鉄槌と清風
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12部分:12:八神家(朝)
12:八神家(朝)
驚愕のお風呂イベントから少し…のぼせているヴィータと良彦は居間で、アイスを食べたり冷たい麦茶を飲んだりして涼んでいたのだが。
ゆっくりしている所へ声が掛かる
同じようにお風呂から上がったばかりのはやてからだ。
「なぁなぁ、良彦君…そのペンダント見たいのなんやの?」
風呂に入る前の良彦は、シャツの中に待機状態のデバイス…ゼピュロスを入れていたのだが、風呂上りで頭もぼうっとしていて、入れなおすのを忘れていたのだ。
それに、魔法を知らない人には説明しても判らないだろうという、判断もあったのだろう。
「あー、これか…昔から家に伝わってるもので、まぁお守りみたいなもんだよ」
首にネックレスのように掛けたゼピュロス…待機状態のため、ミニチュアサイズだが…を、はずし。
「みてみるか?」
「ええの?」
「別に困るもんじゃないしな」
と、はやてに差し出している…はやては、
「へー、無骨なかんじやね、でもなんかこんなちっちゃいとかわいいわ」
と、感心し、詳しくそれを弄り回しているのだが…守護騎士達はそれを見た瞬間、驚きと警戒を強める。
「(あれは、ベルカ式のアームドデバイス…ではないか?)」
「(しかも、結構古そうなタイプよね)」
「(恐らく古代ベルカの時代のものだろうな…だが、あのデバイス何処かで見たような)」
「(っつーか、良彦がなんで古代ベルカのデバイスもってんだ?)」
「(判らないが…魔力量も低くは無い、もしや魔導師か、我らに気付き接近してきたか?)」
「(んー、でも…それなら、デバイス簡単に見せた上、人にわたすか?)」
「(少なくても、普通は渡さぬだろうな)」
「(そうすると、本当にお守り代わりなのかも知れないわね)」
「(……主はやてに、害をなそうとする気配も無いし、いまは様子を見よう)」
結局シグナムのこの一言で、この場は様子を見ることがきまった。
そもそも、のぼせて、ぐったりしている良彦に何かできそうには思えず、はやてが喜んでいる状況で詰問するわけにも行かず、相手が此方を騎士と認識してるかもわからない為、此方から魔導師関係の話も振れなかったのだ。
「はい、あんがとな良彦君」
「ん、いいって、見せて減るもんじゃないし」
向こうでは満足したのかはやてが、デバイスを返し、それを良彦が又首に掛けている。
「あー、しかしのぼせたな…まだあっついよ、なぁ、ヴィータ?」
「ん、あぁ、そうだな、暑いな…」
「どうしたよ、いきなり元気なくなって…あれか、アイスがまだ食いたいのか?」
「ちげーよ、なんでもねーよ」
「何でもねーって、顔はしてねーだろうよ……はっ、そうか、わりぃヴィータ…早めに忘れるからな!」
「…忘れるって、なにをだ?」
「いや…そりゃ、お前…ヴィータのはd「今すぐ忘れろー!」ぐぶぅっ」
再び真っ赤になったヴィータの鉄拳が良彦の腹を打ちつけ、悶絶する良彦。
「はぁはぁ、あたし、もう寝るかんな、直ぐ忘れろ、ってか、記憶を失えっ!」
記憶を奪う為か、頭にも一発お見舞いし、ずんずんと寝室へと、歩きさるヴィータ。
心配そうに近づいてくるはやてとシャマル
「大丈夫かぁ、良彦君…ヴィータも照れてるんやと思うよ」
「そうですね、あんなに真っ赤になってましたし」
ダメージで床に転がって呻いている良彦は、それを聞いて
「…仕掛けた張本人二人が何を…言ってる…つか、不意打ち過ぎてかなり効いた」
「ふむ…だが、さっきのは良彦にも問題があったな、女性に対してはもう少し言葉や行動を考えたほうが良い」
苦笑しながらシグナムがそういって、良彦をソファに座らせる。
「とはいえ、あの二人の被害者でもあるしな、いまは少しゆっくりすると良い、少し休んだら寝室へ案内しよう」
「あんがとシグナム、頼むよ」
「ほな、いまのうちに良彦君の使うベット、準備しとかなあかんな」
「そうですね、私もてつだいますよ、はやてちゃん」
はやてとシャマルはそういって一室へ消えて行く。
その後は大したイベントも無く、就寝となる。
翌朝…何時もの癖で、5時半には起きてしまった良彦、日課のランニングに出かけようかと思ったのだが、流石に他人の家から勝手に外に出て戻るわけにもいかず断念。
結果、かなり暇な時間ができた為に、そっと庭にでて、ストレッチや柔軟だけは、と…みっちり時間を掛けていたら、そこに声が掛かる。
「随分早くに起きるのだな、良彦は?」
動きやすいジャージを着たシグナム…手には竹刀を持っている。
「シグナムこそ、早いな」
「朝の内に少し体を動かすのは習慣でな」
