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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep6遥々来たよ海鳴温泉~Enjoy it~

†††Sideシャルロッテ†††

ルシルとの決別から1週間。あれから私となのはとユーノは、“ジュエルシード”を発見できずに過ぎ去った。そのため、彼らと出会うこともなかったのだけれど、それが何故か余計に私をイライラさせる。
次にルシル達と遭った時はどうなってしまうのか、正直怖いと感じる自分がいた。今回の契約、結末までの道筋が全くと言っていいほどに読めない。ここまで不安になる契約というのも珍しいというか無かったわ。

「ねぇ、シャル? あんた、温泉って行ったことある?」

そう聞いてくるのは、なのはの友人のアリサ・バニングス。綺麗な金髪をした活発な少女。

「ん? 行ったことないわね」

当然のことだ。生前は戦いの人生だったのだから知らないし、温泉なんてものはなかった。“界律の守護神テスタメント”となってからは、召喚された世界でも人間のような生活をすることなく、速やかに殺し壊し奪い、そして消えていたから。

「それじゃあシャルちゃんは、今日が温泉デビューなんだね♪」

ほわほわした話し方をするもう1人の友人、月村すずかがそんなことを言う。いつもヘアバンドを付けている子で、おっとりとしながらも運動神経が抜群な、覚え立ての単語で言うなればギャップ女子?ね。

「温泉デビューって。面白い言い方をするのね、すずか」

「え?そうかな~?」

まぁ、あながち間違えとも言えないわね。温泉デビュー。なんか良いかも。

†††Sideシャルロッテ⇒なのは†††

アリサちゃんとすずかちゃんと楽しそうに話しているシャルちゃんを、一緒に笑いながら聞いていた私は安心した。1週間前からシャルちゃんの様子がどうしてもおかしかったから。特にゼフィちゃんと会ったときから様子が変になっちゃったって思う。同じ魔術師だからそうなのかな、と思ったけど違うみたいだし。私が役に立つかどうかは判らないけど、相談してほしいかも。なんか寂しいし。

『よかったね、なのは。シャルが元気そうで。僕も心配していたから』

『う、うん。この旅行で、もっと元気になってもらえると嬉しいな♪』

膝の上に乗ってるユーノ君が念話で話しかけてきた。そう、私たちは今連休を利用して、高町家と月村家の皆さんとアリサちゃんと一緒に、2泊の温泉旅行へと来ているのです。

『なのは。シャルもそうだけど、なのはだって今日はジュエルシードのことは忘れて、ゆっくり休まないとダメなんだからね。最近、無理をしているから特に心配だよ』

『にゃはは、ありがとうユーノ君。私は大丈夫だから』

心配してくれるユーノ君に感謝の言葉を告げる。けど、私もシャルちゃんみたいに少し悩みがある。先週出会った黒の魔法使いのこと。今週に入ってからは1つも見つけられなかった“ジュエルシード”のこと。
色々考え過ぎちゃってるから、ユーノ君とシャルちゃんから少しお休みするように勧められた私は、この旅行のときだけは子供らしくのんびりしようと思っています。

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

深い森の中。私とフェイトとアルフは、“ジュエルシード”を探して歩き回っていた。

「本当にこの近くにジュエルシードがあるのかい? あんた、ジュエルシードの場所を特定するって言っておいて・・・ねぇ?」

「さっきからしつこいな、アルフ。すまないと何度も謝っているだろう」

俺の探査用術式は、かなりの精度を誇っているものだ。いくら未覚醒の状態とはいえ、“ジュエルシード”のような異物くらいは容易く識別できる・・・はずだった。“ジュエルシード”の探査を買って出て、意気揚々と探査を行い、そうして気付いてしまった。
精度がもう笑うしかないほどに低くなっていたのだ。そして場所を特定するとか言っておきながら、出来ないというこの始末。その所為でアルフがさっきから俺に文句ばっかり言ってきている。初めて出会った時のことを未だに根に持っているのか? だとしたら、なんて器の小さい奴だ。

「ア、アルフ! ダメだよ、ルシルばっかりを責めちゃ。この周辺にあるって判っただけでもすごいことだよ。わ、私でもハッキリと判らなかったんだから・・・!」

「フェイト~、そうだけどさ~」

フェイトがアルフを嗜める。本当に良い子だな君は。それにしてもフェイトの母親はさぞや立派な方なのだろう。まだ幼いというのに、これほど出来た子はそうはいない。だからこそ「本当にすまない、フェイト。俺がもう少ししっかり出来ていれば・・・」期待に応えれなかったために頭を下げて謝る。

