ソードアート・オンライン《風林火山の女侍》
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弐:攻略前
前書き
お久しぶりです
今回第2話ですがセリシールのソードスキルの1つが判明します
あと、どうにも物静かな感じが出せない……元気な男の子の方がやっぱ書きやすいなーww
「…………すぅ……すぅ…」
ピンク髪がダランと垂れているのを気にせず首をカクン、カクンと何度も揺らして器用にたちながら寝ている少女を辺りを通るプレイヤーは二度見したりマジマジ見たりとしているが近づいてくるものは誰もいない。セリシールも誘っているわけではないので好都合だが。
「……ふぁ……寝て、た…?」
だらしなく垂れているよだれを腕でごしごしと拭うとぼぉっとした目で左隅にある時計をみる。と、そこには08:45と表記されておりあまりの時間の進まなさにため息をつきながらまた瞼が落ちそうになっている。だが、ホームでないところで寝るという危険行為を注意するものや周りには彼女と同じギルドメンバーである風林火山のメンバーは一人たりとも見当たらない。
なぜこんな最前線の門広場なのにセリシールが一人で居るのか、という理由は昨夜まで遡る。
あの後ゲートで別れ、ホームに戻っていつもどおり晩飯を食べた後、ゆっくりと寝ようとしているとアスナからのメッセージがきた。内容は『明日、キリト君と攻略行くことになっちゃった……』というものだがなんやかんやで同行して欲しい、というものだった。
明日は久しぶりのオフ、ゆっくり1日寝ようとしてワクワクしながら予定を立ててたのでムカッとしながら理由を聞くとあのクラディールとか護衛を切り離すためらしい。ソロのキリトだけだと…ということで攻略ギルドの上位に位置しているギルドの副団長であるセリシールに目をつけたらしい。
「………なんで承諾したんでしょうねー……」
クラディールにムカついてたっていうのはあるが何で自分から砂糖の中に飛び込むようなことをしたんだろう…と今になっては後悔しかない。しかも集合時間九時に対してのセリシールが来た時間は八時半過ぎ、過去に戻れるなら今すぐに昔の自分をそのまま眠りにつかせたいだろう。
「………もう少し、待ちます…か……」
あれこれ考えていてもやっぱり睡魔には勝てない、それどころかセリシールは睡魔を受け入れるタイプなのでまた瞼が落ちてきて立ったまま睡眠に入ってしまった。
~それから十分強経って……~
「……ーる……り……ーる……セリシール?」
「………んぁ…」
とろんとした目で声のした方向を見るとそこにはロングコートからインナー、そして剣までも真っ黒の標準装備キリトが。
「……ふぁぁ………どうしたんですか?」
「いや、どうしたもなにもお前。なんでこんなところで寝てるんだよ」
「……誰のせいですか誰の」
その小さな呟きにはイラつきやら色々含まれていたが、コホンと咳払いを一回すると説明するために口を開いた。
「昨日の夜、アスナから来たんですよ。攻略の手伝いして欲しいって」
「……俺も昨日誘いうけたんだけど」
「知ってますよ?アスナからのメッセにキリトの名前もありましたから」
「なっ……名前勝手に出すなよな……。…あ、もしかしてお前が助っ人なのか?」
キリトの話によるとアスナとキリトの2人はラグーラビット食べ終わった後に攻略の約束した際にキリトがクラディールに絡まれると面倒だ、ということを聞いてアスナから「助っ人呼ぶから!!」という強い希望に負けて今日一緒に攻略することになったらしい。
「……多分、そうですね」
「そりゃあ頼もしいな。……クラインたちは一緒じゃないのか?」
「……今日風林火山一応オフなんですよ」
「…あ……悪い」
「……いいですよ、別に……。それにしても……ふぁ…」
小さくあくびをしながら左端の時計を見るといつのまにか集合時間を少し超えていた。クリアを目指す勤勉な攻略組はさっさと迷宮区目指して歩いている。
「……もう帰ってもいいか?」
「……わたしもそれ、何度も考えまし…「きゃああああっ!?」………」
と、ここで言葉の途中で転移門が青白く光り誰かが来るのを知らせてくれる。セリシールはなぜか危険を感じ取り軽く横へ移動する。それと同時に地上一メートルというところから人影が出現し、空中を飛んでさっきまでセリシールがいたほんの隣、キリトの元へとダイブしていった。
「……大丈夫ですか、キり……」
今さっきまで隣で話していた人物がいきなり巻き込まれたのでさすがに心配になって近づいてみるとそこには白いプレイヤーが覆いかぶさっている光景が。しかも下敷きのキリトは無意識にだろうがアスナの胸へと手を伸ばしてしまった。
「や、やーーーっっっ!?」
「………っ!!」