「俺ももう、何年もこうだから、朝目がさめちゃってさ…折角だし、一本どうかな?」
ぐっと握った拳を、シグナムに向ける…それを見てシグナムは
「5分まってくれ、軽く体を解す」
と、答え、軽いストレッチと素振りをしていく。
「あいよ…こっちも、準備ッと」
先ほどまでのストレッチや柔軟で体はほぐれているので、軽く整理運動のような感じで、熱が冷めないようにだけ気をつける。
しばらくして、シグナムが声を掛けてくる。
「良し、此方も準備はいいぞ」
「おう…よろしくお願いします」
「あぁ、此方こそよろしく頼む」
お互いに一礼し、構える。
シグナムは剣道の手本のような正眼…大して良彦は、左手を顔の少し斜め前に拳ではなく軽く指を曲げる程度にかまえ、右手は腰のあたりで、同じように軽く指を曲げ、腰は重心をぶれさせないように少し落とし気味、足は肩幅に開き地面をしっかりと捕らえる。
一瞬の静寂から…シグナムが竹刀を振り上げ、踏み込みながらまっすぐ振り下ろす…それを良彦が、左足を一歩踏み込んで、左の拳でシグナムの持ち手に対して『弾き』を仕掛ける。
『弾き』により、左へ少しずれた竹刀が、良彦からそれ振り下ろされ、その間に良彦は続けて右足で一歩踏み込み、右拳をシグナムに打ち込もうとする、が…振り降ろしを途中で止めたシグナムの竹刀が、そらされた軌道から逆袈裟気味に切り上げられる。
それに気付いた良彦は、撃ちこむ為に踏み込んだ右足をつま先を内側に向け着地、その捻りを利用して体を左に回転させ、ぎりぎりで切り上げから逃れる。
切り上げで、できた右脇腹を狙った、良彦の追撃、先ほどの左回転の勢いを乗せた右拳が、当たる…が、来たのは硬いものを殴った衝撃…拳を受けたのは竹刀の柄…一瞬の停滞、後にお互いが距離をとるために、弾かれたように離れる。
「流石に、まっすぐ過ぎたか?」
「真っ直ぐでも十分はやいけどな…てか、やっぱ強いなシグナム」
「良彦も予想より上だ、もう少しいこうか」
「あぁ、よろしく頼む」
その後暫くは、お互いの竹刀を、拳を体に当てさせることは無く、端から見れば約束組み手のようにもみえたかもしれない。
が、段々と良彦のほうに疲れが見えて来る…シグナムの剣速ははやく、集中しなければ、反応しきれず、反応しても一本がきまらない焦り…経験の少ない少年は、その中でスタミナをどんどん奪われていっている…そして。
良彦が焦って繰り出した拳をシグナムの竹刀が、パァンと良い音をさせ弾く、次の瞬間には竹刀の先が良彦の胴へ吸い込まれ…もう一度パァンという良い音が響く。
その音と共に、後に倒れる良彦…が、疲れは見えるものの顔は笑っているように見える。
「はぁ、はぁ…あー、疲れた、久しぶりに人と組み手したけど、やっぱりいいな」
「そうだな…良彦は普段は相手が居ないのか?」
「あー、うん、基本一人暮らしだし、お世話になってる人は剣術の達人だけど、流石に普段から組み手はしてもらえないから、なにせあの人達は木刀でやってるんで、子供にはまだだめ、っていわれててさ」
「そうか、偶にでよければ、私が相手をしようか?」
「良いのか?」
「やめといたほうがいいぞ、良彦」
がばっと起き上がった良彦に聞きなれた声が掛けられる、眠そうな顔のヴィータだ。
「何でだよ、ヴィータ」
「シグナムは戦闘好き(バトルマニア)だからな、お前強くしてもっとぎりぎりで戦いたいんだよ」
「むっ、いや、私はだな」
「いや、俺はそれで問題ないんだけど?」
「良彦もシグナムの同類かよ、ったくしゃーねーな…怪我すんなよ?」
呆れたようにそういって、ぽいぽいっと何かを放って部屋へ戻って行く。
投げられたのは、タオルに包まれたスポーツドリンクで、良彦とシグナムに一組ずつ。
「おう、サンキューなヴィータ」
「あれも素直ではないな」
受け取って早速一気に飲みきる良彦、苦笑し、汗を軽く拭うシグナム。
「ヴィータって、判りやすいし、素直なんじゃないのか?」
「……そういう意味では、素直なのかもしれないな」
良彦のピントがずれた言葉に、微苦笑を浮かべるシグナム。
この後、朝から汗をかいた良彦はシャワーを浴びるように命じられ、一度は拒否するも、なぜかシグナムにつかまって一緒に風呂場へ連れて行かれる事になったりするのだが、それは又別な話。
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というわけで、流れ的にシグナム相手になりました。
次回は、一寸時間を飛ばして夏休み明け辺りを書こうかとおもいます、アリサやすずかを、そろそろだそうかと。
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