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サマーガーデン

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第一幕


第一幕

                          サマーガーデン
 僕はふと来た。この砂浜に。
 去年まではよく来た。本当によく来た。
 そしてここで遊んだ。一人じゃなかった。
 あの娘がいた。僕は彼女と二人で遊んだ。今この白い砂浜、青い空と海の間にある砂浜に立ってそのことを思い出していた。
「こっちよ」
「おい、待てよ」
 海の中から。カップルの声が聞こえてきた。
 見るとそこには。小麦色に焼けた派手な水着の女の子が背の高い男の子を誘っていた。そうして二人で海の中で遊んでいた。
 遠くには雲が見える。雲は海の中に消えていくみたいだった。
 そしてその海には船が見える。汽笛まで聞こえるようだった。
 その海を見て。僕は思いだすのだった。あの時のことを。
 彼女はだ。僕に言った。
「ずっと一緒にいたいよね」
「そうだね」
 僕は笑顔で彼女の言葉に頷いた。僕達はその砂浜にいた。
 夏の砂浜、そこが僕の、僕達の庭だった。そこを二人でいつも歩いた。
 暑かったけれど気にならなかった。海の中で泳いだりもした。
 海に入ると。そこでもだった。彼女が僕に言ってきた。
「来年もここに来ようね」
「この海にだね」
「うん、来年もその次の年もね」
「ずっとだね」
「うん、ずっと一緒に来よう」
 笑顔で僕に言ってくれた。可愛い水着姿で。
「それで楽しくね」
「楽しく過ごすんだね」
「そうしようね」
「そうだね」
 僕もだった。彼女の言葉に笑顔で応えた。そうして。
 海の中で彼女を抱き締めた。彼女も抱き締め返してくれた。そんなことばかりの。本当に楽しい夏だった。嫌なことなんて何もなかった。ある夕方には。
 彼女と僕は砂浜を歩いていた。青と白の世界は今は赤くなっていた。海は赤くなっていて波の銀色と一緒になっていた。昼の海とは全く違うものに見えた。
 砂浜もだ。白くなくなっていた。
 赤くなっていた。白い砂浜は簡単に色が変わっていた。その砂浜を二人並んで歩きながら。彼女の方から僕に言ってきた。
「ねえ、いいかしら」
「いいかしらって?」
「ちょっとね」
 恥ずかしそうに。僕に行ってきた。
「ちょっといいかしら」
「いいかしらって。何が?」
「ちょっと止まって」
 今度はこう僕に言ってきた。そして。
 僕も彼女の言葉に応えて立ち止まると。そこでだった。
 急に背を伸ばして顔を近付けて。二つの唇が重なった。
 一瞬だったけれど確かに重なった。それを受けて。
 僕は自分の唇を擦りながら。戸惑いながら彼女に言った。
「まさかここでね」
「驚いた?」
「うん、ちょっとね」
 実際はとても驚いたけれどそれは隠して。こう彼女に言った。
「まさかこんなところで」
「こんなところだからよ」 
 笑顔で言う彼女だった。とても奇麗な笑顔で。
「夕方の砂浜だからね」
「それでなんだね」
「ええ、だからね。ロマンがある場所だから」
「そういえば」
 夕方の砂浜。シチュエーションとしては最高の時間と場所だった。それを聞くとだった。
 僕も納得した。そして笑顔でだ。今度は僕から彼女に言った。
「じゃあまたね」
「また?」
「また。キスしよう」
「わかったわ。じゃあもう一回ね」
 彼女も笑顔で受けてくれて。僕達はまたキスをした。今度はもっと時間をかけて。
 そうした日々だった。僕は何も嫌なことはなく過ごしていた。そう、最後の日までは。
 その最後の日に急にだった。彼女はだ。僕に言ってきたのだった。
 
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