「そんなことないよ、ルシル。1人で抱え込まないで、一緒に頑張ればいいんだよ」

「ありがとう。君の優しさが、アルフによる心のダメージに良く効くよ」

「なにをぉ!」

さてと、アルフも黙った(ことにして)ことだし、正確な位置を掴むために行動しようか。フェイトも“ジュエルシード”の場所を確認するため、行動を開始しようとした時・・・

「それよりさぁ。ねぇ、フェイト。この近くに温泉って大きなお風呂があるんだって。行ってみないかい? あとルシルもついでにさ。興味あるんだよね、あたし」

この大変な時になんて馬鹿なことを・・・と言いたいところだが、本当は俺も行ってみたかった。温泉・・・実に懐かしい。良い思い出も死を感じた思い出もたくさんある複雑な場所だが・・・。

「え? でも・・・今はジュエルシードを探さないと・・・」

「いいんじゃないかい? 覚醒するまで時間があるんだろう? ルシル」

「ん? まぁ、そう・・・だな。半日以上はあると思う」

感知した“ジュエルシード”の魔力から、概算で完全覚醒までの時間をはじき出す。するとアルフはニッと牙を見せながら笑みを作り、「なら決まりだね! 行こうよフェイト~。きっと気持ち良いよ!」フェイトに言い募る。

「う、うん。そこまで言うんだったら・・・行こっか」

半ばアルフの強制で、俺たちは温泉まで行くことになった。

†††Sideルシリオン⇒ユーノ†††

『一緒に入ろう、ユーノ君。温泉入ったことないでしょ? 温泉はすごくいいよ~☆』

なのはがそんなとんでもないことを言ってきた。でも、今回ばかりは絶対にダメだ。なぜかって? そんなの決まっているじゃないか!

(だって他の女の人も入るっていうんだから!)

というかなのはの家で、なのはと入ること自体がすでにアウトなんだ。断りきれない僕にも十分非があるけど・・・。でもなのはの強引さに一度も勝てないんだよっ。だって断ると悲しそうな顔をするんだから。あれを見たら、どんな人でも折れるね、きっと。

『なのは。ユーノは士郎父さんと恭也兄さんに預けておいで』

『えぇ~? 一緒に入っちゃだめなの~?』

どうやってなのはを傷つけないように断ろうか必死に思案していると、僕の救世主――シャルが、なのはの説得に移る。お願いシャル、なのはを説き伏せて! いくらなんでも耐えられないって。

『なのは。この国にはこういう言葉があるのを私は最近学んだわ。男女七歳にして席を同じうにせずっていうの』

『えっと・・・男の子と女の子は、7歳を過ぎたら一緒になったらダメってこと?』

『大体そんな解釈でいいかしらね。ユーノ、今の年齢は?』

シャルが僕の年齢を聞いてきた。あれ? 僕が人間だってなのはから聞いたのかな? まあいいか。僕はシャルに今の年齢『9歳になったばかりかな』って答える。

『9歳、かぁ・・・。私たちと同じだね』

『決定。ユーノ、おいで。私が男湯まで連れてくから。あなたとて辛いでしょ?』

『うん、お願いするよ。ごめんね、なのは』

僕は・・・助かったんだ! ありがとうシャル! 男湯に行くまで僕は、シャルにお礼を言い続けた。

†††Sideユーノ⇒シャルロッテ†††

「ふう、温泉って本当にいいところね~♪」

「にゃはは、そうだね~!」

「本当に気持ち良かったわ~」

「うん」

温泉から私となのは、アリサとすずかは出て、ユーノと合流した。さっきからユーノが『ありがとう』って何度も頭を下げっ放し。そんなになのは達と一緒に風呂に入るのが嫌だったのかしら。まぁ性別はオスだものね。自ら引くその考えは称賛したいわ。

「ねぇねぇ、あの子さ。すごく綺麗じゃない?」

「わぁ本当だ。綺麗な銀髪だね~♪」

「でも、男の子だね。男の子であんな綺麗な子、今まで見たことないよ~」

温泉から部屋へと戻る中、アリサとすずかとなのはが綺麗な男の子が居ると騒がしい。

(ん? 銀髪!? まさか・・・!)

