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あの娘とスキャンダル

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第一章


第一章

                      あの娘とスキャンダル
「全くな」
「困ったわね」
「ああ、困ったよ」
 俺達はお互いに言った。
 夜のプールサイド、本来なら誰もいないその場所で俺達はこっそり会ってだ。そうしてそのうえでお互いに言う。言うしかなかった。
「まさかな。俺も御前もな」
「そうよね。お互いに好きになるなんてな」
「好きになったらいけないんだよ」
 俺は自分から言った。
「本当はな」
「そうよね。だって私はね」 
 どうなのか。こいつから先に言ってきた。
「あんたのね」
「あいつの彼女だからな」
 こいつはよりによって俺達の親友の彼女だ。しかも実は俺の彼女もこいつの親友だったりする。お互いに彼女がいてそれでもお互いに好きになっちまった。
 こんな洒落にならない、ドラマみたいなことになるなんて流石に思わなかった。それでついつい言葉に出しちまって。しかも二人でこっそり連絡を取ってこんな場所で会っている。
 二組の旅行の中、その中でこっそり会って話だ。話す内容はこんなのだった。
「だから付き合うことはな」
「できないわよね」
「御前できるか?」
 俺は相手に尋ねた。
「あいつ裏切れるか?」
「無理よ」
 これがこいつの返答だった。俯いて言ってきた。
「そんなの。絶対に無理よ」
「そうだよな。無理だよな」
「あんたはどうなの?」
「同じだよ」
 俺は顔を背けて吐き捨てる様にして言った。
「そんなのできる筈ないだろ」
「あの娘のこと好きだよね」
「ああ、好きさ」
 その気持ちをだ。はっきりと言った。
「この世で一番な」
「そうよね。一番よね」
「御前と同じ位な」
 一番ってのは一つだけとは限らない。そのことも今わかった。こんなことでわかるなんて因果なことだと思っても。わかっちまったのは事実だ。
 そしてそれはだ。こいつも同じだった。そのことを自分から言ってきた。
「私もよ」
「そうか」
「あいつもあんたもね」
「同じ位好きなんだな」
「だから困ってるのよ」
 水面に月、黄色い満月が浮かんでいて周りにはヤシの木が並んでいる。そのホテルのプールサイドで二人で立ってそれで話している中での言葉だった。
「今こうしてね」
「そうだよな。だからだよな」
「このまま何処かに逃げられたら」
 こいつは今度はこんなことを言ってきた。
「楽よね」
「そうだよな。二人でな」
 俺もそのことに同意する様に返した。
「だったらどれだけ楽かな」
「けれどね」
 それは。どうかとだ。またこいつから言ってきた。
「そんなことできないから」
「御前あいつ捨てられないよな」
「そんなことできないわよ」
 出る言葉は同じだった。
「何があってもね」
「俺もだよ」
 俺もだ。出る言葉は同じだった。
「あいつと別れるなんてできないさ」
「じゃあ答えは出てるわよね」
「俺達は一緒になったらいけないんだよな」
 俺は俯いて言った。
「絶対にな」
「ええ、絶対にね」
「一緒になったら不幸になる」
 このことがだ。嫌になる位にわかった。
 
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