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錆びた蒼い機械甲冑

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Ⅰ:Blue Rust Machine armor

 アインクラッドの第三層は、巨大な樹木が生い茂る大森林だった。

 初の大型キャンペーン・クエストや新たな舞台につられ、続々とプレイヤーたちが集まってきている。


 死にたくないと、始まりの町に閉じこもっている者は約二千人程。しかし、そうではないプレイヤーはやはり死よりも好奇心が勝り、第一層から第二層へ、そして三層へと上がって来ていた。


 その中の一人、いや一つのパーティーが、まだ誰も言った事の無いエリアに足を踏み入ようと計画する。

 

 何が待っているかも知らずに……














「ホントに大丈夫かな……?」
「心配すんなって! クリスタルもちゃんと持ったし、よっぽどの事が無ければ大丈夫だ!」
「そうね、心配していたって始まらないし……それに、攻略組の人たちばかりに一人占めさせるのもね」
「……一理あるな」
「だろ、だろ!? だから行こうぜ、な!」
「うん、わかった」
「よし! 決まったな!」


 男二人、女二人のパーティーが、森の中へと入っていく。 この先のエリアは攻略とは無関係であるが、だからこそ何かあるのではないかと彼等はふみ、この森を探索してみようと計画したのである。
 その為に彼等は金をため、レベルを上げ、武器や鎧を鍛え、必要物資をこれでもかと買いこんだのだ。



「にしても……この先何が有るんだろうな~。滅茶苦茶レアな武具とかあったりするかもな!」
「……めちゃくちゃ強い“レアモンスター”では無い事を祈るばかりだな」
「うげっ、それだったらマジ勘弁だぜ……」
「とにかく、逃げる事を優先にしないとね」
「死ぬのは…嫌ですもんね」


 談笑しながらも、彼等は周囲に気を配り続ける。 やがて、少し雰囲気が違う場所に出た彼等は、より一層警戒を強め、談笑無しで進んでいった。


 また暫く歩いていると、不自然なほどに開けた場所に出る。壊れた遺跡のような物はあるがとても入れそうな状態では無く、そしてそれ以外は何も無い。


「なぁ、もしかしてこれって……!?」
「ああ……“レアモンスター”かもしれんな」
「ちょっと…最悪ね」
「に、逃げられるよう準備を―――」


 若い少女プレイヤーが、クリスタルを出そうと準備したその瞬間――――辺りに一陣の風が吹き、


「な―――っ!?」
「……!」
「何時の間に!?」
「きゃ……!?」


 蒼錆色の鎧をまとった長身の騎士が目の前に立っていた。手には、レイピアのサイズを大きくし、ハンドガードを盾変え、刃の部分を鉄の板に変えた様な武器を持っている。


 『Blue Rust Machine armor』――――“蒼錆色の機械甲冑”と言う名が、頭上に表示されていた。


 名の通りと言うべきか、武器も本体もこの大森林にはとても似合わない機械的なデザインだった。
 武器を含めて蒼錆色以外の他の色が無く、差し詰め“本格的に色を塗ろうとしたけれど、面倒くさくなったので一色で塗った”様な感じと言った方がいいだろうか。色の濃淡はあるが、色の変化はそれだけである。



「なぁ、あいつのレベル……幾つだ?」
「……わからん……だが少なくとも、“体力は低いがレアアイテムを落とす”……と言ったタイプには見えないな」
「本格的に不味いわね……皆逃げる準備を!」
「は、はい!」


 彼等一同、“転移結晶”を取り出して近い街へとワープしようとした―――が、しかし、予想外の出来事が起こる。


 その騎士は徐に武器を放り投げると、彼等に恐るべき速さで近寄り“転移結晶”を奪い、砕き潰してしまったのだ。


「んなっ!?」


 驚きのあまり唖然とする彼等に、騎士は容赦のかけらもない殴打を叩き込む。余りの威力に、四人とも後ろに吹き飛んでしまった。


「がふっ……!? …み、皆大丈夫、か!?」


 幸いな事に、全員のHPバーは残っていた。だがしかし、全員が危検域でもあり、油断できない状況である。


(まずい……このままじゃ全員死んじまう!)


 少年プレイヤーがそう思ったのと同時、降ってきた剣を掴んだ騎士が、一番近い相手に狙いを定めた。
 騎士の目線の先に居る者……それは少女プレイヤーだった。


「!? ひっ……!」
「に、逃げろぉ!!」


 あらん限りの声を使った少年の叫びむなしく、騎士の件は少女に振り下ろされ――――




なかった。

 それだけではない。騎士の姿も、何時の間にやら消えていた。



「……助かった…のか?」
「わからん」



 首をかしげる彼等だったが、まずは気絶している少女プレーヤーを介抱しようと、彼女の元へ向かうのだった。



 これが全ての始まりだという事に、彼等も、そしてほかのプレイヤーも気付く事はなかった。その出来事がアインクラッド全体に関わる事になるなど、このゲームの制作者“茅場晶彦”でさえ予想しなかったことであった……。


 
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