DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第6章:女の決意・男の勘違い
第10話:女国脱出
(ガーデンブルグ)
トルネコSIDE
「ほら、これだろ! アンタが大切にしてた十字架は!」
口調の荒いウルフさんが、例のシスターに向けてブロンズの十字架を叩き付ける様に返す。
「あ、ありがとうございます」
「何が“ありがとう”だ!? 人を罪人扱いしやがって……そんなに大事なら肌身離さず持ってろ! そんな嵩張る大きさじゃねーだろ!?」
相当腹に据えかねてるのだろう……
普段だったら女性に優しいのに、抑えることが出来ないらしい。
「こらーウルフ! ジュリエッタさんに失礼だろ……泣きそうだぞ!」
「うるさい馬鹿! お前の所為だろ馬鹿! お前の所為で俺はシスターに暴言を吐いちまってるんだろ!」
言いたい気持ちはよく解る。
我々に苦労をさせながら、リュカさんはハーレムで楽しんでいるのだから……
「なんだよぉー……全部僕の所為かよぉー!」
口を尖らせ子供みたいに不満を言うリュカさん……
とても腹が立つ。
「やめて下さいウルフさん! 俺が悪いんです……俺がバコタの罠にはまって、見ず知らずの人んちに入っていったから悪いんです!」
リュカさんはここまで織り込み済みなのだろう。
シンさんが自分を庇ってくれる……そう考えてるから、悪びれること無くあの態度なのだろう。
「ウルフ殿……悪いのは私も同じです。どうか勇者殿やリュカを責めないでほしい……私がバコタの事でリュカに相談してしまったから、彼がこんな策を巡らしたのですから」
突如女王が詫びの言葉を言ってきた!
そして側近の者に手で合図を送ると……
「勇者殿……大変申し訳ないことをしました。お詫びにはならないと思いますが、これを受け取って下さい。貴方様の持ち物である『天空の盾』と、世の中にある全ての扉を開くことが出来る『最後の鍵』です。この世界を救う為、ご活用お願いします」
凄い……
天空の盾は当初からの目的物でしたが、最後の鍵をこんな所で手に入れるとは……
私も名前だけは聞いておりました。大変便利なアイテムが存在するというのを……世界を救う為とは言え、これは儲けもんですよ!
「アルテミア……その鍵は要らない! 誘われたからと言ってホイホイ他人に付いて行く馬鹿ガキに、そんなアイテムは危険だ。今度こそ本当に他人の物を盗み出すかもしれない。手元に置いておくのがイヤなのだったら、重石でも付けて海に沈めてくれ!」
突如険しい表情になったリュカさんが、超貴重アイテムの受け取りを拒絶する。何を考えてるんだこの人は!?
「何を言ってるのですかリュカ!? この鍵は確かに悪用出来るアイテムです。しかし正義を司る勇者様でしたら、託しても問題ないと……世界の為に使用して頂けると信じてます! こればかりは貴方の思い過ごしでしょうに……」
「勘違いしないでくれ……僕もシンのことは信用している。でも今回の件で解っただろ……コイツはどうしようもないお人好しなんだ。僕が普段いい加減でストレスが溜まってたからと言って、一見人の良さそうな他人を易々と信じ、厄介な事件に巻き込まれる様な頼りない男なんだ。しかも見ろ、あのデブを……アイツはその鍵を悪用しかねない。もう喉から手が出そうな勢いで欲しがってるからな! そのうちシンを騙して、その鍵を奪うに違いない」
「ちょっと待って下さいリュカさん。私を何だと思ってるんですか!? 流石に私も怒りますよ……」
「怒れば良いだろ! 僕は事実を言ったまでだ……僕のルーラが便利だと知るや、それを利用することを即座に考えたのはお前だろ! どんな扉でも開けてしまう便利な鍵……そんなモン目の前にあったら、お前は悪用を考えるに決まってるだろ! 世界の平和の為にとか言って、シンを騙して利用するだろ!」
確かに少しは考えてしまったことだから、強くは言い返せないけど……
それでも酷すぎると思いませんか?
私はそんなに極悪な人間では無いのに。
「しかしリュカさん……別世界での冒険時も、最後の鍵は便利なアイテムでした。今回も旅を進めるのに必要だと思います」
その通りですよウルフさん!
もっとリュカさんに言って下さい!
