聖戦のデルタ
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『第五次世界大戦』の部
レクエムの章
第三話『泰河と恵奈』
前書き
第三話です!
今回は泰河君が登場します!
それでは、どうぞ!
「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
閑静な住宅街に小鳥遊の声がこだまする。
後から考えて、「何、今の、恥ずかしいッ!」と思った小鳥遊。
「そんなに驚く事ないでしょ!」
少し怒り気味に言う恵奈。
「いやいやいや!驚くよ!ふつー」
「どこがよ!」
そう聞かれて、小鳥遊は
「いや、その……
あんまり”かわいい”から、
つい……」
「な…………」
絶句&照れ&顔が真っ赤になる。
シュ〜と、肉を焼いているような音が聞こえた。恵奈の顔から。
恵奈は、小鳥遊に背を向けると
「し、翔馬も少しは、カ、カッコ良くなったわね」
と言った。もうパンツがどうのこうのの話しは終わりである。
「上から目線!?」
小鳥遊から、ガ〜ンという音が聞こえた。
恵奈は背を向けたまま
「そ、そんな事より、翔馬はさっきのニュース見た?強制避難だっけ?」
「他人事みたいな言い方だな……」
小鳥遊は、すっかり気をとりなおしている。
「”みたい”じゃなくて、本当に他人事なの。私は数年前に引っ越して、今は【バジリスタ】に住んでるの」
(バジリスタっていえば……商業都市か?アライアから南西に22kmの所にあったかな?)
「そうか……でも良かった。無事で元気みたいで」
「うん……」
「……じゃ無くて!」
「ふえっ!?」
小鳥遊が突如奇声を発した為、驚いて変な声を出した恵奈。
「今の声おかしかったかな……?」とオドオドしてる恵奈を差し置いて、
「こんなことしてる場合じゃねぇんだった!早く家に帰らなきゃならねぇ!」
小鳥遊がその場足踏みし始める。
「翔馬!忘れたの?私は長距離瞬間移動の能力者よ。翔馬が走る必要は無いよ!」
「おおう!?すっかり忘れてたぜ!じゃあ頼むわ」
と言って無造作に手を差し出す小鳥遊。
「分かったわ」
***
「分かったわ」
と手を取ろうとした恵奈に異変が!
小鳥遊の手に触れる直前、恵奈の手が止まった。
(昔は平気だったけど、良く考えたらこれって男女が手を握ってるのよね?そう思うとなんか……)
恵奈は一体何度顔を真っ赤にすれば良いのだろう。もうこれで3度目だ。
(いやいや落ち着け私!)と首を振って邪念を振り払おうとしている。
「何、やってるの……?」
と首をかしげる小鳥遊をよそに、
(なんで私は翔馬を相手にドキドキしてるの!?いや、よく考えると事務処理上の問題であって、かくかくしかじか……)
いつまでも動かない恵奈に対して、
「早くしろよ、全くもう!」
と小鳥遊が強引に恵奈の左手を掴んだ。
その瞬間、恵奈の体がビクんッ!と震え、長距離瞬間移動に狂いが生じた!
長距離瞬間移動が狂ったために、小鳥遊の家に『飛ぶ』ことが出来なかった。
「恵奈がおせぇからだぞ」
唇を尖らせて言う小鳥遊。
「違うよ!翔馬がいきなり私の手を掴むから!」
恵奈は深〜いため息をつくと歩き出し、
「もう、能力源を使い果たしちゃったじゃない!」
と言った。
「能力源?」
小鳥遊が首を傾げて言った。いかにも馬鹿っぽい顔で。
「翔馬はそんな事も知らないの?能力源っていうのは、能力使用時に消費する力の事よ。主に睡眠や食事などをすることで補給されるわ」
「詳しいんだな」
***
「詳しいんだな」
小鳥遊はそう言って歩き出した。
「まぁね。能力者が能力関係の学科を学ぶのは当然でしょう?」
「そうなのか?」
「そうよ。基本的に能力使用に関する法や、脳科学と能力についてとか。結構な数があって、大変なのよ?」
「ふーん」
素っ気ない返事を返す小鳥遊。
「ま、無能力者の翔馬には関係ないでしょうけど?」
空き地を出て少し歩くとビルが立ち並ぶ街中に出た。
先程とは打って変わって、人がいない。皆帰宅し、今後に備えているのだろうか。
小鳥遊は、腕時計を見て
「今は、15:25だ。急がねぇと!」
小鳥遊は焦りを感じ始めていた。
「…………」
恵奈が無言で小鳥遊の横顔を見つめる。
小鳥遊には数台のバイクがこちらへ走ってくるのが見えた。
「恵奈はさぁ、泰河の連絡先知ってるか?」
「いいえ……」
恵奈が首を振り、
「ただ……泰河は、この街にいるはずよ。泰河が昔、そう言ってたから」
と言ったと同時に、
ブォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオオン!