大きな叫び声と共にアスナの鉄拳、そしてすごい速さのセリシールの蹴りがキリトの顔面を捉え、そのまま街にいくつもあるうちの一つのオブジェクトへと飛んでいった。そのおかげ?で覚醒したキリトはその問題の右手を開けたり閉じたりしてこわばった笑顔をして口を開いている。
「や……やぁ、おはようアスナ」
「……最低ですね」
「…キリト君ひど……っ!?」
キッと女子二人の殺気が強くなってキリトを睨んだ瞬間、さらに転移門が青白く光って誰かを転送してきた。アスナはハッとした表情で後ろを振り向いてキリトのうしろへと移動して隠れた。わけもわからないままその転移門を見つめ続けるとそこからは見たことのある顔が現れた。仰々しいマントに紅い紋章で有名な血盟騎士団の装備をしたアスナの護衛、クラディールだった。
「あ、アスナ様。勝手なことをされては困ります」
落ち窪んだその眼でセリシールとキリトの後ろにいるアスナを見つけたのか、ヒステリックな声を上げてものすごい形相を浮かべてこちらへ近づいてくる。
「さぁ、アスナ様。ギルド本部まで戻りましょう」
「嫌よ!!今日は活動日じゃないでしょ!……大体、なんでアンタ朝から家の前に張り込んでんのよ!」
「…は?…え?」
キレ気味な二人にサンドされているキリトは困惑気味に双方の顔に視線を交互に移している。
「ふふ、こんなこともあろうと思いまして、私一ヶ月前からずっとセルムブルグで早朝より監視の任務についておりました」
「「ぇ…………」」
今まで言い返していたアスナ、そして困惑気味だったキリトは完全に凍りついた。
「そ…それ、団長の指示じゃないわよね…」
「私の任務はアスナ様の護衛、それには当然ご自宅の監視も……」
「ふ、含まれ「ただの変態ですか?」……セリー?」
アスナが羞恥からか怒りからか顔を真っ赤にして叫ぼうとした瞬間、その間にセリシールが静かに入ってとつとつと呟いた。どうやら今まで黙って聞いていたセリシールも被害者が同じ女性だからか、数少ない友人だからか我慢できなくなったらしい。
「声キンキンして頭に響くんで話さないでください、腐った魚みたいな目して大した実力もないくせに実力者に喧嘩売って速攻で負けるくせにやることは老け面で女の尻追い掛け回すこと。ただの低俗なサルストーカーですね、あなたは」
当事者である2人もいきなりの発言にぽかんとしている。あえて無視していたのかクラディールはやっとセリシールの方へとその視線を向け声を荒げる。
「………キ、…貴様ァ!」
「だからうるさいから喋るなって言ったんですが。鬱陶しいゾンビMobみたいな外見して気持ち悪いです。臭そうなんで…というか臭いです、衛生面でわたしたち迷惑してるんで離れてもらえませんか。ストーカーしてる暇があればレベル上げたりいろいろすることもあるでしょうに」
言いたいこともいってちょっとスッキリしたセリシールはスッキリしたような顔をしているのに対し相手は一層怒っていた。血盟騎士団、ということで攻略組やら安全な街中ということでここにきた中層プレイヤーも野次馬としてみていたが全員が口をポカンと開けて唖然としている。見た目大人しそうな女の子が急に毒吐いたらだれでもそうなるが……。
「ふ…ふざけるなぁっ!!!貴様のような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛などっ!!」
「自慢するつもりはさらさらありませんけど、あなたよりかははるかに務まりますよ」
「………クソガキガァ……そこまででかい口を叩くなら、それを証明する覚悟があるんだろうな…」
イライラ度マックスの状態でクラディールはメニューを操作し、数秒でセリシールへと内容が伝えられた。その内容は『クラディールVSセリシールのデュエル』申し込みだった。このとき初めてセリシールは「ぁ」と小さく声を出しちらりとアスナの方を見た。どうやら今までギルドのことを考えず言いたいことを言ってしまったらしい。間違いなく風林火山に迷惑がかかるというのを今更ながらに自覚したのだ。だが、アスナはそんな予想を裏切り小さくコクンと頷いた。
「……いいんですか?問題になるんじゃ…」
「大丈夫、団長には私から報告する」
その言葉を聴いてセリシールは承諾のボタンを押し、オプションを選択した。それが受理されるとその下に60秒のカウントダウンを示すデジタル時計が動き始めた。クラディールは芝居がかった仕草で剣を抜くがそれを無視して、ある程度離れてからセリシールは中段に腰を落として鞘を腰に持ってきて刀を構える。武器の重さ、筋力値からすれば装備ギリギリのセリシールよりも向こうのほうが有利、さらに武器も装飾の差は圧倒的に向こうが勝っている。
「風林火山の副リーダーと血盟騎士団がデュエルだってよー!!」
互いに距離をとると野次馬の一人が声を上げ始めた。その間にもカウントダウンは進んでいき、セリシールは深呼吸をして意識を右手と下半身だけに集中させた。敵の構えからソードスキルを推測しそれに対応する、というのが攻略組には必須の能力だ。