その特徴的な髪色をしている奴の心当たりと言えば、たった1人しかいないわ。アリサ達の視線が向いている方を見てみると、案の定そこには椅子に座っている浴衣姿のルシルが居た。

(ルシル!? 何でこんなところに!?)

ルシルが騒がしいなのは達に気付き、営業スマイルで快く手を振っている。なのは達もそれにつられて、とても良い笑顔で手を振り返しているわ。ちょっとちょっと、なのは。彼は私たちの敵の1人なのよ。知らないから仕方ないけど。

(他の2人は・・・いない。単独行動? 一体何を・・・って、決まっているわね。この付近にジュエルシードがあるのね!)

椅子から立ち上がって、こちらに向かってきたルシルが私をチラッと見て脇を通り過ぎて行った。無視をするのね。いい度胸だわ、今度の“ジュエルシード”争奪戦ではボコボコにしてあげる。敵意と怒りを発する私。

『あの子、以前会った頃よりなかなか成長しているみたいだな。来るのだろう? ジュエルシードを封印するために。楽しみにしているよ、シャル』

完全に私たちに背を向けているルシルが、“界律の守護神テスタメント”用のリンクを通してそう言い放って、去っていった。ええ、楽しみにしているわ。あなたが跪くのを見るのを、ね。無意識のうちに妖しく微笑む私を、なのは達や他のお客さんが見て震えていたのには終始気付かなかった。

†††Sideシャルロッテ⇒ルシリオン†††

「はぁ・・・こんなところで遭遇するとは。世界は狭いな」

まさかシャル達が、ここ温泉宿に居ようとは思わなかった。“ジュエルシード”狙いかと思ったが、シャルの様子を見た限りではそれはないと判断する。

(単なる偶然、純粋に温泉旅行のようだったな・・・)

それより問題はあの子、高町なのは。以前見たときは完全な素人だったが、今は体外へ流れ出てしまう魔力の量がきちんと制御できているのだから大した進歩だ。魔力の扱い方1つで強さは変わってくる。強大な力を考えもせず使用し続け、その結果が最悪のことになってしまう。
大戦に参加した見習い魔術師がよくやっていたヘマだ。だがそれは言い返せば、たとえ魔力量の少ない者でも魔力の扱い方によっては、何倍もの魔力を持つ者を出し抜くことが出来るだけの強さを得られる、ということだ。

「シャルとの鍛錬のおかげ、ということかな」

「お、お待たせ、ルシル。待たせちゃった・・・かな?」

振り向くと、ほんのり上気したフェイトが立っていた。どこかもじもじして、照れているような仕草が可愛らしいと思う。

「いや、待ってないよ、フェイト。・・・ところでアルフはどうしたんだ? 姿が見えないが・・・」

そう、アルフが居ない。フェイトを1人にするわけがない彼女が、だ。

「あ、アルフはもう少し入ってるって言ってたよ。温泉がすごく気に入ったみたい。そういう私もとても気に入ったんだけどね」

フェイトが嬉しそうに話す。ああ、来てよかった。グッジョブ、アルフ!というか、主であるフェイトより温泉優先って・・・それってどうなんだ使い魔?

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

夜、“ジュエルシード”の発動を感じた私とユーノ君とシャルちゃんは、その場へと全力で走っていた。そして辿り着いた時にはすでに、“ジュエルシード”を封印し終えていた黒い女の子が私たちの前に姿を見せた。

「いらっしゃい。ちょっと遅刻では?」

それにゼフィちゃん、それと初めて見る知らない女の人・・・と思ったら「狼さんになっちゃった!?」驚いている私に、あの狼さんは使い魔というものだと、ユーノ君が説明してくれた。使い魔っていう単語は初めて聞くんだけど、仲間だってことだけは理解できる。

「ジュエルシードをどうするつもりだ!? それはとても危険なものなんだ!」

「私たちに答える義務はないよ、ユーノ・スクライア」

ユーノ君があの子たちに“ジュエルシード”の危険性を説くけど、ゼフィちゃんがきっぱりと答える必要はないって言った。

「先に帰ってな、すぐ追いつくから。ゼフィ、ちゃんと送るように」

「無茶しないでね」

「・・・判った。私のときみたく猪みたいに突っ込まないようにね」

「うっさい! 2度とあんなヘマはしないさ!」

ゼフィちゃん達がそう会話して、「おら、行くよ!」って狼さんが飛び掛ってきた。“レイジングはハート”の柄をギュッと握り直したその時、ユーノ君が前に出て「なのは、シャル。あの子たちをお願い!」バリアを張った。