数台の大型バイクがすぐ側を通った。
「真昼間っからうるせーなぁ」
小鳥遊がダルそうに言った。表情からしてダルそう。
小鳥遊が言い終えた瞬間に大型バイク達がUターンした。
「あれ?俺の一言、聞こえてたかな?」
小鳥遊が少しビビる。
バイクに乗っている奴らの内、1人の男が降りてきて言った。
「俺になんかようか?」
だが意外に意外、男は小鳥遊ではなく恵奈に話し掛けた。
「鳥取泰河という男を探しているのだけれど、中々見つからなくて困っているの」
恵奈は平然と対応した。
「だ・か・ら、俺が鳥取泰河だっつうの!」
「「へ……?」」
小鳥遊も恵奈も目を丸くして言った。
その様子を見た泰河が言った。
「なんだお前ら……気持ち悪りぃ……」
それでも恵奈が言った。
「恵奈!」
「あ?なんだ?」
泰河はまるっきり分かっていない。
「私の名前!佐原恵奈!」
「佐原……恵奈……あぁ恵奈か!」
泰河が言った。
「懐かしいなぁ!恵奈か!」
泰河の顔がパッと明るくなった。
そして小鳥遊は、隙ありとばかりに
「んで俺は小鳥遊翔馬!」
「おぉ!翔馬か!」
小鳥遊と泰河がお決まりの握手をした。
泰河は、見た目以上に大人に見える。
金髪でピアスをしていて、同い年とは思えない程ガタイが良い。黒く長いコートを羽織っていて、黒いズボンを履いている。
泰河は、アライアにいる『帰る場所の無い仲間達』を集めて、組織を作り、組織のトップに立つ。
泰河は部下達を適当に返すと、
小鳥遊達と街中を歩き始めた。
こうして3人は再開した。
近況報告をしながら、小鳥遊の家を目指した。
腕時計が15:40を示した時、小鳥遊は
家に着いていた。もちろん、恵奈や泰河も一緒だ。
何故彼等が小鳥遊に着いてきたかと言うと、色々と理由がある。
泰河はここ数ヶ月、家に帰っていないらしい。良家に生まれた泰河は、家のしきたりやら、お稽古だかに愛想を尽かして、家出した後、勘当されたらしい。故、帰る所がない。
恵奈は実は、小鳥遊達に会いに来たのである。バジリスタからわざわざやって来た理由は、小鳥遊達だった。全ては、泰河と小鳥遊を助けるためだった。もちろん、2人には「観光」と偽った。
恵奈は知っていた。近い内にアライアが”切り捨てられる”事を。
バジリスタで高い教養を身につけた恵奈は、内政に詳しかった。
彼女としては、アライアが”切り捨てられる”前に、泰河と小鳥遊を戦争の魔の手から救うつもりだったのだが、一足遅かった。
2人共、小鳥遊についてきた。
3人でいると、無邪気で楽しかった小学生時代((あの頃))に戻れた気がしたから。
3人は、小鳥遊の家のドアを開ける。
小鳥遊は
「ただいまー!」
泰河と恵奈は
「邪魔するぜ!」と「お邪魔します」
「お帰りーいらっしゃい」
小鳥遊の姉がいた。
翔馬の姉の名前は、美弥妃。
美弥妃は若干おっとりしている。
彼女は、来客の前でも平然とパジャマ姿である。
「さて、何から話し始めよーかー」
小鳥遊達3人に美弥妃を加えた4人で話し合いが始まった。
後書き
2話、3話と戦闘シーンは一切ありませんでしたが、
4話から遂に戦闘開始です!
よろしくお願いします!
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