「だからと言って、この世に存在させてて良いアイテムだとは思えないのだが? ウルフ君にはこのアイテムを悪用されない妙案がおありかな!?」
「えぇ勿論。ムカツク言い方でブン殴ってやりたいですけど、出来そうにないので我慢しますが、良案はバッチリあります」
「ではその案を拝聴しましょう」
「簡単です。今回も鍵の管理者を決めるんです! その管理者以外、触ることを許さず、利用の際は管理者に頼む様にするんです。完璧な案でしょ」
「おい……それはさっきも言ったけど、シンは騙されやすいからダメ「管理者はシン君じゃありません! もっと管理者に適した人物に決めてます!」
リュカさんの反論を遮り、女王から鍵を受け取ったウルフさんは、そのまま彼に近付くと、顔に鍵を押しつけ受け取らせようとする。グリグリ捻って受け取らせようとしてる。
「ちょ……やめっ……イヤだよ……僕はイヤだよ! そういう責任の伴う事は引き受けたくないよ!」
「いいえダメです。貴方がシン君にストレスを与え続ける限り、今回の様に見た目だけは優しそうな悪人に騙される可能性は大いに在る……そんな原因の発症者として、アンタにはこの鍵を厳重に保管する責任が存在する。今回の事件で我々が得た大いなる教訓だ! 礼を言いますよリュカさん……この事に気付かせてくれてアリガトウって!」
確かにリュカさんが保持してるのでは、私なんかが気安く使えない状態でしょう。
そして旅をしている上で、本当に必要な時には利用出来、安心できる状態でもありますね。
まぁ私個人としてはシンさんが持ってた方が有り難いのですが……
「リュカさん……俺は以前の時から、最後の鍵はリュカさんが管理するのが適切だと感じてました。リュカさん程、私利私欲が少ない……いや、普通の人とは違う人間は居ません。仮にリュカさんがコレを使って悪事を働こうとしても、それはコレ無しでも起こりえることでしょうし、コレの有る無しに関係ないと考えます」
「そうじゃなくてさ……僕が鍵をどう使うかじゃないんだよ。万が一誰かに欺かれて、鍵の悪用を許してしまったら……って事なんだよ!」
しかしそれは、誰が保持してても同じなのでは無いでしょうか?
「俺はこの時代に来て、まだリュカさんと合流する前に、トンデモない敵と遭遇しました。その敵は俺達と同じ姿に化け、油断を誘ってから襲いかかってくる敵でした。その時思ったんです……リュカさんは常に敵の存在を見破ってたな。目を見ただけで『目が濁ってるからモンスターだ』と言ってたなって……」
「そうよ……お父さんは何時でも悪者を見破ってたじゃない! お父さんが誰かに騙されるなんて考えられないわ!」
ウルフさんの意見を聞き、マリーさんも同意する事を訴える。
「もしリュカさんがその鍵を悪用する様に誰かからの指示を受けた場合、それに従ってしまう相手なのはビアンカさんだけです。ビアンカさんが悪用を仄めかした時のみ、リュカさんは最後の鍵を悪事に使うでしょう!」
ではビアンカさんを誘導すれば、リュカさんを操ることも出来るのでは?
「しかし考えて下さい。あのビアンカさんがリュカさんを使って、何らかの悪事……あるいは私利私欲を求める行為をするでしょうか? 結論を言えばそんなことあり得ません! そんな事はリュカさんが一番よく解ってますよね!?」
「あの……ウルフさん、疑問なんだけど……オイラの様な変身能力のある奴が、ビアンカさんに化けてリュカさんに近付いた場合、どう対処すれば良いのですか?」
確かにその通りだ。ウルフさんの言い分では、モンスターの存在には目を見れば判るらしいけど、アローの様な変化能力を有する存在には、どの様な対処をするのだろうか?
「リュカさんがビアンカさんを見間違える訳ありません! 仮にビアンカさんが未完成の進化の秘法で化け物の姿にされてても、リュカさんは一目で彼女に気付き適切な対応をするでしょう……違いますかリュカさん?」
私を始め皆さんが呆然と聞いている中、リューラさんだけが「巧い……」と呟き、ウルフさんの手腕を褒め称えた。
つまりこう言う事らしいです……
リュカさんはビアンカさんに関する限り、真偽の見分けが100%付き騙される事はなく、ビアンカさん自身はリュカさんを利用して悪事をする事は絶対にない。
またビアンカさん自体も善悪をちゃんと判断する事が出来、決して利用される事はないという。
そしてこれ以上管理者の事で反論するのであれば、それは即ちビアンカさんを信用できてないことだとウルフさんは仰ってるんです。
こんな言い方されたリュカさんは、もうこれ以上拒絶する事が出来ない……
渋々ながら最後の鍵を受け取り、自らの懐に仕舞い込むのです。
「くそっ……まさかウルフに言い負かされるとは思わなかった」
どうやらウルフさんは、今回の仕返しを達成させたようです。
悔しそうな顔をするリュカさんに、他の皆さんも大変満足そうな表情を浮かべております。
私としては複雑です。
リュカさんに嫌われたくないから、嬉しそうな顔をする訳にもいかず……
ウルフさん達にも嫌われる訳にはいかないから、同調しなければならないのも事実。
結局どうした良いか判らなかったので、即日ガーデンブルグを出立するまで、無表情で過ごしました……
救いは『おいトルネコ……これ、即金で50000000000ゴールドで売ってやるぞ! 買うか?』と冗談を言ってくれた事です。
5百億なんて即金で払えるはずもないし、私を利用して笑い話を広げてくれたので、居心地の悪さを回避出来ました。
流石はリュカさんですよね……転んでもただでは起きない。
……………冗談だったんですよね!?
トルネコSIDE END
後書き
ウルフ君、今回は君の勝ちだ。
だが次回は……
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