「こんなバリアくらい、すぐに噛み砕いてやるよ!」

そして狼さんがバリアに組み付いた。私はオロオロ。あの子とゼフィちゃん、そしてシャルちゃんはお互い目を逸らさないようにしていて、ユーノ君と狼さんのことを黙って見守ってる。

「させると思ってんのかいっ!」

「させてみせるさっ!」

――トランスポーター――

そしてユーノ君は、転送魔法を使って狼さんと一緒に消えてしまった。

†††Sideなのは⇒ルシリオン†††

アルフがユーノによる強制転移でどこかへと飛ばされてしまった。私の忠告を聞いていてこの失態。狼なのに猪突猛進とはこれ如何に。どこかへ飛ばされたアルフへ『はぁ。なぁ、アルフ・・・突っ込むなと言ったばかりでこれか』と念話を送る。

『う、うっさいよ! こ、これは・・・作戦さ! 厄介なサポーターを引き離すってやつさ! そっちの剣を持つガキと砲撃のガキは、フェイトとあんたでどうとでも出来るだろ! て、適材何とかってやつだよ! だからこれはミスしたわけじゃ――のわっ? こっちは任せて、そっちは上手くやりな!』

なんて下手な言い訳だ。適材適所も言えてないじゃないか。だがアルフの言うことにも一理ある。あのユーノとかいうフェレットもどき。防御や転送などの補助魔法を専攻しているんだろう。妙な絡め手を使われる危険性もあった。ふむ。アルフはなかなかに良いミス(作戦通りと言い張るが)をしてくれたな。

「・・・アルフ・・・『どうしようか、ルシル?』」

フェイトが迷っている。んん、そうだな、ここは・・・。

『彼女たちの所有するジュエルシードもこの際だから頂いていこう。それで目標へと少しは近付くはずだから。それでいいな?』

『え、う、うん! それじゃ、私があの白い子と戦えばいいんだね』

『そういうことだ。俺からあの子たちへ提案する。いくぞ、フェイト』

念話で今から成すべきことを決め、いざ、という時に、「あの、少しだけで良いからお話し出来ないかな!」と、なのはは話し合いで事を終えようとしてきた。確かに話し合いというのは大事なことだが、今に限って言えば私たちには必要のない解決方法だ。すると今まで傍観していたシャルがようやく口を開く。

「なのは。あの子たちを倒してジュエルシードを奪うわよ」

「え? シャルちゃん、それって・・・!」

どうやらシャルも私と同じことを考えていたようだ。この場で完全に勝敗を決め、後の行動を制限させるための戦闘。いいだろう。その覚悟、受けて立つ。

「私が相手になる。付いておいで、シャルロッテ」

「・・・なのは、そっちは任せる。特訓を思い出して」

「っ。・・・うん、判った!」

シャルとなのはが短い話をして、シャルは俺へと近付いてくる。そして俺はシャルを連れて森の奥へと向かった。

†††Sideルシリオン⇒なのは†††

シャルちゃんがゼフィちゃんと一緒に森の奥へと入って行った。正直、私は戦いたくない。お話が出来れば戦わずに済むと思っていたかった。けど、もう戦うしかないみたいだ。なら覚悟を決めるしかない。

「私が勝ったらちゃんとお話を聞いてもらうから!」

「いいよ、私に勝てたら、ね」

「いくよ、レイジングハート!」

≪All right≫

「バルディッシュ・・・!」

≪Yes, sir≫

どっちが勝っても恨みっこなし。私はシャルちゃんとの特訓を思いだしながら戦闘に入った。

「すぐに終わらせる。バルディッシュ、フォトンランサー」

≪Photon Lancer.get set≫ 

「撃ち貫け、ファイア!」

≪Flier fin≫ 

「レイジングハートっ!」

≪Divine Shooter≫

「シューット!」

私とあの子の魔力弾が交差する。お互いに迫って来る魔力弾を、空に上がることで回避する。まずは距離を置くための攻撃だったけど・・・.

(うまくいったのかな・・・?)

