Blue Rain
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第一章
第一章
Blue Rain
どれだけ彷徨ったかわからない。雨が降る夜を。
俺はただひたすらその夜彷徨った。雨の中傘もささず。
夜が終わっていくのがわかる。けれど俺の心は夜のままだった。それは終わらない。
「行くか」
俺はふと思い引き返した。あいつの家に。
元はと言えば俺が悪かった。俺が自分勝手に別れ話を持ち出して。それで俺達は別れた。
別れた理由は俺が自由になりたいからだった。それで出て行くと言った。あいつは必死に止めたら俺は家を出た。ずっと一緒に住んでいた家を。
正直束縛の多い女だった。何時ここにいろだの何をしてくれだの。そうしたことがいい加減な俺には嫌だった。それで別れた。本当に俺の勝手だ。
別れてから三日。俺はずっと寂しがってる自分に気付いた。これも勝手な話だ。自分から別れておいてこんな気持ちになるのは。俺は自分の我儘さに内心苦笑いさえ浮かべた。
「もう閉店ですよ」
ずっと飲んでいたバーでマスターにそう言われた。気付けばかなりの量の酒も飲んでいた。
「あれ、もう」
「ってかなりの時間ですよ」
マスターは苦笑いを浮かべて俺に言ってきた。洒落た木造の店の中にいるのは俺とマスターだけだった。元々静かな店が余計に静かに思えた。
「ですから」
「ああわかったよ。それじゃあ」
「それに随分飲んでますね」
カウンターの席から立ち上がる俺の足がふらついているのを見てまた言ってきた。
「大丈夫ですか?」
「酔うなら酔えばいいさ」
俺はマスターの気遣いに対して自嘲気味にこう返した。
「それでな」
「そうですか」
「じゃあお勘定」
俺はふらつく足取りで財布を出した。そうして金を払って店を後にした。それからずっとこの雨の中だ。傘もささずにずっと一人で街の中を彷徨っている。
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