そして紫の閃光と共に【DUEL!!】と文字がはじけた瞬間にクラディールの《アバランシュ》が発動し、一気に加速してくる。それとほぼ同時にセリシールの構えからソードスキルが、ズバンッとすさまじい何かが破裂する音がしたと思ったらセリシールはその大きな太刀を振りぬいた状態でクラディールの後方に立っていた。
「……なっ……」
「……」
無言でそのまま刀をいつものようにカチンと納めるとほぼ同時にデュエル終了と勝者の名前を告げる紫色の文字列がフラッシュした。WINNERとして出たプレイヤーの名前は――
「セリシールの…勝ち、か」
誰かがぼそっとその名前を呟いた。だが大半のプレイヤーは何が起こったかがわからない様子でざわざわとしていた。
セリシールの放ったソードスキルは《疾速》という超スピードで斬り抜けるソードスキルだ。欠点があるとすればそれはスキル最大の武器でもあるスピード。セリシールが一瞬消えたかと思うほどに速い。そのせいで窮地に陥ったことがセリシール自身も何度かあるほどだ。だが今のセリシールはそのスピードを完全に自分のものとし、アバランシュでの攻撃のわずかな隙間を狙い一閃した、というわけだ。
「………」
「……なん、だと……この、私が…ま、負けるなどぉ……!!」
セリシールは無言で歩き出し、うずくまっているクラディールには目も向けずアスナとキリトのところへ向かっていく。周りの野次馬は何が起こったのかはっきりと判っておらずこの一瞬の攻防――ほとんどセリシールが何をやったのかということについてだが――について講評しているのを聞き流しているとキリトが訊ねてきた
「なぁ、こんな人前でスキル使ってよかったのか?」
「……できれば、使いたくなかったですが……早く終わらせたかったですし」
セリシールはそういうと緊張からか少し息を吐き出した。
「見世物じゃねぇぞ、散れ、散れぇ!!」
セリシールが相手にもしていないクラディールはよろけながら立つとギャラリーにそう喚いた。そしてセリシール、キリト、アスナの方をゆっくり振り返る。
「貴様……殺す……絶対に殺す……!!」
SAOのオーバー表現を引いても迫力のある憎悪の浮かんだ三白眼はモンスター並だった。ソロで名の通っているキリトですらぞっとしたような表情を一瞬浮かべたがセリシールはそれすらも流し、どこ吹く風のようだ。それに気付いたのかクラディールはさらに怒りをまし眼力を強める、がその前にすっと歩み出た人影が。
「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日を以って護衛任務を解任、別命があるまで本部で待機。以上」
アスナのその声は何の感情も入っていない、機械のような冷たさを持っていた。この声には短くもない付き合いのあるセリシールでさえぞくっと感じたのか息を呑んでいた。
「なん……だと……この…」
街中にも関わらず斬りかかってきそうな勢いだったがどうにかそれを抑えたらしくギャラリーを無理やりどけて転移門に移動しどこかへと転移していった。それを皮切りにクラディールの毒気に当てられたような群衆も散り散りになっていき最後には当事者の3人が残った。
「ごめんなさい、面倒なことに巻き込んで」
「いや……俺はいいけど、そっちは大丈夫なのか?」
「……私は売られた喧嘩を買っただけですけど……血盟騎士団にはご迷惑を…」
「あ、セリーは気にしないで。今のギルドの空気は無理やり規律を押し付けたわたしにも責任があると思うし……」
申し訳無さそうにセリシールが顔を曇らす。が、アスナはそれでも弱弱しくだが笑みを浮かべて見せた。
「それは仕方ないよ。あんたがいなかったら今みたいに攻略は進んでないしな。俺みたいなソロがいえることじゃないけど…えっと……だから、あんたもたまには俺みたいなイイカゲンなのとパーティ組んで息抜きしたって誰も文句言えない…と思う」
しどろもどろになりつつキリトはそういうと、ぽかんとした顔でアスナは瞬きを繰り返し、苦笑を顔に浮かべた。でもさきほどの弱弱しい固い笑みではなく緩んだ安心したような笑みだった。
「…ま、ありがとうと言っておくわ。じゃあお言葉に甘えて前衛ヨロシク」
「……頑張ってくださいね、キリト」
勢いよく立ち上がり、外へ続く道をすたすたと歩き出すアスナに続いて、セリシールもクスリと笑ってアスナに続いた。
「へ、ちょっ!前衛は普通交代だろっ!?」
後書き
おまけコーナー……はまだいいやww
こっち上げるくらいならさっさと双大剣士上げろよ、という声も少なくないと思います…
でも銃撃戦よりこっちの方が書きやすいんだよ!ww
ってなわけでもうしばらく遅れますすいません…
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