シャルちゃんの助言を思い出す。

――いい? なのは。あの黒い子は機動力がすごいわ。近接戦の技術もなのは以上よ。でも、その反面防御力がないわ。だから一撃必殺とまではいかないまでも、あなたの砲撃でかなりのダメージを与えることが出来ると思う――

らしい。でも向こうは速さに特化しているから、何もしない状態では当てられない。それなら当てることが出来る状況へと持っていけばいい、とのこと。そこで私に提示されたのが、誘導弾による相手のかく乱、誘導、そして足止め。

――なのはは射撃の誘導制御がすごいんだ。シューターで相手を翻弄して、その最中に砲撃を当ててやれば、おそらく勝てるわ――

前のゼフィちゃんとの戦いで、シャルちゃんと一緒にしたようなことを今度は私ひとりで行う。そのために、模擬戦と称してシャルちゃんが的となってくれた。

(全部避けきられたうえに反撃されたけど・・・)

そして最も重要なのは、決して接近されないこと。正直な話、私はあまり運動は得意な方じゃない(涙)。そんな私が接近戦に持ち込まれたら絶対に負ける、って言われた。それに反論できないから黙って頷いた。

「もう1回お願い、レイジングハート!」

≪Divine Shooter≫

今撃てるだけの誘導弾で、あの子を取り囲む。もう少しで包囲網が完成する。だから「レイジングハート・・・!」決め技の砲撃魔法、ディバインバスターを準備する。あの子も何かすごい魔法を使うみたいで、「バルディッシュ、いくよ」魔力が膨れ上がった。お互いへデバイスの先端を向けて・・・

「ディバイン・・・バスタァァーーーッ!」

「サンダー・・・スマッシャァァーーーッ!」

私とあの子の砲撃が同時に放たれる。

†††Sideなのは⇒シャルロッテ†††

「ふふ。なのは、きちんと私が言ったこと守ってるみたいだわ」

「余所見をしている暇があるのか?」

「少しはいいでしょう? ほら、あなたのパートナーが結構苦戦してるわよ?」

「フェイトがあの程度の策で負けるとでも思っているのか?」

私とルシルは木々が生い茂る森の中、全力で走っている。こんな場所では刀身の長い“キルシュブリューテ”は使い難いから出してはいない。そこで今使っているのは私のもう1つの相棒、“ゼーゲン”。祝福の意味を持つナイフだ。ナイフと思って侮るなかれ。刀剣類である以上、私の魔術を乗せることが可能だ。

――風牙真空刃(レーレ)――

走りながらも“ゼーゲン”を振るい、ルシルへと真空の刃をを放ち続けていると、上空が桜色の閃光に染まる。どうやらなのはがフェイトに砲撃を当てたようだわ。あの子の砲撃、かなり完成度、というか威力が高い。だから当てることさえ出来れば勝てる、そう思っている。あちらが気になるけれど、今はルシルからは目を逸らすことが出来ない。下手に隙を与えると、ルシルは的確な射砲撃で迎撃してくる。

「さぁ、こちらも本気で行くわよ、ルシル!」

――氷牙凍羽刃(アイス・ツァプフェン・フリューゲル)――

氷雪系魔力を纏わせた“ゼーゲン”を振るい、氷で出来た鋭い羽根型小刀を12発、弾丸みたいに飛ばす。凍羽刃は触れた木々を切り裂いていって、対するルシルは太い木の幹を盾代わりにして、何とか回避していった。

「ならこちらは・・・これだ」

――プリズミック・ミサイル――

ルシルの周囲に展開された虹色に輝く魔力弾が8発と放たれ、私を追尾してきた。私も木々を盾にしつつ“ゼーゲン”で斬り裂いていく。

「やはり、半端な速度と威力では徒労に終わるな。まぁいい。フェイトの方も終わったようだし、こちらも終わりだ」

「え・・・っ!? なのは!?」

ルシルに続いて空を見上げた私の視界に映り込んだ光景は、フェイトがなのはの首に魔力刃を向けているところだった。

†††Sideシャルロッテ⇒フェイト†††

あの子は砲撃を私に直撃させたと早とちりをしたのか呆けていた。甘い。あの程度で勝ったと思ったのなら私の敵じゃない。私は“バルディッシュ”をサイズフォームにして、展開されている魔力刃をあの子の首筋に掠めるように突きつける。

