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ヘタリア大帝国

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TURN109 モスクワ攻防戦その六

「そんな、こっちに来るなんて!」
「これは困ったね」
 エストニアも今の事態には困った顔になる。
「このままだとね」
「ただでさえパイプオルガンに移れないのに」 
 丁度射程範囲内にイタリン軍がいた、枢軸軍を狙おうとすれば彼等も巻き込んでしまうからだ。
 戦術的にはその選択も可能だ、だがそれは。
「ここでイタリン軍も攻撃すれば」
「政治的に大きな問題となります」
 ジューコフも苦い顔でロシア妹に答える。
「ですからそれはです」
「出来ませんね」
「イタリンは連合の四大国の一つです」
 今現在の連合国のだ。
「その彼等に攻撃を仕掛けては」
「後々極めて深刻な問題を起こします」
「だからです」
 それでとてもだというのだ。
「彼等は攻撃出来ません」
「そうですね」
「イタリン軍に要請します、撤退しない様に」
 これがジューコフの今の決断だった、だがそれもだった。
「無理にしても」
「若しイタリン軍がこのまま我々に雪崩込みますと」
 どうなるか、ロシア妹はその危惧を今言った。
「我々の陣形も乱れます」
「その通りです」
「どうされますか、ここは」
 ロシア妹の言葉は切羽詰ったものになっていた。
「イタリン軍の潰走は止められないですが」
「ではここはです」
 ジューコフも己の無理な決断を訂正するしかなかった、その訂正はすぐだった。
 彼は己の軍にこう言った。
「ではここは」
「ここはですね」
「秘密警察の艦隊にイタリン軍の撤退を誘導させます」
 潰走をとめられないのならせめてソビエト軍に雪崩込みその陣形を崩させない様にするというのだ、これがジューコフの今の決断だった。
「それしかありません」
「わかりました、では」
 ロシア妹も頷いて応える、こうして。
 イタリン軍はソビエト軍秘密警察所属艦隊の誘導を受けて枢軸軍が本来来る筈だったコースに向かって潰走した、こうして彼等の問題はソビエト軍にとっては解決した。
 だがここでだった、彼等はもう一つの問題に直面した。
 イタリア軍が今までいた場所にもう枢軸軍が来ていた、そしてだった。
 彼等は矢印型の陣形を組んでソビエト軍に突っ込む、艦載機にビームを放ってから。
 昇順を定める暇もないソビエト軍の陣形に突入した、そのうえで。
 目の前にいるソビエト軍の艦隊を次々に倒していく、東郷はその中で指示を出す。
「いいか、一旦敵中を突破してだ」
「それからですね」
「反転して再び攻撃を仕掛ける」
 突撃を繰り返すというのだ。
「そうする」
「敵軍に何度も突入しますか」
「ソビエト軍にはそれが一番だ」
 パイプオルガンを仕掛けられることを防ぐという意味でもだ。
「だからだ」
「わかりました、それでは」
「全軍このまま一直線に進み敵の上に出る」 
 そしてだというのだ。
「そこから素早く反転して再び突撃を仕掛けるぞ」
「パイプオルガンが来る前によね」 
 先陣を務めるスカーレットが問うてきた、先陣としてソビエト軍に最も果敢に攻撃を仕掛けている彼女がだ。 
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