISに?」
オッタビオ「“生きてくれてありがとう”と」
オッタビオの笑顔は温かかった。
XANXUS「そうだな。XANIS、生きてくれて、元気になってくれてあり画とな」
声だ届いたのか、XANISがキャッキャと笑った。
それを見て、オレとオッタビオは顔を合わせて笑った。
オッタビオ「9代目がお褒めでいらっしゃいました。“よく一人で頑張った”と、そう仰ってましたよ」
XANXUS「オレ一人じゃない。お前のお陰だ」
オッタビオ「いいえ、XANXUS様の力です。XANXUS様が自ら世話を任されなければ、XANIS様を助ける人はいませんでした。大人に見限られた小さな命を、XANXUS様がお救いになったのです」
XANXUS「大袈裟なこと言うな。オレはただ、10代目として――」
オッタビオ「(ニコ)」
XANXUS「うー……」
本当にオッタビオはズルい奴だ。
こいつが笑顔でオレを見ると、オレは反論できなくなる。
こいつはそれを知ってわざとやって来るんだ。
XANXUS「狐め」
オッタビオ「おや、狸と言われるのかと」
XANXUS「ズルいお前は狐なんだ」
オッタビオ「おやおや(苦笑)」
XANXUS「それじゃ、父さんに用があるからな」
バタン…
閉まった扉越しに、オッタビオがまた笑っているのが聞こえていた。
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