「ジュエルシードを渡して」

「ダメ、ダメだよ・・・!」

脅しのつもりで“バルディッシュ”の魔力刃を僅かに動かすと・・・

≪put out≫

白い子の携えるデバイスが“ジュエルシード”を出した。

「レイジングハート!? 何を・・・!?」

主人――この子の身の安全を考えて、“ジュエルシード”を差し出したんだ。

「きっと、主人思いの良い子なんだ。だから責めないであげて」

私は“ジュエルシード”を手にした。もうこの場所には用はない。

「帰ろう、アルフ、ゼフィ」

近くにまで来ていたアルフとルシルに声を掛ける。

「さっすがあたしのご主人様! じゃあね、おチビちゃん達♪」

「もうこの件から引きなさい、高町なのは」

アルフとルシルはそれぞれの別れを済まして去ろうとするけど、「ま、待って!」あの子が私たちを引き止める。まだ何か用があるというのだろうか? けど、私にはもう言うことも何もない。

「出来るなら私たちの前にもう現れないで。もし次があったら、今度は止められないかもしれない」

だから、もう関わってくるな、次はない、と警告する。

「名前・・・あなたの名前は!?」

「・・・フェイト。フェイト・テスタロッサ」

「あの、私は・・・」

聞きたくない。あの子の名前を知ってしまうと、何故か必ず再会してしまうような気がしたから。だから最後まで聞かずにこの場を去った。

†††Sideフェイト⇒なのは†††

「・・・なのは」

ユーノ君は沈んだ声で私の名前を呼んだ。私は振り返って「ごめんね、ユーノ君。ジュエルシード・・・取られちゃった」と謝る。

「ううん、なのはが無事ならそれでいいよ」

「それに謝るなら私の方、ごめんなさい」

私たちは、フェイトちゃんとゼフィちゃんの前ではまだ弱かったんだ。

「もうこの件から引けって言われたけど・・・どうするなのは?」

「・・・諦めないよ。まだちゃんとお話していないから」

私はシャルちゃんにハッキリとそう告げた。少しだけ垣間見た、フェイトちゃんの綺麗な赤い瞳の中に揺らぐ感情。優しさ。寂しさ。いろいろな複雑な感情を見たと思う。お話ししたい。きっとだけど、フェイトちゃんとは分かり合えると思うから。



・―・―・シャル先生の魔術講座・―・―・


シャル
「また来たの? 物好きね。でもようこそ、第2回シャル先生の魔術講座へ。
シャル先生ことシャルロッテ・フライハイトよ。よろしく」

なのは
「助手の高町なのはだよ♪」

ユーノ
「えーっと、生徒らしいユーノ・スクライアです。あの、シャル? なのはが助手なのに、どうして僕は生徒なの?」

シャル
「あなたは助手と言うより、生徒と言った立ち位置がベストだと思ったのだけれど。なのはは学ぶつもりがないどころか常に頭の上に?マークを浮かべているしね」

なのは
「サラっと“馬鹿”って言われた気がする!?」

シャル
「気のせいよ。ユーノは学ぶ姿勢があるから生徒という立ち位置ということよ。なのはは邪魔にならないように助手ということね。あ、そこ、ちょっと邪魔ね。こっち来て」

なのは
「ひどい! 何がひどいかって、何の躊躇もなく邪魔って言った!!(大泣)」

ユーノ
「ちょっとシャル! さすがに言い過ぎだよっ!」

シャル
「まさか泣くほどだなんて・・・。ごめんなさい、なのは。邪魔じゃないからこっちに来なさい。ほら、よしよし良い子良い子❤」

ナデナデ♪

なのは
「あぅ~、なんか駄々をこねる小さな子供をあやすみたいにされてる?」

シャル
「それも気のせいよ。さて。これ以上脱線するわけにはいかないわね。それじゃあ今回使用された魔術は1つ。その魔術を紹介するわ。

――氷牙凍羽刃(アイス・ツァプフェン・フリューゲル)――

氷で出来た羽根の形をした小刀を、弾丸のように複数対象へ放つ術式よ。そうね。直射型の射撃魔法と捉えてもらっても構わないわ。アイス・ツァプフェンはつらら、フリューゲルは翼という意味ね」

ユーノ
「そうなんだ。なのはとは違って近中距離系なんだね、シャルは。うん。でもこれってすごいバランスが良くない? なのはの中遠距離、僕のサポート、シャルの近中距離。このチームってよく考えれば最強の布陣になるかも」

なのは
「でもそれって、きっとフェイトちゃん達の事も言えるよね?」

シャル
「そうね。そこをどう切り崩していくかが私たちの課題ね。さて。そろそろ終幕を行きましょうか。それでは、第3回シャル先生の魔術講座でお会いしましょ」

なのは&ユーノ
「ばいばーい♪」
 
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