MS Operative Theory
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ジオン公国軍の試作兵器③
——新設計型試作機と改修型試作機——
前述した「量産化前提試作機」や「実験機的試作機」の他にも試作機を細分化した際の区分が存在する。それが完全設計の「新設計型試作機」と、既存の機体を改修した「改修型試作機」である。
「新設計型試作機」は、YMS-07(プロトタイプ・グフ)のように完全新設計の機体で、「量産化前提試作機」と重複する例も多い。「改修型試作機」は、既存の機体を利用するために短期間で局地戦用や新技術試験機を開発可能なことから、「実験機的試作機」と重複する機体も多い。
■新設計型試作機
EMS-10 (EMS-04) (ヅダ)やYMS-07(プロトタイプ・グフ)、YMS-16M(ザメル)など、新機に設計された試作機。多くは制式化を見据えた機体で、実戦仕様に準じた設計が施されている。
評価試験やコンペティション、あるいは実戦においてテストされ、結果が良好であれば制式採用される。先行量産機を兼ねる場合もある。
■改修型試作機
MS-07H(グフ飛行試験型)やMS-06RD-4(高機動試験型ザク)に代表される、既存の機体をを流用した試作機。既存の機体を改修しているため、特殊仕様機を短期間で完成させられる。
技術実験機や新型機のテストヘッドとして開発された機体も多く、中にはMSM-07Di(ゼーゴック)の様に「大戦果」を期待された機体も見られた。
——ジオン公国軍の試作MA——
MAの導入に積極的だったジオン公国軍においても、MAの絶対数は極めて少なかった。MAとしては生産数が多いとされるMA-05(ビグロ)でも12~14機が生産されたにすぎないといわれる。
このようにジオン公国軍のMAはビグロなどの例外を除き、試作機が1~3機生産された程度などである。つまり、ジオン公国軍のMAはほとんどが試作機であったと言える。
これは、MAの開発にはMSに比べ、莫大なコストがかかったことが原因の一つと考えられる。また、当時のMAは技術的立証期的な側面を持っていたことも理由とされる。これに対し、一年戦争以降になるとMAは超兵器的な側面を強めていく。
■兵器カテゴリー「MA」の試作機
MSの直接的な先祖の一つにZI-XA3(クラブマン)があったように、MAにも基礎となった試作機が存在していた。それがMIP社のMIP-X1や、ミノフスキー・クラフト搭載の大気圏内用機動兵器MAX-03(アッザム)である。これらの機体は「プレMA」と言うべきマシンだった。
■ワンオフ試作機としてのMA
MA-06(ヴァル・ヴァロ)やアプサラス・シリーズは量産計画から外れた、事実上ワンオフの試作MAとなっていた。これらの機体が量産されることはなく、さらに完成が一年戦争末期以降の機体も多かったため、最終的な運用データの回収も行われなかったようである。
——試作機との区別が困難な「先行量産機」——
YMS-07(プロトタイプ・グフ)やYMT-05(ヒルドルブ)のように、「Y」ナンバーは試作機に与えられる形式番号であることは既に述べた。しかし、「Y」ナンバーはYMS-14(先行量産型ゲルググ)に見られるように、量産機に先行する形で試験的に生産される先行量産型にもつけられる形式番号でもあった。
このため、ジオン公国軍の試作機と先行量産型は混合されることが多いが、本来、両社は異なるカテゴリーに分類される。だが、YMS-15(ギャン)の様に制式採用されなかったために、結果的に試作にとまった機体も存在していることが、混乱に拍車をかけている。
仮にギャンが制式採用された場合、MS-14(ゲルググ)が試作機となっていた可能性が高い。更に、ゲルググの場合はMS-06R-3(ゲルググ先行試作型)を試作機と見えることも混乱の一つと考えられる。これに加え、YMS-07B(グフ先行量産機)の様に、試作機(YMS-07(プロトタイプ・グフ))を改修したモデルにも「Y」ナンバーを付けることがある。
●YMS-07B(グフ先行量産機)
YMS-07(プロトタイプ・グフ)の試作3号機に、ヒート・ロッドやフィンガー・バルカンを搭載するなど、B型相当の仕様に改修したタイプ。ランバ・ラル大尉の乗機として知られる。
●YMS-14(先行量産型ゲルググ)
U.C.0079,10に25機生産された、ゲルググの先行量産型。量産機との性能差はない。24機は突撃機動軍ジョニー・ライデン中佐所属のキマイラ隊に、1機はシャア・アズナブル大佐に与えられた。
●YMS-05(試験型ザクⅠ)
EMS-04(ヅダ)との制式化の競合試験に提出された機体。U.C.0075初旬と言う試験時期から考えると、初期の先行量産試作型のMS-05Aと同じか、同等の機体と思われる。
●YMS-06A(ザクⅡ先行量産機)
U.C.0077,08に生産開始された、ザクⅡの試作機とも言われる最初期のタイプ。実質的な先行量産型で、84機が作られた。翌月にはC型の先行量産が始まっている。
補足事項
——MS、MA以外の試作兵器——
開発費の多くをMSやMA、運用艦艇に投入していたジオン公国軍も、それ以外の兵器開発を疎かにしていた訳ではない。一年戦争初期には非MS関連の試作兵器も見られた。
こうした非MS関連試作兵器には、艦隊戦用巨大ビーム砲のような大型兵器から、ミノフスキー粒子散布下用の自走観測ポッドまで多種多様なものがあった。
●QCX-76A(ヨルムンガンド)
艦隊戦用の巨大プラズマ・ビーム砲。地球連邦軍のマゼラン級宇宙戦艦を、敵の射程外から一撃で撃沈するほどの火力を有していた。MS主体のドクトリンには合致せず、制式採用いされなかった。
●YMT-05(ヒルドルブ)
巨大戦車から発展した地上戦用の試作機動兵器。30センチ口径の巨大砲を装備し、機動性も高いが、長射程を十分に活かせないことや、MSと戦闘車両の統合運用の方がコスト面で優れていたために不採用となった。
後書き
次回 可変MA
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