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馬鹿でもいい

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第七章

「だって、ここにウィリアムの気持ちがあるから」
「じゃあいいんだ」
「だから、どうしてなのよ」
 あらためてだ、有紗はウィリアムに問うた。
「私の為にそこまで」
「決まってるじゃない、有紗が好きだから」
 淀みも曇りも屈託もない笑顔での言葉だった。
「だからだよ」
「そうなの」
「そうだよ、喜んでくれたのならね」
 それならとだ、喜んで言うウィリアムだった。
「嬉しいよ」
「ずっと大切にするから」
「そうしてね、ライオンと虎ね」
「私達ね」
「ずっと一緒にいようね」
 こうも言うウィリアムだった、そうして。
 彼はあらためてだ、こう有紗に言った。
「では今からね」
「今からよね」
「ええ、それじゃあ」
「デートね」
 有紗から言った、今回は。
「それね」
「下校のね」
 丁度校門を出て端に隠れてのやり取りだったのだ、そうしてだった。
 二人で下校デートをはじめた、そして。
 その中でだ、有紗はウィリアムを見上げてこう言ったのだった、横にいる彼を。
「ウィリアムのお誕生日だけれど」
「どうしてくれるの?」
「何が欲しいの?」
「何でもいいよ」
 にこりとしてだ、ウィリアムは有紗の今の問いに答えた。
「j本当にね」
「いいの?」
「うん、いいよ」
 こう言うのだ、彼は。
「有紗がしれくれる、くれることならね」
「いいの」
「うん、いいよ」
 明るい笑顔で言うのだった。
「本当に何でもね」
「ううん、それならね」
 有紗はウィリアムの話を受けてだ、こう言った。
「お料理作るから」
「ラーメンかな」
 ウィリアムはここでもラーメンだった、本当に好きなのだ。
「それ?」
「いや、ラーメンじゃなくてね」
「違うんだ」
「また違うものよ、もっと色々賑やかに作りたいから」
「そうなんだ、とにかくご馳走してくれるんだ」
「うん、これでもね」
 有紗は確かな声でウィリアムに言う。
「お料理には自信あるから」
「そういえば有紗よく僕にご馳走してくれるけれど」
「美味しいわよね、私のお料理」
「うん、とてもね」
 満面の笑顔で言うウィリアムだった。
「日本の味だよね」
「日本なのね」
「いやさ、僕のルーツイギリスじゃない」
「イギリスっていえばよね」
「凄いのは知ってるよね」
「イギリスに行ったことはないけれど」
 それでもだとだ、有紗はウィリアムに答えた。
「お料理がまずいのよね」
「覚悟して食べないとね」
 そこまでだというのだ。
「うわってなるよ」
「そこまで酷いのね」
「味がなかったり生焼けだったり煮過ぎていたりして」
「そうなの」
「いやね、プロのシェフが素人さんみたいだから」
 ウィリアムはうんざりとした、過去を思い出す顔で語る。 
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